歪な英雄   作:無個性者

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頼られるということ

 ボロボロになった出久は搬送用のロボによって保健室へと連れていかれた。

残りはモニタールームに集合し、講評を始めた。

 

「さーって、初っ端から色々問題だらけだが。まず今戦のベストは、六道少女だ!理由分かる人!?」

 

 オールマイトの元気な問いかけにいの一番に手を上げたのは、黒髪ポニーのナイスバディ、ヒーロースーツは自分の個性に合わせて露出の多い八百万 百だった。

 

「瞬時に骨の鎧を作りだし、見事轟さんの凍結から逃れ、4階にあった核兵器を骨で囲むことで保護した上で戦闘準備を始めた上に、氷を砕いて窓から飛び出した爆豪さんに合わせるように動き、見事轟さんと芦戸さんを捕獲したことです」

「そのとーり!まぁ二人を捕えた後に動かなかったことは減点すべきところだがね」

「……分かってます、寧ろ評価されたことに驚きです」

 

 六道としては二人を捕えた時点で授業放棄していたのだ。

こうしてこの場で、評価してもらえるだけ感謝である。

 

「そして次点は緑谷少年だ。三人一組という有利な状況にあって慢心せず味方の個性を把握し、作戦を立てようとした。轟少年の独断によって解説はなかったがね。

 その後爆豪くんとの戦闘も床に大穴を空けた以外は素晴らしい。殺さず意識を刈り取る選択の切り替えも見事!ただ、両足が使えなくなってしまったのは減点だ。これでは後に繋がらないからね!」

 

 出久の講評については後で彼に聞かせるのだろう。言いながらメモを取ってカンペを作っていた。

 

「その他の三人は、悪いが同着最下位扱いだ。爆豪少年は私怨丸出しの特攻。しかも一階とはいえ核がある建物を爆破!大きく減点した」

「……うす」

 

 今回の自分の行動は理解しているようで、何時ものように何か怒鳴るつもりはないらしい。

 

「轟少年は有利な状況で有利な個性ということで油断(遊び)が生じたうえに、緑谷少年の作戦を無視。協調性はヒーローにとって素晴らしく大事なことだ。これもまた大きく減点した。それと、凍結しか使わないというその意思、理由は問わない。

 だが!そう決めたのならますます油断してはいけないし、キミは半分の力しか使わないという大きなハンデを背負うことになる。尚のこと協調性は大切だぞ!」

「……すいません」

「最後に芦戸少女!言わずともわかっているだろうが、今回何も出来なかったね。緑谷少年や轟少年の指示待ちでは、ヒーローとしてやっていけないぞ。自発的に動けるように頑張ってくれ。キミは性格は明るく、自己主張は他の二人より優れていた。そんな君が率先して動けるようになれば、核を扱うなんて言う現場でも気持ち明るく、程よい余裕というモノが生まれるはずだ!」

「は、はい」

 

 サラサラッと手元のノートに記載すると、箱を取出し次のチームを決めはじめた。

 

「さぁ、問題だらけだったが、熱い初戦の熱を冷まさないうちに次行こうか!」

 

 

 

 

 ヒーローVS敵はその後も快調に進んで行った。

2回戦目の峰田&青山VS麗日&八百万は、意外にも苛烈なものとなった。

 始めは見事な講評をした優等生である八百万の活躍を全員が期待していた。

核を守る罠を張り巡らせたり、麗日が重さを無くした鉄塊で核を囲むと言った護り全開の戦法。

期待通りの素晴らしい護りっぷりだったが、相手が悪かった。

 女体に全力で向かう峰田と、目立ちたい青山の奇行は良い意味でも悪い意味でも優等生な彼女の思考からかけ離れたものになった。

罠に対し粘着力の高い頭の球体を投げつけ誤発させた上に、球体の上をピョンピョン跳ねて全力で女子二名の胸に飛び込もうとする峰田。

目立つために移動や配置を無視してカメラを意識しまくった的外れな青山のレーザーは意外なことに麗日、八百万の邪魔となった。

 想定外にも麗日と八百万を色んな意味で圧倒していたが、抱き着くことに一生懸命な峰田は並んで立った二人に跳びこみ、避けられた上に二人がそれぞれ端を持った確保テープに見事絡め取られ、青山はその後数の差で捕まった上に鉄塊に反射していたレーザーが偶然にも核に掠っていたらしく大きな減点を喰らった。

女体に齧りつくような全力不審者だった峰田も、ヒーローとしてこれまた大きな減点を喰らった。

 

「……私、今までないくらい疲れたよ」

「私もですわ……色んな意味で疲れました」

 

 もうこの相手とは戦いたくないと思った二人の感想だった。

 

 3回戦目、耳郎&上鳴VS蛙吹&常闇。

この戦闘は敵チームである蛙吹&常闇の圧勝となってしまった。

耳郎の個性によって見えない上の階の様子を音で探るまではよかったのだが、向かってみれば常闇一名のみしか立っていなかった。

天井と柱の陰に隠れた蛙吹の奇襲を受け、上鳴がそれを阻もうとしたが、放電することしか出来ない彼はすぐ後ろにいた耳郎を気にして放電できず、伸ばした舌とカエルの特徴を生かした天井からの攻撃に圧し負け確保。

耳郎は常闇の個性によって擬似的な2対1に持ち込まれ確保された。音波が通じない影が相手だったというのもまた運が無かった。

配置が逆だったらまた違っていたかもしれない結果となった。

 

 4回戦目、障子&飯田VS葉隠&尾白。

これはヒーローチームの圧勝となった。

透明人間葉隠の動きは複製した耳によって障子が全把握、透明になるために裸になった彼女はロクな抵抗も出来ずに確保された。

そして一人となった尾白は高速機動のできる飯田に翻弄され、得意の空手を活かせず確保。相性の悪さがもろに出た結果となった。

 

 最後、5回戦。口田&砂藤VS瀬呂&切島。

これは接戦の結果、ヒーローチームの勝利。

核のある部屋を瀬呂のテープを使い入り難くし、動きづらいその階ではなく、一階下で守ることを選んだ二人。

それに対し、砂藤は持ち前の怪力を活かして堅い切島相手に互角の戦闘を見せた。

その間に少し離れた場で行われた口田と瀬呂の戦闘だが、口田が全力で瀬呂から逃げつつ窓を開けることに専念した。

 始めは何をしているのか分からなかった瀬呂だが、窓が開いた瞬間全てを理解することになった。

何処からともなくカラスやハトが飛び込み瀬呂を翻弄。その間に駆け登り核のある部屋を移動し辛そうにしながらもタッチし確保、勝利となった。

 

 

 

 

 放課後になり、治癒が終わった出久が保健室から帰ってくると、彼が思っていた以上に教室に人が残っていた。

午後に授業が割り振られていたのは、こうして怪我をすることが予測されていたからだろう。

 

「おぉ!緑谷来た!おつかれ!」

「戦闘凄かったよー!」

「一戦目であんなのやられたから俺らも力入っちまったぜ!」

「へっ!?」

 

 想定外に話しかけられ、困惑する。

その後自己紹介をされつつ、やはり困惑が抜けなかった。

無個性で基本虐められるか無視される日々を送ってきた彼には新鮮なのだろう。

どうすれば、と紫に助けを求めようとしたが……。

 

「骨の装甲はどんなことを考えて造っているんだ?黒影の使い方の参考にしたいんだが」

「え?……えっと、動きを阻害しないように、かな」

「なるほど」

「! 俺の放電とか纏ったら鎧みたいにならねぇかな!?」

「えと、どうだろ。……放出するだけなら、サポート科に頼んで指向性のある装備を造って貰った方が、いいかも。それと、生体電気を加速することが出来たら、擬似的に視覚や思考速度を強化、できるかも?」

「え、加速?なにそれどういうこと??」

「六道さん!同じ創造系として聞きたいことがあるのですが!」

「え、あ、……あぅ」

 

 緑谷に負けず劣らずの人気っぷりで緑谷以上に困っていた。

彼女自身昔から出久と行動を共にしており、出久を苛めるような人を排除していたら孤立していた。

端的に言って、コミュ力最低レベルという共通点を持つ二人にとって、この状況には目を回す事態となった。

 頼られるというのは嬉しい事だと、二人が実感する良い日になった。

 

 

 

 そして、次の日。

マスメディアからの質問を嫌な顔して躱しつつも登校する。

オールマイトが教鞭をとっているという話が広まった結果、入学初日から毎朝毎夕続いていることである。

 

「さて、昨日はお疲れ。爆豪、お前もうガキみてぇなマネするな。能力あるんだから」

「……わかってる」

「ならいい。さて、ホーム―ルームの本題だ。急で悪いが、今日はキミらに……学級委員長を決めてもらう」

 

 一瞬、抜き打ちテストでもやるのかと緊張した空気が、破裂した。

 

「「「「「学校っぽいの来たーーー!!!」」」」」

 

 ヒーロー科では集団を纏め導くという、トップヒーローの素地を鍛えられる役でもあり、クラス中が手を挙げた。尚、紫は出久にやってほしいという想いから手を挙げていない。

 

「静粛にしないか! 多をけん引する責任重大な仕事。やりたい者がやれるものではない!!これは、民主主義に則って、投票で決めるべき議案……!!」

 

 そう皆を静止した飯田だが、彼の腕もピンと伸ばされていた。

 

「「「「「そびえ立ってんじゃねーか!!何故発案した!?」」」」」

 

 盛大にツッコまれていたが、それは難しいと思う。日も浅いのに信頼関係など分からないだろうし、そもそも自分に入れるに決まっている。

飯田はだからこそここで複数票をとった者こそふさわしいんじゃないか、とごり押しした結果――――

 

緑谷出久 5票。

八百万百 2票。

 

 他、1票。数人0票となった。

 

「って、うぇ?!ぼ、僕!?!?」

 

 出久に入れた紫は驚く出久に拍手を送っていた。

 出久に票を投じた紫は、驚く出久に拍手を送っていた。

出久に入れたのは、紫、飯田、麗日、轟、芦戸だろう。受験で世話になった二人と昨日の授業で同じチームになった二人なら入れそうだ。

八百万は彼女自身と、0票になっている蛙吹だと思われる。講評が素晴らしかったからだろうか。

 ついでに紫に一票入っているのは、恐らく出久だ。

 

(……出久くんがやるんなら、副委員長やりたかったかも)

 

 ちょっと不満げになりながらも、その日のHRはそのまま二人を委員長、副委員長として決定した。

 

「う、が、がんばります……!」

 

 緊張と不安でガチガチになっている出久を見て、出来ることは協力しようと思いつつ、午前の授業が始まった。




お気に入りが400‥‥2話ほど前に200を突破したのに。これが出久と爆豪くんの原作効果というやつですね‥凄く驚いてます、ありがとうございます!!
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