歪な英雄 作:無個性者
雄英祭当日、1-Aの面々は控室で各々待機していた。
彼らヒーロー科は公平を期すために自分達が有利になる要素を詰め込まれたコスチュームの着用を許可されていない。そのため、ヒーロー科含めて全員が体育着に着替えていた。
「おっし、今日はお前らの誰より活躍して見せっからなぁ!」
「なんだなんだ、やる気だな上鳴」
「おう!今日の俺は一味もふた味も違うぜ!」
自信満々にクラス全員に宣戦布告しだしたのは、何時もやる気に欠けていた上鳴だった。
何やらやる気の源があるらしく、各々がどうしたんだと疑問符を浮かべていると、峰田がふと気づいた。
「! ま、まさかお前…女か!?」
「―…なんだっていいだろ」
「おいこっちみろや」
峰田の血走った
「と、ともかく!今回は負けねぇ!
「ケッ、誰がやるかよ。
ニヤリといつも以上に悪党顔をした爆豪が上鳴の挑発に乗り、クラス中が俺も私もとやる気を出していく中、轟が出久の前に来た。
「‥‥緑谷」
「え、轟君?なに?」
「お前、オールマイトに目ぇ掛けられてるよな。詮索するつもりはねぇが」
「!」
オールマイトは生徒である前に後継である出久に対し、度々呼び出してはワン・フォー・オールについてやこれからについて、色々なことを話し合うことがある。
なるべく放送を使わなかったり、人気のない指導室などで行っているのだが、オールマイト自体が目立つせいだろう。気づいてる人は、きっと轟だけではない。
「お前には勝つぞ」
「……」
轟はNo.2であるエンデヴァーの息子だ。彼自身、なにか
今轟は出久を見ているが、それ以上に背後の存在…オールマイトやエンデヴァーを幻視されているように彼には思えた。
「轟君が何を想ってるのか知らないけど…
「おぉ」
熱い宣戦布告の中、紫にも彼女の肩を叩く人物が現れていた。
「男子、凄いやる気だね」
「麗日さん」
麗日お茶子。彼女は両親を楽させたくて、ヒーローにいち早くなるんだ、と以前この雄英祭にやる気を出していたのを見かけていた。
「外観た?すっごい数のお客さんだったよ!」
「……例年は三年の先輩のスカウトに集まるけど、今年は私たちが話題になってるから、だとおもう」
「なるほどぉ」
USJの事件について、事件の詳細を、というより生徒に関して雄英は語っていない。
未成年者だし諸々当たり前なのだが、マスメディアは生徒が事件にどう関わったのか詳しく知りたがっていたし、他の人間もそうだろう。
だからこそ、知れるこの雄英祭に来るのは必然と言えた。
「……USJの時、さ」
「?」
「あたし、跳びこんで行った六道さんみてさ、凄いなぁって思ったんよ」
「アレは、私も色々あって‥」
「うん。何時もの六道さんらしくなかったもんね。でもほら、その後緑谷くんと一緒に活躍してたでしょ?」
「それは‥‥まぁ」
「あの時、二人ともカッコよくて……負けてられないなぁって。あたし、あんまり動けなかったし」
そんなことはない。麗日は飯田が走り出るためにワープゲートの黒霧という
暴走した紫とは違って、自分の意思で。
「そんなこと」
「なくないの!…そりゃ、みんなあの時それぞれ頑張ってた。でも、ううん。だから、私も負けられない。私以上に頑張ってた皆に追いて行かれないためにも」
「麗日さん‥」
「そう言う事なら私も負けないよー!」
「ひゃ!?あ、芦戸さん!?」
麗日の言葉に発破を掛けられた芦戸三奈が、紫の背に跳び乗った。
急なことに驚きながらも、他の人の視線まで集まっていることに気付いた紫はてんやわんやしていた。
「戦闘は轟くんのお蔭だったし、あの時あんまり動けなかったって言うのは私だってそうなんだからさ!」
「轟君凄かったよねー、ぱっきーんって一瞬で凍らせちゃうんだもん」
「「ねー!」」
「…」
轟と一緒だった芦戸と葉隠がそう言って仲良くしていると、気恥ずかしいのか轟が少し顔を逸らしてそっぽを向いた。
「そうね、私も作戦も指揮も緑谷ちゃんに任せっきりだったわ」
「そーいわれるとアタシらなんて上鳴に全部持ってかれちゃったんだよねぇ」
「えぇ。別にそれを理由にするつもりはありませんが、気合は入ってますわ」
今度は女性陣までもが騒ぎ出す。
さっきまで緊張していた空気が吹き飛び、なにやらどんどんヒートアップしていく1-A。
「皆凄いね、紫ちゃん」
「うん…頑張ろ」
開会まで、あと少し。
☠
『雄英体育祭!!ヒーローの卵たちが、我こそはと鎬を削る年に一度の大バトル!!』
先生の放送が響いて客を湧かせる。
過去、オリンピックが注目されていた代替と言われるだけあって凄い盛り上がりである。
一年の部がこんなに騒がしくなることは例年なかった。その理由は、注目を浴びている存在があるからだ。
『どうせてめーらアレだろこいつらだろ!?
1年!!A組だろぉぉ!!?』
先生の放送に合わせ、A組が入場する。
歓声以上に異様な数の視線が集中し、思わず姿勢をピンと一部メンバーが正してしまう。
「すっげぇ持ち上げられたな」
「燃えるだけだっつぅの」
「アハハ、爆豪相変わらずだ」
その後のB組、普通科、サポート科に経営科と入場する。
ヒーロー科は2クラスのみだが、他の科は3クラスあり、こうして集まると一学年だけでもかなりの人数になった。
「選手宣誓!!」
生徒たちの前に立ったのは1年主審、18禁ヒーローと呼ばれるミッドナイト。
18禁なのに普通に1年の場にいるし、テレビにも出る色々な意味でスレスレなヒーローだ。
「選手代表、1-A飯田天哉!!」
「はい!」
緊張した趣で台へと昇る飯田。
入試一位の彼だから選ばれたのだと全員が察し、一部からはヒーロー科の入試結果のみで判断されたことをよく思っていない人から若干の野次が飛んだ。
それに対しあくまで静かに移動した彼はスッと一息深呼吸して、言い放った。
「宣誓――の前に、一つだけ」
「ん?」
「俺は、入試以来一番になったことはありません。だから此処に立ったからと言って、驕りも油断もしません」
その強い視線はさっきまで野次を飛ばしていた連中が押し黙るほどで、彼の意思は確かに伝わっていた。
「だから宣誓は勝手ながらこうします――俺は、貴方達に挑戦する」