歪な英雄   作:無個性者

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※前話から黒水水舟を他校に変更しました。


少女たちの実技試験

 試験当日、雄英高校にて紫はまたもや不機嫌そうにしていた。

 

「……」

 

 理由は単純明快、出久と会場が分かれてしまったからである。

それ自体は運もあるので仕方ない事なのだと理解はしているのだが、それとこれとは話が別というもの。

不機嫌の理由も分かれたこと以上に出久が心配で落ち着いて居られないだけだったりする。

 

(筆記は大丈夫、私ですらすら解けたんだから出久くんだって問題ないはず……テンパって無ければ)

 

 何より心配なのは実技だったりする。説明を受けたが、個性と戦闘値を競い合うようなポイント制のこれは無個性のはずの出久にはかなり難問となる。だが、心配しつつも紫は半ば合格を確信していた。

 

(……何してたんだろ、ホント)

 

 ここ1ヶ月ほどだろうか。彼が紫に黙って一人特訓を始めたのは。

試験日までの日数が一週間ほどに迫った時、彼の両腕両足が包帯でぐるぐる巻きになっていたのを思い出す。

「特訓って何をしてるの!?」と一度本気で問い詰めたが、やはり無言を貫かれてしまった。出久の事なら、何か言ってくれれば僅かな情報で予測がつくが、何も言われないとなるとどうしようもない。

 

(個性が発現したから、その特訓……でも自分が怪我するような特訓なんて)

 

 本当に何をしていたのだろうか、とひどく気になって仕方がない。

仕方がないのだが……特訓が形になったからあんなにやる気満々で入試に向かったのだろう。緊張でガクブルなのに変わりはなかったが、もし形になっていないならそもそも落ち込んでいるはずだ。

 イジイジと動きやすいようにと着た運動着のまま考え込む。

 

『んじゃ、始めるぞ。はい、スタート』

 

 思考を続けていると、なにやら説明会の時とは違い静かな先生の声が会場に響いた。

周りの者が「え?」という顔で立ち止まっている。

あぁなるほど、と自分を含めた数人が先に動き始めた。

 

『オラオラ、どうしたぁ!?実戦じゃカウントなんざねぇんだよ!走れ走れぇ!賽は投げられてんぞ!!?』

 

 出久の心配は後回し。彼の努力を、合格を信じて自分も合格するために疾走するのみだ。

 

『標的捕捉!!ブッコロす!!』

「……邪魔」

 

 建物の壁を破壊して迫ってくる2メートルほどのロボに対し行った方法はシンプル。

バキバキと音を立てながら瞬時に形成した大きな骨の籠手。そこらの刃物よりよっぽど鋭利な爪を振るう。

それだけで、ロボは真っ二つに裂けてしまった。

 

「1P……にしても、これ戦闘向きじゃない個性の人は怪我するんじゃ……」

 

 速くて脆いらしいが、それでもロボ。コンクリの壁をやすやすと壊す破壊力は常人には荷が重いだろう。

事実、始まって数分だというのに幾らか苦戦して怪我をする人がチラホラと。

 

「……ん?」

 

 走りロボを屠っていると、視界に黒髪が入り込んだ。

よく見知った顔……黒水水舟だ。

 

「あれ、六道?」

「黒水さん、雄英志望だったんだ」

「ん?言ってなかったっけ?」

 

 初耳だ、と群がってくるロボを屠りながら呑気に会話を続ける。

骨を伸ばし二刀流擬きで刺したり斬ったりする紫。

水舟は水を創製し、操ってロボに水を入れ込ませ故障させている。

ウォーターカッターのような使い方もできるのだろうけど、周りに人が多いからその配慮だろう。

 

「なぁ、六道」

「なに?」

「組まない?」

「ハ?」

 

 試験でポイントを奪い合うのだから、ライバル関係にしかならないはずの相手に何を言ってるのだろうか、と疑問符を浮かべると水舟は思案顔で語りだした。

 

「このポイント制の試験だけどさ、これじゃぁ戦闘力しか測れないと思う」

「……」

「ヒーローに必要なのってさ、戦闘力だけじゃないだろ?」

 

 男まさりな彼女はニヤっと口許を歪めた。

あぁ、なるほど。

 

観られてる(・・・・・)ってことを自覚しろってことね」

「そういうこと。言われてないことだけど、多分間違ってないと思う。他の人が気づいていない今こそ、ボクたちで点を稼ごうぜ」

「何で私なの?」

「んー、そりゃ一番信用できるし。何だかんだ幼馴染だしな。それに……」

「それに?」

 

 彼女はそこで一拍空けて、悪い笑みをからかう様なニヤついた表情に変えて、紫を肘でつついた。

 

「お前の愛しの(・・・)彼なら、余裕さえあれば同じこと考えてると思うぜ?」

「な、ななななな!!!」

 

 ボッと顔を真っ赤にして、思わず彼女に詰め寄る。

 

「な、なにを、なんで!?」

「幼い頃からの付き合いのボクにツンツンな六道が微笑む相手なんて、彼くらいだからなー。六道を嫌ってる奴ならともかく、ボクみたいな奴とか、周りを観れる奴にはまるわかりなんじゃないか?」

 

 まぁ彼自身気付いてない辺り重症かもだが、と付け足した。

出久に気付かれていないことにガックリすればいいのか安堵すればいいのかわからないが、ともかく水舟の言いたいことは分かった。……下手をしなくても親にもばればれなのだろうか……。まぁそれは置いておいて。

 たしかに、紫にとってのヒーロー像は世に出て有名になっている誰それではなく、力が無くとも誰かを助けようと動く、そんな優しい彼だ。

所謂オリジンというもの。紫にとってそれは出久なのだ。

 

「……いいよ、乗った。ロボの掃討しつつ、怪我人やピンチな人の手助け。なにより、互いのカバー」

「よっしゃ、よろしく!」

「骨折とかしてる人いたら優先的に教えて。添え木位は作れるから」

「OK」

 

 そこから先は、二人の独壇場と化した。

まさしく台風の目。リーチも長い二人の範囲攻撃はロボを薙ぎ払い、手助けや怪我人の簡易治療までめまぐるしい活躍を行った。

そして、試験終了間近となって現れた、「0P」の特別な敵(巨大ロボ)に至っては。

 

「両腕よろしく」

「はいよ」

 

 巨大ロボはいるだけでも威圧的で不安を煽り、動くだけで建物を破壊する。

「救助」を目的として考えた場合、これ以上ない邪魔者である。

敵はロボだからこそ、容赦なんてしない。人が射線上に居ないことを確認し、斜め上―――ロボの両肩目掛けてウォータースライサーで内部の関節のみを破壊する。両腕を落としてもよかったが、そうすると地面に腕が落ちて被害を出すから止めた。

 

「っ」

 

 バキバキバキと骨の籠手、脚甲、簡易的な鎧を作っていく。

腕の動きは止まっても、他のギミックが無いとは限らない。近寄って自分がやられてしまえば元も子もないのだ。

それになにより、こっちの方が速い(・・)

 ガチンッ、高音が鳴る。

紫の身体で扱うことを考えるとかなり大きめな脚甲と籠手の中からした音だ。

 

「トリガー、オン」

 

 バゴンッ!!!という大きな音を立てて、地面を砕きながら一気に加速した。

その音の正体は、脚甲として作った骨にある。大きく作ったのは頑丈にするためとかリーチを長くといった理由もあるが、それ以上に中で工作しやすい(・・・・・・・・)様にだ。

 外見は大きな脚甲だが中に空洞を作ってある。その空洞を一瞬で埋めるように骨を生成、射出することで大きな反動を得て一直線に高速移動する。

同時に籠手の中でも同じように空洞を作成、中で杭を造りだす。所謂パイルバンカーだ。

少女の肩でやるには反動が凄まじいため、肩まで覆う外骨格を創りあげるほどに大きな籠手となっている。

 

(やっぱり、あの個性オカシイよなぁ)

 

 杭を放つ、はまだ分かる。勢いよく創製すれば、水舟自身自分の身体から直接放つことだって可能だ。

だが、それは水流として扱っているからだ。

 

(骨の籠手とはカッコいいけど、どう考えてもあの大きさをあの細腕で扱えるとは考えられない)

 

 まるで、骨自体が動いているみたい(・・・・・・・・・・・・)だと、水舟含めそれを見ていた試験監督全員が思った。

骨の杭が刺さり、そこからさらにロボ内部に骨の創製を繰り返す。

枝分かれしながら中をズタズタにする骨の刃はロボを完膚なきまでに破壊し、内部から露出した骨は近くの建物や地面に刺さり、ロボを固定し破壊したまま直立させた。

これなら、壊れても倒れることは無い。

 

「次いこ」

「オッケー」

 

 文字通り巨大ロボを瞬殺した二人は、次の目標目掛けて走り出す。




 アマルガムの主人公君みたいに下半身や左腕が骨で出来ていないため、腕脚の倍の長さ以上の籠手と脚甲が必要と判断‥‥こういうの好みなのです。
 いまさらですが黒水水舟ちゃんは、アマルガムの黒水影舟くんを元に考え出したキャラです。男のままでもよかったのですが、気づけばロリに‥‥誰得?少なくとも私得!
 実技試験は今回で終わらせるつもりが、思っていた以上に長引いたのでこれで三話とします。‥‥出久君の試験内容は次回にて、の予定。

 ちなみに試験で同じ学校の者同士が会う確率はホント低いというかあり得ない話です、が‥そもそも倍率高くて人数多すぎて会場が5つ以上に分ける必要があるようなところだとどうしても被る学校はあるだろうし、ランダムにしちゃえという作者の勝手な考えです。相性がいい二人が偶然会う事もあれば、その逆もしかり。運も実力のうち、とかなんとか教師陣言いそうだし大丈夫かな?っと思ったのですが、原作を読み直して故意的に会場を分けているらしいことを知ったので黒水は別の学校にしました。
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