歪な英雄   作:無個性者

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入学初日の試練

 雄英高校。ヒーロー科が2クラスしかなく、倍率はそのため毎年300を超える。

そんな難関校に入学した少年少女が、そこにいた。

 

「つ、つつついに‥!」

「はいはい、落ち着こうねー」

 

 これから先の不安や緊張、なにより念願を叶える為の第一歩という事もあって少年、緑谷出久はカチコチのガクブル状態で登校していた。

その隣を歩くのは真っ白な少女、六道紫。彼女は彼女で同じ難関校、それも同じクラスに通えるとなって浮ついた気持ちが抑えられないのだろう。出久の前とはいえ、すでに笑顔だった。

 

「………紫ちゃんは、何も訊かないんだね」

 

 合格したことは中学にも伝わり、必然と幼馴染である爆豪勝己にも話が及んだ。

 

 ――「何でテメェが合格してんだ‥アイツ(・・・)だけならともかく、しかも3位だァ!?」――

 

 そう叫んだ彼の言葉が出久には忘れられなかった。

真っ直ぐで、オールマイトとはまた違う意味での羨望。そんな存在に返せたのは最低限のことだけだった。というか、最低限どころか変に挑発してしまったかもしれない。

 そんなことがあったからこそ、今まで一緒に居てくれる彼女が何も訊ねてこないことに安心しており、どこか不安でもあった。

 

「んー、聞いて欲しいなら聞くよ。でも、出久くんが言わないのには理由があるんだろうなーって思ってさ」

「うん‥‥答えられない、んだけど‥‥」

「なら無理に言わなくてもいいよ」

 

 スキップして出久の前に立つと、彼もあまり見たことがない満面の笑みを浮かべていた。

 

「どんな理由でも、何があったとしても、私は出久くんを信じてる。だから私が言うことは前と一緒、何も変わらない。貴方は絶対素晴らしいヒーローになれるよ。だから、頑張ろ?」

「……うん、ありがとう」

 

 気づけば、震えは収まっていた。

 

 

 

 

 

 1-Aと書かれたクラスへ辿りつくまでの道のりは、中々に長かった。

そもそも雄英自体が広いのに、ヒーロー科は2クラスしかない。初めて来た人は迷っても仕方ないだろう。

 

「出来れば、飯田君や麗日さんとかも一緒だといいんだけど‥」

「実技試験の時に協力した人達だったっけ」

「そうそう、すっごく頼りがいがある人たちで‥あ」

「「あ」」

 

 個性の都合上、体の大きさが変動する人たちへの配慮、バリアフリーの為か、5m以上はある扉を開くと直ぐに彼らを見つけることが出来た。

紫と一緒にのんびり来たためか、自分たちが最後らしい。

 

「緑谷君、試験では世話になったね。改めて礼を言うよ。それと、これからよろしく」

「う、うん。僕も助けられたから、お互い様だよ。よろしく、飯田君」

「みんな無事合格できてよかったねー!わたしもよろしくね、緑谷くん!」

「うん、よ、よろしく」

 

 出久が挨拶をかわす中、紫は一歩下がり出久に隠れるように立っていた。

真面目な人に、明るい人。どちらも彼女とは全く違う人種だと思った。

ヒーローを目指すのだから、悪い人は居ないだろうと理解はしているのだが、もはやこればっかりはどうしようもない。悪癖だと自覚しているのだが‥‥。

 そう反省しつつも中々治そうと動けない彼女を、飯田と麗日が発見する。

 

「ん?そちらの女子は‥‥?」

「もしかしてA組?ハッ!緑谷くんの彼女さんとか!?」

「ヘ!?!?」

 

 麗日の言葉と、大きなその声に反応したA組の生徒の視線が集まるのを感じ、二重の意味で真っ赤になる紫。

 

「ち、ちちちが、いや、ちがくないけど、えとえっと、あ、あぅ‥‥!!」

「お、おちついて紫ちゃん!?」

 

 ――未だ告白すらしていないのに彼女とかそんな違うから否定を、でも先に否定をするとA組であることを否定しているような気が、じゃぁやっぱり取消し、でもそうなると彼女であることを肯定しているようで――。

 

 そんな風に頭が一気に沸騰しかけた彼女を出久が慌てながら落ち着かせようとする。

元の無表情に戻るのに暫しかけつつ、紫はどうにか言葉を返した。

 

「わ、私は出久くんの小学校からの幼馴染で、彼女とかじゃ、ないです‥クラスは、同じA組です」

「そっかー。ごめんね急に変なこと言っちゃって」

「いえ、すいませんでした」

「私、麗日お茶子。今日から同じクラスメイトだね、よろしく!」

「六道紫です。よろしくお願いします、麗日さん‥‥貴女と、そちらの方のことは出久くんから聞いてます。試験で彼がお世話になったそうで」

 

 どうにか平常運転に戻り、麗日と握手を交わしつつ、飯田にも視線を向けた。

 

「出久くんに協力してくれて、ありがとうございます」

「いや、彼の考察に助けられたのはこちらのほうだ‥‥悔しいことに、言われるまでボ‥俺は気付けなかった」

「試験でしたし、しかたないです。大型仮想敵も、ギミックとか0点とか興味を無くすようなことを態々説明していたので、むしろわかる方の方が少ないと思います」

「ならなおの事助けられたのはこちらの方だよ。俺は飯田天哉、よろしく」

「……六道、紫です。よろしくお願いします」

 

 おずおずとあまり接触することがない異性とも握手を交わし、自己紹介を終えた。

 

「入学式の後はガイダンスかな?先生ってどんな人だろ、緊張するね!」

 

 麗日の言葉に賛同しようとしたその時、ふと背後から視線を感じて振り返る。

 

「……」

「……」

 

 一瞬誰もいないと思ったが、地面に何か転がっていた。

寝袋だ‥‥そして、そこに黒髪の男性が寝ている。

 

「出久くん、ふ、不審者‥‥!」

「え? うわ?!」

「なに不審者だと!?」

「え、えぇ!?」

 

 出久の裾を引っ張ってその存在を教えると、気づいた面々が驚いた。

 

「……まぁこんな格好してた俺が悪いか。静かにー、担任の相澤消太(あいざわ しょうた)だ。よろしくね」

 

 ――た、担任!!??――

 

 入学初日にしてA組の心が一つになった瞬間だった。特にうれしくなかった。心を一つにするのがこんなギャグ展開だなんて、と数人が落ち込んだ。

 

「早速だが、体操服着てグラウンドに集合しろ」

「え、入学式は‥?」

「ガイダンスは?」

「ヒーローになるんなら、そんな悠長なことしてられないよ。雄英は〝自由〟な校風が売り文句だ。そして、それは先生側もまた然り。これが俺のやり方なんだよ、入学式だのなんだのより何より、やっておくことがある」

 

 それは、と一拍入れてこれからやることを告げられた。

 

「個性把握テストだ。成績が悪い(見込み無い)奴は除籍するんで、そのつもりで」

「え」

 

 ――えぇぇぇぇぇえええええええええ!?!!?!?――

 

 しれっと放たれた爆弾発言に、A組は二度目の驚愕で内心を共にするのだった。

 

 

 

 

 個性禁止の体力テストは、小学中学とやらされてきたことだが、雄英では違う。

寧ろ個性を使って其れを行い、各自の長所短所を見極める材料にしようということらしい。

 

「まぁ俺にいわせりゃ国の怠慢だがな。個性なんて能力があるのに、未だ平均を作ろうとしてる。合理的じゃない」

 

 人としての平均、普通と呼ばれる基準値を測っておくのは重要なことだが、個性が現れてからはそんな平均だの普通だのとはかけ離れていく人間が出るのは仕方ない事であり、そんな彼らを枠の中に無理に収めようというのは確かに怠慢で傲慢なのかもしれないとクラスの面々も思った。

 

「さて、まずは50m走からだ。張り切って行こうか、諸君」

 

 取りあえず、この学校にそう言った平均だの普通だの常識だのを求めるのは間違いだと理解した面々は従って種目に挑んでいく。

 

「――フルカウル」

 

 試験からまた日数が経って、出久の成長はさらに成った。

いまだ力み過ぎれば許容度(10%)を超してしまうが、意識して集中すればそれ以下を維持、さらに紫との秘密特訓で全身を意識することを覚えたのだ。

 

「緑谷出久、4秒2」

「っ!」

 

 ガッツポーズ。5~6%を維持出来た予測値とほぼ同等である。

紫が小さく拍手しながら、彼女の番になる。

 

「トリガー、オン」

 

 創り出した骨の脚甲から衝撃が放たれ、それを推力にして加速。

片足ずつで行うことで減速せずに50mを跳ぶ(・・)

 

「六道紫、3秒7」

 

 周りが驚くなか、出久は微笑んで見守っていた。

紫の籠手や脚甲、鎧を見て全身に力を纏うフルカウルを思いついた出久からすると、もっといけるんじゃないか、と色々脳内で彼女の力の活用法を、彼女の為(・・・・)に考え込んでしまう。

実を言えば、彼女の籠手や脚甲を考え付いたのは出久なのである。鎧のように纏うことは紫が自衛のために度々行っていたが、それを見た出久がこうしたらどうだろうか、と話をして改良して行った結果が大型の籠手と脚甲だ。

 

(……無茶しようとしたら消す(・・)つもりだったが、問題ないか)

 

 試験で右腕をバッキバキにした出久を気にかけていた相澤。

彼の個性は他者の個性の打消しであり、また大怪我をするようなら止めるつもりだったのだ。

 

(にしても、流石というべきか)

 

 元々2位だった紫。その後の種目でもほぼほぼトップを取っていく。

握力は骨の籠手で握り潰し、立ち幅跳びは脚甲の衝撃波の同時使用でぶっ飛び、反復横跳びも脚甲の横から衝撃波を交互に放つことで記録を伸ばした。

持久走や上体起こしに至っては全身に纏った骨の鎧によってほぼ全自動。長座体前屈も、骨を操るだけあって柔らかい上に骨を手から出し続けることによって記録を伸ばしていた。途中で勢い余って計測器が離れてしまって残念がっていたが、相澤はキチンと計測をしていた。

そうして最後のボール投げに至っては、籠手の中にボールを飲み込み、撃ち出すという荒業までおこなっていた。

 

(やっぱ創造系はイイな。骨限定な分八百万の奴よりよっぽど速いのも強みか……気になるのは、代償(・・)がなにかってくらいか)

 

 あれだけ骨の創造を繰り返している割には疲れている様子も何かを消費している様子もない。そのことが少し引っかかりながらも、種目は進んだ。

 そして最後のボール投げまでが終了したところで、一人の生徒が暴走した。

 

「テメェ、どーいうことだこら!ワケを言えデクテメェ!!」

「か、カッちゃん!?」

 

 掌の爆破で加速した爆豪が出久に迫る。

彼からすれば、身体を鍛えていたとはいえ、つい最近まで無個性だった幼馴染が急に個性を得て、しかもその力が自分に負けずとも劣っていないのだ。

それは気になるだろうし、プライドの高い彼からすると道端の石ころが行き成り壁になったような錯覚を覚えて気に入らないのだろう。

 

「たく、あまり個性使わすなよ……俺はドライアイなんだ!」

(凄い個性なのに、もったいない‥‥!!)

 

 そんな暴走した爆豪を自身の捕縛武器で捕縛し、彼の個性を視て打ち消した。

出久がそんな彼のセリフを聞いて失礼なことを思ったが、ギリギリで口から出すのを我慢する。昔からブツブツと考えを呟いてしまう癖があり、少しずつではあるが紫に指摘され治ってきているのだ。

 

「ハァ。まぁパパッと結果発表な…」

 

 そう言って宙に投影された結果表。

1位 六道紫

2位 八百万百

3位 轟焦凍

4位 爆豪勝己

5位 緑谷出久

 

「や、やったぁ~~」

「よかったね」

「うん!あ、紫ちゃんも1位おめでとう!」

「んー私は∞出せなかったのがなぁ」

「何言ってる、∞なら二つ取っただろう」

 

 自分の名前を見つけ、思わず号泣する出久と喜び合っていると、先生からそんな言葉を貰った。

だが当の本人は相澤先生の言葉に疑問符を浮かべる。はて、何だろうか。

 

「まず持久走だ。八百万は電動二輪だったが、お前の場合全自動で特に疲れている様子もなかったからな。時間の都合上切り上げさせたが、時間無制限ならいつまでも走れただろ。次に長座体前屈。途中で計測が離れて言って残念がっていたが、あの様子なら延々と出し続けられたんだろ?」

 

 なるほどーと納得して頷きいていると、相澤は気になる除籍の件についてついでのようにサラッと言った。

 

「あぁそれと見込みまったくなしってわけじゃなかったから、アレ(除籍)無しな。はい、今日はこれで終了、解散ー」

 

 その言葉に最下位だった峰田実少年が「おっしゃぁぁぁぁあぁああああああああ!!!!」と全身全霊の雄叫びをあげていた。

 

 こうして、入学式の無い入学初日の日程が終了した。




 結果紫1位とっちゃいましたが‥‥前提として人間の中に怪物が混ざって身体測定してるようなモノなんですよね、これ。寧ろ1位とって当たり前なのに入試2位っていうほうがおかしいのかも。‥もしくは水舟ちゃんがおかしい?

 何はともあれねむい・・3時間後に仕事、だと‥‥よし、コーヒーだ!
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