“魔星”と“悪魔払い”を継ぐ者   作:ZERO(ゼロ)

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mission:01“Devil Hunter”

「―――悪いが今日はもう店仕舞いだ」

 

一方的に受話器の向こうの相手に吐き捨てると電話を切る青年。

受話器からは怒声、いや罵声に近いであろう怒鳴り声の様なものが聞こえていたがそんな事は関係ない。

 

「チッ―――下らねぇ小競り合いの手助けなんて仕事寄越すんじゃねぇよ」

 

依頼の内容は『チンピラ達の縄張り争いの手助け』などと言う退屈で下らないものだ。

何処で噂を聞き付けたのか知らないが、金さえ払えば依頼を受けて貰えるなどと勝手に勘違いしてるのだろう。

随分と馬鹿にされたものだ―――まあこの便利屋の“本来の役目”を知る者など殆ど居ないのだから仕方ないと言えば仕方ないのだが。

 

便利屋“Devil Must Die(悪魔死すべし)”。

遥か昔、それこそ神やら悪魔やらが領土争いの戦争を繰り広げていた頃から存在し続ける店だ。

まあその頃は店主も屋号も違っていたし、今とは比べ物にならない程に色々な意味で有名な店だったが。

 

『その名を聞けば天使も悪魔も泣いて逃げ出す』

 

既に古き時代の存在達も少なくなってしまった昨今では知る者も少ないだろう。

しかし現在でも『お伽噺』という形で伝わり、泣いている子供に聞かせれば忽ち泣き止むとまで言われる。

人に仇為す神々や魔王を悉く狩り尽し、虐げられる人々を護り続ける魔人―――本人はそれを否定するだろうが、まさしくその人物は“英雄”と呼んで間違いは無い筈だ。

 

そんなかつての店主から店と闘う為の術を全て受け継いだのが今の店主の青年である。

気紛れだったとはいえ前の店主に拾われた青年はその後を継ぎ、人に仇為す存在を狩る『狩人』となった。

―――しかし悪魔が統治する町で昔から存在してるとは言え、その悪魔に喧嘩を売るような屋号を付けるのもどうかとは思うのだが。

 

 

「ま、暇だから武器の手入れでもするか」

 

呟くと青年はテーブルの上に大型の変わった拳銃を置くと手早く分解を始める。

これも元々は前任の店主のツテで紹介されたガンスミスに頼んで作って貰った代物だ。

『自分の一部に感じるまで使い込め』―――それも師であり、養父のような存在だった前店主から教えられた言葉であり、青年はそれを忠実に守っていた。

一通りの整備や手入れを終わらせ、暇になった青年は椅子に腰かけると瞬く間に鼾を掻き始める。

 

だがその眠りは扉の開く音によって直ぐに覚める事になった―――

 

「オズさん、起きて下さい!! お仕事の依頼ですよ~!!」

 

声と共に肩を揺すられて起こされる青年―――名を『オズ』と言うらしい。

荒っぽい起こされ方は毎度の事なのだろう、別に気にする様子もなくオズは眼を開く。

開いた視界には可愛らしい白いドレスを着た金髪の少女がおり、少し困った様子で彼を見つめていた。

 

「―――もう起きてる、何の依頼だアーシア?」

 

少女の名は『アーシア』と言うようだ。

こんな場所には似付かわしくない可憐な少女だが、こう見えても彼女はオズの仕事のパートナーなのだ。

彼女の見つけて来る仕事は『迷い人探し』や『手伝い』と言った表の仕事から『悪魔狩り』『天使狩り』と言った裏の仕事まで多岐に渡る。

彼女の様子から察するに、仕事の内容は急ぎの仕事のようだが……?

 

「おはようございます、オズさん。

今回の依頼は此処、駒王町に秘密裏に侵入して何かを画策している『鴉』の討伐ですね。

本来は他の人で何とかする心算だったみたいですが、その組織に凄腕の『はぐれ悪魔祓い』が所属した事で芳しくないみたいです」

 

オズの『Devil Must Die』には古くから付き合いの長い依頼主がいる。

所謂、訳アリの仕事を斡旋してくれる人物だ―――いつもは自分のお抱えの賞金稼ぎ達で何とかしているのだが、今回は分が悪かったのだろう。

そんな時には基本的にアーシアを介してオズに依頼をしてくるのが通例となっているのだった。

 

「標的はどんな連中だ?」

「えっと、これですね―――はい、オズさんどうぞ」

 

始末する標的の情報が書かれた書類を渡すアーシア。

ペラペラとページを捲りながら情報を頭に叩き込むオズ、やがて読み終わると書類をアーシアに返す。

するとアーシアは書類に火を点けると焼き捨てた……依頼書があれば事足りるしそもそも一々情報を残す必要など無い、頭に叩き込めば十分だ。

整備を終わらせた拳銃を手に、黒を基調としたロングコートを羽織ると背には不気味な装飾の施された大剣を背負う。

最後にサングラスを掛け、片手に鞘に納められた日本刀のようなものを持った。

 

「アーシア、この程度の連中に人数を割く必要ないから留守を頼む」

「はい、分かりました!! 大丈夫でしょうけど必要なら直ぐに呼んで下さいね」

 

手を振るアーシアを背に店を出るオズ。

『依頼を頼まれたからには迅速に』―――それが彼の理念であり、依頼者から重宝される理由だ。

事実、彼は今迄多くの悪魔や天使を確実に狩って来た実績があるのだから。

 

 

★★★★★

 

 

「―――ヒデェもんだな」

 

“Devil Must Die”を出て少し歩いた後、オズの眼に入って来た光景―――

一面がどす黒い真紅の液体に染まり、真ん中に倒れる一人の人物……どうやら学生ほどの年頃だろう、絶望に満ちた苦悶の表情で事切れていた。

 

身体の中心にぽっかりと開く孔、これが致命傷のようだ。

傷口から感じる気配は神聖なものと歪んだものとが入り混じり、理解出来る者には気分を悪くさせる。

遺体の硬直具合や周囲に撒き散らされた血液の乾き具合から死んで碌に時間も経っては居ないだろう―――

 

「チッ……この気配はクソ鴉か、まだ遠くには行ってねぇな。

しかし本当にこの町の『統治者』は何やってやがる、テメェの仕切る町に侵入者が居ても気付かねぇ程ボンクラなのか?」

 

ボヤキながら携帯を懐から出し、何処かに電話するオズ。

通話相手に内容を語り終わると携帯を仕舞い込み、再び何処かへと向かって歩き出す。

この惨状を引き起こした“鴉”の気配を辿り、依頼された仕事を終わらせる為だ……予想した通り、あまり遠くない場所で彼はターゲットの内の一人を見つける事になった。

 

「―――誰よアンタ? 私に何か用かしら?」

 

呑気にそんな言葉を吐く一人の女、容姿から見るに『美人』と言った分類に入る存在だろう。

しかし彼女がオズを見る目は何処までも冷めている、見ようによっては汚物を見下ろしているかのように。

彼女がオズの言う“鴉の集団”の内の一匹、それも群れの頭的な存在なのだが―――冷めた目を向けられているオズはさして彼女の身分になど興味なく懐から依頼書を出すと内容を確認する。

 

「堕天使レイナーレで間違いねぇな?」

 

そう、オズにとっては彼女が何だろうが興味など微塵も感じる事は無い。

極端なまでの悪魔嫌いや天使嫌いと言う訳ではないが、今から死ぬ存在に興味など持った所で価値はあるまい。

一方、レイナーレと呼ばれた女の方はオズが人間だと言う事に気付いたのだろう……ますます蔑んだかのような目で彼を見つめると嘲笑いながら言葉を返す。

 

「残念だけど私、貴方のような知り合いは居ない筈だけど―――まあ良いわ、別に。

それより貴方、この惨状を見ても取り乱さない所を見ると『一般人』じゃないみたいだけど……どうやら死にたいって事よね?」

 

蠱惑的な表情でオズを見つめるレイナーレ。

容姿端麗な風貌が逆に恐怖を感じさせる……明らかな殺意、目の前の存在に対する嘲り、自らよりも劣る存在への蔑み、それら感情を隠す心算も無いのだろう。

 

だがあくまでもオズは向けられる感情に何を感じる事も無い。

唯淡々と依頼書の内容を確認し、懐に戻すと実に退屈そうに口を開いた。

 

「何だ、態々俺に依頼する位だからどれ程のものかと思ったら“雑魚の親玉”ってだけかよ。

害虫駆除なら自分の所の賞金稼ぎに任せれば十分だろうに―――エンツォのオッサンもヤキが回ったか?

まあ良いか、どうせ生きてても価値のねぇ死体に群がるハグレ鴉共だろ? これ以上下らねぇ被害が広がる前にまとめて駆除してやるから有難く思え、クソガラス」

 

その台詞に先程までの媚びた様子は何処へやら、醜く表情を歪めながらオズを睨むレイナーレ。

怒り心頭なのは火を見るより明らかだが、更にオズはお茶の間には見せられない中指を立てたポーズをしながら

水を得た魚の如く相手を挑発する。

どうやら相手を挑発するのが得意なのだろう、実に活き活きとしていた。

 

「そこまで挑発して楽に死ねるなんて思わない事ね、望むとおりに殺してあげるわ。

―――だけど私は寛大だから、もしそこに土下座して助けを請うなら奴隷として飼ってあげるわよ?」

 

レイナーレの嘲笑を含んだ言葉にオズは肩を竦める。

大方、何も出来ない一丁前に口だけ達者の人間風情が殺される前に喚いているだけだとでも思っているのだろう。

 

この阿呆な女は一体何をトチ狂った事を言っているのだろうか? 己の器と言う奴を知らないのだろうか?

まあ知る訳が無いだろう……そもそもの話、相手の力量を理解していればこの様な下らない脅し文句など吐かない筈だ。

 

感じる気配から察するに、この目の前の愚かな女は“鴉の軍勢”の末端付近と言った所か?

良く居るタイプの馬鹿だ―――自分が人間ではない故に、自分が人を殺せる故に、そんな理由で勘違いしている雑魚。

こう言う馬鹿を斉は今まで何十、何百、何千相手にしてきたか数えても限が無い。

 

だからこそ、こう言うタイプの馬鹿に対してオズが最後に言う言葉は決まっている―――

 

「馬鹿かテメェ? 下らねぇ台詞吐いてる暇があったら傷一つでも付けてみろ。

それとも何か? 最近のクソ以下のクズカラスは喋って戦うのか? そりゃ随分とお目出度い考え方だな。

だったら尻尾撒いてさっさと首を差し出せ、そうすれば気が向いたら“楽に”殺してやるよ」

 

瞬間、レイナーレの表情が更に醜く歪む。

相当な怒りを込めてその手に光り輝く槍を作り出すと、有無も言わさずオズに向かって投擲したのだ。

空を切りながら凄まじい速度で光の槍は獲物に向かって飛来し、その切っ先は簡単に心臓を射抜くだろう。

事実、その目で追うには早い速度で飛ぶ槍はオズの肉体を簡単に貫くかと思われた。

 

だが、槍が獲物の心臓を射抜く事は無い。

何故ならレイナーレの作り出した光の槍は呆気無くオズの手に握られていたのだから。

 

「なっ!? う、嘘……そ、そんな馬鹿な!? す、素手で私の槍を……!?」

 

驚愕の表情に歪むレイナーレを尻目に実に退屈そうな表情をするオズ。

拍子抜けである―――所詮は鴉の末端だとは思っていたが、まさかこれ程までに雑魚だとは。

しかも相手は何を血迷ったのか手加減までしている、退屈を通り越して不愉快である。

 

「……喚くんじゃねぇよ、クソ女。

つうか何の心算だ、あぁ? 手加減してんのか? それともこれで本気なのか?

どっちにしろテメェ、この程度で俺を『殺す』なんて寝言を吐いてたのかよ―――俺も嘗められたもんだな」

 

―――バギンッ。

乾いた何かが砕ける音が鳴り響く……それは本来、殺傷力以外に質量を持たない筈の光の槍が圧し潰された音。

オズの掌には一切の傷すら付いておらず、無傷と言う事実が更に得体の知れない彼の強さを助長させる。

光の槍を握った手、いや腕そのものを包むように篭手が装着されていたがこれが彼の掌を守ったのだろうか?

 

「神器(セイクリッド・ギア)……ッ!? まさか神器を持ってたなんてね、だから私の攻撃を簡単に……!!」

 

忌々しそうにオズが装着している籠手に目を向けるレイナーレ。

どうやら彼女はオズの持つこの籠手を神の作り出したシステムの一部だと勘違いしているらしい。

お目出度い頭だ、もしくはそう言った規格外の存在の所為にしなければ目の前で起こった事を認められないのだろう。

 

「あんなクソッタレ共の作った餓鬼の玩具と一緒にすんな。

まあ良い、テメェの様な雑魚以下の蛆虫と相手をしてても退屈だ―――とっとと終わらせてやるよ、死ね」

 

上位の存在ならば神をも屠れるとされる存在を『餓鬼の玩具』などと吐き捨てるオズ。

既に最初の一撃で不快感こそあれ興味は失せたのだろう、事もあろうか彼女に向かって無防備に歩き出したのだ……プライドの高い堕天使である彼女にとってこの行為がどれ程に屈辱となる事か。

 

「ふ、ふざけるんじゃないわよ人間が!!! 殺す、殺してやる、絶対に殺してやる!!!!」

 

持てる全力を自らの掌に込めると、先程よりも巨大な光の槍か形成される。

今回は前の事を考えて何本も何本もだ、数で攻める事で確実に目の前の己を侮辱した人間を滅そうと思っているのだろう。

この槍は人間にとっては有害以上の何ものでもない、例え正体不明の神器を持っているとしても数が多ければ避けきれまい。

 

侮辱による怒りのままに、全力で全ての槍を無防備に歩くオズへと放つ。

空を切りながら迫る幾重もの光の槍、これならば避けられまいトレイナーレは考えた。

事実、迫ってくる光の槍にオズは唯、興味も無さそうに歩を進めるだけだ。

 

だが、そもそも気を張る必要など無い。

本当に度し難い愚者である、侮辱でも屈辱であっても相手との差を理解出来て逃げる事が出来る“臆病者”こそが戦場では生き残れる。

オズが逃がすか逃がさないかは別としても、相手の力量を理解出来る輩ならもう少しは長生き出来ただろうに。

 

理解するべきだった、何故オズが光の槍を掴んで傷一つ付かなかったのか。

警戒するべきであった、如何して身の危険が迫っているというのにオズは無防備に歩むだけなのか。

そして考えるべきであった、多くの者が求める神の創り出した代物を『餓鬼の玩具』などと吐き捨てた理由を。

無知とは罪であり、無謀とは自傷に等しい―――それすらも解らない雑魚に価値など見出せないだろう。

 

“バチッ!!”―――何かが弾け飛ぶ様な音が響く。

それと共にオズに向かっていた幾重の光の槍は破裂するかの如くに小さく光り輝くと、触れる前に消滅した。

 

「う、うううう、うそ、嘘よ!? そんな筈無い、そんな筈ないわ!!?

わ、私が、私が、全力で魔力を込めた槍が……なんで、何で傷一つ付けられないで消滅するのよぉぉぉ!?!?」

 

あまりの事に絶叫するレイナーレ。

当然だろう……彼女は全力で、塵一つ残さずに、目の前の屈辱を与えた人物を消滅させようとした筈だ。

なのに蓋を開けてみれば掠り傷どころか触れもしないで光の槍が破散したのだ、困惑しない方が不自然だろう。

 

「……さて、それで“御遊戯”は終わりか?」

「ヒ……ヒイッ!!?!?」

 

オズの言葉がレイナーレの耳に聞こえた瞬間、既に彼は目の前に居た。

かなり離れていた距離を一瞬で縮めたとでも言うのか? そんな事を脳裏に浮かべたと同時に気付けば彼女は壁に叩きつけられる。

腹に感じる焼けた火箸を押し付けられたかの様な感覚、逆流してくる吐瀉物……どうやら殴られて叩き付けられたのだ。

 

「うっ……ぐっ……げっ、げえぇぇぇぇぇぇ!!?!?」

 

痛みに悶えるレイナーレだが気絶する事は許されない。

何故なら腹に受けた激痛より、己の手首が無くなっている事の方が衝撃だろう。

―――それに気付いたのは掌の無くなった腕から血が噴き出したのを垣間見てからだったが。

 

「ぎっ、ギャア嗚呼ああああああぁぁぁ!!? わ、私の腕、うでぇぇぇぇぇぇ!!!?!?」

「……五月蠅ぇな、黙れ」

 

感情も無く、泣き叫ぶレイナーレに憐憫の情を持つ訳でもなく。

至極面倒そうに言葉を紡ぎ出したオズ、その手には禍々しいオーラを放つ日本刀が握られていた。

器用に親指で刀の鍔を押さえて鞘に納める―――目にも見えぬ速さで抜刀し、レイナーレの手を切り落としたと言う事だろう。

 

冗談ではない、桁が違い過ぎる。

のんびりと懐を漁り、シガレットケースから煙草を咥えて火を灯すオズ。

捕食者に追い詰められた獲物、まさにそんな揶揄が今のレイナーレには相応しい。

痛みを堪え、必死に思考を巡らすが答えなど出る筈も無い……既にチェックメイトだ。

 

「―――どんな気分だ?」

 

感情を込めない目でレイナーレを見下ろすオズが不意に呟く。

恐怖に染まったレイナーレは言葉を絞りだそうとするが、喉から聞こえるのは枯れた呼吸音のみ。

全身から汗は吹き出し、痛みで涙が溢れ出すが―――そんな事はどうでも良い。

 

「あそこで死んでるガキも今のお前と同じ心境だったろうな。

死にたくなかったろうさ、まだ生きていたかったろうさ―――もう何を考えてたのか聞く事は出来ねぇが。

だからその無念の百分の一でも晴らしてやるのが依頼を課せられた奴の責任って奴だろ」

 

淡々と紡がれる言葉に恐怖が抑えきれないレイナーレ。

こうなれば恥も名分も無い、助かる為なら今の彼女は相手の靴すら舐めるだろう。

 

「た、助けて……お願いだから、助けて下さいぃぃぃ!!!

わ、私は悪くない、私は唯上から命令されただけなの、神器を持つ人間は危険だから殺せって!!!

もうしません、一緒に来た奴らの情報も全て白状します―――だから、だから命だけはぁぁぁ!!!」

 

この後にを及んでまだ悪足掻きをするレイナーレ。

自分が悪いのではなく悪いのは自分に命令を下した上の連中、更には自分の仲間すら売るような下劣さ。

だがそれ程に彼女はパニックに陥っていたのだ……唯助かりたいという一心で聞いても居ない仲間の居場所をベラベラと語り出す彼女の姿をオズは唯静かに見つめていた。

 

やがて語る事も無くなり、媚びる様にオズを見つめるレイナーレ。

彼女に対してオズは小さく笑顔を浮かべる、見ようによっては人懐っこくも見える笑顔を見せた事にレイナーレは救われたと安堵の表情を浮かべた―――

 

「心配すんなよ、お前の仲間も同じ所に送ってやる―――安心して死ね」

 

オズの『死刑宣告』を受け、絶望に歪むレイナーレ。

次の瞬間、彼女の首は宙に浮き―――放たれた銃弾によって跡形もなく消し飛んだのであった。

 

 

 

 

 

良くも悪くも悪魔によって統治された現世。

かつての如き規模はなくとも、水面下で冷戦を続ける天使と悪魔。

其処に天使から堕ちた堕天使達も介入し、一触即発の状況となる現代。

その現代において人間の可能性を信じ、戦い続ける者達は確かに存在していた。

 

―――神々も、悪魔も、堕天使も知るまい。

力を有し、己が欲のままに生き、弱き者を虐げる存在すら狩り尽す者が居る事を。

そして彼らは理解出来まい、その悪鬼羅刹の如き力に魅入られる理由を。

 

この道行きに存在するは果たして救済か、破滅か―――

 

 

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