落ち着け、先ずは鋏を下ろそうか。   作:赤茄子 秋

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閑話 謎の男

これはまだ先の話である。

季節は冬、場所は北岡法律事務所の主人である北岡秀一の家であり、彼は仮面ライダーゾルダでもある。

最も優秀な弁護士と言われている北岡。この屋敷にはそれにふさわしい僅かな光も全て反射させる程に手入れされた大理石でできた床、一つ見るだけで売れば並の人は2、3年は遊んで暮らせる豪華な装飾品、そしてそれらを越えてこの屋敷の主人公巨大な黒いデスクがあり、そこに彼は一人の男を対面にして座っている。

 

だが、今は仕事の話をしに来た…いや、正確には弁護士の仕事を頼まれに来たのでは無い。

 

「お前はあの男に手を出すつもりか?やめとけやめとけ、浅倉じゃあるまいし。死にたいの?」

 

彼の名前は佐野満、大企業の御曹司であったが、勘当され、今は北岡秀一に仮面ライダーインペラーとして自分を売り込んでいた。

 

「あれ、もしかして北岡さん…ビビってるんですか?それなら俺がバシッと倒してあげますよ!」

 

もう何度目かわからない自己アピール、それに北岡もうんざりし始めていた。特に腹が立ったのは『自分がいれば楽にライダーの力を使えてお買い得ですよ?』だと言った事だ。ライダーバトルはそんなに甘いものじゃない。そして北岡の頭の中には一人の男が思い浮かぶ。

 

「ビビってるよ。俺は、あいつには勝てない。どう転んでもだ。」

 

こんな北岡は隣にいる由良吾郎でも初めてではない。だが、共通してるのが全てあの男と関連してるのはわかっていた。

 

「いやぁ、でも北岡さんでしょ?余裕ですよ。」

 

突然弱気になった北岡を煽てて少しでも機嫌を直そうとする佐野。だが、それは逆効果であった。北岡は「ふっふっふっ…」と不気味に笑い始めたのだ。

 

「…少しだけ昔の話をしよう。」

 

北岡が最初に絞り出したのはその言葉だけであった。なのに、重たい、とても重いのだ。まるで突如として巨大な岩石に押し潰されてしまうように感じるほど、空気が重くなった。まるでここだけ氷河期になったように、空気が冷えきっていた。

 

「俺があるライダーと最初に戦った時の事だ。一言で言うならば、実力…いや、次元が違う存在と思わされたよ。」

 

「次元って、そんな大げさな…」

 

「勝てる戦いだと思ってたんだ。だが、次元が違えばそこに存在する差すら埋める気になれなかったよ。」

 

北岡の弱音に、佐野はどう反応すればいいかわからなかった。いつもの傲慢で自信家なあのスーパー弁護士はどこに行ったのか?今でもこれがドッキリと言われても信じられるだろう。それだけ、落ち込んでいるのだ。

 

「…そんなにですか?」

 

「あぁ。」と頷くと、そのまま話を続ける。佐野はこれを聞いて、驚くのは早すぎたと悟った。

 

「あの時は何をされたかわかった時にはっきりしたよ。こいつはヤバい、立ち向かうのが間違いだ!ってね。あの浅倉を片手だけで倒し、俺や浅倉、秋山を一撃で吹き飛ばした13人目のライダーを倒し、ライダー12人を相手にバイクと飛び道具だけで全員を簡単に戦闘不能にした奴だ。優しい先輩として忠告をしてやる。そいつとだけは絶対に戦うな、勝ち目なんてないぞ。」

 

「そんな…まさか。」

 

どれも眉唾物である。どれも嘘としか思えない。これをやれるなんてのはあり得ないだろう。全て一人のライダーの成した事だ。北岡秀一がここまで怖じ気づいているのは、勘違いか間違いじゃないかと。薬でもきめてるんじゃないかと。

 

「教えてやる。これは全て事実だ。他のライダーに聞いても構わない。どいつからも同じだろうがね。」

 

そして、北岡は重かった頭をゆっくりと上げて、捻り出すように、言った。

 

「仮面ライダーシザース 須藤雅史とは聖人であり、悪魔のような男だ。」

 

 

 




追記

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