「あの…まっさん?」
ここは普段なら警察署の中でも人の通りが少ない3階の踊り場、そこに急に呼び出された山下鏡花は戸惑っていた。
「山下、さっきの男は誰だ?」
須藤雅史、彼は彼女の先輩刑事であり、年は1つしか変わらないが学年で言えば2つ違うこの須藤の顔を見るのは初めてだった。
何か覚悟を決めた男のような鋭く雄々しい顔を。
「いや…その…今回の取材で。」
世間でいう壁ドンを須藤にされた状況で、心の準備ができてない彼女はこの状況からの脱出の為に少しだけ左にずれようとすると。
「今回の取材でか、なるほど。それで、彼との関係は?」
逆の空いてる手でその退路は断たれてしまう。彼女は須藤は頼りになる先輩と認識していた。あくまでも先輩、そこには男女の関係は無かった、そして考える事も無かったのだが…須藤の顔をこの至近距離で見てしまい、少しだけドキリとしてしまっていた。
「なっ、何でも無いです…別に何の関係も無いです、今の私はフリーです。なので…その…」
そして、男との関係の他にも口からポロポロ溢れてるのに本人は気づいてない。
「…そうか、わかった。次に取材があったときには、必ず俺も呼んでくれ。」
「は…はぃ…。」
そのか弱く直ぐに消えてしまいそうな声を聞いてから、山下はやっと解放された。
「…マジか。」
須藤雅史は13人の仮面ライダーの一人だ。
当然ながら、他にもライダーは居る。
中でも特に彼がコンタクトを取りたいライダーが居る。
「(城戸真司…だよな?)」
城戸真司。仮面ライダー龍騎の主人公であり、強力なモンスターであるドラグレッダーと契約したライダーである。どこかのライダーの契約モンスターの3倍以上の初期ステータスをもったこのモンスターは本当に強い。
そして、主人公である彼はライダー同士の戦いを止めるために、人をモンスターから守る為だけに戦う。
つまり、今の須藤にとって一番手っ取り早いかつ安全な同盟を組める相手なのだ。
「(つまり…山下の取材相手ってOREジャーナルかよ!)」
【Open Resource Evolution ジャーナル】
この世界では、原作の2002年ではなく、その15年後なのでちゃんとスマホが使われている。
なのでここではLINE等と提携してるモバイルネットニュースサービスを行う小さな会社だ。
これは須藤が前もって調べたので、最低限の情報は持っている。
調べた理由は簡単な理由だ。
城戸真司、この作品の主人公の職業はOREジャーナルの新人ジャーナリストだからだ。
ライダーになるきっかけもジャーナリストとして調べてる最中にデッキを拾ったからだ。
カードは拾った、どこかの蟹の主人公でもそうだった。
なのに、同じ蟹の須藤には未来はあるのだろうか?
【紙屑の蟹】じゃなくて【星屑の龍】とかと契約したかったと切実に思う。
「山下、少し話がある。来てくれ。(この期を逃せば…俺は、生き残れない。)」
「え?あっはい…わかりました。」
4月20日
とある喫茶店には、いつも通りの格好をした須藤と山下、そして二人の普段なら関係を持たない者達が居た。
コーヒーをお互いに頼み、しばらくすると全員にブラックのコーヒーが運ばれる。
なぜか、一人だけそれに納得してない者も居るのだが。
「須藤雅史さん、今回は態々御時間をとらせて頂き、ありがとうございます。OREジャーナリストの桃井令子です。」
「城戸真司っす、よろしくお願いしまっす。」
一人は美形の女ジャーナリスト、かなり若いがジャーナリストとして経験が積まれていると覇気でわかる。
対して、もう一人の青年のジャーナリストは新人のようであり、若干緊張してるのが見てとれる。
彼こそが、この物語の本来の主人公、仮面ライダー龍騎なのだが。
「気にしないでください。こちらも我々警察以外の観点から、新しい発見があるかもしれませから。」
そういうと、お互いに名刺を交換する。山下は元々交換していたので須藤だけだ。
「そう言って頂けて幸いです。では…先ずはこちらを御覧になって下さい。」
そう言って見せるのはタブレットの動画であり、どうやら監視カメラの動画のようだ。
特にモンスターが人を襲うスプラッターなシーンをも無く、普通に歩行者が行き交う姿が映されている。
「…どこかおかしい所がありましたか?」
「こちらの人物を御覧ください。」
そう言って新しいタブレットを出し、次に見せたのは先程の映像とは同じだが、別の角度から映された映像であった。
だが、一部死角が存在する以外は不明な点は見当たらなかった。
見慣れたこの蟹を見るまでは。
「…(おいボルキャンサー、そこで何をしてる。)」
この手の監視カメラの映像には下に日時が書かれている。どうやら須藤との契約前の時だ。
幸いな事に、後輩の山下とジャーナリストの桃井、そして主人公には見えないようだ。 見えない振りをしてる可能性も…いや、城戸真司は良くも悪くも誠実であり、真っ直ぐだ。
つまり、城戸真司はまだデッキを拾ってないのだろう。
ミラーワールドを何かしらで認識をしなければ、モンスターはカメラ越しでも見えないのかもしれない。
「…人が消えた?」
「はい、突然です。別の世界に行ってしまったように。」
最初に見た映像を①、次に見たのを②としよう。
画像を比較して貰う、①の動画で赤いパーカーを着ていた男が②の動画の監視カメラの僅かな死角の間に消えてしまったのだ。
周りに通行人は居ない、これでは目撃証言はあがらないだろう。
他にも動画②の動画に居た若いOLが①の動画では消えている。須藤は確信する。
「なるほど、神隠ですか。(間違い無く、あの蟹が食ったな…)」
神隠しならぬ蟹隠しをしたボルキャンサーだが、三人ほど食べ終わると別のポイントに移動した。
「うーん…ん?(…あれ?)」
ここで、須藤は不味い事に気づく。
「(…これライダーになった時に主人公に勘違いされないかな?いやいや…襲わせてないよ?ただ、俺の契約前に食ってるだけで、今の俺は人を食うな!って命令してるよ?その代わり身を粉にしてモンスターを狩ってるんだよ!?)」
「どうかなさいましたか?」
「いえ…この映像を見ただけでは分かりませんね。誘拐事件だとするならば、この近くからどこかへ繋がる隠し通路でもあるんですかね。(てか、早くない?OREジャーナル早くない?ミラーワールド判明したの48話とかそこら辺じゃなかった?)」
仮面ライダー龍騎は全50話の話であり、OREジャーナルの桃井が最後に真相を解明したのだが…今の時代はネットが広く繋がれている。だが、行き過ぎれば神崎士郎に消される。
それだけは注意しなければならないのだが、目の前の人物には何を言っても無駄なんだろう。
桃井令子は真実を追い求めるジャーナリストの鑑のような人物なのだから。
「なるほど…それでは、次は…」
「そうですね…これは…」
この後も須藤にとって新しい情報も無く、OREジャーナルにとっても新しい情報は無かった。
Q.次回から本編ですか?
A.最初の導入は終わったので、そうなりますね。