落ち着け、先ずは鋏を下ろそうか。   作:赤茄子 秋

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10話 落ち着け、まだ慌てるような時間じゃない。

4月 3日

 

今日からある意味で新しい俺のスタートになってしまった。

とりあえず、俺は頑張って生き残りたい。

 

4月 5日

 

契約した俺の相棒…とはまだ呼びたくないが、ボルキャンサーが役に立たない。本当にやくだたない。

モンスターを倒すだけで、毎回ボロボロだ…明日からはバイクの運転の練習をしようかな…。

 

4月10日

 

ふざっけんなよ!?本当にふざけんなよ!?ただでさえ弱いんだよ!?バグとかじゃないのか!?神崎早くメンテナンスしろよぉぉぉぉぉぉ!!

 

…落ち着こう。今日から俺は、盾とバイクで戦うんだ。

 

4月15日

 

バイクの運転技術が上手くなってきた。

 

けど、モンスターがバンバン避ける。

 

不意討ちとかしないと殆ど当たらない。

 

…俺は、生き残れる気がしない。

 

 

 

4月18日

 

後輩の取材相手がまさかのあのOREジャーナルだった!!

最近は体も心もボロボロだったが、これで安定してモンスターを狩れるかもしれない!!

 

 

 

4月20日

 

なんとか主人公とコンタクトを取るのに成功した、これでなんとか生き残れるといいのだが…そういえば、城戸君って、どこでデッキを拾ってたっけ…。

あの膨大な行方不明者のリストからみつかるかなぁ…。

 

4月21日

 

色々あったが、城戸君の信頼感が半端ない。やめてくれ、俺はそんな聖人君子でもなければ正義感が溢れる主人公でもないんだ。ただの打算的な命が惜しい人間なんだ。全部君の言葉なんだよ、丸パクリなんだ。

だから、その目で俺を見ないでくれ…。

 

4月22日

 

どうして、こうなってしまったのか。

 

 

 

 

??月??日

 

俺はどこで道を踏み外したかはわからない。

 

気づいたらこうなっていたとしか言えない。

 

何で俺は、近づいただけで殺されるみたいな危険人物みたいになっているのだろうか。

 

え?ライダー12人を相手した?知らねぇよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「多すぎるわ…。」

 

須藤は城戸真司がどこでデッキを拾うか、捜査資料から探していた。

結果をいえば、それは見つからなかった。

理由としては、行方不明者が多いのもあるが一番の要因は。

 

「…覚えてるわけないだろ、マジで誰だよ。」

 

原作で、誰の行方不明者の家からデッキを拾ったのかわからないのだ。

無理もない、急に「仮面ライダーアギトで、【GM01スコーピオン】の装弾数わかる?」と言われて答えられるような人間じゃないのだ。(ちなみに、答えは72発)あくまでも、彼は凡人だ。

 

原作の大まかな流れや、登場する主要キャラはわかっても、細かい所はわからない。

加賀のように名前が出たらわかるかもしれないが。

 

性別が男、だけで彼には絞り込めなかった。

 

「…どうしようか。」

 

途方にくれながら、ふと愛用しているマグカップを見てみる。

柄はオレンジ色の蟹で「蟹は栄養満点!」と書かれてた独特のマグカップだ。昔の須藤はどんなつもりでこれを買ったのだろうか。何故か、今の須藤もこれを気に入ったが。

 

「…こっちもどうしようか。」

 

「キチキチキチキチ」

 

コーヒーの反射した先には、須藤の真後ろにボルキャンサーが居るように映っている。

表情が多くないボルキャンサーだが、須藤も僅かな表情の変化で、この契約した相棒(とは本人は呼びたくないが)を見ただけで察する。

 

「キチキチ」

 

「外回り…行ってきます。」

 

そう一言いうと、彼はまた狩りに出かけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…なんだよ、これ。」

 

城戸真司は行方不明者の家で、奇妙なカードデッキを拾った。

 

無機質な真っ黒のそのカードデッキだが、何故か引き込まれる。

まるで城戸真司を何かに引きずり込もうとしてるように感じてしまう。

だから、拾ったまま持ってきてしまったのだろう。

 

そして、だからこそ…先程の事が現実に思えてしまう。

 

「…え?」

 

いや、さっき巨大な赤い龍に襲われたのも、目の前で起こってるのも現実なのだろう。

車に反射した鏡の世界には存在しないものが存在している。

巨大な蜘蛛のような化け物を誰も気に止めない、悠然とそれは街中を…鏡の中の街を闊歩しているのだ。

 

何故か、わかるのだ。近くに、このような化け物が存在してるのが。

耳鳴りのような直感、これがライダーの持つ第六感とはまだ気づいて無いが。

 

「え?なっ何がぁぁぁぁ!?」

 

そして、何故か鏡に引き込まれてしまう。

文字通りに、鏡の世界に引きずり込まれたのだ。

 

理由はわからない。

 

手に持っていたデッキの作用か、謎の引力で鏡に引きずり込まれたのだ。

 

「うぉぉぉぉぉっっ!!?」

 

そして、中ではいつの間にか全身を灰色のスーツで覆われていた。

鏡のトンネルのような場所を延々と引きずられる。

 

これが、彼の最初の仮面ライダーとしての変身であった。

 


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