「…いてて…は?って?なんだこれ。」
城戸真司は鏡の世界に引きずり込まれた。
先ず気づいたのは自分のよくわからない状況だろう。
腕には謎の機械、ベルトには拾ったデッキが差し込まれ、全身は肌を一切見せない灰色のスーツが体を覆っている。
次に周りの世界が現実の世界を全てを反転させたような世界であること。
ここがどこで、どうしてこんな格好をしてるのか。
そして目の前に居る巨大な蜘蛛はなんなのか。
「ピキピキピキピ…ピキピキ」
蜘蛛の化け物は本来狙っていた獲物から城戸真司に狙いを変更する。
目の前に弱そうな獲物がいるのだ、食事を行うのには特に問題も無い。
「ぐはぁっ!!」
事実、一度前足を払うだけで簡単に吹き飛んでしまった。
そのまま10mは打ち上げられ、壁面の装飾にぶつかり、そのまま地面に自由落下する。
ライダーの装甲が無ければ、とっくに死んでいるだろう。
「どっ、どうすんだよ。」
だが、体に痛みは当然ながらあった。打撲程度ではあるが。
「ピキピキピキピ…ピキピ!!」
どこへ逃げようか迷っていると、突然蜘蛛のモンスターは吹き飛ばされる。
「…へ?」
原因はバイクが轢いたからだ。
すると、ゆっくりとバイクが開く。上のカバーのようなものがゆっくりと上がると中から一人のライダーが現れる。
「大丈夫か?」
これが仮面ライダーシザース、須藤雅史との出合いであった。
「ピキピキピキピ…ピキピキ!!」
また、蜘蛛は立ち上がろうとするが、またバイクに吹き飛ばされる。
そこに居るのは勿論、彼だ。
「…こいつは俺が貰うぞ。」
「お好きにどうぞ。」
これが城戸真司と仮面ライダーナイト、秋山蓮との出合いでもあった。
「…ヤバい。」
須藤は目の前で起こってる現象に釘付けだった。
鏡の中では巨大な蜘蛛と城戸真司、まだ契約をしてないのでブランク体の状態で戦っているのだ。
だが、須藤はそれを見守っていた。理由としていくつかある。
一つは、この後に直ぐに今後のライダーバトルで城戸真司にとって重要なポジションとなるライダー、仮面ライダーナイトが助けに来るからだ。
もう一つは…須藤にこの蜘蛛を倒せるかわからないからだ。というか、殆ど勝てないのがわかってるからだ。
「…バイクで嵌めたら5割、失敗したら…うん、1割無いわ。合わせて…3割か無理です。」
この蜘蛛の武器は鋼鉄のように鋭く硬い足だ。なので、武器を持っていない。敵の武器を奪えないのが、須藤にはいたい。
また蜘蛛のモンスターなので…立体的な動きが可能なのだ。某巨人のマンガのような動きはしないが、ビルの壁面を走ったり、跳びはねたりと、本家の蜘蛛をそのまま大きくしたような動きをする。なのでバイクを簡単に回避をしてしまうのだ。
そして…戦う旨味も少ないのだ。こいつは原作では二回殺さなければ死なない。仮面ライダーナイトのFINAL VENTでも一度しか殺せなかった。つまり、ナイトの半分の力のFINAL VENTしか力を持ってない須藤では殆ど勝てる見込みが無いのだ。
本当に、須藤に相性の悪い敵なのだ。
これで必殺技でも倒せなければ悲惨な未来が待っている。
個人的にはこの後に起こる原作のワンシーン、ブランク体の龍騎が剣で立ち向かっていき「おっ、折れたぁ!?」と言って剣を折られてからの「邪魔をするな!」と叱られるシーンが見たかったのだが。
「城戸君、強く生きろよ。」
「キチキチキチキチ」
「…俺も、強く生き…ん?」
須藤が立ち去ろうとした時に、視界の端にテレビで覚えのある黒いコートが見えた。
秋山蓮らしき人物を見つけたのだ。
仮面ライダーナイト、秋山蓮。原作では最後に生き残ったライダーであり、最終的には城戸真司の親友ポジションになる人物だ。
そこで、須藤は思い付いた。
「…よし、ナイトに便乗しよう。」
蜘蛛と対峙しながら、須藤は盾を召喚する。それを身に付けると、城戸を守るように立ち塞がった。
「…まぁ良い。」
そう言うと、秋山蓮はデッキからカードを1枚抜き取る。
『SWORD VENT』
そして、空から落ちて来たのは漆黒の槍「ウィングランサー」だ。かなり大きな得物であり、それは巨大で硬い蜘蛛の足と簡単に渡り合っていた。
「…俺も。」
それを見て、彼はデッキをから見よう見まねでカードを引き抜き、腕についていたバイザーに装填する。
『SWORD VENT』
するとまた虚空から現れた剣が勢い良く地面に刺さる。それは少し力を入れると、簡単に抜けた。この蜘蛛には先ほどまで痛い目を合わされていた、だからこの剣で倒すまではいかなくても一矢報いてやろうと、そして走り出した。
「ちょっと、待て!」
気づいた須藤の止める声も無視して、そのまま蜘蛛の足に切りかかった。素人の振るそれは単純な剣の力だけの攻撃だった。
「うぉぉ!!おっ、折れたぁ!?」
そして、二人のわかりきっていた事だが剣は簡単に弾けとんだ。ポッキリと真ん中から折れているのだ。もう剣としての力は無いだろう。
「ピキピキ!」
「うぉっ!?」
そして、そのまま城戸を吹き飛ばそうと蜘蛛の足のうち二本の敵意を受けてしまう。
何度も受けていたからわかる、これは先ほどの少しづつ敵の体力を奪うような凪ぎ払うような攻撃じゃない。
明確な敵意、足に貫かれてしまう。そう感じとり、とっさに身を丸めた。
ガキンと鈍い音が鳴った。だが痛みはない、ゆっくりと顔を向けてみると、そこには黄金のライダーが居た。
「危ないから、下がってて。」
盾の使い方が上手く、城戸への攻撃を完璧に受け流し、受け止めていた。まるで盾の名手だ。盾だけでもわかる。この人は物凄く強いと。
「邪魔をするなぁ!」
そして、先ほどの黒いライダーが不意をついて剣で敵の足を吹き飛ばす。
あれほど固かった足は関節から吹き飛び、カランカランと音をたてて地面に転がった。
「俺が貰う。」
「だから、どうぞって言ったけど。」
『FINAL VENT』
そして、黒い方のライダー、仮面ライダーナイトはバイザーに必殺のカードをセットする。
すると、上空から契約モンスター『ダークウィング』が現れ、そのままナイトの背中に装着された。
空中に飛び上がり、そのまま回転しながら敵を貫く。
必殺の『飛翔斬』が決まった。
「…ふぅ。」
そう一息つくと、また剣を構え直す。それは須藤に対してだ。城戸は急な出来事にわけがわからない。急に黒いライダーが剣を構えたのだが、黄金のライダーはまったく気にも止めてない。
「…まだ、終わりじゃないぞ。」
だが、次の瞬間に黄金のライダーが動かなかった理由がわかった。突如して大きな猛獣のような雄叫びが聞こえた。そしてそれが先ほどの赤い龍と気づいた。
「グォォォォォン!!」
「…不味いな。」
そう言うのは黒いライダー、秋山だ。既にミラーワールドの滞在時間も1分をきっており、もう時間的にこのモンスターを狩れる時間も無いのだ。雑魚程度なら狩れたかもしれない、だがこいつはかなりの大物であるのは誰の眼にも明らかだった。
「…うぉっ!!」
そして、龍が火球を乱れ打つ。火球はとても威力が大きく、当たれば致命的なダメージを負ってしまうのは城戸でも簡単にわかった。
それが自分に向かって来たのには、もうどうしようもなかった。また咄嗟に身構えてしまう。
「…え?」
だが、またしても爆発音は近くで聞こえたが自分には灼熱の痛みは無い。どういう事かと、見てみるとまた黄金のライダーが盾で攻撃を受け止めていた。
「早く行け、少しの時間は稼いでやる。」
そう言うと、そのまま城戸とは違う方向に駆けた。龍もそれにつられて須藤を追った。
城戸真司は何もすることはできず、そのままミラーワールドを脱出した。
「(こいつ、強すぎじゃないかなぁ?ちょっとは俺のモンスターにも分けてくれよぉぉぉぉぉぉ!!!)」
ドラグレッダーに追われながら、彼は全力でバイクを走らせていた。
ドラグレッダーは天を駆ける龍だ、バイクのスピードに簡単に追い付き、攻撃を続ける。
ここだけ見れば須藤が自分から命を捨てに行ったように見える。
が、1発として…いや、傷1つとして、彼もバイクもダメージを負っていなかった。それは偏に須藤のバイクの技術力にある。おそらく、ミラーワールドで一番バイクを乗りこなせるのは須藤だ。
「グォォォォォン!!」
「…羨ましい。」
ジグザグに地下の駐車場を避けると、火球は柱に当たり外れる。ドラグレッダーにとって空を飛べるアドバンテージが少ない狭い空間なのもあったが、須藤のバイクの運転技術の前では関係ないのかもしれない。
ただ、必死に覚えた理由が契約モンスターが役にたたないからなのは残念過ぎるのだが。
ドラグレッダーを地下の駐車場で簡単にまいてしまう。今頃は地下で須藤を探し回っているだろう。
「…よし。(俺のドライブテクも捨てたもんじゃないな。レーサーとして食ってけるんじゃ…ん?)」
特に危なげもなく、須藤は現実世界に帰ってきた。須藤がこんな行動をしたのは簡単だ。他の二人からの信用を得るためだ。
そして、予想通りに待っていた三人の人物。
イメージは黒、鋭い目付きをした黒いコートの男。ほぼ主人公の秋山蓮。
そのとなりには一人の女性、イメージは白や桃、優しい目付きをした黒幕の妹、神崎優衣。
そして、この作品の主人公、青いジャンパーと赤いスクーターを引いた、バカで真っ直ぐな男、城戸真司。
「少しだけ時間、いいかな?」
「構いませんよ。」
物語は動き出していた。
次回から主に主人公以外の視点も増えてきます。