落ち着け、先ずは鋏を下ろそうか。   作:赤茄子 秋

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13話 仮面ライダー龍騎

ここはとあるビルの一室である。そこには4台のパソコンとコピー機、ドアとは対角に存在する大きな机には雑多に書類が積み重なっている。

 

「てめっ、真司!お前昨日は仕事サボって何してた!!」

 

そして、ここの編集長兼社長の大久保大介は新入りであり大学の後輩である城戸真司の首にホールドしていた。

ここではよくある光景であり、いつも通りに的確に決められたそれは城戸を軽く窒息させていた。

 

「すっすいません。編集長!ちょっと、刑事さんと仕事をしてて…」

 

だが、今回は言い訳を用意していた。須藤を言い訳に使うのに若干の罪悪感を感じなからも、今はそれよりもこの首の腕をほどくのが先決だ。それを聞くと編集長はゆっくりと腕を外した。

 

「ったく、ならそう言えって。行方不明事件でなんかわかったか?」

 

そう言うと編集長は散らかった机の椅子に座り、引き出しから取り出した孫の手で肩を揉み始める。

 

「それが…まったく。」

 

本当ならば全てをぶちまけたかった。だが、須藤に別れ際に言われた。「この事は言わない方がいい。誰も信じないし…信じてもパニックになるだけだ。」それを聞いて納得した。町中に強盗が居るなら戸締まりの徹底や万が一に備えての武器の準備などの対応ができる。

 

しかし、ミラーワールドのモンスターには対策なんてのはほぼ不可能だ。少し周りを見るだけで、窓ガラス コーヒーの入ったカップ 電源の点いてないパソコン 誰かの手鏡など、数え上げればキリが無いだろう。

 

反射のしない物がある場所なんてない。それがあっても、水の必要な人間は生きていけないだろう。

 

「まぁ、そう簡単にはいかねぇよな。」

 

特に期待はしてなかったが、城戸真司の良いところは別にある。それがわかっている編集長はまた孫の手を動かし始める。

 

「あ、令子さん。何かわかりましたか?」

 

「いえ何も…何もわからないわ。密室の中でどうしたらああなるのかね。」

 

桃井は深い溜め息を吐く。まるで証拠が出ない。隠し通路や隠し部屋が存在するかもと、徹底的に現場を洗ってみたが、何一つ、証拠も証言も見つからなかった。

 

「まぁ…そんな時もありますよ。あ、次行くときは俺も行きますよ。」

 

そして、城戸は自分のポケットを見つめる。そこには神崎優衣から警告はされたが、ライダーになれるデッキが入っている。

 

「城戸君は…ちょっと待って。」

 

すると、桃井が何かを言う前に電話が掛かってくる。どうやら、事件のようだ。何の事件かは、何故か察することができた。

 

「もしもし、はい…わかりました。編集長、また行方不明事件です。今度は渋谷の森ビルです。」

 

それを聞くと、編集長よりも素早く反応する…いや、もう外に出る準備ができていた。

 

「うし、行ってきます!!」

 

そして返事も聞かずに、彼はそのまま出ていった。

 

「あ、城戸君!!」

 

そう桃井は叫んだが、既に扉は閉まってしまった。猪突猛進のバカとは思っていたが…先ほどの一緒に行きますよ!の発言はなんだったのだろうか。

 

「まぁまぁ令子…あいつも、ジャーナリストなんだよ。ひよっこだけどな。」

 

「はぁ…行ってきます。」

 

桃井は若干溜め息を吐きながら、渋谷へ向かった。

 

 

 

 

 

★★★★★

 

 

 

ここは渋谷の森ビル、その屋上にビルの作業員以外の人は居ない。だが、ここはミラーワールド。そこに居るのは仮面ライダーナイトである秋山蓮以外に人間は居ない。

 

「こいつ、生きていたのか?」

 

そして、相対するのは以前戦った蜘蛛のようなモンスターだ。

だが、前回とは違い。ケンタウロスのように人型の上半身が生え、更に精度は高くないがそいつは針を連続で飛ばしている。ライダーでなければ一撃であの世行きの攻撃だ。

 

「ぐっ、ダークウィング!!」

 

正面から接近しての戦闘は分が悪い、そう感じた彼は契約モンスターであるダークウィングを呼び出す。すると、そのまま背中と合体し、空を飛び回る。

 

「何だと!?」

 

だが、一度距離を取ろうとビルの外側に移動しようとすると。蜘蛛型のモンスターは壁を高速で移動し、ナイトに蜘蛛らしく、糸を巻き付ける。

 

「ぐぁっ!」

 

そして、巻き付かれては翼で羽ばたく事はできずにそのまま地面に落下する。決して低くない高度からの落下はライダーのパワードスーツを纏っていても少なくないダメージを負ってしまう。

 

「ギチギチギチ」

 

蜘蛛は一度ナイトと距離をとった場所に着地する。ナイトもロープをほどこうとしているが、硬い蜘蛛の糸は簡単にほどけてくれない。

そして、蜘蛛からまた巨体な針が射出される。今度は動かない的を狙うので、精度は悪いが、今度こそ、避けられない。

 

やってくる痛みに備え、できるだけ身を丸めようと動こうとした時だ。

 

「ハァッ!!」

 

赤いライダーが、針を叩き落としたのだ。

 

「グォォォォォン!!」

 

そして、その周りには赤い龍が付き従っている。あの強力なモンスターと契約したのだとナイトは理解した。

 

そして、流れるように左手についたドラグバイザーを開く。デッキから取り出すのは必殺のカード。

 

『FINAL VENT』

 

「はぁぁぁ…!!」

 

空中に飛び上がり、きりもみしながら龍の炎に包まれて放たれる仮面ライダー龍騎の必殺技。『ドラゴンライダーキック』が放たれる。

 

「ビキビキ!!」

 

モンスターは灼熱の飛び蹴りを受け、爆発四散。中からは白く光輝くコアが現れる。それをドラグレッダーは大きな口で一呑みにする。

 

これを見た秋山は少なくない焦燥を感じる。近い将来に、自分への脅威になるからだ。

 

ライダー同士のバトル・ロワイアルは最後の一人になるまで終わらない。つまりは、このライダーもこの前に出会った金色のライダーも倒さなければ…いや、殺さなければならないのだ。

 

バトル・ロワイアルの景品は【自分の望みを叶える力を得る】だ。これは秋山蓮に残された唯一の希望。

 

「龍騎か…今のうちに潰しておくか!」

 

彼女を生き返らせる為に、彼は剣を振るった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★★★★★

 

 

 

「まっさん。また行方不明事件です。」

「…またか、場所は?」

「渋谷の森ビルって場所で。母親が娘を残して突然消えたらしいです。」

「…わかった。警部、行ってきます。」

「あ、私も行きますよ!」

 

 

 

 

という感じのやり取りがあってから、須藤雅史は渋谷へやって来ていた。

 

「…警視庁の須藤です。状況は?」

 

ちなみに言い忘れていたことだが、彼は原作と違い本庁で働いている。「行方不明事件対策本部」の一員として、働いているのだ。

 

まぁ、本部は何の証拠も証言も得られず、解散したのだが。今は須藤を含めて数人しか本庁では事件の捜査を行っていない。

 

なので基本的な捜査は各地区で行い、事件が起これば須藤達が駆けつけるようになっているのだ。

 

「はい、突然この子の母親が消えてしまい…こちらで防犯カメラの確認しましたが、彼女の母親の所在は不明です。」

 

そう言って試着室を見てみると、鞄や脱がれた靴など、娘を置いてどこかに行くには置いてくのはあり得ないような物が置き去りにされている。

 

「(やっぱりミラーモンスターか。)そうですか、では先ずは母親の身辺調査をして行方不明事件かどうかと…もう一度、防犯カメラのチェックですね。」

 

「まっさん、私は「山下は防犯カメラのチェックだ。俺は、聞き込みをしてくる。」わかりました。」

 

山下にそう告げて向かうのは1階だ。理由としては、モンスターがそこに居るのがライダーなのでわかるからだ。その能力で今回の敵がどのようなモンスターか確認し、勝てそうなら倒す。須藤は素早く1階に駆け付けた。途中で桃井らしき人物が居たのにも気づいたが、ここではスルーした。

 

「…(そういえば、こんなイベントがあったな。)」

 

1階はガラス張りであり、沢山の人が思い思いに動いている。その中でも、何人かの人はある一点を向いている。そして、須藤も向いている。

 

須藤の視線の先には既にモンスターが討伐され、目の前には必死に鏡を叩く女とミラーワールドで秋山蓮にボコボコにされている城戸真司が居た。

 

「あっ…」

 

「…(…)」

 

また鏡を必死に叩いていた女性。神崎優衣と眼があってしまった。

須藤は眼があった瞬間に「さっさと立ち去れば良かった。」と後悔した。

 

「須藤さん、お願いがあるんです!」

 

何故なら、彼女のお願いなんて今は1つしかないからだ。もう二人の戦いを止めて欲しいなんて願いが簡単にわかってしまう。

 

だが、ここで逃げてみれば彼女達との仲は最悪になるだろう。

 

生き残るには須藤は城戸真司とは協力関係を結ばなければならない。

 

ここで逃げれば、たとえ生き残っても、何の支えも無い須藤は簡単にミラーワールドで塵となる。

 

つまり、逃げ道は存在しない。一応捕捉しておくが、ボルキャンサーという支えは存在はしてる。他のライダーの契約モンスターが鉄なら、こちらはダンボールであるが。

 

「二人を止めて下さい!」

 

そして、予想通り過ぎる願いに須藤にできるのは大嫌いな神様に祈る事しかできない。

 

「(大丈夫だ、オーディンとか浅倉に襲われるよりはマシだ。なんとかなる…そう、なんとかなる。)期待はしないでくれよ。俺、弱いから。」

 

そんな事を思いながら、須藤は二人の戦いを止めにトイレへ向かった。

 

 

 

★★★★★

 

城戸真司は人を守る為に、ライダーになることを誓った。そして、ドラグレッダーと契約して仮面ライダーとなり初めてモンスターを倒した。

 

人を守った実感を得た。

 

「う…あ…」

 

だから、今の状況を良くわかっていない。

 

「終わりだ。」

 

赤いライダーである龍騎はもう一人のライダーであるナイトに追い詰められていた。最初は良くわからず、そのままやられたが、途中からは果敢に立ち向かった。だが、ライダーとしての経験が数分しかない龍騎は一方的にやられ、ナイトに地に伏せられていた。

 

「…(刑事さん…ライダーって、なんなんだよ。)」

 

そして、ナイトのランスが龍騎の首を貫こうとした時だ。突如として、ライダーなら聞き慣れたエンジン音が響き渡る。

 

それは徐々に近付いているのがわかる。ナイトは龍騎から大きく後ろに飛び退く。そしてナイトが居た場所には全ライダーの共通の装備であるライドシューターが止まり、ゆっくりと天井の扉が開いていく。

 

「刑事…さん?」

 

そこに居たのは仮面ライダー龍騎になる前に、城戸真司を助けた黄金のライダー。

 

「間に合ったようだね。」

 

須藤雅史、仮面ライダーシザースである。

 

「どういうつもりだ?」

 

ライドシューターからゆっくりと降りてきたシザースを睨み付けるナイト。

ライダーを前にしてる筈なのだが、その姿はかなり落ち着いてるように見える。

 

「秋山蓮だな。外に居る優衣さんに頼まれて、この戦いを止めに来た。」

 

「…」

 

窓の外を見てみると神崎優衣が不安な顔をしながら三人の動向を見守っている。

目先の戦いに夢中になり、仮面ライダーナイト、秋山蓮は気がつかなかったのだ。

 

「今ここで争う理由は無いはずだ。ここは一先ず、矛を下げて貰えるか?」

 

そう言ってランスを下ろすように促すが、ナイトが武器を捨てる様子は無い。

 

「俺達はライダーだ、戦う理由も価値も、それだけで良い!」

 

そして、ついに須藤に向けてランスを振りかざした。

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