プロローグ
『FINAL VENT』
「グガァァァァァァ!!!」
爆音と共にモンスターは弾け飛ぶ。文字通り爆発四散したのだ。
ビル街の中心で起こる非日常、にも関わらずここには誰も居ない。
「…きつ、かったぁ。」
いや、一人だけ居る。野次馬は居ないが、モンスターを倒した張本人がそこに座り込んでいた。
黄金に光る鎧に腕には大きな蟹の様な鋏、その格好のまま、彼は大の字になって地べたに横たわる。
「キチキチキチキチ」
そして、今しがた倒されたモンスターのコアを食らうのは人の形をした蟹のモンスター。
しっかりと味わうというよりは、飲み込むのに近い食事をするとチラリと横たわる彼を見る。
「…俺を食うなよ。」
彼がこの様に言うのは彼が扱うこの蟹もまた倒したモンスターと同類だからだ。
モンスターは人を食らい、この世界…ミラーワールドに引きずり込む。引きずり込まれたが最後、2度と元の世界に帰る事はできない。
「…本当に食うなよ?」
「キチキチキチキチ」
鋏を研ぎ、ナイフを舐めるように鋏を泡で洗い出した彼の契約モンスター…ボルキャンサーに本気で警戒をする。
「落ちつけ…そして、鋏を下ろせ。」
「キチキチキチキチ」
全力でミラーワールドから逃げる。
ボルキャンサーも走る。
「追いかけてくるな!」
そのままなんとかミラーワールドから脱出する。
目の前ではキチキチキ言いながら鋏を振り回すボルキャンサー。
「どうして、こうなっちゃんだろうなぁ…本当に。」
彼は仮面ライダーシザース、本名は須藤雅史(すどう まさし)、13人のライダーの参加するバトル・ロワイアルの参加者の一人…になっちゃった人である。
「誰か…助けてくれ。」
彼の切実な心の叫びは、誰も居ないこの世界では静かに響いた。
この世界は仮面ライダー龍騎の世界、彼は憑依した瞬間にそれを悟った。
モンスターに襲われたタイミング?違う。
ライダーが戦ってるのを見たタイミング?違う。
登場人物と遭遇したタイミング?まぁ、それが正解であるが…先ずは彼の憑依のタイミングから説明しよう。
場所は須藤雅史のアパートらしき場所、そこで年期の入ったちゃぶ台の前に、座っていたのが最初に気づいた事であった。
時間は夜、晩御飯を食べたかはわからない。テレビは点いておらず、カーテンも締め切られている。
時計を見てみると真夜中の12時だ。
「(どこ…ここ。)」
最初は彼も酷く焦っていた。ここは彼の知る場所では無いからだ。
普通に寝て目覚めたらここに居た、何を言ってるかわからないと思うが…彼は夢か?と考えた。
だが、五感がリアルさがそれは違うと感じさせた。
「須藤雅史、約束の物だ。有意義に使うと良い。」
「…はい?」
本当に夢であって欲しいと思ったのは次の瞬間だったが。
神崎士朗、目の前の茶色いコートを着た男が無機質な真っ黒のカードデッキをちゃぶ台に置くとそのまま何処かへ消えていった。
「…はい?」
戸惑いのスクリューに裸一貫で巻き込まれながら、彼は須藤雅史に憑依したのだ。
Q.この作品を書くきっかけは?
A.蟹を食ってたらなんとなく。