落ち着け、先ずは鋏を下ろそうか。   作:赤茄子 秋

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回復力と防御力が高くて、中の人のスペックが高いライダーが居るらしいぞ。チートかな?

チートだったら良かったなー…


22話 復活の呪文

秋山がやられ、須藤が戦っている。

そんな事を秋山から電話で伝えられると、直ぐに手塚はバイクを走らせた。

 

今から向かっても間に合わないのは確実だが、手塚は知りたいのだ。須藤とはどれ程の強者なのかと。

 

秋山は頑なに口を閉じ、城戸からは抽象的過ぎてよくわからなかった。須藤が強い、それしか城戸からは伝わらなかった。だが手塚の目も節穴ではない、須藤には特別な何かがある、そう確信している。

 

そして学校に着き、最初に見つけたのは秋山であった。腹をおさえて地面に座り込んでいる。どうやら芝浦との戦いでダメージを負ったようだ。

しかし、命に別状は無さそうである。

 

「おい蓮、須藤さんは?」

 

一緒に来た城戸は秋山に駆け寄る、手塚は付近の安全と須藤のバトルを見れたらと思い周りを見回した。

 

「…終わったらしいぞ」

 

遠くの方で苦痛の悲鳴をあげた声がした。見てみれば、傷だらけの芝浦が居る。そして近づこうにも怯えたように走り去っていく。城戸のカードは恐らく取り上げられただろう、須藤がわざわざ生かしてボロボロにしたのだから。手塚は何をしたらあの男の心を折れるのかがわからない、ただ一方的に殴り倒してもライダーバトルなら不意を狙ったりと勝ち筋はいくらでもある。だが、完膚無きまでに粉砕していた。いったい何をしたんだと。

 

そして芝浦が去って数秒すると、遠くの窓ガラスから須藤が現れる。コートの襟首を治したりと、ライダーバトル後の身だしなみを整えている。

 

だが、驚いたのはそこではない。

 

「(無傷での勝利…?秋山を倒したライダーに?)」

 

傷らしい傷も、痛がる素振りも無い。無傷で、あのライダーを倒した。何をしたからはわからない、そしてその手には1枚のカード…城戸のカードがあった。

 

「(最強のライダー…とでも呼ぶべきか)」

 

これにより、手塚は須藤の力を認めたのであった。

 

★★★★★

 

辛くも、何とか生き延びた須藤。だが須藤に傷は見当たらない、逆に芝浦には大量の傷が身体中にできているだろう。

ドラグレッダー、須藤にそれだけ強力な奴が来てくれたならどれだけ心強いのか。

 

「さてと…城戸君に渡しに行くか」

 

須藤の手には二つのカードがある。

一つは芝浦から奪い返したドラグレッダー、ADVENTのカードだ。

そしてもう一つは須藤のカードだ。これは須藤の作った秘策…と呼べるかはわからないが便利なカードだ。

 

これを作ったとき、作れたときの須藤の気持ちは形容できないだろう。

蟹に限らないが、いくつかの生物には自切という捕食者から逃げるときに体の一部を切り落とす生態を持っている。

須藤が眼をつけたのはそこだ、蟹ならば手足が切り落とされる。ならば蟹の腕はそのままか?否、しっかりと栄養を取れば複製され元に戻る。

 

須藤は身の負担を軽減する方法を模索していた、ライダーやモンスターとの戦いで腕を切り落とされる可能性だってある。ならば、そうなっても大丈夫なカードを作ろう。

 

カードに念じたのだ、「お願いですから!!回復力を俺に分けてくださぁぁぁぁぁぁい!!」と。

 

その願いは叶った、むしろ叶いすぎた。

 

【REBIRTH VENT】

 

復活の呪文である。これができた時には須藤は「へぁっ!?」と驚いたウルトラマンのような声が出ていた。

だが正確には復活の呪文ではない。これは時間の巻き戻しに近いレベルの回復のカードだ。他者に対しては使えない、元に戻るだけなので須藤が瀕死なら助かるが死んだら使えない。そして効果の代償なのか、週に一度しか使えない。

そもそも、こういうのは相手を疲弊させた時に使えれば強いカードなのだ。だが、須藤は元が酷い。どれくらい酷いかは三輪車がイージス艦に挑むと言えばわかりやすいだろうか。そんなの相手に何故勝ててるのか、須藤には全くわからない。

 

だが後に、須藤は気づく。「これただのゾンビと変わんないんじゃ…」と。回復力と防御力があっても、まずは相手を凌ぎきる持久力が足りない。人としての持久力は高いがライダーのスペックが足りない所を少しでも補うのに持久力は必要だ。

 

例えば10の攻撃を防ぐのに他のライダーは10の体力を使うとする、だが須藤は30以上とその何倍もの体力を使わなければならないのだ。他のライダーの体力が100で須藤が300でやっと成立するのだ。だがこれは防御に限っての話だ。

 

そして攻撃力、それが須藤の求めるもの。それさえあれば須藤は無敵かもしれない。防御力に回復力を手にいれた、あとはそこをサバイヴか何かで補う。

 

「須藤さーん!!」

 

遠くから城戸の声が聞こえる、見てみれば手塚と秋山も居た。

 

「もう少し…人生楽にならんかな」

 

そんな事をぼやくが、その願いが叶う可能性は低いだろう。

 

★★★★★

 

いつ頃から計画は狂ったのだろうか。

世の中を自分に住みやすく、楽しくするため。

ライダーバトルを真似たゲームを日本に、世界に広げようとした。昔見た【自殺サークル】なんて映画ほど、広がれば面白いなぁ。そう考える芝浦が今居るのは、警察署だ。

 

芝浦は傷だらけの体のまま、警察署に連行されていた。無警戒であった島田というOREジャーナルの人間によって、芝浦の計画は頓挫した。

まさか、芝浦と同等かそれ以上のハッキング技術があるとは予想できなかったからだ。

 

そして、同時進行していたライダーバトルでの楽しいゲームも頓挫した。

そして、取調室で刑事とのつまらない掛け合いに飽き始めてた時に奴は来た。

 

「また会ったな」

 

須藤雅史、ここまで頭の回り実力もある男はそうはいないだろう。その表面上の性格は穏やかだ、だが中身は身内に手を出すものには一切の容赦が無い。身内には聖人だが、身の外は…怪物や悪魔としか表現できないだろう。敵に回すべき人では無かった。

 

「俺を立件、できると思うの?」

 

なぜ芝浦がこんなことを聞いたかは、ちょっとした反抗である。自分は大企業の御曹司、そう簡単には牢屋にぶちこめない。

牢屋にぶちこんで、ライダーバトルからフェードアウトする事はできないぞ?暗にそう伝えると。

 

「いや、無理だろ。顧問弁護士に北岡さん居るし」

 

あっさりと認めた。そのあまりの手応えの無さに芝浦は呆然とする。だが芝浦も知恵が回る男だ、直ぐに理解する。

 

「(俺程度…何の障害にもならないってことかよ、ふざけやがって)」

 

心の中で呟くのはこんな事をわざわざ須藤に言う必要も無いからだ、須藤は自分よりも頭の回る嫌な奴だからだ。

 

「それに…北岡さんに借りを作る程、俺も盲目じゃない」

 

芝浦のこめかみがピクリと動く。新たな勘違いに気づいたからだ。たしかに、障害にもならない雑魚と思われてるかもしれない。だがこの男は、やろうと思えば芝浦を牢獄に閉じ込めることもできるのだと。

 

弁護士の北岡とのコネクションがあるのだ、人脈もあり力もあり、知恵もある。

秋山や城戸が須藤を認める、いやそれだけのカリスマを持っているのを再確認した。

 

「…弁護士、呼ぶよ」

 

持っている力の敗北を悟った芝浦はそう弱々しく呟く。

 

「そうか、じゃあな」

 

そして、それを予期していたのだろう。特に気にも止めずに須藤は取調室から退室する。

 

「次は勝つから、お前には…負けない」

 

退室の間際、芝浦はそう小さいながらも確かな力を感じさせる言葉を言う。

すると須藤の足が扉の前で止まった、そして振り向きもせずに須藤はこう言った。

 

「大人は暇じゃないんだよ。俺以外のライダー倒したら、考えてやる」

 

★★★★★

 

秋山の死の色は消えてはいなかったが、薄くなっていた。これは須藤のおかげなのだろう。手塚の占いはAnotherのヒロインのように死の色を見たら直ぐにわかるという物である。

 

たが彼の能力はその更に上、見たものを占えばどのように死ぬのかすら見ることができる。運命という物を覗ける能力者だからこその能力だ。

 

そしてその能力をいかし、彼は行動していた。

 

神崎優衣と見つけた洋館は二人の秘密とした、理由は特に無い。ただ強いて言うのなら少しでも運命を歪めずに手塚自身が調べたいと考えているからだ。

 

神崎士郎、そして神崎優衣を調べるために。

 

神崎優衣の方は10歳頃両親に不幸があり、今の家に引き取られたらしい。そして両親の亡くなった場所だが、あの洋館であった。原因不明の爆発事故だったらしい。

 

だが、神崎優衣には幼少期の記憶は無かった。何も覚えていないのである。不自然だ、ショックによる記憶喪失なんて物じゃない。神崎優衣は記憶を消されたのだろう、運命すらねじ曲げる記憶の消去など聞いたこともない。

 

なので手塚にできるのは、運命を覗ける範囲で最も古い記憶。もしくはそれに関するであろう記憶を探し、見つけていた。

 

「…ここか」

 

神崎優衣の過ごしていた、小学校。

 

「すまないが、10年前に4年生を担当していた吉田という教師はいらっしゃらないかな」

 

中も至って普通の場所で、特筆することも無い。

事務室に行き、記憶では神崎優衣の担任であった吉田という男性教師を呼ぶ。

 

「吉田教頭は現在会議中でして、少々お待ち頂いても宜しきでしょうか?」

 

「わかりました、では待たせて貰います」

 

応接室に通され、フカフカのソファーで待たされる。学校自体はどこにでもある公立校だ。今回の目的は、神崎兄妹の情報の入手。それだけだ。

 

「待たせてしまって悪いね、教頭の吉田です」

 

そしてやって来たのは中年の男性教師だ、少し体型がふくよなかで白髪混じりの黒髪に眼鏡をした人だ。

 

「手塚と申します、神崎優衣さんとは恋人の関係を築かせて貰ってます」

 

そして手塚は準備していた言葉をそのまま話す。神崎優衣の恋人と偽るのだ。そして、手塚は占い師だ。占い師とは巧みに人の心を掌握する職業の人間だ。

 

手塚はその巧みな話術を披露すると、最初は少し警戒していた教師から緊張感は無くなっていた。

 

「ほう…なるほど、つまり結婚式でのビデオレターかな?」

 

「まぁ、サプライズで」

 

にこやかな作り笑いで場の雰囲気を良くする。ここまでは手塚のいつも通りにやっている事と変わらない、そしてバレないように相手の運命の記憶を覗き込む。

 

「ですが、まだ式の日取りも何も決まってないので…こうしてアポを取りに来ました。」

 

「そうだ、神崎さんの昔話でも聞いてくかい?」

 

「いえ、それはビデオレターの楽しみにしておきます」

 

手塚は万が一の予防線は張っておく。ここにはビデオレターのアポを取りに来ただけ、ストーカーが神崎優衣の恋人を成り済ますという事になればめんどくさくなるからだ。

 

「(両日から虐待を受けていた子供、それ位か。記憶がないのはショックの影響かもしれないが、他に目立った情報は無いか。)」

 

部屋を後にするが、まったく情報が無いわけではない。記憶には神崎優衣の同級生らしき人物に他の教諭。まだ調査は始まったばかりなのだ。

 

記憶を紐解いて行けば必ず見つかる筈だ、何かしらの神崎兄妹の情報が。

 

★★★★★

芝浦の事があってから三日ほど。

いつものように軽くモンスターを狩ってから戻ってくるといつもの光景とは程遠い慌ただしい状況だった。

 

「皆さん、どうかしたんでんすか?」

 

須藤がそう聞くといつもは目も合わせない先輩刑事が答える。その目には須藤を見つけた歓喜と何かに対する絶望を感じた。

 

「緊急事態だ、お前も直ぐに準備しろ!」

 

須藤は厄介事が起こったのだと把握する。恐らくかなりめんどくさい状況なのだろう。そこで須藤という猫の手も借りたい状況で肉壁も手にはいると。

 

いったい自分にどんな面倒な案件をなすりつけてくるのか、そう考えていると先輩刑事ははっきり答えた。

 

「浅倉威が脱獄しやがった!」

 

頭の中でその名前が木霊する。浅倉威、須藤にとって最大の脅威、須藤が会いたくない人No.1,須藤を殺しそうな人、というかSPだったら浅倉は須藤を殺してた。

 

ライダーの世界に刑事は要らない。そんな言葉を思い出していると、これから我が身はどうなるのかと不安で押しつぶれそうになる。

 

そして、止まった。

 

「あ…はい」

 

須藤の思考は停止、それしか答えることができなくなった。先輩刑事の後を付いてくだけの親を追いかける小鳥程に須藤は思考は停止してしまった。




Q,一番書きやすいキャラは?

A,手塚、あれは書きやすいです。あと手塚の時系列が分かりにくいかと思うので並べとくと。

芝浦事件→洋館→小学校訪問→浅倉事件です。


須藤「北岡さんに借りを作るほど、俺も盲目じゃない(どうせお前死ぬのに、そんなのしたら無駄じゃん)」
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