「あ、まっさん。おはようございます!」
「あぁ、おはよう。山下。」
仮面ライダーシザース、須藤雅史は刑事だ。当然、今日は月曜日なので、仕事だ。
幸いな事に、須藤雅史はしっかりと仕事をこなす几帳面な人間だったので。
刑事になった時からの手帳や資料が残されており、日曜日を丸々使い、それを徹夜で読みといた。
なので、後輩である彼女。山下鏡花の名前も、警部の岩元豪助などの部署の仲間の名前を把握した。
ただ、まっさんと呼ばれていたのには驚きだ。そこそこ良い関係を築けているのだろう。
「岩元警部、おはようございます。」
「おぉ、雅史か。最近元気が無かったように見えたが、大丈夫そうだな。」
「まっさん、今はなんか目が生き生きしてますね。」
「それは、普段は死んでるようにしか聞こえないんだが。」
「あれ?自覚ありませんでしたか?」
「…まぁ、どうだろうな。(昔の須藤は、知らないし。)」
そして重要な事だが、憑依をする物語は沢山ある。その中でも憑依がバレる瞬間というのは盛り上がるだろう、そして何かしらの事件が起こる。
仲間との関係の悪化は少なからず起き、事件に巻き込まれやすくもなる。
今の須藤雅史はどうするのか?
それを悩んだ結果、須藤は今の自分でいくことにした。
どうせ、バレるなら疲れない方が良いのだ。
「…まっさん、変わりました?」
「どうしてそう思う?(大丈夫だよな?…大丈夫だよな?)」
「だって、昔は少し距離を感じてたんですけど…今は近づいた気がしたので。あっ、これは別にまっさんにときめたいたとかじゃないで。」
特に問題は無さそうにみえる、昔の須藤もこんな奴だったのだろう。
「…そうかよ。」
なんだこのあざとい後輩…そう思いながら、自分のデスクに向かう。
特にこれと言った特徴は無く、普通のデスクだ。
とりあえず、デスクの中にあった捜査資料を広げて見る。
「(行方不明者が顕著に出始めたのは先月からか…で、捜査官の行方不明者が8人。一般人は未知数。ヤバイな。)」
これを見ただけで、モンスターがあちこちに出ててヤバイのだが…一部の場所では被害がある時期を境にして無くなってる。もう他にライダーが居るのだと感じとる。
だが、今の須藤には力が無い…マジで無い。
今後の戦略が【毎日モンスターを倒す。バイクの不意打ちと追撃は基本!ただし、1匹づつ。そして、武器は敵のを奪い取れ!】である。
これが本当に仮面ライダーのやることなのか?という疑問があるが、そんな事をいってる余裕なんて物は存在しない。そうでもしなければ生き残れないのだ。
「あれ、まっさん…またその捜査資料を見てるんですか?熱心ですねー。」
そう言ってあざとい後輩は須藤の机にコーヒーを置く。
かなり読み込んでいたようだ、いつの間にか出勤してから二時間もたっている。
「あぁ…まるで情報が無いんだよな。(ブラックか…甘いのが好きなんだが。)」
そう言って苦いコーヒーを一口飲む。ほろ苦さが口に広がり、何故かこれを甘く優しく感じる。この世界の方が苦すぎるからだろう。
「どうすっかねぇ…」
警察ですら情報が無い。無理も無いだろう。普通なら鏡の世界からモンスターが人を拐うなんて発想には至らない。
普通ならテロや組織的な誘拐事件と考える…が、そんな動きをしてれば情報が何も得られないのは有り得ない。
電車や街中での集団失踪、周りには痕跡の欠片も存在しない。
しかも、捜査官が8人も行方不明になってるのだ。自分からやりたいとは思わない案件だ。
「ふぅ…ん?(ここは、失踪者が多いな。)」
そして捜査資料を読み進めるとあることに気づいた。この駅周辺の一角でわかってるだけで7人も失踪してるのだ。
「(つまり、2匹以上居るか…強い奴モンスターか、大食いのモンスターでも居るのか。絶対に近づないようにしよう。)」
だが、今の須藤には力が無い。不意打ちはできても一回だけ。須藤には2匹も相手できる力を持ってないのだ。
「(逆に…ここは3人か。先ずはここから行くか。)」
須藤はここで他のライダーとは違うアドバンテージを得ていた。それはモンスターの生息地の予測が可能な事だ。モンスターは何処にでも居るが、毎日狩るには場所を把握しなければならないのだ。
須藤は弱い、本当に弱い、どうしようもなく弱い。なので力をつけなければならない。
だが、一般人を襲うのは論外だ。間違い無くBad Endに一直線だ。したがって、モンスターを狩るしかない。
「じゃあ、情報を集めて来るわ。」
そして、刑事のアドバンテージは他にもある。それは捜査の過程でモンスターを狩れるのだ。
基本的に情報を得られる事なんて無い捜査だ。
なので「何の成果も挙げられませんでした!」で押し通す予定だ。
「あっまっさん!…気を付けてくださいね?」
山下は不安そうな顔をする。当たり前の事ではあるだろう。この捜査で何人も帰ってこないのだから。
「当たり前だろ。」
須藤はそう言って警察署を出た。
外には須藤が使う覆面パトカーが置かれており、珍しくも無い一般的な白い車だ。
「先ずは公園からか…。」
これから刑事として、ライダーとして戦う。そう心に誓いながら、心と車のエンジンをかける。
その時ふと、車の窓ガラスを見ると。
「…ん?」
「キチキチキチ」
ボルキャンサーが何か涎を垂らしてるように見えた、これは一刻も早くコアを与えなければならないだろう。
さもなければ…
「(…喰われる。)」
須藤は全力で車を走らせた。
Q.好きなライダーの曲は?
A.climax jump ,Revolution 今でも聞いてます。