落ち着け、先ずは鋏を下ろそうか。   作:赤茄子 秋

9 / 25
予想外の反響ですわ…。

沢山のお気に入りと感想、ありがとうございます。
申し訳ありませんが、作者の都合により返信は一部の方だけにさせて貰います。



7話 真っ白に…燃え尽きたよ。①

本来ならば慌ただしいこの警察署も、何の進展も無い今回の行方不明事件では静かだった。

 

捜査資料には大した情報も無く、証拠も証言も無い。被害は増え続ける一方、捜査官ですら行方不明になっている。

 

だがそんな中でも、普段ならばこの行方不明事件に何故か他人よりも熱心に打ち込む、彼だけはやる気に満ち溢れていた。

 

「警部、まっさん…どうかしたんですか?」

 

「いや…さっぱりでな。」

 

須藤雅史は何故か自分のデスクで項垂れていた。

 

この世の絶望のような暗さを纏い、全身からは気だるさが漂い、目からは生気が失われている。

 

人間がこうなるのは普通ではない。

 

山下鏡花がここまで酷い須藤雅史を見るのは初めてだった。

 

「…まっさん、生きてますか?」

 

 

 

恐る恐る、彼女は近づいてみると。開いてるのか閉じてるのかわからない目をしながら、ゆっくりと体を持ち上げる須藤。何度かポキポキと何処を鳴らしてるのかわからない関節を鳴らすと、何故か不安が漂う作った笑顔をしていた。

 

大丈夫ですか?ではなく、生きてますか?と聞いたのはこの挙動のおかしさからだ。

 

もう挙動がゾンビ以外の何者でも無かった。

完全に生きる屍である。

 

「あ、あぁ…大丈夫だ。最近の疲れが溜まっちゃったみたいでな。まだ、生きてるよ。」

 

何故か、「まだ」が少しだけ重く感じる。

 

「…本当に、ですか?」

 

「大丈夫だ…そう、俺は大丈夫だ。」

 

まるで自分に言い聞かせるように何度も「大丈夫」と唱える姿は不気味だ。

 

こうなったのは突然の事であり、山下には心当たりは無いが、予想はできた。

 

何か彼に事件が起こったのだ。

 

「大丈夫…大丈夫…(大丈夫…大丈夫…)」

 

それは彼が仮面ライダーシザースとして一週間を過ぎようとした時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『FINAL VENT』

 

「ピァァァァァ!!!」

 

この日、須藤は2度目の飛鳥文…シザースアタックでモンスターを倒していた。

今回の敵で、ちょうど10匹を倒した瞬間だった。

 

「…。」

 

そして流れるように無言でバイザーにカードをセット、すると甲羅の盾が須藤に届けられると。そのまま構える。

もう周りに敵は居ない。

 

 

 

 

ボルキャンサーを除いて。

 

「キチキチキチ」

 

ボルキャンサーが襲ってきても大丈夫なように盾を構えたのだ。

最初は不意打ちの失敗などでモンスターを仕留め損ね、ボルキャンサーに襲われた時もあった。

その時は何とか別のモンスターを見つけてバイクで轢き倒して事なきを得た。

 

ただ、それまでにボルキャンサーと須藤が5分も戦ったので満身創痍もいいところだった。

 

「あれだけ戦えるなら…モンスターと戦ってほしい。」

 

何度も盾を使い、何とかミラーワールドから脱出。ボルキャンサーの機嫌を伺いながらモンスターを狩る。

それが須藤雅史のライダーとしての日課になっていた。

 

「さてと…どんだけ上がったかな。」

 

【ADVENT ボルキャンサー】

 

ATTACK 1710

 

【STRIKE VENT シザースピンチ】

 

ATTACK 700

 

【GUARD VENT シェルディフェンス】

 

GUARD 1710

 

【FINAL VENT シザースアタック】

 

ATTENTION 2210

 

「…ちょっと、待て。」

 

ここで、違和感を感じた。目を全力で逸らしたくなるレベルの違和感に気づいて、しまった。

 

全ての装備は均等にパワーアップしている。

初めてモンスターを狩ったときから考えると、210のパワーアップをしたはずなのだ。

 

だが、一つだけおかしい。普通ならありえないだろう。まだ原作のレベルにも至っていないのに…そうだ、STRIKE VENTだけおかしい。

 

「…いやいや…はい?嘘でしょ?カンスト?いやいや…え?表記バグだよな、そうだよな?そうだと言ってください!おかしいんじゃん!俺、頑張ってるじゃん!原作よりも頑張ってる自信あるぞ!?」

 

須藤はどんなにスペックが低くても、それをレベルでカバーできる!と考えていたのでこれは完璧な計算違いであった。

 

シザースピンチ、原作ではATTACK 1000のこの蟹の腕は何故か敵と武器をぶつけ合うと粉々に砕け散る。

 

原作で龍騎やナイトを吹き飛ばしてたあの映像は嘘としか考えられない。

 

なので使い方としては敵のモンスターが武器を持ってない場合or武器を奪うのが難しい場合、武器をぶつけないように、敵を攻撃する…が、これまでの須藤の戦法になっていた。

 

だが、それも難しく防げる攻撃を受ける事も多々あった。シザースバイザーも攻撃の手段として使えるが、こちらも硬いだけで、攻撃力は皆無に等しかったのを実証済みだ。

なので、最低でも敵の武器と打ち合えるまでパワーアップさせようと考えていたのだが。

 

「…ふざけんなよ。」

 

須藤雅史に明日はあるのだろうか。

 

「キチキチキチ」

 

そんな須藤が戦慄してるのを気にせず、ボルキャンサーはムシャムシャとコアを頬張っている。

本当はボルキャンサーに一番関係する食料事情に大打撃を受けているのだが。

 

「神様は俺が嫌いなのかな…?」

 

須藤は一度だけ、大きな溜め息を吐く。すると肺に入る限界まで、多めに空気を吸い込む。そして、この世界の天まで届けるつもりで、こう叫んだ。

 

「俺は、お前が大嫌いだよぉぉ!!!!」

 

虚しすぎる叫びはこの無人の世界のビル街によく響いた。

 

②に続く。




Q.シザースサバイブの予定はあるのか?

A.予定はありますよ、醍醐味ですし。ただボルキャンサーは頭の中で書けてるけども、シザースの方が頭に描けてないですね。デザインって難しい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。