既に頂に座す者が、ダンジョンに向かうのは間違っているだろうか? 作:昼夜米主義
書く気はあれどもやる気が出ないという…
ゴブリンとの戦いから、二週間ほどたった。
あれから、山を無事に下山することができ、一週間ほど使用してオラリオにたどり着くことができた。
ただ、オラリオに到着したころには所持金が心もとなく、一発、ダンジョンで稼いでやろうと、ダンジョンに向かったのだ……が、ここで詰まってしまった。
冒険者でないと、ダンジョンに入っても利益なんて出ないということだ。
より詳しく言うならば、モンスターを狩ることで得ることができる主な収入源である魔石を、お金(ヴァリス)に換金するにはダンジョンを管理? しているギルドで行わねばならない。
これは、重要な資源である魔石の管理という理由と、魔石をエネルギーとして利用した道具がオラリオの主な収入源となっているからという理由の二つ存在する。
つまり、ギルドに睨まれてでも魔石を裏で売買することによる利益では、割に合わないのだ。
ここで問題点が存在する。
ギルドで魔石を換金するには、ギルドに冒険者として登録されていることが必須条件となっているのだ。
そして、ギルドに冒険者として登録するためには、神に恩恵を賜らなければならないのだ。
つまり、現状の自分ではお金なんて稼げないということだ。
ドロップアイテム(固形化したモンスターの部位)だったら、商業系のファミリアで売買できるのだが、魔石を持てるだけ(30匹)ほど狩っても、一個も落ちなかったことから、それで生計を立てることは難しいというしかない。
……というわけで、ギルドの受付で冒険者になる眷属を募集しているファミリアを幾つか教えてもらい、行ったのだが……。
「一昨日来やがれィ!」
「……はあ、これで20件目か」
見事に、門前払いをくらったのだった。
いや、3日前に受けたファミリアでは、採用一歩手前のファミリアがあったな。
ソーマ・ファミリアというのだが、所属している眷属の雰囲気に不穏なものを感じ、一旦出て話を聞くと、中々に問題の多いファミリアで、周囲の評判は最悪だった。
ここに入ると、まず周囲の反応、評判がマイナスから始めねばならなくなるので、辞退したのだ。
そんなわけで、オラリオにたどり着いてから一週間。
そろそろ所持金が底を付きそうになっている。
……まあ、なぜ自分がファミリアに入れないのかは分かっている。
見た目である。
これが、武器防具をきっちりと揃えているのならまだしも、ひょろそうな、14歳のヒューマンをファミリアに入れたとしても、戦力になりそうにないのだ。
恩恵を持っていないということは、つまり入団した段階でレベル1(最初っ)から始めるということで、そんな人間を育てる手間なんて出せないというわけである。
ならば、門が広く、育ててくれそうなファミリアに入るしかないのだが、そんな所は基本的に大手ファミリアであり、そんな大手は現在ファミリアを募集はしていなかった。
というかそもそも、そういう大手は主神だったり幹部によるスカウトがほとんどらしい。
ただ、ロキ・ファミリアの眷属募集があったらしいのだが、それは1日前に終了しているとの話である。自分の中のゴブリンに対するヘイトが上がった瞬間だ。
「ミィシャさんから貰った、冒険者志望の眷属募集しているファミリアは……って、さっきので終わりか……」
どうしたものだろうか……。
頭を下げて、ソーマ・ファミリアに入れてもらうしかないのか……。
そうして座り込んで黄昏ていると、さっと、影が差して沈みかけの日光が遮られた。
「……ねえ君!」
「……? ああ、僕ですか」
一瞬、その言葉が誰に向けられているのかと、周囲を見回すが、自分と、その陰の元である綺麗な黒髪をツインテールにした少女しかいなかった。
「そうさ、君さ。君はなぜそんなところで黄昏ているんだい?」
「いや、ダンジョンでお金を稼ぐためにファミリアを探していたんですが、見事に門前払いでして……」
「ああ、まあそうだろうね……」
少女は自分の格好を見て、納得したように言葉を漏らした。
防具なんてなく、武器もぼろっちいナイフが一本。
ほぼ着の身のままである。
一応言い訳させてもらうと、ぼろっちいナイフは、まあまあいい品だったのだ。
他の武器は全部折れるか曲がってしまい、もう使い物にならない中、このナイフだけはきちんと原型をとどめていたのだ。まあ、ゴブリン二百匹目あたりで芯に罅が入ってしまって、もう修復不可だが……。
「ねえもしも、もしもだよ? 何の実績もなくて、眷属一人いない神様が眷属を募集していたら、君はそこに入るかい?」
「それって……」
その言葉で、気が付いた。
目の前にいる少女が、この地上に降り立った神々(デウスデア)の一柱だということに。
「……もし、そんなファミリアがあるんだとしたら喜んで入りますよ」
「そう……ボクは、ヘスティア」
少女の姿をした神は、夕日を背に、その表情に微笑みを浮かべて言った。
「もし、もしだよ? 君に帰る場所がないんだとしたら、ボクの――」
「――そこからは、自分に言わせてください」
そこまで行ったところで、神の少女――ヘスティアの口に手を当て、次に紡がれるはずだった言葉を止めた。
その言葉は、ヘスティアに言ってもらうのではなく、自分が、言うべきだと思ったからだ。
「もしよかったら、あなたのファミリアを自分の帰る家にさせてくれませんか?」
「……ああ! もちろんさ!」
そうして、自分はこの世界の中心で、自らのファミリアを見つけたのだった。
「それにしても君、結構キザだね」
「……そうですか?」
爺さんの癖が移ってしまったのかと、そんな笑えない言葉が脳裏によぎるも、ニコニコと笑みを浮かべながら先を行くヘスティアの姿を見たら、まあ、いいかと思った。
なんか、三点リーダーって偶数で使うらしいですね。
正しくは、作者ごとの表現技法で違うらしいですけど、とりあえずオーソドックスなやり方を基本にやっていきたいと思います。
三の丸さま、誤字報告をありがとうございました。