ロジャーの処刑後、シャンクスはクルーのメンバーにすべくバギーに声をかけた。
 

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赤髪海賊団、副船長バギー

 

 

偉大な海賊王が処刑された後… 

シャンクスはバギーをクルーの一人として誘うもバギーはこれを拒否した。

ではもしもバギーがこれを受け入れてシャンクスが率いる『赤髪海賊団』の一員になったら…?

 

 

「バギー、俺とともに来い!」

 

 

雨と風で荒れ狂う天候の中を──とある街の人気の無い場所でバギーにそう誘いの声をかけるのはシャンクス。

バギーは自分がバラバラ人間=能力者になった原因を作った男を──もっとも自業自得による逆恨みだが──シャンクスを強く睨み拒否する。

 

しかし、彼を拒絶する一方でバギーは頭の中で考えを張り巡らせる。

シャンクスとともに行動した場合のメリットとデメリットを…

 

シャンクスの強さは己が一番知っていると言っても過言ではない。

自分たちがまだロジャー海賊団に在籍していた頃… 海軍や他の海賊との戦闘の際、自分の隣で一緒に戦うことが多かったのは他ならないこのシャンクスなのである。

 

 

「おい、シャンクス。もしも、てめぇが旗揚げする海賊に俺が入る場合。俺の立ち位置はどうなるんだ?」

 

 

それは好奇心からか、バギーは問いかけてみた。

気に入らない部分もあるが、シャンクスほど強い男はそういない。

自分がメンバーを集めるのも面倒。

 

それに仲間思いのこの男はそう簡単に仲間を見捨てるような真似はしない。

万が一、海軍に捕まったときはこの男は助けに参ることだろう。

 

 

「そりゃあ、俺とお前の二人しかいないから… どっちかが船長で副船長になるだろ?」

 

 

船長と副船長と聞いて、脳裏に在りし日のロジャー船長とレイリーを思い浮かぶバギー。懐かしさと悔しさ、そんなごちゃ混ぜの感情が生まれては消える。

 

 

「シャンク… 俺はキサマのせいでカナヅチになった」

 

「いや、それはお前の自業自得だろ?」

 

やかましい!! お前は黙っとれ!!

 

 

しれっと正論を言うシャンクスに目玉が飛び出さんばかりの勢いでがなり立てるバギー。

 

 

「『海底にある財宝。その全てを手中に収める』──それが俺の夢だった。

 だがバラバラ人間になった今の俺では実現は不可能。その原因を作ったのはお前だ」

 

「原因って、後ろから声をかけたら勢い余って食べた──ってあのときのだろ?

 しかも敵の船から奪った悪魔の実をみんなに内緒で…」

 

だから、黙っとれ!! お前は!!

 

 

こんなやり取りをすること数回。

ようやく本題に入る。

 

 

「俺が『海底にある財宝を手に入れるのに力を貸せ』と言ったらどうする?」

 

「ああ、別にいいぜ」

 

いいのかよ!? 少しは考えろ、お前は!!

 

「それでどっちが船長やるんだ?」

 

話を勝手に進めんな!!!!

 

 

バギーはアゴに手を当てて考える。

面倒事に関わった場合… 自分が船長になっていると全責任を負わされる可能性が高い。

だがシャンクスを船長にした場合は全ての罪をコイツに擦り付けて逃げることが可能。

それにコイツがそう簡単にやられるタマではない。

 

 

「よし! 俺が副船長をやるから… シャンクス、船長はお前がなれ!」

 

「お、いいのか?」

 

「おう! その代わり、財宝のこと忘れんじゃねえぞ?」

 

「ああ、任せろ。どうせ目的なんてあって無いようなもんだしな」

 

 

「ハハハ」とのんきに笑うシャンクスにつられて「ぎゃははは」と品のない笑い方をするバギー。

 

 

「よーし、まずは船の調達から始めないとなー」

 

そこからかよ!?

 

 

「さーて、ここから忙しくなるぞー」とクルーになったばかりの仲間を置いて港へ向かうシャンクスにバギーは「決断を下すのは早まったか…?」と早くも後悔する。

 

 

「──で、だ。これは何だ?」

 

「船」

 

 

シャンクスが答えるそれは船は船でも小型のボート。それもオールで漕ぐものだった。

 

 

アホか、お前は!?

 こんなのに乗ってたら、ものの数分で海の藻屑になるわ!!!!

 

 

海の方を指差すバギー。

これでもかというぐらいに海は荒れていた。

 

 

「いや、タダで貰えたのはコレだけだったんだよ」

 

 

「それに…」続けて言うシャンクスと言葉にイヤな予感が走るバギー。

このご時世にボートとはいえタダで、それも得体の知れない人間に渡せるものだろうか? 渡した人間に何か裏があるのではないか? …と、

 

 

「急がないと海軍がここに来るぞ?」

 

 

言ったそばから海軍が雪崩のように押し寄せて来る。

 

 

「海軍のみなさん、あいつらがロジャー海賊団の一味ですじゃ!」

 

「あ、ボートをくれた親切なじいさん」

 

 

先頭に立って二人を指差すのは腰の曲がったヨボヨボのじいさん。

 

 

「あのジジイが俺たちを売ったんだよ!! 気付けよアホ!!!!

 

「捕まえられる前に出航するぞ!」

 

 

バギーの襟首を掴むとボートに飛び乗り、そのまま大海原へとオールを必死に漕いでボートを動かす。

 

 

「逃がしてたまるか! キサマら二人を海軍に引き渡して海賊王への足掛かりにしてくれるわ~~~っ!!!!

 

 

海軍を押しのけて手足を大きく振って追いかけるじいさん。

さらに大きく波がうねる海面へなんの躊躇いもなく飛び込みバタフライで二人の跡を追う。

 

 

「ムダに元気だな、あのジジイ!」

 

「それに野望がでかいな、あのじいさんを仲間にしねーか?」

 

「するかアホ!」

 

 

海を泳ぐ老人に黒く大きな影が忍び寄り、やがて老人の近くで鎌首をもたげて、それは浮上した。

それは巨大なウミヘビ、海王類の一種だった。

大口を開けて老人へと迫り来る海王類。その場にいた誰もが老人の最後を想像した。

 

 

ジジイ、ナックル!

 

 

枯れ木のような細腕からは想像がつかない腕力で老人は海王類の顔面を殴打。殴り飛ばして見せた。

 

 

「「 ええぇぇ~~~っっ!!!? 」」

 

 

予想外の光景に全員が驚きの声を上げる中、ただ一人シャンクスだけは老人の実力を称賛していた。

 

 

「ちぃっ… ワシも老いたか、今ので仕留められんとは!」

 

 

老人の言葉通りに海王類は生存。

敵わぬと見て、海中深くへと身をくねらせて逃げ出す。

 

 

「あのじいさんスゴいな、やっぱ仲間にしないか?」

 

「アホか!? 今のうちに逃げるんだよ────っ!!!!」

 

 

オールをひたすら漕いでその場から離れるバギー。

もはや追いつけないと判断したのか、海軍はもとより老人も悔しそうな表情を浮かべるだけで追うような真似はしなかった。

 

赤髪海賊団、副船長バギーの一日目はこうして終わりを告げた。

 

 

  

 




(´・ω・)にゃもし。

思い付き短編よー。


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