拝啓 突然ですが、聖女になりました。あと、地球で元魔王や悪魔神との同棲生活始めました。by勇者   作:有栖川結城

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001 うん。これはどういうことだろう。

 僕の体がアルテイシアルになっている。

 

 この世界が地球であり、日本であり、そして自分が東京にいるということも紛れもない事実だ。

 

 そして、僕の体が、アルテイシアルになっているというのもまた紛れもない事実。

 

 髪の毛を10本ほどつまんで、それを見てみれば、金髪だった。

 

 それに、後ろの髪の毛が首に当たって少し痒い。

 見ないでも、触らなくとも自分の髪の毛がそんだけ長くなっているという事実を否応なくつきつけられる。

 

 このストレートの金髪はまさしくアルテイシアルのものだ。

 

 何が起こったのか?

 

 予想できることとしては。

 

 詠唱が間違っていてシアルの体と僕の意識だけが地球に送還されただとか。

 

 ・・・・ありえるな。

 

 もし、本当にそうなら大変だ。

 

 早急に対応を考えなくては。

 

 シアルの体とタカト、つまり僕の意識が地球に送還されたのだとすれば、あの世界に僕の体が残っていることになる。

 そして、その僕の体の中にシアルの意識が入ってるのと同意である。

 

 さて、どうしようか、と思った時だった。

 

 不意に声をかけられた。

 

『最初に謝っておきます。

 すいません、こうするしかありませんでした。

 事情により、こういう形になってしまいました。』

 

 シアルの声だ。

 しかも、念話だ。

 

「シアル!?どうしてこうなった!?」

 

 どうして念話できるのか?

 とかいう疑問より前に、思わず叫んでしまった。

 シアルの可愛く高い声で。

 

 いや、恥ずかしい。

 誰にも見られてなくて良かった。

 ちょうどこの周辺には人がいない。

 

 だが、シアルには聞こえたはずだ。

 別にそのぐらいいいか。

 

 まあ、気を取り直して冷静になろう。

 

『それで、何があった?』

 

 どんな衝撃的な答えが出ても大丈夫なように、深呼吸で心の準備をして、シアルに問い直す。

 

 そして、シアルの答えは予想通りに・・・・・、予想外の答えだった。

 

『タカト様が元の世界へ戻った後の話です。

 ベルがタカト様を送還した後、タカト様の肉体が危篤状態であると気づいたのです。

 確かにこの世界へタカト様が送還されたことでタカト様の魂は完全に元の状態になりましたが、体は危篤状態のままでした。

 そこで話し合った結果、私の体も送還し、その体にタカト様の魂を入れるということで決まったのです。』

 

 頭がオーバーヒートしそうなのは勇者生活ではよくあることだった。

 そして、この説明にも頭がオーバーヒートさせられそうになる。

 

 ええと、僕の魂は魔王との戦いの後、地球に送還することで修復できた。

 しかし、僕の体は危篤状態のままだった。

 だから、シアルの体も地球に送還し、その体の中に魂をはめこんだ。

 

 それはそれは。

 

『色々と疑問点があるんだが・・・シアルは良いのか?』

 

『タカト様のお陰で世界は救われました。そのタカト様のためなら如何なることでもする次第です。』

 

 うん。

 

 いろいろな疑問はほっぽり投げといて、シアルがいいのなら別にいいか。

 

 ---いや、よくないな。

 

『この体に変身魔法をかけるのは無理か?』

 

 僕は異世界で変身魔法を使ったことはないが、詠唱を組み立てることさえできれば僕にも使うことができるはずだ。

 

 もし、変身魔法が使えるのなら、完全に東條崇人としてこれからも生活することができる。

 

 それに対するシアルの答えは半分肯定し、半分否定する内容だった。

 

『私の体がタカトの姿に変身することが可能なのは実証済みです。

 ですが、同時に変身魔法によって魂が削れてしまうということも実証されました。

 なので、タカト様の魂のためには、変身魔法を極力使われない方がよろしいかと思われます。』

 

『確かに、魂の剥がれていくあの感覚は二度と経験したくない。』

 

 というか、『魂が削れる』というのは僕の中では一種のトラウマになっている。

 

 あの背筋の寒くなるような感覚は、それを体験した者じゃないと理解できないだろうが、二度と経験したくない。

 

 アドレナリンが大量に分泌されたため、魔王との戦闘中にはそれほど辛くはなかったが、戦闘が終わった後はまるで生気を失っていたからな。

 

 変身魔法は使えない、な。

 なら、幻影魔法か。だけど、体に触られたら正体が判明するのが問題点だ。

 

 ---ーん?

 

 そのとき、根本的な疑問が浮かんだ。

 

 この世界は、地球だ。

 剣と魔法のファンタジーの世界では無いのだ。

 

『てか、この世界で魔法使えるの?』

 

 その僕の疑問に対してシアルは即答した。

 

『使えるはずです。まず、鑑定魔法で自分を鑑定してみてください。』

 

 アルテイシアルの言葉に従って、僕にステータス鑑定魔法をかける。

 詠唱もなく、難なく掛けられた。

 

 ステータスとは神話の時代、ある国の建国者が神に頼んで作ってもらったシステムで、自身の能力を数字で表してくれるというものだ。

 

 そのステータスを鑑定する、ステータス鑑定魔法がこの世界でも通用できるらしい。

 

 で、鑑定結果がこちら。

 

 

 

 

 《東條・崇人【アルテイシアル】

 

 

 

 称号

 元異界からの勇者

 TS娘

 

 LV362(176UP!)

 

 魔力量40,000,000(38,000,000UP!)

 

 

 魔法

 

 物理魔法LV10以上(2UP!)

 

 術理魔法LV9(UP!)

 

 物質魔法LV9(2UP!)

 

 熱力魔法LV9 (2UP!)

 

 電磁気魔法 LV10以上(UP!)

 

 虚空生命魔法LV8(2UP!)

 

 時空魔法LV7(3UP!)

 

 創世魔法LV4(NEW+3UP!)

 

 

 

 スキル

 

 無詠唱LV8(UP!)

 

 術式省略LV3(NEW+2UP!)

 

 勇者LV10以上(UP!)

 

 戦神の加護LV1(NEW!)

 

 魔力神速回復LV9(NEW+8UP!)

 

・・・・etc》

 

 

 

 

 ・・・・これも色々とツッコミどころ満載なんだけど。

 

 ステータスが。

 物凄いことに。

 なっている。

 

 まず、レベルが滅茶滅茶上がってる。176ってどんだけ上がってるんだよ。スキルも増えてるし。

 

 勇者スキルがやっとLV10になったんだけど、これ意味ないよね?

 この平和な地球で使うことないと思うんだけど。

 

 特に魔力量。

 4000万の魔力量ってなにそれ。

 

 確か、伝承によると女神様の魔力量が300万程度だったよね。

 

 余談だが、女神様は直接に世界へ介入することができないらしい。

 だから、魔王を倒すためには勇者を召喚するのだとか。

 

 それはともかくとして。

 

 魔王を倒す前、僕の魔力量は200万だった。

 

 女神様に迫るほどの魔力量を持っていた僕は十分チートな存在であった。

 

 だが、このステータス鑑定結果は。

 

 4000万と出ている。

 

 もはやどう反応していいのかわからない領域だ。

 

 魔王を倒しただけでこんなにもステータスは上昇するものなのか?

 

『なあ、シアル、シアルも僕のステータス鑑定できるか?』

 

『・・・あ、はい、一応、タカト様のステータス鑑定をできないことはないのですが・・・。』

 

 と言って、シアルは言い淀んだ。

 

 言い淀んだことから、ああ、シアルも多分僕と同じ鑑定結果になったのだろうと、大体の察しがつく。

 

 勇者としてあの世界で過ごしていくうちに、相手の感情や思っていることを見抜く力を手に入れたのだ。

 

 相手考えていることがわからないとやっぱ不安。

 なぜなら、異世界では、裏切りなど日常茶飯事のことなのだから。

 

 さっきのシアルの反応から推測するに、自分のステータスを鑑定することはできたのであろう。

 

 だが、言い淀んだことから推測するに、自分の鑑定結果に自信がないものと思われる。

 

 なぜ、鑑定結果に自信がないのか。

 

 答えは僕の鑑定結果から推察できる。

 それは、シアルが鑑定した僕のステータスが(だけど今は同じ体だからシアルのステータスでもあるか。)あまりにも高すぎるから、鑑定結果の自信がないからだと思われる。

 

 あとは、それを確証するだけだ。

 

『シアル、それじゃあ僕のステータスの魔力の欄はいくつになっている?』

 

『はい、多分違うと思うのですが・・・4000万となっています。』

 

『やっぱりそうか。実は僕も魔力量が4000万だとか表示されていて、鑑定結果が間違ってないか悩んでいたんだ。』

 

『あ、それじゃあこの鑑定結果は合ってたのですか!』

 

 シアルの驚いたような声が脳内に響く。

 

 うーん。

 やはり、ここまでステータスを上げた原因は魔王を倒したのと、自分の魂がシアルの体と融合したから、ぐらいしか思いつかない。

 

 まあ、答えのわからない疑問は脳内の片隅に置いておくことにする。

 

 僕の主義だ。

 

『とにかく、帰ろうか。』

『は、はい!そうしましょう!』

 

 さて、家族は久しぶりに帰った僕を見て、どう反応するだろうか。

 

 ----それよりも家族を納得させる方法を考えるのが先決だな。


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