『それ』は異端だった。
使命なんざ知らない。
忠誠?クソくらえだ。
ただ、戦いたい。とにかくド派手に暴れ回りたい。
仲間に付いて行くと決めたその理由も、誰に咎められることなく暴れられるからに過ぎなかった。
だから目的の『地球』に辿り着いた彼は、何も考えずその少女に取り憑いた。
適当に契約を果たして、後は好き勝手に暴れてやろう。
その程度の感覚でしかなかった。
良々はいつの間にか人気のない場所へ到着していた。
そこはもう使われてない古びた廃倉庫が幾つも並んで建てられていた。
中には錆びたドラム缶や一斗缶が積まれて、訳のわからない機材も放置してあった。
良々「はあ…、一体何だったの?さっきの…」
さっき下品な言葉遣いになり、自分が自分じゃないそんな現象に戸惑いを隠せないでいた。
良々「やっぱり、ついてないのかな…、私…」
???『いや…“憑いてる”ぜ』
良々はギョッとした。
一瞬空耳かと思ったが、それは否定された。
良々の体からこぼれ落ちる砂によって。
良々「なっ、何…?これ…、一体何なの?」
その砂は次第に集まり、上半身と下半身が上下逆の『何か』になった。
良々「う、うわぁぁぁぁぁ…!!」
良々は腰を抜かし、後ずさる。
???『どうしてお前、あの時俺を止められたんだ?──妙な奴だな』
良々は訳がわからなくなってきた。
こいつは一体何?
さっき私の身体を動かして、目尻を吊り上げて、目を血走らせて、周囲のすべてを威嚇してたのはこいつだったの??
???『まあ、いいや…。今から決まり事言うからな。一度しかいわねぇからよく聞けよ』
『それ』は面倒臭そうに呟くと、こう言った。
???『えーと、…お前の望みを言え。どんな望みも叶えてやろう。お前の支払う代償はたった一つ』
良々「の、望み?」
良々は怪訝そうに聞き返す。
???『そうだ、望みだ。早く言え、叶えてやる』
良々は不思議に思いながらも願い事を口にしようとした。
良々「私の望みは…「待って!!」ッ!?」
突如、その場に制止の声が響く。
見るとそこには今朝ぶつかった少女・ハナが息を切らせながら、こっちに歩み寄ってきた。
良々「あなたは…今朝の」
???『何だ、テメェ!俺の契約の邪魔すんじゃねぇ!!』
ハナは『それ』を無視し、息を整え良々に話し掛ける。
ハナ「今朝から…もしかしてと思ったんだ…、さっきので確信した…。君が…“特異点”だって事が…」
良々「え?特異…
???『“特異点”っ!!?マジかよ!!だああああああ、もう最悪じゃねぇかぁぁぁっ!!!』
ハナ「うるさい!!」
訳がわからない良々。
良々が『特異点』と知って嘆く『何か』。
騒ぐ『何か』を踏み潰すハナ。
そしてハナはまるで希望の光を見るかの様な目で良々を見る。
ハナ「見つけた…。君なら…“デンオウ”になれる」
良々「え?で、でんおう??」
ハナ「もうすぐ闇の世界から侵略者が来る!時の運行を守らないと……!」
話は良々を置いてどんどん先へ進んでいく。
その頃、良々を追跡中のみゆき達はというと、
みゆき「野上さん、確かここら辺に来た気がするんだけど…」
あかね「お!おったで!」
あかねの声に集まり、物影からこっそり覗いてみた。
なお「一体誰と話してるの?」
やよい「向こうはなんだか深刻そうだけど…」
れいか「ちょっと、みんなさん。のぞき見は…」
れいかはあまり乗り気ではなかった様だが、遠くで良々とハナが何を話してるのか気になり、なんとか聞き耳を立てる。
???「クルー!」
あかね「あっ!?」
みゆき「キャンディ!?」
突然、みゆきの鞄の中から羊に似た妖精が飛び出した。
妖精の名前はキャンディ。
メルヘンランド出身の妖精である。
キャンディ「みゆき、みんな、大変クル!!」
みゆき「こ、こらっ、キャンディ!…シーッ」
あかね「一体どないしたんや!?」
皆は慌て飛び出たキャンディに驚くも、キャンディは何かを感じているのか、半泣きになりがら訴えかけてくる。
キャンディ「何かが来るクル~!」
れいか「何かって、まさか…!」
なお「あいつらが!?」
5人はウルフルン達、バッドエンド王国の侵略者が来たと思った。
だが、
キャンディ「違うクル!もっとイヤな気配がするクル!まるで、バッドエナジーを凝縮したような嫌な感じが…『キーッ、キッキッキッキッキッキッ!!』ッ!?」
「「「「「ッ!!?」」」」」
突如、響いてきた不快な笑い声に5人と1匹は物影から身を乗り出し、声のする方を見た。
時間を少し巻き戻して良々とハナはというと…。
ハナ「とにかく、あなたの力が必要なの!」
良々「いや、全然わかんないだけど…」
口下手のハナのわかりづらい説明に、良々は最早混乱気味であった。
そんな時である。
???『キーッキッキッキッキッキッキッ!!』
倉庫の屋根の上から不快な笑い声が響き渡った。
そこには蝙蝠の様な怪人がこちらを見下ろしていた。
良々「げっ!?何あれ!!」
ハナ「イマジン!!!!」
良々とハナは驚愕するが、驚きの種類が違っていた。
良々は砂の怪物に続いてまた変なのが来たと驚く程度だったが、ハナは恐怖と絶望感が含まれたモノだった。
その蝙蝠の怪人は便宜上、『バットイマジン』と言うのだが、良々が知るよしもない。
バットイマジン『子~猫ちゃ~ん、みっけ♪』
ニィとバットイマジンの目が細くなった。
おそらく笑ったのだろう。
バットイマジンはピョンと跳ぶと地面に着地した。
ハナ「い、一体何の用なの!?」
ハナはバットイマジンに敵意を込めた視線を向けながら声を出す。
バットイマジン『キーッキッキッキッキッキッキッ、それは自分がよく分かってんじゃねぇのか?ええ?…泥棒猫ちゃん。ジョーカーの旦那も人使いが荒いぜ。いや、蝙蝠使いが荒いと言った方がいいのかな?まあ、何にせよ、俺はジョーカーの旦那にお前から“ベルト”と“パス”奪回するよう頼まれてんだ。無駄な抵抗しないでもらえるかなぁ?────そんじゃま、早いとこ“ベルト”と“パス”を出してもらおうかな…?』
良々「パス?」
良々はバットイマジンのパスという言葉に自分の持っていたパスの事を思い出し、ハナに声を掛けようとしたが、
ハナ「ふざけないで!!この“ベルト”はあんた達イマジンから未来を守る為のモノなの!あんた達の思い描く未来────バッドエンドなんかには絶対させない」
ハナが叫んだ事で、タイミングを見失ってしまった。
バットイマジンはこちらに少しづつ近付いてくるもハナは少しも臆することなく良々の前に出て立ち塞がる。
バットイマジン『キーッキッキッキッキッキッキッキッキッキッキッ…、威勢がいいのは結構だけどよぉ…そのベルトを使えるのはこの時代の“特異点”だけじゃねぇのかぁ?残念だけどお前じゃ使えねぇよ』
ハナ「いるわ!“特異点”なら…」
バットイマジン『何?まさか…』
ハナ「そう、この子が“特異点”よ!」
そう言ってハナは後ろにいた良々の肩を掴んだ。
良々「………え?」
いきなり巻き込まれた良々はたまったものではない。
良々「ちょっと待って!だから“特異点”って何!?何の話してるか解んないんだけど!!どうして私を巻き込むの!!?」
ハナ「早くベルト…って、あーっ、パスがないの忘れてた!!」
良々「あんた!人の話聞けよ!!」
バットイマジン『テメェら…、俺を無視して漫才とは随分余裕じゃねーか。ハッ!!』
バットイマジンは手の平から音波砲を放出し、良々とハナはスレスレでそれを避けた。
「「きゃああああああああああ!!!」」
外れた音波砲は倉庫の壁を破壊し、砂埃を掻き立てる。
良々「ハハハ……な、何あれ…?」
良々はもう目の前がグルグルと回り苦笑するしかなかった。
これは夢だ、これは夢だ、と必死で自分に言い聞かせるが、
ハナ「バカ!何やってんの!?」
耳を引っ張られ現実に引き戻された。
バットイマジン『にしても、“特異点”か…ついでに潰すか!!』
バットイマジンがこちらに向かって歩きだした。
あかね「あかん!!野上さんが危ない」
みゆき「みんな!!」
やよい「うん!」
なお「いくわよ!」
れいか「いつでも…!!」
あかねの声を筆頭にみゆきが皆に声を掛け、やよい、なお、れいかが応える。
皆はファンデーション型アイテム『スマイルパクト』を取り出しその蓋を開く。
中に嵌め込まれた七色の宝石の上部に彼女たちはそれぞれピンク、オレンジ、イエロー、グリーン、ブルーの色を表す小さなリボン型の小物・キュアデコルをセットすると、『レディ!』と音声が発せられ、少女たちはそれを確認すると、声を揃えて叫んだ。
みゆき、あかね、やよい、なお、れいか
「「「「「プリキュア・スマイルチャージ!!」」」」」
『Go!GoGoLet’sGo!!』の音声の後、
『Let’sGo・Happy(Sunny)(Peace)(March)(Beauty)!!』
5人はそれぞれ自身のパフを体に当ててゆき、コスチュームと髪形を変えていく。
みゆきは長い髪の束が伸びたツインテールとピンクの衣装コスチューム。
あかねはシニヨン状に束ねられた短髪とオレンジの衣装コスチューム。
やよいは扇形に広がる金髪のポニーテールとイエローの衣装コスチューム。
なおは髪量が側頭部と後頭部を結んだトリプルテールとグリーンの衣装コスチューム。
れいかは髪型が後方に半円形に伸び、ブルーの衣装コスチューム。
最後にパフを両頬に当てると変身完了。
みゆき「キラキラ輝く未来の光、キュアハッピー!」
あかね「太陽サンサン熱血パワー!キュアサニー!」
やよい「ピカピカぴかりんじゃんけんポン♪キュアピース!」
なお「勇気リンリン直球勝負!キュアマーチ!」
れいか「しんしんと降り積もる清き心、キュアビューティ!」
「「「「「五つの光が導く未来、輝け!スマイルプリキュア!!」」」」」
バットイマジン『キーッキッキッキッキッキッキッ、逃げろ逃げろぉ。俺は命乞いの言葉を聴くのが何より好きなんだ。毎晩、子守歌の代わりに聴いて寝るくらいな。おっと、駄洒落になっちゃったか?』
バットイマジンは追ってくる。
まるで無抵抗なネズミを弄ぶ猫のように。
倉庫の裏路地の奥の奥へと逃げていく、良々とハナ。
ハッピー「待ちなさい!!」
バットイマジン『ンン?』
すると、バットイマジンに向けて制止の声が掛かった。
良々も声のした方を見るとそこにはスマイルプリキュアが立ち並んでいた。
良々「あれ?星空さんと日野さん。どうしてここに?」
煌びやかな衣装に身を包んだみゆき達を見て良々は思わず声を上げる。
ハッピー「あ!ゴメン、野上さん!私が星空さんってことは秘密なの」
サニー「だから何であんたは毎度毎度そう言うの!バレバレやん!!」
自分達がプリキュアな事は秘密なのだが、ハッピー・みゆきは早々ばらしてしまった。
良々「日野さんも可愛いよ。アイドルみたい」
サニー「え?そ、そう?」
サニーも自分が褒められつと悪い気はしないので頬を赤らめて照れた。
マーチ「サニーもきっちりばらしてんじゃん」
マーチはサニーも人のことは言えないと思いながら頭を抱えた。
バットイマジン『誰だ?お前ら…』
ピース「私達はプリキュアよ!!」
バットイマジン『プリキュア?ああ、ウルフルンの旦那が毎度毎度手こずってる奴らか…。んで、そのプリキュアが何の用だ?』
マーチ「その前にあなたは一体何者なの?ウルフルンやアカオーニの仲間?」
ハッピーがまず訊いた。
バットイマジン『ウルフルンの旦那やアカオーニの野郎の事か?別に仲間じゃねえよ――ただ、手を組んでるだけ。だけどな…俺はジョーカーの旦那にお使いを頼まれて、その真っ最中なんだ。全くめんどくせーのなんのってたまったもんじゃねーよ。俺はさっさと自分の使命を果たしたいのにアイツときたら…(ぐだぐだべらべらなんちゃらかんちゃら)』
サニー「(何やコイツ、よう喋るな~)」
サニーはバットイマジンのあまりの口数の多さに少し調子が狂わされてた。
バットイマジン『な?そう思わなくね?』
サニー「え?」
バットイマジン『あ?んだよ。ノリ悪りーな、おい』
長話も一区切りついた所で『さてと…』とバットイマジンは周囲に漂わす空気を変えた。
バットイマジン『そういう事だからよ。…邪魔する気ならお前たちから潰してもいいんだぜ?』
さっきとは打って変わり、強烈な殺気を5人に向けられ、全員気を引き締める。
バットイマジン『行くぜー!!』
バットイマジンがプリキュア達に向かって羽を広げ滑空する。
マーチ「はぁっ!!」
バットイマジン「うおっとっ!!」
まず、初めに動いたのがマーチ、周囲の空気の流れでとっさに反応できた。
カウンターの右ストレートをくらわせようとしたが、バットイマジンは旋回し、回避した。
サニー「でやあああああっ!!」
今度はサニーが上から強烈な拳を振り下ろす。
しかし、バットイマジンは後ろに跳ねとび回避。
バットイマジン『!(冷気?)』
ビューティ「はぁ!!」
寒さを感じ後ろを振り返るとビューティがミドルキックをくらわせる。
だが、
ビューティ「っ!!」
バットイマジン『いいコンビネーションだ。つい手が出ちまったぜ。だが───』
それを左腕で防ぎながらビューティの右足を右手で掴んだ。
しかし、
ピース「この!」
バットイマジン『グアッ!!』
バットイマジンの背後からピースが雷を纏ったタックルを叩き込みバットイマジンを吹き飛ばした。
バットイマジン『チッ!!』
邪魔が入った事に苛立つも、体制を立て直そうとするが落下地点にはハッピーが回り込んでいた。
バットイマジンがそれに気づいた時には遅かった。
ハッピー「やぁっ!!」
バットイマジン『グアッ!!』
バットイマジンの鳩尾にハッピーのパンチが炸裂!
バットイマジンは地面にバウンドしたが、もんどりうって着地した。
バットイマジン『(くそ、5対1じゃさすがにキツイか…。ここは一旦引くか?)』
流石に頭数では敵わないと悟り、逃走を考えたが、
バットイマジン『(ん、いや待てよ…、あいつらの必殺技は確か…)』
何かを閃いたのか口元を上げると、バットイマジンは黒い蝙蝠傘を2本出現させる。
バットイマジン『なかなかやるな。そんじゃま、こっちもちょっと本気だすか』
二本の傘を平行に構え、強靭なダッシュ力でいつの間にか一ヶ所に集まったプリキュア5人に突進した。
5人は散り散りに跳び回避する。
それを見るとバットイマジンはさっきの様子見で一番弱そうな一人に標的を絞る事にした。
バットイマジン『まずテメェだ!』
ピース「あ…」
蝙蝠傘が迫る。
ピースは動けない!
ビューティ「ピース!」
そこに割り込んできたのはビューティ。
氷で剣を作り傘を受け止める。
バットイマジン『一本じゃダメだ…』
そう、傘は2本ある。
もう一方の傘がビューティの脇腹に決まりふっ飛ぶ。
ビューティ「がふっ!!」
ピース「ビューティ!!」
ピースが叫ぶも、今度は身体を捻った蹴りがピースに入る。
ピース「ああっ!!」
ハッピー「ピース!!ビューティ!!」
サニー「この!」
今度はハッピー、サニー、マーチがバットイマジンに挑む。
サニーが跳び蹴りを繰り出すが、バットイマジンはそれを紙一重で避けると足首を掴み、工場の壁に向かってぶん投げた。
サニー「うわっ」
サニーは壁を粉砕し、工場内に投げ込まれた。
マーチ「サニー!!」
マーチはサニーを気にするも風を纏った素早さで殴り掛かるが、今度は傘が開き、マーチの拳を盾の様に防いだ。
続いて盾にした傘で払いのけ、マーチの体制を崩すともう一方の傘で槍の様に突く。
マーチ「ぐふっ!」
傘は尖ってはいなかったもののマーチの胸部に入り、突き飛ばされる。
ハッピー「みんな!…くっ!」
最後にハッピーが後ろに回り込み、バットイマジンの首めがけて回し蹴りを叩き込もうとする。
ハッピー「はぁっ!!」
しかし、バットイマジンは全く後ろを振り向かずに頭を屈めて回避した。
ハッピー「え!?」
ハッピーは驚くも、バットイマジンは傘ではたかれ、ふっ飛ばされた。
ハッピー「ああっ!!」
バットイマジン『どうした?そんなもんか?プリキュア』
キャンディ「頑張るクル。みんな!!」
隠れていたキャンディも出てきて応援する。
良々「(うぉ、何この大福!めちゃくちゃかわいい!)」
良々はキャンディを見てそう思った。
マーチ「こうなったら、みんなの必殺技を撃つしかないわ」
バットイマジン『必殺技か?ならやめといた方がいいぜ』
バットイマジンはマーチの言葉を聞き取るとこう言った。
バットイマジン『この傘は特別製でな、どんな攻撃も防いじまうんだ。例えお前らの必殺技をまとめて放とうともコイツは破れねぇ、よ』
ハッピー「そんなの、やってみなくちゃわかんないじゃない」
バットイマジン『絶対無理だ、やめとけ。この傘の前じゃ、お前らの必殺技など霧雨もならねぇよ。キッキッキッキッ!』
サニー「なんやと~?なら、試してみるかい!!」
マーチ「そこまで言われちゃ引き下がれないわね」
5人の中でも特に負けず嫌いのサニーとマーチが声をだす中で、ビューティだけ冷静に僅か疑問に思っていた。
何故、ここまで露骨に挑発するのか、と。
ハッピー「じゃあ、みんな全員で必殺技を放つわよ!!」
ハッピーの声に皆は頷く、ビューティも気にすることなく必殺技の体制にはいる。
まず、ハッピーが前に出た。
スマイルパクトに気合を込めると、彼女は両手でハートをつくり、前方に突き出された両腕から桃色の光線が発射された。
ハッピー「プリキュア!ハッピーシャワー!」
続いてサニー。
上空に炎を凝縮した球体が出現した。
サニー「プリキュア!サニーファイヤー!」
炎の球体をサニーはバレーボールの要領でアタックした。
続いてピース。
ピースの両腕に電流が迸る。ある程度のパワーを確認し、ピースは両手を「チョキ」の形にして前方に突き出すと電気が放出された。
ピース「プリキュア!ピースサンダー!」
続いてマーチ。
マーチには風を凝縮した球体が目の前に召喚された。
マーチ「プリキュア!マーチシュート!」
風の球体をマーチはサッカーボールの要領で蹴るかのように勢いよく飛ばされる。
ビューティは右手に氷を凝縮し、左手でそれぞれ左上・右上・縦の順で三本の線を引いて雪の結晶を作った。
ビューティ「プリキュア!ビューティブリザード!」
雪の結晶と氷の球を合わせた光波状の冷気を放つ。
そして、必殺技の一斉攻撃が決まった。
ハッピー「やった!」
大きな爆発を起こし、ハッピーを含む皆は勝利を疑わなかった。
サニー「よっしゃ!さすがに…あの傘もこの攻撃には耐えられへんやろ…」
ピース「つ、疲れた…。ハァ…」
サニーはガッツポーズをし、ピースはパワーを使い果たしてへたりこんでしまった。
ビューティ「でも…こんなにあっさりやられて、どうかとおもいます…が……」
マーチ「何言ってんの。皆の必殺技をくらって…倒せないわけ…」
ビューティはどこか腑に落ちない感じだったが、マーチが喋りかけたその時、
バットイマジン『キッキッキッキッキッキッキッキッキッ…』
「「「「「ッ!!?」」」」」
その場にまた不快な笑い声が響き渡った。
バットイマジン『さすがプリキュア、ウルフルンの旦那が手を焼くだけの事はある。今のはくらったらやばかった』
ハッピー「どうして…?」
ハッピーは何故バットイマジンが無傷なのか解せなかった。
バットイマジン『どうして?俺は最初からお前らとまともにやり合う気なんてサラサラねーよ──お前らプリキュアの必殺技が一度しか撃てない事はから知ってた。一人や二人に対して警戒されるより、『お前らの必殺技をまとめて放ったとしても破れない』なんてハッタリをかまして全員まとめて放ってくるのを待っていた。後は傘の影に隠れて避ければいいだけだ…』
ペラペラとご丁寧に説明され、プリキュアの5人は悔しさの余り奥歯を噛み締めた。
キャンディ「ひ、卑怯クル!どうしてまともに戦わないクル~!」
キャンディが皆に変わって叫ぶ。
バットイマジン『卑怯?おいおいおい、何ほざいてんだ。俺は蝙蝠だぜ?──「卑怯なコウモリ」て本読んだことねぇのか?俺をウルフルンの旦那やアカオーニの野郎、アカンベェと一緒にされちゃあ困る。あいつらは粗暴過ぎて不器用な奴だ。俺は効率的に敵を倒せればそれでいいんだよ』
ハッピー「そんなんだからあなたは動物達からも鳥達からも相手にされなくなっちゃうのよ」
バットイマジン『んだとぉ?このガキ…』
ハッピーはバットイマジンに対し、悪態をついた。
しかし、それはバットイマジンの怒りを買っただけだった。
バットイマジン『なら、もうサービスタイムは終わりだ。ここから先はガチで行っちゃうぜぇ』
バットイマジンは蝙蝠傘を取り出し、プリキュアに歩み寄っていく。
必殺技を放ち、エネルギーを使った今の彼女達では勝ち目はほぼ皆無である。
キャンディ「わあああ、マズイクル~!プリキュアのエネルギーが尽きかけているクル~!!」
良々「それってピンチって事!?」
キャンディ「そうクル~!!」
良々「そんな…。星空さん、みんな……」
良々は悔しかった。
何もできずただ見てるだけの自分が…。
何か手はないか考えてたその時。
ハナ「せめて“パス”があれば……」
ハナがそう呟いた。
良々「“パス”?あ!ねぇ、パスって…」
良々は返すはずだったパスを取り出した。
ハナ「それ!一体どこで!?」
良々「あなたとぶつかった、あの曲がり角。あなたに返そうと捜してたの」
ハナ「ありがとう!!これならいけるかもしれない」
そう言ってハナが取り出したのはバックル部分にパスと同じマークの入った銀地に黒模様のベルト。
ハナは銀色のベルトを取り出すと、それを良々の腰に巻きつけた。
ベルトのバックル部分を下腹部へ当てるとベルトは自動で良々の腰へと巻きついた。
ハナ「そのバックル部分にパスを翳して!!」
良々「えっと、こう?」
言われるがままに良々はパスをバックルに横切らせる。
するとベルトから放たれた透明な光が良々の全身を包んだ。
バットイマジン『ん!?』
ハッピー「野上さん!?」
向こうではプリキュアとバットイマジンがこちらに気付き良々の方を見る。
光が晴れると、そこにはレオタードみたく密着した黒いライダースーツを身に纏った良々がいた。
さらに手には手の甲から肘まで覆う白い手甲、
足は膝を覆う程の長い足袋。
靴の代わりに草鞋、髪は線路・レールを連想させるカチューシャで髪を結んだベルトの戦士────『デンオウ・プラットフォーム』がそこにいた。