スマイルプリキュア&時を超える桃太郎   作:紅鮭

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過去を白く、未来を黒く

 

 

 

 

 

 

深夜 0時

 

 

 

 

バットイマジン『ふぅ、やっと回復できたぜ…』

 

 

とある高層ビルの屋上にて、バットイマジンは傷が回復し体が元通りになっていた。

 

 

 

バットイマジン『さ・て・と。面倒くせぇが、キタカゼの旦那に一報しねぇとな』

 

 

 

バットイマジンは頭から音波を放出し、キタカゼと通信できるようにした。

 

 

 

バットイマジン『もしもし旦那、聞こえるかい?』

 

 

キタカゼ[やっと来ましたか。報告が遅いですよ。で、ベルトとパスは回収できたのですか?]

 

バットイマジン『それがよ、最悪の事態だ。ベルトとパスは特異点の手に渡って、もう一体のヤツが裏切っちまった』

 

キタカゼ[何ィ…?]

 

バットイマジン『その上、あのデンオウの強さ。ありゃぁ、もうやべーってーの。プリキュアと戦って比べてみたが、肉弾戦ならそいつら以上だな』

 

キタカゼ[フムゥ…]

 

 

 

キタカゼは通信の向こうで考えを巡らせている。

 

 

 

キタカゼ[そうなれば───あなたは本来の“使命”を全うしなさい。もうベルトの回収はよろしいです。あれは“例のベルト”を作るための試作段階のベルトですから。取られた物に固執するのも詮無きことです…]

 

バットイマジン『会いさ了解…』

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

翌朝 7時 野上宅

 

 

 

PPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPP!

 

 

 

良々「う~ん…」

 

 

 

良々は枕元の目覚まし時計の音で目をさまし、スイッチを止めて再びベットの中に入る。

 

 

 

良々「あと5分…」

 

 

 

低血圧の良々にとって朝はかなりつらいらしい。

 

 

 

???「何が後5分だ。とっとと起きろ!」

 

 

 

ベットを剥がし、頭を軽くひっぱたいたのは良々の兄・野上幸一。

ちなみに高校2年生、良々とは3つ年上。

 

 

 

幸一「朝飯作ってる間に顔洗って着替えてきちまえ」

 

 

 

結構荒々しいが、面倒見のいい兄である。

幸一は部屋のカーテンを開けると下へ降りて行った。

良々はその間に髪を梳かし、顔を洗って、歯を磨き、着替えて居間へと降りてくる。

 

 

 

幸一・良々「「いただきまーす」」

 

 

 

親は朝早く仕事に行ってしまうので、必然的に幸一がご飯を作り、良々と一緒に食べる。

 

 

 

幸一「どうだ?学校は?」

 

 

 

幸一は転校初日の学校について訊いてきた。

 

 

 

良々「昨日はちょっと訳のわからない事に巻き込まれたけど、友達が5人もできた」

 

幸一「ほう」

 

 

 

幸一は納得したようにうなずいた。

 

 

 

幸一「だからか…」

 

良々「何が?」

 

 

 

その発言に良々が尋ねる。

 

 

 

幸一「何だか、昨日から特にお前の顔がいきいきしてる気がしてな」

 

良々「え!───そう…かな?」

 

幸一「良々、もし何か困った事があったら俺に話せよ。後で隠してましたじゃ、俺怒るぞ」

 

 

 

幸一は笑いながらも真剣な眼差しで良々を見る。

 

 

 

良々「ありがとう、兄さん」

 

 

 

良々は朝ごはんを食べ終えると、すぐに鞄を持って登校した。

 

 

 

幸一「さて、俺はまだ時間あるし、ニュースでも見るか」

 

 

 

幸一はテレビを点けた。

 

 

 

 

 

 

『ニュースをお伝えします。昨晩から七色ヶ丘の市街地で奇妙な死体が相次いで発見されました。死因はすべて転落死。被害者には年齢性別など関連性はなく、目撃者の情報を照合したところ「黒い影のようなものが被害者を空高く連れ去った」といい、警察は無差別殺人事件として捜査を続ける方針です』

 

 

 

幸一「おいおい、七色ヶ丘ってここじゃないか…。何事もなければいいんだが…」

 

 

 

しかし、幸一の予想に反してこの日は最悪の日となる。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

七色ヶ丘中学

クラスは今朝の無差別殺人のニュースでもちきりだった。

今日は全校集会で校長先生の話しだけで終わった。

全員速やかに帰宅し、外出は控えるようにの事だった。

 

 

 

そして良々は3年の教室で羽黒テツオを捜していた。

 

 

 

3年生「羽黒なら昨日から来てないよ」

 

良々「どこへ行ったか分かりますか?」

 

3年生「さあ…、昨日から家にも帰ってないみたいだし…」

 

良々「そうですか。ありがとうございます」

 

 

 

良々は3年の先輩から行方を聞こうとしたが、手掛かりはなし。

 

 

 

その途中でみゆきに合流。

 

 

 

みゆき「どうだった?」

 

良々「羽黒先輩、昨日今日無断欠席だって」

 

 

 

しょうがないから担任から聞いてきた住所で自宅まで行く事に。

良々とみゆきはメモを見ながら羽黒の自宅へと向かった。

 

 

 

良々「よくわかんないなぁ…」

 

みゆき「あかねちゃんか、やよいちゃん、連れて来ればよかったね」

 

 

 

両者とも引っ越してきたしてきた者同士、ゴチャゴチャした道に四苦八苦しながら歩いていると公園に通りかかった。

そんなときである。

 

 

 

 

「やめて下さい」

 

 

 

 

良々、みゆきは公園の中から助けを求める声に反応しその方を向く。

 

 

 

 

みゆき「やよいちゃん!?」

 

 

 

見るとそこにはやよいが4人の不良に絡まれていた。

みゆきはいてもたってもいられず、駆け出した。

 

 

 

みゆき「ちょっと、あなた達!やよいちゃんに何するの!!」

 

やよい「み、みゆきちゃん!」

 

 

 

みゆきはその不良に果敢に挑んでいくが、

 

 

 

不良A「お!お嬢ちゃんも可愛いね!どう?俺らとどっか行かない?」

 

 

 

完全に舐められてしまい、ミイラ取りがミイラの状態になってしまいつつあった。

不良は怖いが、今度は良々が勇気を振り絞って向かっていった。

 

 

 

良々「コラ!!二人から手を離せ!!」

 

 

不良A「なんだ、今度────げっ!!」

 

 

良々「あ」

 

 

 

遠くでよくわかんなかったが、近付いて見るとその4人の不良は昨日良々に絡んできた不良共だった。

 

 

 

不良×4「「「「ち、ちーす!!」」」」

 

 

 

不良共は慌てて良々に深々と頭を下げた。

取り残されたみゆきとやよいはその光景にまるで鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしていた。

不良はそそくさと逃げるように去ろうとすると、

 

 

 

良々「あ!待って!」

 

不良×4「「「「はいぃぃぃ!!!何か!?」」」」

 

 

 

良々の一言で背筋をピンと伸ばし、回れ右をした。

 

 

 

良々「ちょっと、訊きたい事があるんだけど」

 

不良×4「「「「はい!何でも聞いてください!」」」」

 

 

 

完全にビビりまくりな事は放っておき、良々は何もしてこないならそれでいいと思いテツオの事を聞いた。

 

 

 

良々「あなた達、七色ヶ丘中学の三年生よね?羽黒テツオ先輩知らない?」

 

不良A「テ、テツオですか?」

 

良々「知ってるの?」

 

不良B「ええ、ダチですから…」

 

良々「どこに居るか知らない?」

 

不良×4「「「「…………」」」」

 

 

 

不良達は何か戸惑っている風にして口を噤む。

 

 

 

良々「どうしたの?」

 

不良A「あ、いえ、テツオの事なんですが…。その…拉致られちまいまして…」

 

良々「拉致られた?」

 

サトシ「はい、まるで蝙蝠の様な怪人がいきなり俺達の前に現れてテツオを…」

 

良々「蝙蝠?」

 

 

 

その言葉を聞くと一人の胸ぐらを掴み上げる。

 

 

 

良々「おい…!!」

 

サトシ「え?」

 

良々「今の話は本当かぁ!?」

 

サトシ「ひぃ!?は、はい!!」

 

 

 

途端に良々の髪形が前髪が真ん中分けとなり、その前髪が赤く染まり、ポニーテールとなった。

 

 

 

やよい「良々ちゃん!?」

 

みゆき「もしかして、モモタロスさんが!?」

 

 

 

そう、モモタロスが良々に憑依し、M良々となっていた。

 

 

M良々「あんの蝙蝠野郎…生きてやがったのかーっ!!!」

 

サトシ「アーレー…」

 

不良A「サトシーッ!!」

 

 

 

そのままブン投げられたサトシという男はそのまま公園の高い木のてっぺんに引っ掛かり、「助けてくれー!!」と泣きわめいていた。

 

 

 

良々『うわーっ!!何てことしてんの!!アンタ』

 

M良々「うるせぇ!!そんな事より、あの蝙蝠野郎…俺の必殺技をくらって生きていやがったとは…。次は必ずブッ倒してやる!!」

 

 

 

そういうと、M良々はそのまま走り出していった。

 

 

 

みゆき「ああ!!良々ちゃん、じゃなくて…モモタロスさん?えっとこの場合を呼べば…どっち?」

 

やよい「どっちでもいいから、早く追いかけようよ」

 

みゆき「いや、私達はあかねちゃん達を呼んで来よう」

 

ハナ「あーもう、あのバカモモ!勝手に飛び出して…。にしても、あのイマジンが生きてたなんて…」

 

 

 

ハナはモモタロスが勝手に外に出たのに憤慨し、同時にバットイマジンが生存に慌てる。

契約が果たされたら厄介だ。

何としてもこの時代で仕留めたい。

そのためには契約者を早く見つけねば。

 

 

 

 

 

 

その頃、あかねは七色ヶ丘中学にいた。

速やかに下校するように言われたが、少しばかり部活の練習をし、部員全員で集団下校する事になった。

 

 

 

後輩A「だ、大丈夫かしら?」

 

 

一人の後輩の女の子がビクビクしながら辺りを警戒する。

 

 

ゆか「大丈夫よ。こんな真昼間からそうそう出るわけないじゃん」

 

 

現バレー部のエースと言われるゆかが落ち着かせるようにいう。

 

 

あかね「にしても…一体だれがこんなん酷い事を」

 

 

 

あかねは心底に嫌な気持ちだった。

何の罪もない人が次々と殺されていく事に憤りを感じていた。

 

 

 

あかね「それにしても、ゆか。そのキーホルダーええなぁ」

 

 

あかねがゆかの鞄に付いているキーホルダーを褒めた。

 

 

ゆか「そう?可愛い?」

 

あかね「うん、可愛ええよ!」

 

 

 

さっきまで暗い雰囲気だったのに、あかねを初め次第にガールズトークで明るくなっていった。

しかし、それを白けた目で見る双眸が…。

あかね達バレー部が笑いながら話しているその最中。

突如、黒い影がゆかを空高く連れ去った。

 

 

 

ゆか「ッ!?キャアアアアアアアアッ!!!」

 

部員A「ゆか!!」

 

後輩「ゆか先輩!!」

 

あかね「なっ!?あれって…」

 

 

 

あかねは忘れもしない。

昨日、良々が倒したイマジンだ。

なぜ生きてる?

いや、今はそんな事より、友達のゆかが連れさらわれた。

 

 

 

ゆか「いやっ!降ろして!離して!!いやぁぁぁぁぁ!!」

 

バットイマジン『そう喚くな。すぐに降ろしてやるよ』

 

 

 

バットイマジンは叫ぶゆかに構わず、キーホルダーをむしり取るとゴミの様に投げ捨てた。

 

 

 

バットイマジン『ほら』

 

ゆか「いやあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

部員「「「「「ゆか!!」」」」」

 

あかね「あかん!!」

 

 

 

あんな高い所から落ちたら大怪我は確実、怪我で済まない場合もある。

部員のほとんどが両手で目を隠す。

あかねは何とかキャッチしようと走り出そうとしたその時、後ろから誰かが物凄いスピードで追い抜いた。

 

 

 

あかね「え!?良々!?」

 

 

 

オリンピック選手並のダッシュ力であかねを追い越し、落下するゆか目掛けて大ジャーンプ!!

空中でゆかを抱き抱え、アスファルトの路地に着地する。

 

 

 

M良々「ふぅ…」

 

 

 

もしこれが走り幅跳びならば世界記録間違いなしだろう。

 

 

 

ゆか「あ、ありが…」

 

M良々「重い」

 

ゆか「ぐえっ!?」

 

 

 

そう呟いてゆかを乱暴に放った。

ゆかはまるでつぶれたカエルの様な声を出す。

 

 

 

ゆか「ちょっと!助けてくれたのはお礼をいうけど、重いってどういう事よ!!」

 

M良々「チッ、見ろ。こんな女助けるから蝙蝠野郎逃がしちまったじゃねぇか」

 

 

 

ゆかの文句を適当に流し、ぶつぶつとM良々は独り言を話す。

 

 

 

あかね「良々ー、ゆかー」

 

 

 

向こうから、あかねと部員が駆け寄ってくる。

 

 

 

良々『代わって』

 

M良々「え!おい…」

 

 

 

モモタロスを追い出し、元の良々が表に出る。

部員はゆかを心配したり助けてくれた良々にお礼を言ったりしている。

適当に相槌をうちながら皆から少し離れ、あかねと良々は話す。

 

 

 

良々「見た?あの蝙蝠のイマジン」

 

あかね「ああ、でも昨日倒したはずやろ」

 

良々「でも、生きていた!これで納得がいった。この街で起こっている無差別殺人事件の犯人はあいつよ!」

 

あかね「そなら、早く止めへんと!」

 

部員B「ゆかさん怪我はないの?」

 

ゆか「ええ、ただキーホルダーを取られただけ…」

 

 

 

良々とあかねが行動を起こそうとしたその時、部員の一人とゆかのその会話に良々は反応する。

 

 

 

あかね「どないしたんや?良々」

 

良々「解った…」

 

あかね「え?わ、何や!?」

 

 

 

良々はあかねの手をつかみ、走り出す。

 

 

 

あかね「一体どないしたんや?」

 

良々「あのイマジンとの契約者が解ったの!」

 

あかね「契約者!?」

 

良々「昨日ハナさんが言ってたじゃない。『奴らは願いを叶えるとその対価として、その人の大切な過去をもらう』って、蝙蝠イマジンはあの人のキーホルダーだけを取って行った。つまり、蝙蝠イマジンの契約者の願いはたぶんキーホルダーに関する事じゃないのかな?」

 

 

 

良々は羽黒テツオのキーホルダーを取り出す。

 

 

 

良々「そして、このキーホルダーの持ち主、羽黒先輩は蝙蝠イマジンにさらわれている」

 

あかね「それが一体どないしたんや?」

 

 

 

あかねは良々が何を言いたいのかよく見えてこない。

 

 

 

良々「ここからは私の推測なんだけど、その蝙蝠イマジンの願いはたぶん『あるキーホルダーを探してくる事』、その契約者は羽黒先輩」

 

あかね「え!?いや、でも、十分考えられる…」

 

良々「このキーホルダーを返せばあの蝙蝠イマジンもたぶん止まる」

 

みゆき「良々ちゃん!あかねちゃん!」

 

あかね「みゆき!」

 

 

 

そこまで言うと向こうからみゆき、やよい、キャンディがなお、れいかを連れて来た。

 

 

 

良々「これで全員そろった」

 

あかね「おし!そんじゃ、あの蝙蝠倒しにいくでーっ!!」

 

 

 

あかねが走り出すが、

 

 

 

れいか「あかねさん、相手の居場所わかるのですか?」

 

あかね「あっ、わからん…」

 

 

 

ズコッと皆一斉にこけそうになる。

 

 

 

なお「弱ったわね」

 

 

 

なおも何かいい考えはないか考える。

 

 

 

良々「そうだ、モモタロスに訊いてみよう───モモタロス聞こえる?」

 

モモタロス『何だ?』

 

良々「あの蝙蝠イマジンの居場所わかる?」

 

モモタロス『蝙蝠野郎か?ああ、あいつの匂いなら覚えた。やつは…、左側のあの高いビルの上だ!』

 

 

 

左側を向くと大きなビルがそびえていた。

 

 

 

良々「わかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

テツオ「違う…」

 

 

 

ビルの屋上で膝を抱えバットイマジンの渡すキーホルダーを拒むみ続けるテツオ。

バットイマジンの契約者はやはりテツオだった。

彼の足元には主を亡くし、二度と戻る事のないキーホルダーが山となって転がっていた。

 

 

 

バットイマジン『チッ、一体てめぇの望む物は何なんだ?ああ!?』

 

 

 

バットイマジンは思い通りに事が運ばずいらつき、ついに我慢の限界を迎え自らの契約者を痛めつけようとしたその瞬間、

 

 

 

良々「待って!」

 

 

 

良々とみゆき、あかね、やよい、なお、れいかがようやく駆けつけた。

 

 

 

バットイマジン『またお前らかぁ…』

 

 

 

バットイマジンはウンザリとしたふうにこちらを見た。

 

 

 

良々「探してるのはこれでしょ?」

 

 

 

良々がキーホルダーをバットイマジンに投げ渡す。

それを見たテツオが目を見開く。

 

 

 

テツオ「そ、それだ!!」

 

 

 

テツオはバットイマジンからキーホルダーを奪い取る。

 

 

 

良々「これでいいでしょ!?もう人を襲うのは…」

 

 

 

良々はバットイマジンに人を襲うのをやめさせようと言おうとした。

その時、バットイマジンは嘲笑を込めた笑みを浮かべる。

 

 

バットイマジン『キッキッキッキッキッキッ、ご苦労様…探す手間が省けたぜ』

 

良々「え?」

 

 

 

良々も含む、みゆき達も全員バットイマジンが何を言っているのか理解できなかった。

これで終わりなのではないのかと。

 

 

 

バットイマジン『さあ、お前の望みはかなった。契約完了───』

 

 

 

その場にいた者は目を見開き、その光景に息をのんだ。

 

 

 

バットイマジン『開け、記憶のページよ!!』

 

 

 

バットイマジンがテツオをまるで本のように切り開き、彩った『渦』の中に飛び込んでいった。

テツオは力なく膝をつく。

 

 

 

ハナ「しまった!遅かった!!」

 

 

 

突如、屋上の扉が開き、ハナが現れた。

ハナは慌ててテツオに駆け寄り、ポケットの中のカードを出す。

それをテツオに翳すと、黒かったカードの表面にバットイマジンの姿と、[-2Y/12.24]という数字が浮かび上がった。

二年前の日付だ。

ハナはそのままテツオに問いかける。

 

 

 

 

ハナ「ねぇ、二年前の12月24日に、何があったか覚えてる?」

 

テツオ「12月、24日…?」

 

 

 

 

その目には、涙。

 

 

 

 

テツオ「俺の母さんの命日だ…」

 

みゆき「お母さんの…?」

 

 

 

みゆきはテツオの顔を覗き込み、テツオは淡々とあの日の事を語る。

 

 

 

テツオ「あの日、俺は…仲間たちと夜遅くまで遊んでて…そしたら俺の携帯に電話が掛かってきたんだ。母さんが入院してる病院からだった…。

───母さんの病気があんなに酷かったなんて知らなかったんだ!!母さんの死に目にも立ち会えなくて…これが、母さんの最期のクリスマスプレゼントになるなんて……!!!」

 

 

 

テツオは手にしてるキーホルダーを顔に寄せ、人目を気にすることなく大声で泣いた。

するとテツオの泣き声を掻き消すように、突如遠くにそびえていたビルが崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

【二年前12月24日】

 

 

 

 

 

テツオは母の危機も知らず、仲間とつるんでクリスマスイブ一色の夜街を満喫していた。

と、テツオの身体から砂が零れる。

仲間がいぶかしむ目前で、群青の瞳と共にテツオが車道を走るタンクローリーに突っ込んだ。

 

 

「テツオ、危ない!!!」

 

 

しかし、その警告に意味はなかった。タンクローリーは既に止まっていたからだ。

テツオの手で

それだけではない、彼はドライバーを押しのけ、ハンドルを奪うとそのまま暴走を開始したのだ。

車を次々と吹き飛ばし、陸橋の柱をぶち抜き、ビルを抉るタンクローリー。

歪められていく過去は、やがて現代へと侵食を始める…

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

【現在】

 

 

 

 

 

ビルが、街が、少しずつ崩壊を始め、炎が吹き上がる。屋上からでも聞こえてくるサイレンと悲鳴。

 

 

 

ウルフルン「ウルッフッフッフッフッ、おうおうやっとおっ始めやがったか…。さて、俺様も始めるか」

 

 

 

その阿鼻絶叫の街を空から見下ろしながらバッドエンド王国の三幹部の一人・ウルフルンはそれを楽しそうにみる。

 

 

 

ウルフルン「世界よ!!最悪の結末、バッドエンドに染まれっ!!」

 

 

ウルフルンは魔本を開き、黒い絵の具チューブを握りつぶす。

 

 

ウルフルン「白紙の未来を黒く塗り潰すのだ」

 

 

 

魔本の白紙のページにその絵具をべったりと塗りたくる。

すると、青空は途端に闇に覆われ暗くなり、夜が…いや、闇が世界を支配する。

 

 

 

「ああ、もうだめだ…」

 

「もう……終わりよ」

 

 

 

破壊される街の人々は絶望の色に染まり、バッドエナジーが放出される。

 

 

 

ウルフルン「ウルフッフ、人間どもの発したバッドエナジーが、悪の皇帝ピエーロ様を蘇らせていくのだっ!」

 

 

 

しかし、今回は規模が違った。

 

 

 

ウルフルン「おお、すげぇ!これほどの量のバッドエナジーは初めてだ!!イマジンが過去で暴れるだけでここまで違うとは…」

 

 

 

 

ピエーロの時計の針がいつもは一つ進むだけなのだが、今回は二つも進んだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

みゆき「なに、この寒いというか…気持ち悪い感じ…」

 

あかね「まるで真冬の海に放りだされて…体温が奪われていくみたいや」

 

 

 

バッドエナジーの影響を受けないみゆき達もかすかに影響を受ける。

 

 

 

良々「一体、何が…起こっているの?街も…人も…」

 

 

 

良々は屋上の手すりにつかまり、その街の惨劇を見る。

 

 

 

ハナ「過去でイマジンが暴れているのよ」

 

 

 

ハナが良々に静かに言う。

 

 

 

良々「『イマジンは、望みを叶える代わりに過去を貰う』って言ったわよね。奴らが望みを叶えるのは、記憶を呼び起こしてその人と過去とを繋げるため。あのイマジンは今、彼が一番強く繋がった過去にいる。目的は一つ、過去を変えて、そこから続く未来を変えること」

 

良々「未来?未来って……じゃあなんで……なんで今街があんなことになってるのよ!!!!!」

 

 

 

怒りのこもった声で、良々が大声を出す。

その時の良々は、普段の彼女からは想像できないくらい激しく激昂し、感情が高ぶっていた。

 

 

 

ハナ「『過去』にとっては、『今』だって『未来』だから。あのイマジンが、『過去』で街を破壊すれば、それはまず『今』を壊していく」

 

 

 

ハナがカードを良々に渡す。

 

 

 

ハナ「これをパスに入れて…私達たちも行こう。早くあのイマジンを止めないと、彩った過去が白紙に戻され、未来が黒く塗りつぶされてしまう。そうなったら、世界はバッドエンドになって、街の人達もこの子も、死ぬ…!」

 

 

 

ハナは冷たくも真剣な眼差しで良々やみゆき達に告げる。

 

 

 

「……………ッ!!」

 

 

 

良々はハナから目を逸らし、手摺りを強く握る。

 

 

 

ハナ「どうしたの!?早く!!」

 

みゆき「怖いのね…」

 

ハナ「え?」

 

 

 

みゆきはそっと言った。

よく見ると良々が震えているのがわかる。

良々は恐怖に押しつぶされそうになり、一歩踏み出せないでいた。

 

 

 

 

 

 

 

みゆき「戦おうよ!!良々ちゃん!!」

 

良々「みゆきちゃん。でも…」

 

みゆき「過去も…未来も…決めるのは自分自身だよ。それらを好きにする権利は誰にもない!!そうでしょ!?」

 

あかね「そや!ウチな、昨日デンオウになって、ってハナさんに言われた時、アンタが少し震えてること、わかってた…」

 

やよい「怖いのよね。私も初めは怖かった。でも、勇気を振り絞って戦う覚悟を決めたから今じゃ戦える!」

 

なお「大丈夫、いざとなったら私たちが守ってあげるから!」

 

れいか「戦いましょう。怖い事は恥ずべき事ではありません…、むしろ当たり前の事です!」

 

 

 

皆の言葉が熱く心に響く。

そうだ、私は変わるって決めたんだ。

恐怖は確かにある。

押し潰されそうな程。

でも、こんな最悪な未来受け入れたくない!

ならば、私のやるべき事は既に決まっている!

 

 

 

良々「なんだか良く解らないけど、やらなきゃいけない事だけはわかった気がする…!」

 

 

 

口にしたのは曖昧な答えだが、その瞳には決意と覚悟がこもっていた。

彼女の中に燃えるのは、ヒーローになれた喜びなんかじゃない。

たとえ自分とは関わりがなかったとしても、その未来を理不尽に奪うことを許さない、ただ真っ直ぐな感情。

それは、彼女が始めて抱いた『正しい怒り』だったのかも知れない。

彼女の恐怖はなくなり、勇気へと変わった。

 

 

 

 

 

 

ハナ「───ありがとう」

 

 

 

ハナの小さな呟きに口元を少し上げて小さな笑みで返す。

 

 

 

みゆき「よし!それじゃみんな、過去へ…」

 

ハナ「あ、ちょっと待って!!」

 

 

 

いきなりハナが思い出した様に声を掛ける。

 

 

 

ハナ「悪いけど、デンオウである良々ちゃんはともかく、あなたたちプリキュアが過去へ行けるのは一人、いや多くて二人だけ!」

 

 

みゆき「え!どうして!?」

 

 

 

みゆきは問いただす。

 

 

 

ハナ「良々ちゃんは特異点だけれどみんなは違う。過去で戦って建物の壁や小枝を折ったりするだけで未来を変えかねないの。多少の乱れなら修復可能なんだけど、その影響を最小限に押さえるためにもここは一人に…」

 

 

 

確かに、現代で暴れているウルフルンを放っておくわけにはいかない。

 

 

 

あかね「なら、ウチが行く!!」

 

みゆき「あかねちゃん!?」

 

 

 

名乗り出たのはあかね。

 

 

 

あかね「あの蝙蝠、うちのバレー部の友達を傷付けようとしたんや。絶対許せへん…!!」

 

 

 

それ以前にあかねは関係のない者を巻き込む奴の行動は許せなかった。

 

 

 

良々「決まりね」

 

 

 

あかねの真剣な表情を見て良々はベルトを装着し、赤いボタンにを押すと陽気なミュージックホーンの待機音が鳴る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モモタロス『来た!!』

 

 

 

待ってましたと言わんばかりにモモタロスが立ち上がり良々の元へ向かう。

 

 

 

良々「変身ッ!!」

 

 

 

良々と赤いイマジンの叫びが空に響き、高らかに発車メロディと電子音が鳴り渡った。

 

 

 

 

 <SWORD FORM>

 

 

 

 

ライダースーツに改造学ラン風の陣羽織を纏う。

髪と瞳の色が変わり、白い鉢巻きに逆さ蝶々結びの白いリボンのポニーテール。

 

 

 

デンオウSF「俺、参上!!」

 

 

 

変身完了と同時に時の列車・デンライナーが出現。

 

 

 

デンオウSF「行くぜ、関西女!!」

 

あかね「誰が関西女や!ウチは日野あかね!!ちゃんと名前で呼ばんかい!!」

 

 

 

デンオウとあかねは、そのままの勢いでデンライナーに飛び乗った。

デンオウは先頭車両運転室の計器と一体化したバイク・デンバードに搭乗。

 

 

 

 

チケットの入ったパスを装填し、時の列車が走り出す。

行き先は[-2Y/12.24]デンバードに跨がったデンオウの瞳が強く輝いた。

 

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