魔王の傭兵【完結】   作:あげびたし

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更新が1日1回だと誰が言った?騙して悪(以下略


自分の頭が亡者化するのがわかる


たくさんの誤字報告ありがとうございます!!!!!
皆さんに生かされてる…!


幕間:亡者の目

温かい篝火の奥、の奥。

見つめ過ぎた先に揺らめくように見えるソレ。

あれは、なんだ。

酷く()()()()を感じるモノだ。

 

暗い牢獄。

そこから見えた青空。

崩れ落ち始める城下町。

腐り落ちるのを待つだけの掃き溜めの村。

病の元を抱えた優しい妹と、それを守る蜘蛛の異形となった姉妹。

暗い森の奥、亡き友を守る巨大な狼。

古城の遥か上方には夕陽が輝く宮殿。

それを守る獅子の竜狩りと巨大な執行者。

夕焼けが沈んだ後、その城の奥で永遠の墓守をするモノ。

絵画の中に隠された優しそうな者達。

狂気に飲まれた白い竜と、結晶に覆われた図書館。

魔女達の母と共にマグマに沈む神殿。

地下に隔離された呪いを振りまく死の眷属達と巨人の墓。

深淵に魅せられた王達の苦悶の声が響く城跡。

正気を失った狼の騎士、それに寄り添う仮面の暗殺者。

木彫りを作り続ける、竜落としの鷹の目の巨人。

生暖かさを感じさせる黒く巨大な怪物。

 

ーそして、篝火の前に座り背中を向ける(いにしえ)の大王。

 

あぁ、誰なのだろうか。

あれらは俺の家族なのだろうか。

この温かい気持ちは、なんなのだろうか。

だがそれを邪魔するものが、ある。この視線だ。

監視されている。別にそれは気にならない。

だが、その視線はいけ好かない。

いつでも殺せるぞ、といったその視線。

それは、とても不快なものだ。

 

『邪魔を、するな。』

 

温かな気持ちが一転、ドス黒い物に変わる。

俺の視線の先でローブに覆われた骸骨の動きが止まる。

魂の在り方が酷く弱い。もう折れかけなのか。

折ってしまっても良かった。そうしなかったのは、雇い主からの依頼が入ったからだ。

 

「依頼だ、傭兵。」

 

その物言いに、何か身体の内から湧き上がるものがある。

篝火の奥で見えるものではない何処かでの記憶。

そこの記憶がくすぐられる。

これも、なんなのか。自分はなにであったのだろうか。

篝火の奥の景色と身体に染み付いた記憶は一致しない。

だが、これは。

紛れもない俺自身のモノなのだ。

 

 

雇い主への状況報告は直ぐに終わった。

そして頼んだ通り、大弓とその矢を受け取る。

共回りの性能もいい。

俺の代わりに敵を感知し、その場所を示してくる。

あとは、楽なものだ。

どんな装甲も、意味はない。当たるのであれば。

まず一人。残りは…たくさん。

100人殺した。まだ残っている。まだ大勢残っている。

こんな一方的な状況でも、戦闘になれば頭の靄は晴れていく。

勘が、冴えてくる。

相手からは知覚されず、それでいて一方的な攻撃ができる高台の上。

研ぎ澄ませば奴らの魂が視覚化されたようにその場所を教えてくれる。

黒い魂だ。

黒い黒い真っ黒な魂。それでいてなぜか温かみも感じる魂。

彼らも家族なのだろうか。

ならば、その枷を外してやらねばならないのだろう。

これは、家族へのちょっとしたお手伝い。

俺は、彼らを愛してる。そうだ、家族になろう。愛しあう家族に。

 

ー帰ろう。俺達の(篝火)に。

 

 

 




ええ、そうですとも。
分かる人には、分かるでしょう。



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