ウルトラ姉弟(笑)の黒一点~胃痛と戦え!ウルトラセブン!~   作:三途リバー

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レオーーーーッッッ!!


邂逅

「よーし、良くやったわねギラス達。ちょうどいい感じよ」

 

「っ…あぁ?」

 

暗雲の中から降り立ったのは、美しい金色の髪を持つ女だった。しかし、その目を見た瞬間セブンは察する。

壊れきっている、どうしようもない()()()だと。

 

「お目にかかれて光栄よぉ、ウルトラセブン。私はグロリア。知っているとは思うけどL77星を滅ぼした張本人になるわね。」

 

黒いスーツに、右手には長大なサーベル。見るものによっては鈍重な武器に見えるかもしれないが、その実それは幾多もの血を吸ってきたのだと分かるほど鈍い銀色にくすんでいた。

 

「テメェが…痛ッ!…どんな魔法を使ったんだよ?光の国の救援が一人も来ないなんざ、余っ程大掛かりな事したんだろ?つかまぁこの大軍も十二分に大掛かりだが。」

 

「ふふ、それはネタバレしちゃったらつまらないじゃない?そんなことより、今は私と楽しみましょう?私、誰かの苦痛に歪んだ顔や声が大好きなの。何時もなら女の子や子供の方が好みなんだけど…ギラスの大軍を片っ端から潰して回るあなたを見てたら、その…どうしても壊したくなっちゃって♡」

 

「今世紀最悪の告白だよこの野郎…」

 

「あら、私は野郎じゃないわ。失礼しちゃう。取り敢えずレディの前で顔を隠すのはどうかと思うわ?素顔を見せて…?」

 

舌なめずりしながらセブンに近づくグロリア。ギラス2匹は既に少なくないダメージを負い、遠巻きにセブンを威嚇しているだけだ。

一方、1歩、また1歩と狂女が近づいてくる中、セブンは素早く脳を回転させ、現状での最善策を講じていた。

 

(使うか?いいや、マズイ。こいつは倒せるだろうが相討ちだろう。それに警備隊全員が打って出なきゃならない程の事態なら地球に回す人員はない…。俺がここでスーツを纏えなくなったら、それこそ地球は一巻の終わりだ。どうする…)

 

焦りながらも考える内、既にグロリアは目と鼻の先。

 

「スーツ…解除させてもらうわね?」

 

(やべッ…!!)

 

悪寒が背中を駆け巡り、間一髪でセブンは後方にでんぐり返しの要領で回避を成功させる。コンマ1秒の差で、地面には鋭い突きが大穴を開けていた。

だいぶ不格好な避け方だが、脚が折られている今は仕方がない。無様だろうがなんだろうが、セブンは負けるわけにはいかないのだ。

 

「あら、よく避けたわね?完全に右足はイっちゃってるのに。逃げない方が早く楽になれるわよ?」

 

「嘘こけ、さっき思いっきり苦痛で歪ませるとか言ってたじゃねえか。それに、お前みたいなサディストにゃ妹分に心当たりがあってな。考えてる事は大体分かるんだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っくしゅん!!噂?…いけません、セブン兄さんでもあるまいし…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

火星付近での某切断系少女のくしゃみが地球に届くはずもなく、二人の睨み合いは依然として続く。

グロリアの目は妖しく輝き、獲物を捕えんとする猛禽さながらであった。

 

「こんな美人といるのに他の女の話題を出すなんて…イケナイ人。」

 

「やべぇドラマとかだとエロく聞こえるけどリアルだと全く嬉しくねぇ。」

 

軽口を叩いているのは、そうでもしないと痛みで気を失いそうだから。

一見飄々としているセブンだが、内実かなり危ない状態である。脚は折れ、エネルギーは足りず。唯一頼みの綱の太陽は雲に隠れて姿を見せない。恐らくこの女が怪獣を操り、そう仕向けたのだろう。

 

(死ぬか、これ。)

 

最後の抵抗をすべくアイスラッガーを右に持ち、そんな事をぼんやりと考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「はぁぁぁぁっっ!!」

 

「ぐっ…ちっ!」

 

目にも留まらぬ拳の応酬。ボクも格闘にはそこそこ自信があったけど、この2人の戦いを見てると、もうそんな事は言えなくなる。

シル姉と戦った直後にボクを軽くあしらい、なおかつほぼノーダメージで完封してきたメギドを、ジョーニアスさんは一方的に攻め立てる。

右手が引き絞られた、と思った次の瞬間にはもう左右連続のラッシュが的確に相手を捉えている。

メギドの攻撃を避けた、と思ったら爆弾じみた轟音がその拳から発せられる。

 

「すご…」

 

言葉が、出ない…。

 

「くぅッー!やんなっちまうぜ、ジョーニアスちゃん!君強すぎない!?」

 

「そりゃあ星雲最強だからな!諦めて大人しくぶっ飛びな!」

 

会話の合間にも何百という拳を打ち込み、確実に勝利を手繰り寄せて行く。

 

「タロウ!シル連れて取り敢えず光の国に帰れ!ゾフィーもこっちに向かってる!セブンならあたし達がどうにか…」

 

その時、ジョーニアスさんはボクの方に向いたわけじゃない。声だけを飛ばし、意識はメギドに集中していた。

 

それなのに。

 

「ごふっ!?」

 

「ジョーニアスさん!?」

 

完璧な蹴り上げが、ジョーニアスさんの顎を捉えていた。スキをついたという訳でもないのに、完璧過ぎる蹴りだ。強制的に上を向かされ、体勢が崩れた所に今度はお返しとばかりに左右から嵐のような拳。ジョーニアスさんも驚いて反撃に移ろうとするけど、呼吸すら許さない程のラッシュが彼女を襲ってる。

 

「てっ…め!急に…うがっ!元気に、なりやがってぇぇぇっっっ!!」

 

我慢の限界と言ったふうに大振りな蹴りを放つジョーニアスさん。でもメギドはそれをするりとかわし、さっきまでとは打って変わった様子を見せる。

 

「はぁっ、はぁっ…なんだ…急にスタイルを変えやがった?」

 

スタイル…?そう言えば、さっきまではジョーニアスさんに合わせるように拳を打ち込んでたけど、急に足や肘打ちとかも使って…なんて言うか、野生じみて来た…?

 

「お前……今………」

 

「あァ!?」

 

「今、セブンと言ったのかァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッッッ!!!!!」

 

うっ…あ…!?

なに、この猿叫みたいな…!?いや、叫びというよりむしろ咆哮!?まるで怪獣だよ、これじゃあ!

 

「くっそ、うるせぇ野郎だなぁ!急にどうした、セブンに恨みでもあんのかい!?」

 

返答は、跳躍。15mはあった距離を瞬時につめ、撃ち下ろすように右手を振った。

 

「ふっ…!!ぐぅぅぅっっっ!?!?」

 

両腕をクロスして受け止めたジョーニアスさんだけど、勢いは殺せずそのまま大きくノックバックしてしまう。

 

「邪魔だ、女…!俺はあの()()()に用がある!」

 

侵略者?セブン兄が?

何を言ってるんだ、こいつ?って言うか口調変わりすぎじゃ…?

 

「八つ裂き如きでは飽きたらん…粉になるまで刻んでやる!!ウルトラセブン!!!」

 

吐き捨て、飛び立つメギド。

 

「プラニウム光線!!」

 

エネルギーをボール状に固めた必殺光線がその影を追うけど、容易く左手で払われる。こちらに見向きもせず、メギドは一直線に地球の方向へ飛んでいく…

 

「なんだと!?」

 

驚きの色を隠せない私達を尻目に、光の筋となったあいつはどんどん見えなくなる。

 

「クソ!おいおいゾフィーも来るっつってたから大丈夫だとは思うが…あたしはとにかくあの野郎を追っかける!お前らはまず傷をどうにかしな!」

 

悔しいけど、今のボク達じゃ戦えない。気合いだけで勝てる相手じゃないっていうのもわかってる。ここはジョーニアスさんに任せるしかない…

 

「すみません。あいつの事、姉達の事…それに、セブン兄の事。よろしくお願いします、ジョーニアスさん!」

 

「任された!今度会う時はゆっくりガールズトークでも、な!」

 

あはは…ガールズトーク、ね…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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憎い。憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い!!!

 

ウルトラセブン(あの男)が、憎い!!

 

『んな事は俺だって分かってんだよ!エゴだろうさ、傲慢だろうさ!テメェらから見れば俺は侵略者の味方だろうさ!』

 

余所者が何をほざく!!

 

『人間は利己的だ…他者を踏みにじる業の深い生物だ。だがそれでも、俺は…!』

 

分かっているならば何故貴様はそちらにつく!?

何故人間の味方をする!?

何故、貴様は…!!

 

『人間が愛おしい!!』

 

「殺してやる!奪ってやる!貴様が愛したもの全て、この俺が壊してやる!!ウルトラセブン!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「うっ…あ…ぐぅっ…」

 

「ふふ、もう鬼ごっこは終わり。そろそろ御開帳よ…♡」

 

右脚を庇い、なんとか回避をし続けてきたセブンだが、その足掻きももう終わろうとしていた。

彼の背後はビルの壁。首元にはサーベルの切っ先。命運尽きたり、と言ったところか。最早諾として死を…いや、それ以上の苦しみを受けるしか彼に残された道は無い。

 

(クソったれが…。ここまでかよ…)

 

既に愛器は叩き落とされ、グロリアの遥か後方に転がっており、それを取りに行く力も呼びよせる念力もない。

 

「はじめまして…ウルトラセブン!!」

 

サーベルが大きく振り上げられ…

 

「がぁぁぁぁッッッ!?!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()叫びと共に、吹き飛んだ。

 

「なんっ…?」

 

「「ギャオオオオッッ!?!?」」

 

 

 

 

 

「よかった…本当に…よかった、間に合った…!」

 

 

傷だらけのセブンの前に立つのは、三本角の赤い鎧。

勇壮無比な外見に反し、発された声は若い女のものであった。

 

「あんた、まさか…」

 

振り返った彼女は頷き、口を開く。セブンだけでなく、自分にも言い聞かせるように。

 

「私の名はレオ。貴方の代わりにはなれずとも、私もこの星を愛する1人の宇宙人です。今は、私が地球を守って見せます!!」

 

輝刃と若獅子。

 

この日、2人の宇宙人が出会った。それがこの地球の、いや、宇宙の運命を変える出会いだなど2人が知る由もない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

追記!!

 

アンケートを、活動報告にて実施しています。

7月16日まで受け付けておりますので、是非お願いします。

 




メギド君の様子がいきなり変わった理由、分かるでしょうか?推理、というほど大層なものではありませんが楽しんで頂けたら幸いです。














…平成セブン、じゃっかん含むことにしました。

リメイクしたとして、どの時期のセブンが見たい?

  • 5姉弟時代
  • 6姉弟〜レオ指導時代
  • メビウス時代
  • ゼロ誕生以降、ベテラン時代

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