ウルトラ姉弟(笑)の黒一点~胃痛と戦え!ウルトラセブン!~   作:三途リバー

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遅くなりました、修行回です。
今回登場の暗黒宇宙人連合の幹部はフリーザ軍兵士No.2626改め劣兵さんがアンケートの時に考案して下さいました。この場を借りてお礼を申し上げます。劣兵さん、ありがとうございました!



Be Strong

「お前の得意技である蹴りに不足しているものは何か、俺なりに考えてみた。取り敢えずこのノートを見てくれ。」

 

現在、私と()()は無人の城南スポーツセンターの1室で向かい合っている。

 

 

『修行をつけたい』

 

そんな言葉をかけられた私は一も二もなく即答していた。

 

『是非、よろしくお願いします』 と。

 

今のままではいけない事は自分が一番分かっているのだ。弾さんの言葉は願ってもない提案だった。

 

「ありがとうございます。…!これは…」

 

・体のバネが死んでいる

・インパクト前に体が伸びすぎている

・打撃面である足の裏から威力が分散している

・ダメージを与えたい部位を意識していない

・急所を狙っていない

・予測可能な単調な攻撃になっている

・飛び上がる時に隙がありすぎる

・飛び上がる高さ不足

・綺麗な型にハマり過ぎている

 

「すごい…」

 

この短期間で、これだけ…。

教えるのは本職じゃない、などと言っていたが、信じられない。私自身がわずかに感じているものから全く気が回らないものまで、完全に網羅している。

 

「渡しといてなんだがそれが全部合ってるかは分からない。考えられる可能性として〜ってことだ。あくまでも参考程度にしてくれ。」

 

「はい。」

 

「急がば回れ…なんて言えば聞こえは良いが、結局俺は素人だからな。教えられるのはせいぜい特定の相手に対抗する為の立ち回りくらいだ。長い目で見るより、その時その時に応じた特訓になる。目下はギラス、あの回転攻撃を打ち破る。」

 

「…はいっ。」

 

ギラスのあの攻撃…攻防一体で隙がなく、こちらの持ち技では打倒することができない。師匠は、どんな手を…?

 

 

 

 

 

 

 

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問題(クエッション)

 

敵であるギラスは凄まじいスピードで回転しており、打撃、光線、果てには飛び道具をも弾いてしまいます。腕を1本犠牲にするならばつっかえ棒代わりに突っ込めばいいでしょう。しかし、レオさんはこれからも五体満足のまま戦い続けなければいけません。レオさんはどうすれば安全に(?)ギラスを倒すことができるでしょうか?

 

 

 

一見手詰まり、勝利は不可能と言える状況だ。

しかし、奴らには決定的な死角が存在する。

答え合わせをしてみよう。

 

 

解答(アンサー)

 

同じだけの回転力を持ち、()()()()()()()()()()強烈な一撃をもって頭蓋を叩き割りましょう。相手を弾き飛ばす力となっている回転を相殺し、唯一剥き出しとなっている頭蓋ならばダメージを通す事が可能です。角など多少の障害はありますが、それごと壊せば良いだけの事。

これには、レオさんに空中での回転力の飛躍的増加、そして何より技に畳み掛けて相手ごと粉砕するという勢いがなければなりません。充分な破壊力を身につけ、一撃で事を決しましょう。

 

 

 

 

 

 

 

馬鹿らしいほど単純明快、求めるものはただ二つ。

 

「スピンにはスピン、相手の特性を相殺して打ち砕く!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「……」

 

メトロン星人メトルの視線の先には、空中ですんごい勢いで回転する梨奈。そして、微動だにせずそれを見つめる諸星弾。

 

「いやちょっと待とうか」

 

「なんだ?」

 

「なんだじゃないよ!?スピンにはスピンって発想はまぁ分からんでもないよ!?でも幾ら何でもアレはないだろうっ!?」

 

「ふぐぅぅっ…!」

 

歯を食いしばり、天井からぶら下がって回転する梨奈の姿はシュールの一言。昼食の差し入れに来てみたらとんでもない光景が眼前に広がっていた。

 

「何だいアレ、新手の肉体漫才かいっ!?私だったから良いものの梨奈の職場の人間が見たら彼女、転職を強いられるぞ!?」

 

「いや、あれは空中での回転のイメージを掴むための「もっとマシな方法はないのかい!?」…多分。」

 

はぁぁぁ…と長い溜息をつき、メトルは再び梨奈に視線をやる。

 

「うぐぐぐぐ…!」

 

…何度見ても現実は変わらない。唸りながら回っている。

 

「大丈夫か、こんなので…」

 

自分専用の胃薬の配合を考え始めるメトルであった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「痛だだだだだだだ!もう少し丁寧にやってくんねぇかなリーネちゃん!?」

 

「これでも最高級に丁寧だ。本来なら唾でも付けて治療は終わりだぞ?」

 

「とんでもねぇブラックな職場だなおい!?そんな所で暗黒っぽさ演出しなくてもいいよ!」

 

「今俺上手いこと言ったみたいな顔やめろやメギド。」

 

宇宙のどこか…M78星雲光の国にほど近い空域を、一基の円盤が航行していた。

無論、暗黒宇宙人連合の物である。

 

軽口?を叩きあうのはリーネ、メギド、ノスフェの3人。丁度メギドの治療中で、リーネが彼に包帯を巻いている所だ。

 

「しっかしバレルの小僧も容赦ねぇな。刀右胸にブスーだもん。死ななかった俺を褒めてやりたいね。」

 

「だが感謝しろ。奴がいなければ貴様、あのまま亡霊に体を乗っ取られていたぞ。」

 

火星付近から離脱した連合の面々はメギドと地球から戻ってきたグロリアの治療を急ぎ、光の国を襲撃しているメンバーと連絡を取り合いながら活動を慎んでいた。

因みにバレルは光の国襲撃組に合流し、鬱憤を晴らしている頃だろう。

 

「故郷を奪われた亡霊ねぇ…あぁ、おっかねぇ。」

 

「取り敢えず今は「ミーのsuperな新開発薬でザバンギをおさえてるヨー!」…チェルシー、戻ったのか。」

 

「お疲れさん。ほら、酒。」

 

「サンキュー!ゴクゴク…ぷはぁ!一仕事の後の1杯はイイもんですネー!でもノスフェは四六時中酒浸しネ。少しはブラザーを見習ってくだサーイ。」

 

やけにハイテンションなJAPANGLISHで会話に割り込み、姦しい声を上げるのは連合幹部の1人、バルタン星人チェルシー。バレルと同じくバルタン星の数少ない生き残りであり、彼をブラザーと呼び慕う技術担当だ。

 

今回彼女は、自ら改造を施した怪獣や超獣の具合を自身の目で確かめるべく襲撃組に参加していた。バレルと入れ替わりで帰投し、今に至る。

 

「俺から酒を取ったらなんも残んねぇよ。」

 

「自覚はあるんだな。」

 

「リーネは一言余計だっつの!」

 

「エート、それで?ミーの救いを求める子猫ちゃんはどこデース?」

 

「っ…ここ、よ…」

 

苦しそうな声の方に顔を向ければ、左腕を何重にも包帯で巻いたグロリアの姿。

白かった筈の包帯は、すでに血が滲みその意味を成さなくなりつつある。

 

「オォウ…連絡は受けてマシタが、こりゃあ随分派手にやられましたネ、グロリー。傷口見せてクダサーイ。……ムム、綺麗に切断されてるなら治療も楽だったんデスガ…刃毀れがヒドイ刃物で無理矢理持ってかれましたネ?切断面がぐしゃぐしゃデース。コレは焼いた方が後々楽かも知れマセン。…ヒェー…見れば見るほど恐ろしいデス。フツー切れ込みくらいで終わる所を強引に一刀両断…。馬鹿力に加えて刃物にエネルギーコーティングでもシテタんデショウカ?誰にやられたんデス?」

 

「セブンって、言うの。200匹のギラス軍団を壊滅させて…私にも深手を負わせた馬鹿げた戦力よ…グッ….!はぁっ、はぁっ…。変身、するのも…辛いような傷を負わせたけど…セブンが生きている間はっ…地球を舐めてかかれないわね…」

 

忌々しい筈の敵を、苦しみながらもやけに弾んだ声で語るグロリアにチェルシーは首を傾げる。

 

「なんでそんな嬉しそうなんデスカ?グロリーはマゾヒストだったんデスカ?」

 

「いくらマゾでも、片手やられて…嬉しいわけ、ないでしょ…。でも、そうね…ふふふ…誰かを好きになるって、こういう気持ちなのかしらぁ…♡」

 

「「「いや、それは違う(デース)」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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前後左右どころか上下まで、いずれも全て囲まれている。

仲間は皆倒れ、残っているのは青年…80のみ。

孤立無援、圧倒的物量差。新人の80が切り抜けられる場面ではない…と思いきや。

 

「邪魔だ。」

 

真正面の怪獣に鋭い拳の3連突きを見舞い、応じて飛出してきた右と後ろの超獣を纏めて足技で振り払う。上からの爪の一撃を紙一重で交わし、四方残り1体に向け投げ飛ばして動きを牽制。

宙を蹴って距離をとる間に、80は既に決め技の予備動作に入っていた。

 

右腕を天に。左腕を水平に。チャージは一瞬にして完了され、白熱する両腕がL字を組む。

 

「サクシウム光線!」

 

『ギャアァァァォォォォ!!!』

 

虹色の輝きは3体の怪獣を巻き込んで爆散させた。

 

80を囲んでいた残り3体の怪獣は逃走を図るが、それを許す彼ではない。

素早く右腕を突き出し、鏃のような光刃を連続で飛ばす。

 

光線…アローショットを食らった2体が立て続けに塵となる。残る1体が最後に目にしたのは、殺人的な加速度で足を輝かせ、突っ込んでくる青年戦士の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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うん、ムーンサルトキックにはまだ改良の余地があるな。

最後の怪獣…爆発したけど貫けなかった。

せめてジャックさんの流星キックぐらいの貫通力を持たせたい。

 

「さて…」

 

仲間は皆やられてしまったが、僕自身はまだ戦える。この空域全体では戦況は圧倒的不利。もう少し粘って救援が来るのを待つか。

 

「がァァァァァァァ!!!」

 

考えてる側から敵さんのお出ましだ。

うーん…この怪獣や超獣、データベースにあった物より確実に強い。改造か、怨念による進化か…まぁどちらでもいい。

 

「ハァッ!」

 

この国を守り、僕はユリアンの下へ帰る。それだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「…ウルトラベルか。」

 

「現状を打破するにはそれが最善手だと考えます。警備隊トップ6人の内、今動けるのは3人のみ。いざとなれば私が出ますが、これまでの敵の動きを見るに更に二段重ねの策がある事は明白。隙をつかれて戦線が崩壊します。」

 

扇形の机に並ぶ、5人の老人を前にケンは力説していた。

 

この5名こそ、光の国元老院メンバーにして星の最高権力者である。

王族と警備隊は一応別の指揮系統に組入れられているが、5名からなる元老院はその両者に対して介入する権限を持つ。

…警備隊には圧力、王族には追従という対応の違いはあるが。

この5名は先の大戦、ウルティメイトウォーズの戦況を一変した秘密兵器「ウルトラベル」の製作者達だ。

その功績から長老の称号を贈られた、英雄と言って差支えの無い者達ではあるが、いつの間にか元老院なる独自の越権組織を作り上げた彼らを快く思う者は警備隊には少ない。いや、皆無と言って良いだろう。セブンを筆頭に警備隊との確執は深く、今回地球をセブンごと見捨てるという判断を下したのもこの者達だと考えられる。その点ではケンもゾフィーも、この5名を俗物としか捉えていない。

 

その俗物の元を、なぜケンが訪れているか。それは光の国の2大秘宝の一つ、ウルトラベルの使用を願うためだった。

空を覆う程の怪獣の大群、そしてプラズマスパークを蔭らす程の闇を払ったウルトラベルは基本的には製作者たるこの5名の許可が無ければ使用できない。

ウルティメイトウォーズ以来、使われたのは地球がムルロアの闇に包まれた時のみ。あの時はセブンがアイスラッガーをチラつかせて半ば脅迫するようにして使用許可をもぎ取ったが、大隊長であるケンがそれをするにはいささか…いやかなり問題がある。

 

(地球の時とは違い、貴様らにとっても『他人事』ではあるまい。)

 

今は母星の危機。ベルを引き出す勝算は、十分にあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「たぁぁぁぁぁッッ!!」

 

凄まじい気合に僅かに遅れ、硬いものが砕ける音が弾の耳に届く。

言わずもがな、声の主は梨奈だ。

彼女は既にイメージを掴み、外から加えられる力に頼らず独力で回転を行えるようになっていた。

 

「…」

 

「岩に亀裂を入れられました!これで技の完成も「甘いな」え?」

 

「回転に関しては及第点だ。だが威力が圧倒的に足りない。見ろ、梨奈……フンッ!」

 

鋭い息と共に、右腕にとりつけらた杖が目の前の岩を叩く。

先程の砕けるような音ではなく、『割れる』音が辺りに響いた。

 

「…!」

 

「見ての通り、宇宙金属製とは言え杖でも真っ二つに割れる。それに打点を意識すれば当たった敵の体全体にダメージを通せる。砕くような小技じゃない、お前の新しい技…『錐揉みキック』は必中必倒の技だ。それを意識してもう1度やってみろ。」

 

「はい!」

 

普段の()()()からは考えられないような厳しさだが、大鳥梨奈の師、()()()にはこれが必要なのだ。

 

(救援どころかウルトラサインも送られて来ないという事は、光の国全体で何かが起こっている筈。グロリアは傷を癒しつつ、光の国が態勢を整える前に地球を潰す必要がある…。とすれば自然、あの2匹のギラスを近々送り込んでくる。下手をすればまた怪獣の軍団を引き連れてな。)

 

予想しうる最悪のパターンは、回復したグロリアが2匹のギラスに加えて新たに数百規模の軍団を連れてくるというものだ。

そうなればもう完全に手詰まりだろう。レオに教えているのは飽くまで対レッド、ブラックギラス用の戦法。応用力のきかない彼女では大軍を凌ぐ事は出来ないだろう。

それに加え…

 

(俺も変身出来ねぇからな…)

 

懐に手を伸ばし、掴んだそれを目の前にかざす。

燃えたような跡が所々が白化し、完全に破損しているウルトラアイは元の輝きを失っていた。

梨奈曰く、セブンの変身が解除された時にバイザーが燃え落ち、足元にこれが転がっていたと言う。

自分自身の傷や体の状態も併せ、変身は到底望めない。

 

()()()()()()…時間がないな…。」

 

現状、グロリアの梨奈(レオ)に対しての警戒度はかなり低いと言って良い。

兎を狩るのに全力を尽くす獅子ならば、完璧な布陣で侵攻に望むだろう。しかしグロリアはどちらかと言えば戦いや侵略を楽しむ人物と見えた。

その1点に希望をかける以外、弾と梨奈に手段は無い。

 

 

 

 

戦いの時は、刻一刻と迫っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オマケ

 

 

【挿絵表示】

 

 

怪獣娘2期おめでとー!

 

ということで、薩摩7子さんから頂いたカプセル怪獣とセブンです。過去編の1幕を絵にして頂きました。

7子さん、ありがとうございました!!




えー、ここでご報告(?)がございます。
この小説の存続を左右しかねない大問題が発生致しました。どうにか頭を捻っている最中ですが、いきなり更新停止とかにはならないと思います。
取り敢えず当面はレオ編をお楽しみください。

リメイクしたとして、どの時期のセブンが見たい?

  • 5姉弟時代
  • 6姉弟〜レオ指導時代
  • メビウス時代
  • ゼロ誕生以降、ベテラン時代

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