ウルトラ姉弟(笑)の黒一点~胃痛と戦え!ウルトラセブン!~ 作:三途リバー
遅くなりました。
唐突ですが一言だけ言わせて下さい。
「ゼロビヨンド変身バンク、長ぇ!!」
PS.今回登場のパワード、スコット、チャックはアンギラスの息子さん考案の男子勢です。息子さん、ありがとうございました〜。
「グ…!」
苦悶の声を漏らし、一方的に攻め立てられるのはグロースゴーネ。
飛来する刃物に気を取られ、どうにかそれを防ごうとすればすかさず強烈な打撃が懐に飛び込んでくる。その打撃を受け止めれば無防備な背中を斬撃が襲う。
怒りに駆られた叫びに反比例するように、敵の戦い方は冷静そのもの。
じわり、じわりとグロースゴーネの命を刈り取っていくという意思が隠すべくもなく現れていた。
「貴様…如きに!」
しかしグロースゴーネとて、悪名高いグロース軍団を実力一つで束ね上げる生粋の戦士。
「我が遅れを取るかァ!!」
両腕から真っ黒い瘴気を放ち、一気に広範囲を包み込む。
この瘴気の中ではセンサーは無論の事、透視能力まで使い物にならなくなる。いくら敵が冷静であろうとも、この不可視のフィールド内はグロースゴーネの独壇場だ…
が。
「それはこっちも同じなんだよ。」
「テメェ如きに、シルを渡すか…!!」
そんな目算を、いとも容易く打ち破る。
「―ッ!?」
完全に見えていない…察知出来ない筈のグロースゴーネの蹴りを、有り得ない反応速度で叩き落とした。
硬直したグロースゴーネに待っているのは、雨霰と繰り出される拳と足激。
「ウグォォォォ!?!?」
拳法の達人とはまた違う、叩きつけるような乱暴な連続攻撃の前にグロースゴーネは防御もままならない。
辛うじて顔を守ろうと腕を組むが、お構い無しとばかりにその上から衝撃が突き抜けてくる。
戦いは、一方的だった。
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こいつがシルを傷つけた。
こいつがシルを苦しませた。
こいつがシルを痛めつけ、捕らえようとした。
「…なよ…」
俺の幼馴染み…俺の親友…俺の隣にいる女。
そのシルに、俺の1番失いたくないものに手ェだして…
「楽に死ねると!!思うなよォォォォ!!!」
アイスラッガーを取り外し、右から左へ念力で飛ばして薙ぐ。崩れたボディにアッパーを叩き込み、逆方向からの飛行斬撃が命中する。
刃が当たる度にどす黒い何かを撒き散らし、敵は無防備な体を俺の目の前に晒していた。だがこの程度で終わらせはしない。
苦しんで、苦しんで、苦しんで、苦しんで、苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで………
クルシミヌイテ、シンデイケ。
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「はぁッ、はぁッ…!」
警備隊本部の執務室で、シルは1人荒い息を吐いていた。
解毒剤を飲んだ事で毒の効力は切れたが、完全には消しきれなかった激痛が彼女を襲っていた。
セブンが過剰なまでに怒りを露わにしたのは、この事態を予見したからというのが一つの理由である。
(アイツが居てくれなかったら…マジでやばかったかもッ…)
負けん気の強いシルがそう思わざるを得ない程の痛み。
無意識に呻き声が漏れ、汗がとめどなく流れる。
「セブン…」
いつからか辛い事や苦しい事がある度、彼の名前を呟くのがシルの癖になっていた。
『大丈夫だ、俺は
遠く離れて傍にいるはずがないのに、そんなセブンの声が聞こえるようだ。
アホらしいと言えばそれまでではあるが、今までどれだけ彼の面影に救われてきた事か。
体の痛みが胸の奥から広がる暖かさに緩和されていく。
(単純だなぁ、私…)
自嘲気味に呟くが、自分の中での彼の存在の大きさをこんな時に実感する。
「惚れた私の負け、か…」
「あら、お熱い…♡」
「くぁpせわraふじこip!?!?」
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だっ、だだ誰!?誰誰誰!?!?
「あの子はモテるわね。若い頃のあの人みたいだわ。」
マリーさん!?いきなり声かけないで下さいよ!変な声出ちゃったじゃない!つか聞いてたんかい!!
「心配して見に来たら熱っぽく『セブン…』なんて呟いちゃって…可愛いわね〜」
「言わないで!わざわざ傷を抉らないで!!」
「そんなに惚れちゃったらホントに負けよ〜」
「もう嫌だこの銀十字軍隊長!!」
楽しいか、人の傷口に塩塗り込んでそんなに楽しいかぁぁぁぁぁ!!
「今はセブンは出ているけど…帰ってきたら、偶には思い切り甘えなさい?突っ張ってちゃあ気持ちは伝わらないわよ?」
「うぐ…」
「私、貴女はセブンの中で相当大きい存在だと思うわ。だから今あの子は戦いに行ったんでしょう?貴女が傷つく所を見たくないのよ。」
私が…セブンの中で…。
「愛されてるわね、シル?」
「愛っ///!?わ、私がセブンに、愛されて…///」
た、偶には…うん、本当に偶には!もう少し、素直になろうかな…
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「しィッ!!」
鋭い声が響く度、グロースゴーネの体が面白いように揺れる。
しかし、着実に弱っていく彼に対しての打撃が止められる事は決してない。最早これが戦いと呼べる物なのかすら分からない…
「エメリウム光線。」
淡々と読まれる死へのカウントダウン。
緑の閃光が肩を撃ち抜く。
「ウェッジ光線。」
楔が突き刺さり、血を撒き散らす脇腹に追撃の蹴りこみ。
「スライスハンド。」
義妹へと伝授され、ブラックキングの首さえも落とした手刀が肩口を切り裂く。
「チェーンビーム。」
組まれた十字から電撃が流れ、グロースゴーネを帯電させる。
「手裏剣光線。」
無数の光弾が体に当たる度、小規模な爆発が巻き起こる。
そして、セブンが腕をL字に組むー
「ワイドショット。」
黄金に光る熱線に飲まれ、体のあちこちから火花を散らしながらグロースゴーネは吹き飛んだ。
「ア、ガはぁッ…!フぅっ、フゥッ…!」
言葉にもならない呻きを漏らす彼の下へ、セブンはゆっくりと歩みを進める。
既にたっぷりと血を吸ったナイフを片手に、機械のような冷徹さをまとわせながら迫ふ姿はさながら断罪者。
「
プロテクターから腕へ、腕から愛器へ。マグネリウムエネルギーを込めて投擲されたアイスラッガーは地面を裂きながらグロースゴーネへ向かっていく。
斬ッ!!
切り上げられ、上空に打ち上げられたグロースゴーネを更なる連続攻撃が襲う。
斬ッ!斬 斬 斬 斬ッ!!
合計六連の嵐の様な攻撃を受け、落下を始めるグロースゴーネ。
しかし、淡い緑の光を発する刃はまだ動きを止めない。
主の手元を目掛けて超高速で舞い戻る。
「これで…」
合わせた両腕を、体を開いてセブンは引き絞る。その照準は落下していく敵を確実に捉えていた。
「
アイスラッガー七連撃…「セブンス・ストライク戦法」。その最後の一撃が、グロースゴーネをぶち抜いた。
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「すまないな、わざわざ送ってもらって。」
「気にするな、幼馴染みを助けてもらった礼だ。」
ウルトラセブン。
それがこの男の名だと言う。
俺とAを完封したグロースゴーネをたった1人で一方的に倒してしまった男の…
「どうした?」
「強いと思ってな。どうしたらあそこまで強くなれたんだ、あんた。」
強すぎる。
それが、俺がセブンに抱いた第一の感想だ。
俺の一切の攻撃を受け付けず、エメラルド星人の船団も一瞬で焼き払った奴を、殺した。
敵が大して弱っていたわけでも無く、真正面からの殴り合いを容易く制したんだ。
「強くなろうと思って強くなったんじゃない。俺はただ守りたかったんだ。後悔をしたくなかったんだ。」
「守りたい、か…」
復讐に囚われていた俺には、手の届かない次元…。
いや。
今は違う。俺は地球の為に、仲間の為に戦うと決めたんだ。今はまだ届かなくても、いずれ必ず届かせてみせる。
「心なしか良い面になったんじゃねえか、ナオ。」
「ははっ、だとしたらあんたのおかげだよ、セブン。ありがとう。シルにお大事にと伝えてくれ。」
これから俺はAを修理してもらい、ゆっくり地球に帰るつもりだ。セブンはエメラルド星の代表に謁見するらしい。
次にいつ会うかは分からないが、その時は少しは成長した所を見せたいもんだな。
「しっかり伝えとく。じゃ、またいずれ。」
エメラルド星人に誘われ、歩き出すセブン。
…あれがシルの
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「お、スコット!なんでここに?」
「なんでって…そりゃ兄貴が暴れ回った後処理っすよ。エースさんに引き連れられて来たんスけど、あの人は今アスゴア周辺で残党狩りです。兄貴と合流して先帰れっつわれました。」
「え?ノー筋肉ノーライフ2人が処理係?それどんな人選ミスだよ。」
「「「「あなた(あんた)のせいだ!!」」」」
終始びくついてたエメラルド星代表との謁見を済ませ、飛び立とうとした所に見知った顔が目に付いた。
碧眼の美男子パワード。
純真青年80。
筋肉参謀チャック。
そしてゴリラ。
ここにゼアスと
「なんかバカにされた気が…」
「奇遇だな、少々私も…」
それは気のせいだ、ゴリラと筋肉参謀。
話を聞くと、マジでゾフィーに俺の後始末を任されたらしい。急に仕事をぶち込むなんて…なんてヒドイ上司なんだ!←
「急に出動させて悪かったな。今度奢るよ。」
「おぉ!ゴチになりまーす!焼肉っすか?しゃぶしゃぶっすか?それともステーキっすか?」
「スコット、肉から離れて下さい。と言うかもっと遠慮をですね…」
パワードは本当に良く出来てるよなぁ。タロウとかエース辺りに爪の垢を煎じて飲ませてやりてぇ…
「シル姉さんが待ってますよ。早く帰りましょう。」
「シルが…。あいつ体調どうだ?回復してるか?」
「一時期痛みが出て大変だったようですが、今は落ち着いているみたいです。顔見せて安心させてあげて下さいよ、セブン兄さん。」
「俺の面なんぞ見てあいつが元気になるかね…あ、ちょ80なんで溜息ついてんだ!パワードとチャックも!おい!?スコットやめろ、お前に笑われるとかスゲェ傷つく!」
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光の国に帰還し、ゾフィーから有難いお言葉を頂戴して俺はシルの住まいに向かった。
マリーさんの見立てにより、今日は執務は不可能と判断されたらしい。自宅療養と言うヤツだ。
『行ってやれ。シルがお前の帰りを待っているぞ。』
投げ飛ばす相手を?と応じたらウルトラフロスト喰らった。死ぬかと思ったわ。明日あいつの頭燃やす。絶対燃やす。
ピンポーン
呼び鈴を鳴らし、来訪を告げる。
ガキの頃は隣に住んでいたため、しょっちゅうお互いの部屋に屋根つたいに入っていた。
あいつの家に呼び鈴鳴らして入るとかまだしっくりこない。
『はー…セブン!?』
「ただいま&お見舞。邪魔していいか?」
『あ、開けるから待ってて!』
10秒ほど待って扉が開いた時、なぜかいつもよりしおらしいシルがいた。
「おかえり&いらっしゃい…上がって ?」
「お、おう。お邪魔します。」
なんかシルが大人しいとこっちの調子が狂うな…。
やっぱり毒が堪えたのか?
「傷はどうだ?痛みが出たってスコットから聞いたぞ。」
「あのゴリラ、余計な事を…。別に平気よ。」
そうは言うもののやはりどこか元気がない。苦しんでいたのは事実だろう。傷自体は塞がっても、辛いのはまだ少し続くかもしれない。だったら…
「なぁ、シル。」
「?何よ?そんなに改まっちゃって。」
「突然で非常識だとは思うんだが…今日泊まってっても良いか?傍に居たいんだ、今夜くらいは。」
「◎§¥$$-\☆!?!?!?」
オマケ
次回、とうとう幼馴染みの一線を越える…!?
そんなお2人のイラストです。薩摩7子さんから頂きました。7子さん、ありがとうございました!
うん、ゼロビヨンド色とかカッコイイし技もイケてるしカッコイイしレイト君好きだしぶっちゃけスゲェ好きです。
でもあの長さは無いと思うの。
皆さんどう思われました?
さて、ここで告知(?)をさせて頂きます。
本作の、第2の三次創作が爆誕致しましたァ!!
蕎麦那支さんがウルトラマンネオス(♀)を主人公に、
『NEOS~IN YOUR HEART ~』を連載して下さっています!こんなに嬉しい事は無い…。
蕎麦那支さん、ありがとうございます!
本作は今後更新スピードが低下すると思われますが、どうぞこれからもよろしくお願いします!
リメイクしたとして、どの時期のセブンが見たい?
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5姉弟時代
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6姉弟〜レオ指導時代
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メビウス時代
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ゼロ誕生以降、ベテラン時代