それぞれの戦う理由   作:ふぃりっぷす

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久しぶりの更新となります。

よろしくお願い致します。


古賀隊②

【春日雄也・ボーダー本部・古賀隊隊室】

 

防衛任務が終わったら、いつもだと大抵その後は各自自由解散なのだが、今日は清隆から話があるから、と任務後に集められた。

 

「遅い時間にわざわざ時間取らせてごめん。急ぎで報告しておきたいことがあったから」

 

鳩原さんのことで酷くショックを受けているだろうと不安ではあったが、今日一日清隆は少しもそんな素振りを見せなかった。

 

「構わん。で、どうした?」

 

「防衛任務の前に俺は報告を受けていたんだけど……まず、古賀隊のA級昇格が決まった」

 

「は?」

「マジで?」

「ホントに?」

 

迅さんが予知していたが、まさかこんな感じで決まるとは思ってもみなかった。

 

でも、そうなると”一山”とは一体……。

 

「掻い摘んで経緯を話すと、二宮隊の懲罰降格に伴って、入れ替わりで俺たちがA級に上がることになったってとこかな」

 

先日の鳩原さんの事件。表向きはただの隊務規定違反のためクビになったとされ、その懲罰として二宮隊もB級に降格することになった。

 

本当の理由を知っている人間は極僅かだが、さすがに表沙汰にはできないことだし仕方ないだろう。

 

「なるほどねー」

 

「そしたら昇格戦は無しってことでいいのか?」

 

「うん。で、これからが本題なんだけど、昇格戦は無くなったけど代わりにエキシビジョンマッチとしてA級の部隊と戦うことになった」

 

なるほど、このことか……確かに大きな山になりうる事案だな、これ。

 

「相手は?」

 

「俺たちで決めていいみたい」

 

「どこでもいいの?」

 

「A級ならね」

 

「候補とかはあるのか?」

 

矢継ぎ早に繰り出される諒と美奈ちゃんの質問に対して清隆は淡々と答えていたが、ここで一瞬、間が置かれた。

 

「……ここで考えられる選択肢はいくつかあるけど――上位陣に挑戦するっていうのはどうかな?」

 

「じゃあ上位陣に挑戦と言うとどことやるってんだ?」

 

「せっかくだし1位とやろう」

 

「太刀川さんのところか……」

 

「うん。戦術や個々の能力、相性を勘案すると上位陣では一番都合がいいと思う。勝ち目としてはまぁ7:3くらいだけど……できれば今回俺たちの強さをひけらかすようにしたい」

 

勝ち目を7割と読んでいるのか……想像以上に高いな……とも思ったが、諒の加入はそれ程に大きかったということか。だが、なぜ強さを見せびらかすような真似をしないといけないのか? と思っていると諒が清隆に問うていた。

 

「なんでだ? 別に普通に戦えばいいんじゃねぇのか?」

 

「来期のランク戦、俺たち出ないじゃん」

 

「「あー」」

「あー……俺が部活出ねぇといけねぇ時期だからな……悪ぃな」

 

そうだった……。諒の都合で来期は出られないんだった……。

スポーツ推薦で入学し、学費の大半と寮費が免除となっている諒は、基本的には部活が優先事項となっている。

 

本人は部活に出なくても正直余裕で好成績取れる、とは言っているが、体面上そういうわけにもいかないのだろう。

 

大会前ともなるとOBもよく足を運び出すし、その場に諒がいない、というのは確かにあまり好ましいものではない。

 

「諒の場合は仕方ないね。まぁそんなこともあるから、他の隊員に対して、うちの隊の強さに疑念を持たせたくないってのはある。ただでさえ繰上げ昇格みたいな形になってるわけだし」

 

強さに疑念を持たせたくない、というのは同意見だ。

 

割と俺たちの強さを認めてくれている人も多いのだが、それでも広報をやっているからかどうかわからないが、陰でマスコットチーム呼ばわりしている連中もいるということは知っている。まぁ俺にしてもそいつらを黙らせたい、という気持ちもまぁ若干はあるし。

 

「なるほど……作戦とかはこれから考えるのか?」

 

「とりあえず今晩考えるつもりだけど……何かあるなら言ってくれたら考慮するよ」

 

「じゃあ俺からいいか?」

 

「はいどうぞ、諒」

 

「できれば太刀川さんとはサシでやりてぇ」

 

「そう言うと思った」

 

「1対1でやって勝てるのか?」

 

「何とも言えねぇが……勝つつもりだ。少なくとも純粋な弧月同士の戦いだったら負けることはねぇから、旋空に気ぃつけとけば勝算はかなりあると思ってる」

 

「勝てるのかよ……太刀川さんに……あの人も化け物染みて強いんだがな……」

 

「あくまでも負けねぇだけだがな。そもそも太刀川さんの剣術は俺のとは根本的に違ぇ。人が相手ならこっちが上だ……まぁそれでも十分強ぇから、気を抜いていい相手じゃねぇけどな」

 

「そうなのか?」

 

「俺のと違って、あの人のは、自分より一回り以上デケぇやつを相手にするときのための戦闘術がベースになってんだよ。というよりも、そういう奴らと戦うために旋空のようなオプショントリガーがあるんだろ」

 

諒は普段はあまり頭のいい方ではないが、こういった戦闘、特に剣術が絡んでくると、急に頭がよくなるから驚きだ。

 

小さい頃から古流の剣術に触れているということは聞いているが、こっち方面に関しては知識の積み重ねも相当なものなのだろう。

 

「なるほど……わかんない!」

 

対して戦闘そのものに縁のない美奈ちゃんには、諒の言っていることなどちんぷんかんぷんなのだろう。一応オペレーターだし、多少は知っておいてもいいことだとは思うのだが……まぁ、わからないものは仕方ない。

 

「多分諒が言いたいのは、太刀川さんの戦い方はトリオン兵を想定した戦い方で、諒のは人と戦うための戦い方ってことだよ」

 

「まぁそんなとこだ」

「なるほどなー」

 

「わかった。じゃあ太刀川さんは任せる。……うん、だったらやっぱり……そうだな……よし。雄也、試したいことあるから時間あるときに訓練室入ろう。トリガーのセットちょっと変えることになるだろうけどいい?」

 

「わかった。俺はいつでもいいぞ。俺も試したいことがあるから付き合ってくれると助かる」

 

「わかった。とりあえず基本的には諒と太刀川さんのマッチアップが肝になるから、諒、頼んだよ」

 

「任せておけ」

 

「あ、あと今月中に隊室引越しになるから荷物はある程度まとめておいてほしいかな。特に雄也はあの大量の本ちゃんとどうにかするように」

 

部屋の隅の方を指差し清隆が告げた。

 

一応、隊室の一部を大雑把に区切って各々私物置きとしてのスペースを作っている。

 

清隆のとこには小さめの棚が置かれており、そこにはボードゲームが一式揃っている。

たまに将棋やオセロの相手をさせられるが、悲しいことに一度も勝てた例がない。

噂によると、王子さんにチェスで、水上さんに将棋で勝っているらしく、噂が本当だとすると、とても勝てる相手じゃないんだよな……。

 

諒に関しては、壁に大きな鏡を一枚立て掛け、暇を見つけてはそこで素振りをしている。

A級の隊室に移るとなると、多少スペースも広くなるから諒としては都合がいいだろうな。

 

そして、俺の割り当てられているスペースは、暇なときに読む本が積み上げられている。

 

……ざっと見積もって100冊はある……やばいな、溜め込みすぎた。

 

読み終わったら玉狛に持って帰るようにするべきだったか……。

 

「はぁ……わかった、善処する」

 

深い溜息とともに諦念を漏らしつつ、清隆の言葉に従うことにした。

 




今後ペースが落ちますが、今月中に太刀川隊との試合書き終わりたいところ……
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