尚、オリキャラ視点で物事が進むため原作は掠る程度な模様。
では、今回も宜しくお願い致します。
【春日雄也・玉狛支部自室】
朝――時計の針は7時を示している。
朝はそんなに弱くないつもりだが、昨日色々とあったせいで思ったより疲れていたのだろうか、布団から出るのが少々億劫だ。
寝ぼけ眼のままベッドの上でボーっとしていると、迅さんが部屋に入ってきた。
「よう、雄也。起きてるか?」
「起きてますよ。おはようございます」
「眠そうだな」
「まぁ昨日色々あったもんで……。で、朝早くからどうかしたんですか?」
「前もって言っておこうと思ってな」
「ん? 何をですか?」
「いや、午後から隊員総出で仕事があるから準備しとくといい」
隊員総出? どうやら大きめの事件が起こりそうな予感がする。
「何かあったんですか?」
「もうちょっとしたらイレギュラー門の原因が分かりそうなんだ」
本当に大事件だった。迅さんの言う通りなら、これで一昨日から続くイレギュラー門の問題に終止符を打つことができるだろう。
「マジですか……なんか大変なことになりそうですね」
「そうだな……。雄也、お前は特に大変なことになるから腹を括っときな」
ん? “特に”?
「……どういうことです?」
「まぁ命にかかわるようなことじゃないから気にしない気にしない」
「いや、そう言われると逆に気になるでしょうが……」
「わはははは。じゃ、俺は行くところがあるから」
そう言うと、迅さんは笑いながら出て行った。
……まぁ笑ってるくらいだからそんな大したことではないのだろう。
――そう思っていた。
――数時間後、それは誤った認識だということと、迅さんの発言が正しいということがわかった。
【春日雄也・古賀隊隊室】
迅さんの予知通り、昼前に全隊員が緊急で本部に集められる。
とりあえず一度隊室に集まり、清隆から今日の仕事の説明を受けることとなった。
「というわけで、緊急で全隊員招集がかかった理由だけど……街の大掃除」
「何で私たちみんなで大掃除しないといけないの?」
ボーダー一同でどこかの掃除をするものかと勘違いした美奈ちゃんが口を開いた。
流石にこの緊急事態で社会奉仕活動なんてやってる暇はないんだけどな……。
「あー……掃除と言ってもゴミ拾いとかするわけじゃないよ。……イレギュラー門の発生原因が特定された」
「ホントに!?」
「うん。小型の近界民が町中至るところにいて、そいつが門を発生させてたみたい。で、数があんまりにも多いから、ボーダー総出で大掃除ってわけ」
これは迅さんが予知した通り。
しかし隊員総出とは……思ってた以上の大仕事だった。
「全体の指揮は迅さんが執る。そしてエリアを分けてそれぞれA級の部隊がそのエリアの指揮を執って動くことになってる。俺たちの担当はこの辺」
どこからか取り出した棒を持ち、清隆は画面を指した。担当するエリアは三門市南部のようだ。
「そんでもって、俺たちの下にB級の部隊が2つとC級隊員が3,40人前後って割り振り。C級は俺がまとめて面倒見るから、雄也と諒はB級と合同で2チーム作ってガンガン掃除をする方向で。何か質問は?」
「さっきからB級B級言ってっけど、どこの部隊だ?」
一通り伝達事項の連携が済み、質問を求める清隆に対して諒が口を開く。
確かに気になるところではある。今回は何か細かい連携が必要になるわけではないので、あまりどの隊と組むことになっても問題はないのだが、できればある程度仲のいい隊員がいるところとがいいという気持ちはある。
正直B級も下位のチームの人間はあんまり知らないし……
いっそ正直なことを言えば那須隊と一緒がいいし……
そんなことを考えながら、若干期待をしていたが……清隆の口から出てきた言葉は――俺を地獄に突き落とした。
「え? 那須隊と香取隊」
「……は?」
「いや、だから那須t「聞こえてるよ、聞こえてるから声上げたんだろうが」」
那須隊を入れたのは素晴らしい。ただ、続く言葉に俺の心は絶望に染められた。
朝の迅さんの言葉――『雄也、お前は特に大変なことになるから腹を括っときな』
一瞬で全てを察した。
「いや、ホント大変だったよ。うちの管轄にこの2部隊を入れるの。やっぱどっちの隊長も人気あるし」
「違うだろ。いや、そうなんだけど」
そして清隆はいかに苦労してこの2隊を組み入れたかと言うことを力説し始める。
那須隊だけでいいんだよ、その努力は。クソ野郎が。
「んなら、雄也が那須と香取と組みゃいいだろ。そんで残りは俺だな」
「ちょっと待て」
諒までおかしなことを言い始める……俺に安住の地はないのか……
「よし、じゃあ午後一から一斉駆除作戦開始だからその頃に指定の場所に集合で!」
「了解」
「了解できん!」
流石にこんな修羅場になるのが見えている状況を許すつもりはない。ない、が……もうこいつらの中では決定事項と化している。
清隆……俺に何の恨みがあるというのか……あ、あった。
「清隆……てめぇ俺が学年1位取ったの根に持ってんだろ……?」
「……そんなことないよ」
俺の問いに清隆は一瞬の間を置き、笑顔で答えた。
だが、長い付き合いということもあり俺は知っている。
――この笑顔は嘘をついているときの顔だ。
【春日雄也・三門市南部】
「雄也―!」
「ん? ああ、葉子か……ってオイ、近い近い」
「えー、嫌なの?」
清隆に指定された集合場所で玲と葉子を待っていると、葉子が先にやってきた。
来るや否や、腕に抱きついてこようとするもんだから思わず躱してしまった。
頬を膨らませて少々不満気の葉子は、尚も距離を詰めようとしてくる。
……タイミングはよくないけど、玲と付き合ってることは言っとくべきか。
「嫌と言うか彼女できたからあんまりそういうのは……」
「は!?」
「いや、だから玲と……」
「ふーん……じゃあ別れたらアタシと付き合ってよ」
「……は?」
「いいじゃん! ね?」
「い、いや、あのな……」
ブチギレて最悪仕事にならない可能性も考えていただけに、この反応は想定外だった。
……何と言うか、意外とタフな奴だなこいつ。
そんな問答(と言うにはほぼほぼ一方的に言い詰め寄られていた件)をやっていると、今回のチームの最後の一人がやってきた……ジト目を向けながら。
「遅くなってごめんなさい。で、何をしているの?」
当たり前ながら、俺と葉子のやり取りをあまり良く思ってはいないようだ。
……本当に申し訳ない。あとでちゃんと謝らないと。
「ちゃんと仕事しないと古賀くんに怒られるし早く行こ、雄也くん」
「あ、ああ……」
玲――俺の腕を掴み引き寄せる。まるで、これは私のものだ、と言わんばかりに。
聞こえる舌打ち――一瞬にして葉子が不機嫌になったのが分かる。
場の空気がどんどん重く、冷たく、息苦しくなっていく。
さながら水の中に頭を突っ込まれたような気分だ。
「は? 今アタシが雄也と話してるんだけど? 先に1人で行ってればいいじゃん。すぐに”2人”で追いつくから」
なぜ”2人”を強調するのか……。しかも若干ケンカ腰で……。
「悔しいのは分かるけど、今は任務中だってことはわかっているかしら?」
玲は玲で、お前は負けたのだ、と言わんばかりのパンチラインを繰り出してくる。
いつからここはMCバトルの会場になったのだろうか。しかもどっちもモンスターである。
「……あっそ。別に仕事しないって言ってるわけじゃないからいいじゃん。あ、そっか。アタシに雄也を取られるのが怖いんだ。そんな貧相なのじゃしょうがないか。雄也ってば前にアタシの胸元見てたし」
起動していないのに、アステロイドが飛んだように見えた。
そして俺はそんなことをした記憶はない……多分。
というかお前トリオン体のそれ、盛ってるだろ……。
「雄也くんってスタイルがいい方がいいって言っていたわ。香取さんこそ好きな男の子の好みもわからないの?」
こちらはこちらでバイパーがぶっ放されたように見えた。
そして誰もそんなことを言った記憶はなかった。
なんで君たちは俺の言動を捏造するのだろうか……国会議員もビックリの事態だ。
このような空気のまま黙々と作業を、そして時折言葉の刺し合いが発生し、限界寸前の俺に清隆から通信が飛んできた。
『一応進捗の確認だけど、どんな感じ?』
『エリアの半分くれぇは俺たちで片づけた。ちっと休憩取ってから再開する』
『諒のとこは大丈夫だと思ってるよ。で、肝心の雄也のとこは?』
『助けて……心が死にそう……』
『使えないなぁ……美奈子、雄也のとこはどうなの?』
『はいはーい! 雄也くんのとこは……仕事はしてるけどちょっとペースが遅いかなー? 諒くんのとこでもう少し頑張ってもらってもいい?』
『了解』
『それより俺を助けて……』
『『自分で頑張れ』』
……俺に救いなど存在しなかった。
ノリと勢いでコメディ要素ぶち込んだんですが……キャラ崩壊若干入ってるな。
と思っていましたが、案外カトリーヌのキャラは壊れてない気がした。
では、また次回に。