本当は1話に収められたらな~、とか思っていましたが、結構長々と書いてしまったので2つに分けます。
書いてて思ったんですが、よくよく考えれば登場人物ってほぼほぼ学生がメインなのに原作はあんまり日常パートってほとんどやってないな~、とかなんとか。
まぁ原作の作風上、そういうパート入れまくってもそれはそれで違和感はありますし、そういうものなんでしょう。
では、よろしくお願いいたします。
【春日雄也・六頴館高校】
今年も残すところあと1週間程度。
ここ最近は防衛任務が立て込んでおり、時期が時期と言うのに彼女と遊ぶ時間も取れず少々悲しい思いをしているのだが、まぁしゃーないだろう。
イレギュラー門の発生以来、危機感からか上層部は若干ピリピリしているように見える。
防衛任務に力が入るもの当然と言えば当然か。
課外授業も終わり、確か今日も防衛任務が入っていたはずだ。……とりあえず清隆のとこ行くか。
急いで隣の教室に向かう。
「清隆、今いいか?」
教室の扉を開けると、清隆は奈良坂や三上といったボーダーの面子と何か話しているようだった。
「ん? いいよ。ちょうどよかった」
ちょうどよかった? 何か俺に用事でもあったのだろうか。
清隆はニヤニヤしながらこちらに近づき、口を開いた。
「今日の防衛任務だけど、来なくていいよ」
「は?」
「は? じゃなくて。クリスマスなのに那須さんと会えないのは、それはそれで可哀想かな、と。と言うよりここのところ防衛任務詰め込んでしまったのがよくなかったね。ごめんごめん」
「別にいい。時期が時期だけに実際シフトを入れたがる隊員いなかったってのは知ってるし。だが……どういう風の吹き回しだ?」
「美奈子に本気で怒られた。ついでにさっき三上からも」
「あっ……」
清隆にしては気の利いた発言を受け少々戸惑ってしまったが、正直ありがたい申し出だ。と思った矢先にこれである。
この兄妹に関しては兄がアレでも妹がまともでよかった、としか思えなくなってきたぞ……。
ってか、今日の防衛任務って確か俺たちだけじゃなくて――
「とは言え確か玲も防衛任務だった気がするんだが……」
「奈良坂と風間さんのとこの誰かが今日はうちと那須隊の穴埋めしてくれるから問題ないよ」
ちょうどよかった、とはそういうことでもあったのか。奈良坂や三上と話していたのはこのことだったのだろう。
俺の穴くらいならうちの2人で埋めるだろうが、玲の分も合わせてとなると誰か穴埋めの要員が必要になるだろう、と思ったが、奈良坂、それに加えて風間隊も助けてくれるなら戦力としても申し分ない。
まぁそうなると心配事も特にないわけで……
「そうか……じゃあまぁ晩飯にでも後で誘ってみるか……」
「そんなんでいいの? そういやなんかプレゼント買ってた記憶があるんだけど?」
「そんなんと言われても初めてだからわからん。プレゼントも……まぁ渡したいんだが……」
ちょっと前に駅前まで出て買った物――未だにカバンの中に入れっぱなしのままだ。
今日までに顔を合わせることがなかったわけではないが、クリスマスの前に渡すのも何だかタイミングが違う気もして渡していなかった。
最悪今日の防衛任務が終わった後にさっと渡してしまおうかくらいに思っていただけに、美奈ちゃんが気を回してくれたことに対して心から感謝したいところだ。
「じゃあもうデート行きなよ」
「何でお前はそんなにグイグイ来るんだよ?」
「これ以上美奈子に怒られたくないんだよ!」
黙れこのシスコン野郎が。
とは言え……まぁ休みをくれたことには感謝しよう。
と、なると埋め合わせをしてくれる相手に感謝の意を示さねばならんな……
奈良坂は後日シフト変わってやればいいとして……よし。
「……そうだな、三上」
「どうしたの?」
「防衛任務手伝ってくれる礼だ。終わったらこいつがどっか付き合ってやるってよ」
「本当!?」
「え!? そんなこと言っt「元を辿ればお前の都合で三上の予定を潰すんだから、その穴埋めくらいしてやってもいいんじゃないか?」
想定外の発言に清隆は慌てて否定しようとしたが、そうはさせない。
理詰めで封殺された清隆は、諦めたかのように溜息を吐き口を開いた。
「言うね……わかったよ。防衛任務終わったら風間隊の隊室行くからそれまで待っててもらっていいかな?」
「うん! ……やった(ボソッ)」
三上の方に目をやると小さくガッツポーズをしているのが見えた。
せっかくのクリスマスなんだし、俺だけ楽しむのも悪いしなー(棒読み)
今まで見たことないくらい邪悪な笑顔をしてるよ、と清隆に罵られたが、知ったこっちゃない。少しは妹以外の女の子にも目を向けろ、というものだ。
清隆から発されるクレームをどこ吹く風に、教室を出ると同時に携帯が鳴った。
「……ん?」
ポケットから携帯を取り出し、画面に目をやる。
着信の主はよく知る相手だった。
【全体視点・星輪女学院】
小南桐絵はイラついていた。長い付き合いの幼馴染である春日雄也に対して。
クラスが同じと言うこともあり、何の気なしに那須に「雄也とどこかに行かなかったの?」と聞いてみたところ、「ううん。雄也くん、防衛任務で忙しそうだったし」と返ってくるものだから、後押しした立場からすると、お前何やってんだ、といったところだろう。
更には、付き合い始めてまだ一度もデートというデートにも行っていないということまで耳に入ってきた。
そういったわけで、何のためにあたしはあいつのケツを叩いたのか、と青筋を立てているところだった。
時期はクリスマス。普通のカップルであれば外出の1つや2つくらいするものだろうが、那須からはそんな気配さえ感じられない。
高校生でしょ!? あんたら何してんのよ! と口から出ていきそうになるのを必死に抑えて小南は自分の席に戻った。この場合は、何もしていないことが問題なのだが。
そんな風にピリピリしていると、小南の携帯が鳴った。誰かからメッセージが来たようだった。
取り出した携帯の画面に映る『古賀美奈子』の文字に、小南は一瞬はてなマークを頭に浮かべたが、とりあえずメッセージを読んでみることにした。
『小南先輩。今日の防衛任務ですけど、雄也くんと那須先輩外してやることになりました! 那須先輩まだ教室にいます?』
(2人が休みになったということはつまり……)
小南は考えた。
2人にとっては日取り的にも絶好の機会だ。
だけど、このまま素直に2人にそのことを伝えるのは癪だ。
特に雄也が忙しさを盾に今まで彼女とデートに行かなかったという、あまりにも男らしくないその姿。
少し痛い目を見てもらおう、と。
そして――ひらめいた。
『ありがと。あとはあたしに任せて』
早速メッセージを返し、即座に画面を電話のそれに切り替える。
そして通話履歴から『春日雄也』の文字を拾い出すと、通話ボタンを押した。
数コールの後、電話が取られる。
『もしもし? 桐絵?』
その瞬間、小南はわざと教室に聞こえるような大きさの声で返事をした。
「もしもし、雄也? ちょっといい?」
次の瞬間、教室中の女子が一斉に小南の方を向いた。
電話口で男の名前を呼ぶ。ただそれだけのことだが、年頃の女子の注意を一点に集める理由としては十分すぎるものだった。
更に小南は学校では猫を被っていることもあり、その意外性も視線を集めるのに一助したのだろう。
電話越しの会話は続く。
『ん? どうした?』
「学校終わったらそのままあたしの学校まで来てくれない? 今日自転車だったし大丈夫よね?」
『あ? でも今日は……』
「いいから! 来る!」
『だからちょっt(ブツッ)』
春日が何か言おうとしていたが、小南は「四の五の言わずに来い」と言わんばかりに一方的に電話を切った。
ともすると、次の瞬間起こることは容易に想像できるだろう――クラスメイトからの質問攻めだった。
「小南さんもしかして彼氏? クリスマスだもんね~」
「普段と違って大きな声出すからビックリしちゃった。でもいいな~」
人のコイバナに首を突っ込む、女子校生らしい習性。
小南は、そんなんじゃない、あれはただの幼馴染だ、と答えるも、クラスメイト達はさらに突っ込んでいく。
そんな中――たった1人だけ顔を引きつらせている女子がいた。
「こ、小南さん……? 今のって……」
「……何のことかしら?」
小南は今まで浮かべたことがないような邪悪な笑みを、那須に向かって浮かべていた。
10月からの新しい職に向けての準備も多少は落ち着いたので、少しはペースを上げたいところ。(こんなことを言っていると、10月に入って忙しくなる(白目))
余談ですが、最近ようやく他の作者さんの執筆なさっているものを読むようになりました。
今更かよ、というお話ですが、下手に他のを読んで意図せずネタをパクってしまったりしたら、とか考えるとゴニョゴニョ
とりあえず、直近に更新されてる話数の少ないものから徐々に……
では、今回も拝読いただきありがとうございました。