それぞれの戦う理由   作:ふぃりっぷす

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単行本新刊発売おめでとうございます。

一応ここまでweb版で全部揃えているわけですが、それとは別に序盤の方を書籍の方で買い直そうかと考慮中……お金がどんどん飛んでいく……


では今回も宜しくお願い致します。


黒木 諒③

【春日雄也・ボーダー本部】

 

ついにボーダーの正規入隊日がやってきた。わけだが……

 

「はぁ……」

 

早速矢面に立ちたくないという強い気持ちが大きな溜息となって現れた。

 

取材とか受けるのは特に何も思わないのだが、どうしてもこの新規隊員のオリエンテーションというやつはどうも苦手だ。

 

始まってしまえば、まぁなんだかんだでやってしまうのだが、普段あんまり羨望の視線とかを向けられることがないから、そんなキラキラした目を向けられるのが正直クソ恥ずかしいのだ。

 

 

右隣には可哀想な物を見るような目をこちらに向ける木虎。

 

「春日先輩。いい加減諦めたらどうですか?」

 

「木虎……俺は表に出る器じゃないんだ……」

 

そして左を向けば諸悪の根源、清隆。

 

「御託並べてないでさっさと行くよ。シャキッとする!」

 

「前回の1回きりであってほしかった……」

 

ボーダーに入ってから本当にこいつには振り回されっぱなしである。

 

「そんなわけないじゃん。それに今回は気になってる新入隊員が2人いるんでしょ? ちょうどいいじゃん」

 

「隅っこの方で見てたかったよ……諒と変わるのはダメなのか? あいつの方が知名度は俺より上だしよくね? どうせその辺いるだろうしいいだろ?」

 

「知名度高くても外面は雄也の方がいいから。なんだかんだでそっちの方がウケはいいから。そういうのって結構大事なんだよ」

 

わざわざ論破するかのような返し方。

暗に「お前がどんな屁理屈かましてきても全部言い返してやるよ」と言っているということを長年の付き合いから知っている。

 

言い合いになって勝てる相手じゃない……諦めよう……。

 

「……今回きりだぞ」

 

「オッケー」

 

あ、これは嘘ついてる時の笑顔だ……。

 

 

 

 

時間となりオリエンテーションが開始された。

 

毎回恒例となっているが、忍田さんのあいさつに始まり、その後嵐山隊を中心にオリエンテーションが執り行われる。

 

今回は東さんや荒船さんのようなハイレベルな狙撃手とかも参加していて、狙撃手の指導陣がかなり豪華なことになっている。

 

その狙撃手側には玉狛からは千佳ちゃんが行っている。

 

レイジさんが言うには単純な狙撃の腕だけなら正規隊員とも遜色はないレベルにあるらしいし、きっと皆を驚かすことができるだろう。

 

遊真もそうだが千佳ちゃんにしても、どう考えてもレベルが違うから何か他の新入隊員が可哀想なところもあるな……。

 

特に初期ポイント大目に付与される新入隊員はたまったものじゃないだろう。初っ端から自信をへし折られることになるわけなのだから。

 

 

 

そしてこちら側では――

 

「0.6秒……!!?」

 

遊真が早速注目を浴びていた。

 

例によって対近界民戦闘訓練を実施するわけだが、今年は小粒な人材が多く、ここまでの最高記録が58秒と少々物足りない結果となっていた。

 

……いや、ここ最近の木虎・緑川・黒江が出来すぎただけだな。若干感覚が麻痺してた。

 

だが、それと比べてもこのタイムはヤバい……。

 

更には、マグレだ、と言いがかりをつけられ臨んだ2回目――

 

またしても一瞬で終わっていた。

 

画面に映る『04.59.62』の数字。

 

流石にこれにはオリエンテーションの様子を伺っていた正規隊員たちも驚嘆の声を上げていた。これは今後2度と更新されることはないだろう。

 

新人がスコーピオンで0.4秒か……うん、今の俺でも怪しいな。

 

アステロイドを一撃でコアを破壊できる威力を保持した上で、弾速重視で可能な限り早く起動・射出……0.38秒は……まぁギリギリ何とかなるか。自信はないが。

 

というか俺と対戦した時より動きがかなり早くなっている。

戦い慣れしていることもあるのだろうが、この短い間でまた更に強くなっているように見える。

多分こないだ戦った時の条件で戦ったら今の俺は間違いなく完封されるだろう。

……そういや桐絵相手に3本は取れるようになったとか言ってたし、当然と言えば当然か。

 

 

 

そして戦闘訓練が一通り終わったころ、嵐山さんが口を開いた。

 

「よし、一通り終わったみたいだな。じゃあせっかくだし新入隊員の皆には現役の隊員の力も見てもらおうか」

 

前回のオリエンテーションの時と同じ流れ。

 

このままだと多分また俺がやる羽目になるだろう……。

 

辺りを見回す――誰か身代わりは……いた!

 

「諒! ちょっと降りてきてくれ」

 

スタンドで見学していた諒と目が合い、ちょうどいいとこにスケープゴートがいるじゃないか! という心の声を押し殺し、諒を呼んだ。

 

「あ? なんだ?」

 

「新入隊員向けのデモンストレーション。やってくれね?」

 

「めんどくせぇな……」

 

「頼む。お前が入隊したときのリベンジも兼ねて、ってことで」

 

「しゃあねぇな……一番速いタイムはいくつだ? さっきの白いチビだったか?」

 

「そ。さっきの0.38秒が新人の歴代最速レコード」

 

「わかった。見てろ」

 

最初は気だるげな素振りを見せてはいたものの、遊真の結果に多少は触発されたのだろうか、その記録を打ち破ってやろうという気概を見せていた。

 

諒が訓練室に入ったのを確認し、新入隊員たちの方を向き口を開いた。

 

「では、うちの隊の黒木が皆にさっきやってもらった戦闘訓練をやってもらう。現役のトップレベルの腕を見てもらおうか。『諒、準備はいいか?』」

 

『いつでもいいぞ』

 

腰に下げた弧月の柄に手を添え構える諒の姿は流石に様になっているように見えた。

 

剣術の心得なんて欠片も持っていないが、そんな俺でもとてもきれいなフォームだと思うし、それ以上にこいつは強いということを感じさせる。

 

ふと遊真の方を見てみると、さっきまでの軽い感じの雰囲気は消え、諒の方をじっと見ている。

 

そして――

 

『3号室、用意、始め』

 

開始を告げるアナウンスが鳴ったその刹那、訓練用の近界民が真っ二つになっていた。

 

諒の姿をかろうじて目で追うことはできたが、何をやったのかもわからないままに勝負はついていた。

 

……いつの間に斬ったんだよ。

 

『チッ……0.1秒は無理か』

 

『記録、0.2秒』

 

画面に映る、空閑のそれを上回る『04.59.81』の数字。

 

場は一瞬静まり返ったが、次の瞬間、空閑の時のものを超える大歓声が訓練室を揺らした。

 

 

 

訓練室から退室し、ふぅやれやれ一仕事終わったぜ、みたいな態度の諒の下へ行き声をかける。

 

「サンキュ。それにしても鬼みたいなタイムだな」

 

「カッコつけて抜刀術なんて慣れない真似しなけりゃもう0.05秒は縮んでら」

 

「そんなん想像すらもできない世界だよ……」

 

あれだけのタイムを出しておきながら、これ以上の速さを出せるというのだから驚きだ。

 

しかし諒よ。カッコつけてそんなことをしたというのはわかったが……速すぎて肝心の抜刀術とやらが見えなかったんだが……。

 

「それにしてもあの白いチビ、空閑つったか? ちょっと前に近界民に襲われた学校にいた奴だよな? あの時のはあいつがやってんのか?」

 

「だな」

 

「やっぱりな。いいじゃねぇか。あれがボーダー入るってんなら、お前らの言ってる近界からの侵攻でも最高に役立つだろ」

 

「黒トリガーも結構強力なものみたいだし、戦力としては確かにデカいな」

 

「俺が言いてぇのはそういう意味じゃねぇんだが……まぁ今はいい」

 

諒が何か言い淀んでいたのが気になったが、別方向から声をかけられ思考が遮られてしまった。

 

「春日先輩、ちょっと」

 

「充? どうした?」

 

「あれを」

 

充に声をかけられ指示された先を見てみると――

 

「ん? ……は? 修と風間さん? 何やってんの?」

 

「模擬戦をやるみたいですね」

 

何があったかわからないが、2人が模擬戦をやるとのことだった。

 

修に勝ち目が一切見えないし、風間さんにしても遊真が相手ならともかく、何か利点があるとは到底思えないが……やるというからには見てみたい組み合わせではある。

 

「……オリエンテーション中悪いけど、ここ残ってていいか?」

 

「はい。そう言うと思ったので休憩を入れることにしました。一応新入隊員には一度部屋から出るように指示を出しておきましたので」

 

「そうか、悪いな」

 

「いえいえ。ではまた後で」

 

嵐山隊が機転を利かせてくれたようで、業務中ではあるが観戦する時間をもらえた。

 

さて……どうなることやら……

 




毎度おなじみの余談ですが、先日法事で祖父母に行ってきたのですが……

何かいつの間にか周辺がアニメの聖地と化してました(白目)

普段では見ないような車のナンバーがガンガン来てましたし、アニメの力すげぇ……と身に染みて実感しました。

私も家の事情で2年程度ですが祖父母宅に住んでいたのですが、自分の過ごした土地が土地が盛り上がるというのは非常にうれしいものです。



では、今回も拝読いただきありがとうございました。
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