何が起こっていたかというのは後書きでチラッと書こうかと思います。大した理由じゃないけど(ボソッ
では今回もよろしくお願い致します。
【春日雄也・ボーダー本部】
夜の防衛任務まで諒の訓練に付き合うことになり、とりあえず一旦隊室に向かうと清隆の姿がそこにあった。
あれ? でも今日って確か……
「今日って狙撃手の合同訓練じゃなかったっけ?」
「そうなんだけど、ちょっとこの後会議に呼ばれてるんだよ。とりあえず時間が少し空いてたしやること特に思い浮かばなかったからここで時間潰してた感じ」
「何の会議やんだ?」
「多分迅さんの言ってる大規模侵攻のことじゃない? その辺のとこを空閑を交えてちょっとお話し合いをしよう、ってとこ。迅さんの予測だけでカバーできる問題じゃないし、近界民の情報はほしいよね、ってお話」
「確かに予知にも限界あるしな……」
「まぁあんまり妄信しすぎるのもよくないってこと。それに正直あれって皆が思ってるような能力じゃないって俺は思ってるし。未来予知の類ではないんじゃないかな?」
「は?」
「ほう」
軽い雑談のつもりが、久々に清隆からぶっ飛んだ発言が飛び出してきた。
……いや、どう考えても予知だろあれ。
頭でも打ったのか? と言わんばかりの視線を清隆に向けていると、やれやれ、とでも言わんばかりの表情を作り清隆は口を開く。
「いや、だって副作用って人間の能力の延長上にあるものだよ? 皆の言うように予知なんだとしたら、それは人知を軽く超えてるよ」
そう言われると確かに一理あるんだけど……だったら……
「じゃあ何だって言うんだよ」
「あれ多分予知じゃなくて予測だよ。近いことができる奴がそこにいるじゃん」
そこにいる、といい清隆は顎で諒を指す。
「俺か?」
「うん。ログとか見直せばわかるけど、攻撃手同士でのやりあいになったときの諒って相手の初動を潰してそのまま落としたり、相手の動きを読んで即座にそれに合わせた対応をするケースが結構あるんだよね。あれどうやってるか説明できる?」
「ぶっちゃけ何となくでできんだが……そうだな、相手の呼吸だったり目線だったり、あとは微妙な動きだったりを見て1秒後に相手がどう動くかってのを予測して、カマせそうだったらカマしてる感じだな」
「要は対象から五感で得られる情報を総合的に分析して、対象に起こりうる、または起こしうる未来の事象を予測するってとこかな。これにしても俺に言わせれば超常的なものだけど、諒の言ってるような先読みの特化ってことならある程度合点はいくかな、って」
言っていることはなんとなく納得できる。
とは言え、いきなりそう言われても理解が追いつかないというか……
困惑する俺に一瞥し、清隆は言葉を続けた。
「別に迅さんの力を否定しているわけじゃないし、予知だろうとそうじゃなかろうと皆助けられてると思うよ。ただ――本当に予知って言うんだったら、見えていていいはずの未来があったはずだって思っただけだよ」
「清隆……」
見えていていいはずの未来――鳩原さんの密航事件のことだろうか。
一瞬だけ表情に暗い影を落としたが、すぐにいつものヘラヘラしたような表情に戻っていた。
「まぁ一人ぐらいそんな風に思ってる人間がいてもいいんじゃないかな? どんなに突き抜けていようと、あのサイドエフェクトだけでどうこうできない局面だって出てくるわけだし。……おっと、そろそろ会議の時間だった。じゃあ行ってくるね」
「ああ」
そう言うと、清隆は急いで隊室を出て行った。
「さて、じゃあやるか?」
訓練に付き合うという約束だったため声をかけてみると、諒は少々渋い顔をしていた。
「どうかしたのか?」
「ん? ああ。大規模侵攻っつーからには相手もそれなりの数揃えてくんだろ?」
清隆との会話の中で何か思うところがあったのだろうか。渋い顔の正体は大規模侵攻に対する懸念のようだった。
「だろうな」
「だったら今の人員だけじゃ心許ねぇな」
「まだ戦力が足りないってか?」
「……相手がトリオン兵だけなら問題ねぇ。例えばこないだの空飛ぶ固ぇやつみてぇな、遠征用に多少強ぇトリオン兵を用意されても何とかなっだろ。あくまでもこっちの戦力が揃ってる状態ならだが」
「いくつか部隊が県外に出てるのがよろしくないってか?」
実際部隊によっては県外にスカウト活動に行っているとこもある。
ボーダーは人手不足とまでは思ったことはないが、やっていることの性質上、隊員は多いに越したことはないし、むしろ多少余剰と思われるくらいの戦力があってもいいと思う。
ただ、非常事態が迫っている中でそんなことをやっている時間はないだろう、というのが諒の主張のようだ。
「まぁそんなとこだ。隊員増やすのが大事だってこたぁわかっけど、今はそんなことしてる場合じゃねぇ。さっさと引き返させるべきだろ。それに――」
「それに?」
「それだけでけぇ規模で攻め込んでくるんなら、空閑みてぇな人型の奴が来るってこともあり得るだろ」
なるほど、そういうことか。
「確かにな……向こうもトリガー使ってくるだろうし、どんな能力かわからないってのもキツイな……」
普段俺たちが使っているトリガーは、あくまでもボーダーの開発室の技術がベースにある上で作られており、近界の持っている、ボーダーと異なる技術で作られたトリガーは自分たちのトリガーとは性能が全く違ったりする。
そういった予期できない戦闘手段を持っている相手だと、対応が後手になる恐れもある。
そういった点を諒は心配している――のかと思ったが……
「それもそうかもしれねぇけど、そんなことじゃねぇ」
「どういうことだ?」
諒の口から出てきた言葉は俺の想像しているものとは全く異なるものだった。
「……お前、人殺せるか?」
正直一瞬何を言っているのか、何でそんな物騒な話になるのか、理解ができなかった。
「はっ? お前突拍子もなく何を言い出してんだよ……」
「お前こそ何平和ボケかましてんだ。わかってねぇなら言ってやるよ。――こいつは言ってみりゃ戦争と同じだ」
「っ……!」
諒が発した”戦争”という言葉。
自分の意識には存在しなかった言葉だった。
「空閑を見りゃわかるだろ。近界民つっても見た目は人間と一緒だ。場合によっちゃ殺す必要だって出てくるかもしれねぇ。そん時お前は殺れんのか?」
「……」
諒は淡々と殺すという行いを起こりうることだと語る。
そして自分にそんなことができるのか、という問いかけに俺は言葉を発することができなかった。
「俺の見立てじゃボーダー内でもそんなことできるのはごく一部だ。少なくとも俺と清隆と、多分空閑は必要なら相手を殺れる。あとは遠征の常連組あたりか?」
そんな俺を他所に、諒は侵攻に対してそういった意味での戦力になる人間の心当たりを唱え始めた。
戦争――敵を殺す――諒に言われるまで考えていなかった。
いや、意識に存在しなかったわけじゃない。考えることを避けていただけだ。
――トリガーを使うことができたからと調子に乗った愚かな自分の過去。
――意識を取り戻した次の瞬間に見た、白砂と化した母さんの姿。
父さんにしても、近界民との戦いの中で死んだと聞いている。
その全てを嫌でも思い出してしまうから――諒のような考えを意識の外へ追い出していた。
「まぁ安心しろ。異常なのは俺らの方で、お前のような感覚の方が正常だ。ああは言ったが別にお前はお前のやれることやりゃいいんだよ」
「だが――」
「どっちみちお前の強みは大量のトリオン兵をまとめて潰せるこったろ。正直俺としちゃそっちの方が助かる。ほら、いつまでも気にしてんじゃねぇ。訓練付き合ってくれんだろ?」
「ああ……」
気にするな、とは言われたが気にしないことの方が無理だった。
諒は……そしておそらく清隆も、大規模侵攻に対しての意識が俺とは全然違っていた。
――俺の認識が甘いものだと突き付けられたように感じた。
平和ボケと言われてしまったが、確かにその通りなのかもしれない。
もし――そんな場面が発生したとして――
俺は敵を殺す覚悟を持てるのだろうか――
答えを出せない自問自答がずっと俺の中で渦巻き続けた。
というわけで、更新が遅れたわけですが……
作業用のPCがぶっ壊れました。
HDDがクラッシュしてしまい、データがあの世行きになりました。
オンラインストレージに保存していた分も最終更新日が12/27と……まぁ1から書き直しですよね(白目)
一番不運だったのは、もう1本書くために過去の天鳳とかの牌譜とか残していたんですが、そいつらが悉く消え去ったことですね……
では、今回も拝読いただきありがとうございました。