それぞれの戦う理由   作:ふぃりっぷす

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久しぶりの投稿です。

よろしくお願いいたします。

……覚えてる人いるかどうかが不安。



香取 葉子③

【春日裕也・ボーダー本部・個人ランク戦ブース】

 

「うわっ……危ない危ない……」

 

こちら目掛けて飛んでくる大量の弾丸を間一髪で躱し、物陰に隠れて一息つく。

 

5本勝負で現在互いに2本ずつ取ってからの最後の一戦。

 

ハンドガンで牽制を入れてからの接近戦へのシフトチェンジ――タイマンを張るにあたって、俺が苦手とするタイプの1つだ。

 

遮蔽物のない場所で一直線上に構えず、物陰に隠れながらトリガーを上手いこと使ってケリを着けるというのがベターな方法なだが、今回の相手はグラスホッパーを使い上手いこと躱して距離を詰めようとしてくる。

 

もう少しミドルレンジでの銃撃戦に比重を置いてくれるとこちらとしてもやりやすいのだが、そんな都合のいい戦い方をしてくれるわけもない。

 

例えば純粋な攻撃手であれば、中距離からの攻撃が発生しないので、うまいこと対応されない限りはただただ火力に任せて圧し潰すこともできるが……ちくしょう、やっぱり万能手ってのはクソ厄介だ。

 

特に今回は合成弾を使わない、というハンデも与えているので最大火力という面でも本領を発揮することができない。

 

――だが、攻め方のパターンはある程度把握した。

 

最近相手してやってなかったから戦い方の変化に気づかなかったが、やられた2戦は共に接近戦でフィニッシュを決められている……というか、正確には中距離戦で潰されなくなった上で接近戦に持ち込めるほどに成長している。

 

相手が接近戦に自信を持っていること、そしてそれ以上に俺が接近戦に死ぬほど弱いこと。

 

そう考えるとまぁ接近戦選ぶよな……。

 

さて、改めてプランを練ってみよう――

 

取られた2戦は共に接近戦での対応ができずにやられてしまっていて、おそらく今回も同じ方法で来るだろう。

 

その上で自分の強みは何か――以前清隆や諒に言われたことを思い出す。

 

―――

――

 

『雄也の強みは射手トリガーを寸分の狂いもなく狙ったとこに打ち込めること。野球のピッチャーでいうところのコントロールがいいってやつかな。これに関して言えば出水や二宮さんのそれを遥かに凌駕しているよ』

 

『とは言ってもそれってあんま意味なくね? 基本的に俺たちは100発撃って1発でも決まればそれでいいんだから、1発1発のコントロールは大雑把で問題ないわけだし』

 

『基本的にはそうなんだけど、例えば近距離も中距離もいけるような相手と1対1になった時とかには結構重要な要素になると思うよ』

 

『万能手か……いや、そもそも1対1になるような局面作らないようにしてくれよ……』

 

『チーム戦ならそうするけど個人でランク戦やるときとかは?』

 

『基本的に俺より強い万能手とは何かと理由をつけてやらないようにしている』

 

『クズだね。まぁどうせそのうちやる羽目になるからちゃんとどうしたらいいか考えた方がいいよ』

 

『やり様はあるってのはわかってるんだが……』

 

『どんなの?』

 

『一つはアステロイドやメテオラで足止めしてそもそも近づけさせずに中距離での戦闘を強制して力で押す』

 

『機動力ある相手だったら躱されて距離詰められると思うけどその辺は? 最近だとそのやられ方で諒にやられたんでしょ?』

 

『相手の動きを読んでそこに合わせて死角からバイパーとかを打ち込むとかそんな感じなんだが……』

 

『なんだけど?』

 

『流石にこれは無理だな。相手がどう動くかをピンポイントで予測はできん。ハウンドでやればいいだけの話かもしれないが、奇襲の形にならないと大抵防がれるんだよな』

 

『だろうね。でもそれもやり様はあるんじゃない?』

 

『どういうこと?』

 

『例えばそのピンポイントに誘導したり固定したりということを考えたやり方だと――』

 

―――

――

 

 

やり様はある、か……まぁダメ元でやってみるか。

 

チャンスは次に相手が接近してきた時。

 

――やるか!

 

「バイパー」

 

物陰に身を隠したまま、とりあえず相手が隠れてそうなところ目掛けてバイパーを打ち込む。

 

手ごたえは……ない。おそらく避けられた。

 

そして次の瞬間、物陰から出てきた相手が、おそらくグラスホッパーを使ったのだろう、猛スピードでこちらに突っ込んできた。

 

右手でスコーピオンを振りかぶらり俺目掛けて決めにくる。

 

だが――甘い。

 

軌道上に複数発の弾丸を起動する。

 

射出は間に合わないだろうが、軌道上に置いておくことで突っ込んできた相手にぶつけてケリをつける、という寸法だが……

 

直前でさらにグラスホッパーを起動し、設置したトリガーを上手いこと迂回し突っ込んできた。

 

勝った、と言わんばかりの表情を浮かべ相手は突っ込んでくる、が――それでもまだ甘い。

 

 

―――

――

 

『そもそも接近戦が苦手だろうがやり方はあんだよ。自分が優位な状況を作れりゃそもそもそんなこたぁ問題にならねぇ。至近距離だと撃てねぇとかそういうもんじゃねぇんだし』

 

『例えばどうすんだよ? 接近戦って時点でもう弧月とかの方が有利じゃん?』

 

『要は相手の動きを止められりゃいいんだろが。例えばそうだな……先手取ってタックルかませ』

 

『……ダメージ通らねぇ』

 

『誰がそんなこと言った? ダメージが通らなかろうが相手の動きは止まるだろ。抑え込んだ後で撃てばそれで終いだろが』

 

『それ上手くいく?』

 

『攻撃手段はトリガーだけ、っつー先入観を大抵の隊員は持ってっからな。俺だったりお前んとこの木崎さんが相手ならともかく、誰も肉弾戦に持ち込まれっとか思ってもねぇから案外決まんだろ』

 

―――

――

 

 

「えっ……!?」

 

ドスッ、っと相手がスコーピオンを振り下ろす前に思いっきり体当たりを決める。

 

やはりこれは想定外だったようで、尻餅をつき相手はそのまま仰向けに倒れた。

 

そして――

 

先ほど設置していたトリガー――バイパーが倒れた肢体目掛けて降り注いだ。

 

 

 

 

 

ランク戦を終えロビーに戻ると、先ほどの相手――葉子が不機嫌そうな表情を浮かべ近づいてきた。

 

「勝ったらあいつと別れて付き合ってもらうはずだったのに……」

 

「いや、それは無茶苦茶だろ」

 

とんでもないことを言うな、こいつ。

 

「もっかいやんない?」

 

「負けても別れないからな?」

 

「ケチー」

 

「ケチじゃない。正直もう勝ち越せる自信がない」

 

もう葉子には勝てない、ということを仄めかすと、葉子は過剰な反応を示した。

 

「はっ!? 何言ってんの? 雄也の方が強いでしょ?」

 

「いやいや。そもそも俺は大して強くないよ。というか葉子が普通に強い。それに、俺は援護向きで直接戦闘向きの人間じゃないの。もちろんハンデ取っ払って俺が火力でゴリ押しすれば場況はもうちょっと変わるけど、それでもそれに対応できるくらいの力が葉子にはあるよ」

 

「でも……」

 

葉子が何か言い返そうとしたその瞬間、大歓声が上がり言葉を遮られる。

 

誰かが戦っているようで隊員のほとんどがモニターに釘付けだった。

 

「ビックリしたー……何だ?」

 

「あっちの方……あれって雄也のとこの……」

 

「諒と……遊真?」

 

モニターに映っていたのは、諒と遊真が戦っている姿だった。

 

遊真も健闘しているが……残念ながら次の瞬間には諒に一刀両断され決着となった。

 

「誰あの白いの」

 

「玉狛から今期入隊したやつ」

 

「ってことはまだC級よね? そんなのと戦う?」

 

「でも戦ったみたいだな……ちょっと行ってくる」

 

「うん」

 

葉子とはその場で別れ、ちょうどブースから出てきた2人のもとに向かった。

 

 

 

「かすが先輩?」

 

「なんだ、見てたのか?」

 

「最後の方だけな。……9-1で諒か」

 

「初見たぁ言え1本取られっとは思わんかったな」

 

「そうか。遊真はこいつとやってみてどうだった?」

 

「強いね。剣を使う相手とは何度も戦ってきたけど、多分くろき?先輩が一番強い」

 

「そんなにか?」

 

「動きが完全に読まれてるみたいだった」

 

ということは諒はそこらの近界民より強いってか……だだの化物じゃん……。

 

「そうか。諒はどうだった?」

 

「今でも充分強ぇが、B級上がれば一気に伸びるぞ。グラスホッパーとか使えっと攻め手が増えるし、7-3くらいには迫られっかもな。入隊んときの戦闘訓練もブラフじゃねぇ、確かにそんだけの力はあるな。何より戦うことそのものに慣れてやがる」

 

遊真は遊真で十分化物のようだ。諒にここまで言わせるとは……いや、というか

 

「何でお前遊真とやってんの?」

 

「緑川ぼてくりこかしたC級がいるって聞いたんだが、案の定こいつだったわけだ。せっかくだからやってみたってとこか」

 

「あー……そういやそんなこと聞いた気がする」

 

話には聞いていた。緑川が修を公開処刑し、それにキレた遊真が緑川にランク戦吹っ掛けて圧勝したという話。

 

実際そのくらいできても不思議ではないし、遊真は案外友達思いな奴だ。やったとしても不思議ではない。

 

ふと二人の方を見てみると、反省会というところだろうか、楽しげに先ほどの模擬戦について話している姿が見えた。

 

互いに戦闘民族という面があるからだろうか、気が合うのだろう。

 

……考えたらどっちも桐絵とウマが合うんだよな……納得。

 

そんな失礼なことを考えながら、俺はブースを後にした。

 




PCの不調と資格試験の勉強とで忙しかったのですが、何とか一段落ついたので、また書いていこうと思います。



では、今回も拝読いただきありがとうございました。
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