それぞれの戦う理由   作:ふぃりっぷす

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そろそろ原作の方にも触れないと、ワールドトリガーの設定だけ借りた何かになってしまうので、原作の事件、触れておきましょう。

活動報告更新しました。

お時間有りましたら、こちらも是非ご覧ください。(大した報告はしていない)


古賀 清隆

【春日雄也・ボーダー本部】

 

隊室まで全力で走っていた。

 

『雄也。すぐに隊室に来てくれ。急ぎだ』

 

突然の清隆からの電話。いつになく真剣な声。そしていつものように砕けた口調でないことが、事の大きさを俺に悟らせた。

 

廊下を駆け抜け、隊室に駆け込むと、青ざめた顔をした清隆がミーティング用のテーブルに腰をかけていた。

 

「急に呼び出してすまない。今から話すことは誰にも言わないように頼む。上層部でもまだ詳しい状況が把握できていない上に緘口令が敷かれている」

 

「……何があった?」

 

「鳩原さんが……近界に密航したらしい……」

 

「は? どういうことだ」

 

「言ったとおりだ。昨日の晩にゲートが発生した……いや、ゲートの発生自体はいつものことか。で、鳩原さんと民間人3人がそのゲートを通じて失踪したとの情報が入った。あと今日になって判明したらしいが、保管庫のトリガーが3つ紛失している。これは鳩原さんがこの3人に流したものだと考えられるな」

 

「……」

 

淡々と話す清隆の言葉。頭には入ってきていたが、きちんとは理解できなかった。

 

なぜ密航なんてしたのか、皆目見当つかなかった。

 

どうしても密航しないといけない理由でもあったのか、という疑問がただただ頭を流れていく。

 

「この間鳩原さんと会っていたこともあって、朝一で城戸指令たちに呼び出されて俺は今回の件を知ることになった。さすがにユズルはまだ中学生だし、そんな話できないとのことで俺だけが呼ばれたが……なぁ、雄也。一つ教えてくれ」

 

「なんだ?」

 

「迅さんはこのことを予知できなかったのか?」

 

俺を呼んだ理由はそれか。迅さんのサイドエフェクト――未来視。

 

言葉だけ聞けばこういう話になるのも至極当然のことだ。

 

確かにあのサイドエフェクトにもおそらく限界はある。今回のことを読みそこなった可能性も否定できない。

 

だが、読めていた可能性もまた同様に否定できない。何か理由があって今回のことを進言しなかった可能性も十分にある。

 

だが……下手なことを言えない今の段階では予知できなかった前提で話を進めた方がいいだろう。

 

「……あくまで俺の推測だがいいか?」

 

「構わない」

 

「多分今回の件はきちんと予知できていなかったんだと思う。そもそも迅さんの未来視はそこまで都合のいいものではないと思っている」

 

「どういうことだ?」

 

「迅さんが言うには、未来ってのは決まったルートのものではなくていくつにも枝分かれしているものらしい、ってこの辺は知ってるよな」

 

「多世界解釈的な話だな」

 

「そういう難しい話は俺にはわからないが、お前が言うのならそういうものなんだろう。まぁ未来は幾万幾億の可能性があるってことだな。そうだとして、それ全部を迅さんの頭が処理できるかと言うとおそらくできないと思う。多分可能性の高い未来のビジョンを汲み取ってそれを予知としているんだろうな。まぁ余程決まりきった未来の話でない限り、確実に予知ができるかと言うと、そうではないはずだ。実際、読み損なうこともたまにあるからな」

 

「なるほどな」

 

「まぁ、生きた人間ってのは何をしでかすかわからないから。誰かが可能性の低い未来に歩を進めた結果、想定外の未来を世界が歩むことになるなんてことがあってもおかしくない、というよりむしろよく起こることだと思う。今回ももしかすると可能性の低い未来が選ばれた結果なんじゃないか?」

 

「そうか……」

 

ここまで話して一旦一呼吸置いた。

 

「何かここ最近で、密航に繋がるような……何と言うか、引っかかることはないか?」

 

「……可能性があるとしたら、近界遠征だな」

 

「遠征がどうしたんだ?」

 

「うちには関係ないことだったから、この間ミーティングの時には話さなかったことだが、隊長会議の際に近界遠征の話が出た。A級の上位部隊が今月の後半に遠征に向かうことになっているらしい。二宮隊もそれに漏れず、遠征部隊に選ばれるはずだった」

 

「はず?」

 

「ああ。結果だけ言えば、二宮隊は最後の最後で遠征部隊から外された。選抜試験は通っていたのにな。そしてそれを知った誰かがこう吹聴もしている。”鳩原未来が人を撃てないから二宮隊は遠征部隊から外された”と」

 

「本当なのか?」

 

「真相はわからないが、そういう噂が出てきたのは確かだ。……だが、そうか。わかった。急に呼び出して悪かった。それにお前の恩人すら疑ったことも謝らせてくれ。済まなかった」

 

「いや、構わんよ。あんな奇天烈なサイドエフェクトがあったら疑いたくなるのもわかるし、誇張解釈されても仕方がない能力だしな」

 

そうだよな……そんなひたすらに都合のいいサイドエフェクトなんて存在はしない。

 

もし皆が思うほど都合のいいサイドエフェクトだとしたら……母さんが死ぬことなんてなかったんだろうしな。

 

「そうか……呼び出しておいて申し訳ないが……席を外してもらってもいいか? 一人で考えたいことがいくつかある」

 

「ああ、基地内にはもう少しいるから、何かあったら連絡をくれ」

 

「わかった。すまない」

 

そして清隆を一人残し、俺は隊室を出た。

 

すぐに遠征での決定が何かしらの関係があると気付いたあたり、清隆には今回の件について何かしら心当たりがあるのかもしれない。

 

だが、それを言わないのであれば、わざわざ俺から追求するのも野暮なことだろう。

 

とりあえず行く宛てを探して基地内をぶらぶらしてみた。

 

しかしこんな話をした後にランク戦などする気も起きないし、湿気た面したまま那須隊や香取隊の隊室に行くのもはばかられる。

 

仕方なくコーヒーを買ってラウンジで本を読みながら時間を潰すことにした。

 

隊員たちの話し声がまばらに聞こえる。

 

鳩原さんが隊規違反で除隊されたという噂話。

 

二宮隊の処遇はどうなるのかという声。

 

色々な話が聞こえてききた。

 

たった1日の間の出来事なのに、こんなにも広まるものなのか。

 

それだけA級上位だった二宮隊の注目度が高かった、ということだろうか。

 

本を読み進めてはいたが、肝心の内容はさっぱり頭に入ってこなかった。

 

なんでこんなことになったんだろうな……本当に。

 

……以前、美奈ちゃんと隊室で話したときのことをふと思い出した。

 

 

『あれっ? 清隆は?』

 

『鳩原さんと絵馬くんと、毎度の事ながら訓練行ってるよー』

 

『またか……暇だったらこっちの訓練付き合ってもらおうと思ったのに』

 

『残念でしたー!』

 

『……にしても、またその面子か。よく飽きないな』

 

『なんだか弟2人を面倒見るお姉さんって構図だね! ……そういえば鳩原さんってさ、お姉ちゃんに似てるんだよねー。出てる雰囲気とかまさにあんな感じだったよ』

 

『そうなん?』

 

『うん。生きてたら確か同い歳のはずだし、お兄ちゃん、多分お姉ちゃんのこと重ねてるんだと思うよ』

 

『何か意外だな……』

 

『そうでもないよ? 昔は正直頼りなかったし、お姉ちゃんにべったりだったし。……でも大規模侵攻の後から何か変わっちゃったからね……』

 

『……』

 

『なんか急に大人になった感じなんだよね。まー頼りになるし、助けてもらってる部分もたくさんあるから、いいことなんだけど……でもあの3人でいるときはお兄ちゃんも昔みたいな感じになるから正直ありがたいよ』

 

―――

 

――

 

 

……どのくらい時間が経っただろうか、手元の本はすでに読み終えてしまった。

 

ラウンジに足を運んだ頃には大勢いた隊員も、気が付けば数人しかいない。

 

外はいつの間にか真っ暗になっていた。

 

結局22時を過ぎても清隆から連絡がくることはなく、その日はそのまま帰ることにした。




ちょっと本編で触れられなかった独自解釈が絡むので、
何かご意見ありましたら、お願いします。

一応次の話でもう少し触れます。
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