Muv-Luv LL -二つの錆びた白銀-   作:ほんだ

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情態の末梢

 

 SW115周辺は第二次降下部隊がほぼ完全に掌握しており、武たち第一中隊は終結もせずにそのまま飛び込むような形で、ハイヴ地下茎へと侵入できた。第二次降下部隊の帝国陸軍が押し寄せるBETA群に対し継続して砲撃を加えているものの、それは侵攻作戦というよりかはむしろ拠点防衛的な対応であり、無理に攻勢に転じることもなく、危うげもない。

 そして彼ら帝国陸軍が駆るのは武たちA-01の弐型とは異なり改修前の不知火だがXM3には換装されているようで個々の衛士の技量も高い。不利な状況下であるはずが的確な処理を続けていた。

 

『ここが……ハイヴ?』

『サラマンダー00より、連隊各員へ。第二次降下部隊の皆様方のご活躍で「門」周辺から10kmは制圧できているとはいえ、文字通りの敵地だ。なによりも少々「渋滞」する予定だ。警戒は怠らず、8kmほど先行し、そこで隊の再編せよ』

 

 中隊の誰かが漏らした言葉にターニャが淡々と指示を被せてくる。

 

 もとよりも第二次降下部隊が、侵攻よりも制圧を優先して展開している区域だ。『門』周辺はそれなりに広いとはいえ、この場で連隊ごとに編成を整えるには余裕はない。

 

 

 

 ハイヴの地下茎は巨大だ。全高180mほどのXG-70dでさえ易々と進攻できる空間があり、戦術機であれば文字通りに飛び回ることさえ出来る。

 しかし第二次降下部隊の帝国陸軍二個連隊が制圧しているのは、『門』から10km先までだけだ。それは直径1km弱のエリアを戦術機一個中隊が警戒しているということでもある。ここに支援砲戦力としてのXG-70bも存在するのだ。最低限の射線を確保するともなれば、いくらハイヴ地下茎が巨大だとはいえ、さすがに手狭と感じられてしまう。

 

 光線族種が照射をしてこない地下茎内において、距離とは人類側にとって絶対的な盾だ。接近してくるBETA群、特に側壁や天井から文字通りに飛び掛かってくる戦車級を回避するために、20m程の巨人と言える戦術機が常に機動し続けるだけの空間が必要であるともいえる。

 

 なによりも武たちA-01第一中隊はそのナンバー通りに第三次降下部隊の先鋒であるためまだしも空間的余裕があるが、後には五個連隊500機ほどの戦術機がこの場に詰め掛けてくるのだ。ターニャが揶揄したように下手に留まって連隊の再編など行おうものならば、渋滞に巻き込まれて回避する余裕もないままに戦車級に群がられる未来が予測できる。

 

 

 

『フェアリー01より中隊各機へ、状況報告。ただし立ち止まらずに脚部走行にて進攻せよ。迎撃は原則第二降下部隊の皆様方に任せ、先を急げ』

 ターニャの命を受けて、まりもが中隊へと指示を下す。連続噴射跳躍で進めば8kmなどすぐだが、それをすれば周辺部隊の作戦行動を妨害するだけだ。大小BETAの残骸で文字通りに足の踏み場もないと言えるような状態だが、爪先までもがブレードエッジ装甲の武御雷は当然、不知火であってもその自重で持って圧し潰していけば、脚部走行といえど支障は少ない。

 

『05より01。第二小隊損害無し。集結しつつ先行します』

『09より01へ。第三小隊は11が右腕小破。作戦行動に問題なし。同じく集結しつつ進みます』

『01了解。こちらもブラッド小隊含め損害無し。足場が悪いが無様は晒すなよ?』

『『『了解ッ』』』

 

 中隊内に被害が無いという報告で、張り詰めた空気が払拭された。軌道降下中に連絡ができた分隊内ならばともかくも、ようやく他隊員の無事が確認できたのだ。戦地とはいえどうしても安堵してしまう。

 

 

 

 周辺にはBETAの残骸が山と積みあがってはいるが、今は第三次降下前に投射されたG弾の影響だろうか、BETA群の動きが鈍く大規模な集団の接近もない。時折36mmの砲撃音が聞こえてくるが散発的なものだった。

 冥夜が駆る紫の武御雷を目視した帝国陸軍機が、時折硬直したかのように動きを止めてしまうが、それさえも問題とならない程度には堅実な防衛ラインが構築されていた。

 

『サラマンダー00から第三次降下部隊全隊へ。我らの到着を祝って、二次降下部隊の方々が今制圧範囲を「門」から12kmまで、最終的には15kmまで伸ばしてくださるらしい。皆感謝したまえよ』

 ターニャは普段通りに淡々と状況を述べているが、制圧区画が広がれば広がるほどに、各部隊が担う範囲も当然に拡大する。今は第三次降下部隊が続々と地下茎へと侵攻してきているからこそできることだろうが、ただいたずらに制圧区画を広げていけば当然に破綻する。

 どこかの段階で後退し、第一次降下部隊の救出へと向かった英国軍の撤退をも支援しなければならない。

 

 

 

『予定より2km先、「門」より10km地点にて連隊は再集結。到着した部隊より各個、装備の更新を進めたまえ。合衆国及び英国軍のコンテナには注意を。あちらは120mmなので手を出すな』

 ターニャが連隊内に限定して指示を下す。

 

 帝国陸軍と斯衛そして武たち在日国連軍は、今回の作戦に際して87式突撃砲のGG-120滑腔砲ユニットを口径105mmのGG-105に換装している。有効射程が120mmに比べて減少するとはいえ、ハイヴ地下茎での戦闘を主軸に於いたため、携帯可能弾数の増加を優先した形だ。

 マガジン形状には変更がないために、誤認しないようにとマガジン自体には識別用のオレンジのラインがペイントされ、また補給コンテナに至っては各面に105と大きくマーキングまでされている。さすがにこれだけはっきりと描いていれば間違うことは無いだろうと余裕のある今ならば思えるが、大規模な敵集団に襲われている時などはただがむしゃらに補給を求めてしまうことになりかねない。

 

 第二次降下部隊は帝国陸軍と英国軍との合同だったために、各地に点在している補給コンテナも混ざってしまっているのだ。余裕のある今のうちに、コンテナの位置なども調整しているようだった。

 

 

 

『我らA-01連隊は、第三次降下部隊の内、先行する在日国連軍二個連隊が進み次第、その後ろに着く。今しばらくは猶予がある、気楽にしておきたまえ』

 

 第三次降下部隊は、予備作戦から急遽増員した形の合衆国陸軍までを含めると六個連隊、2個師団規模にまで膨れ上がっている。降下から『門』侵入までの損耗を踏まえてもいまだ500機を超す大部隊だ。

 単純に一個中隊が縦型で100m程の隊列を組んで進むだけであっても、全隊の隊列が5kmにまで伸びてしまうことになる。もちろん空間的に余裕があるためにそれなりに密集しつつ進むことになるのでそこまでは広がらないはずだが、それでも先行する合衆国陸軍二個連隊弱で2km弱、XG-70dを中心として後衛となる在日国連軍二個連隊でおなじく2km程度の隊列は見越している。

 

 XG-70dの直掩としては第一中隊そしてブラッド小隊が選出されてはいるが、A-01全隊が直掩ともいえる配置だ。むしろ意味合いとしては『あ号標的』の排除をA-01が担う形なので、そこまでは可能な限り戦力を温存することが望まれていた。

 

 

 

 

 

 

(中隊内の損傷が涼宮の小破だけ……ってやっぱり異常、なんだよな)

 

 先へと進んでいく陽炎を装備した在日国連軍の部隊を横目で見ながら、武はあらためて自分たちの損耗の低さに驚く。

 XG-70dの砲撃範囲内こそが安全圏ともいえるために、前後1kmほどは今は余裕を開けている。その不思議なほどにぽっかりとあいた空間で在日国連軍が部隊の再集結を行い、完了次第先へと進んでいくのだが、大隊の定数を満たしている部隊など存在しなかった。

 

 中隊ごとにやはり2機か3機の欠員、その程度ならば再編もなく進むが、場合によっては半壊に近い部隊もあり、それらはさすがに臨時に合流しあい中隊の体を取って予備大隊へと組み込まれる。

 

 

 

(そういえば、前回ってのもヘンだが『桜花作戦』の時も皆無事に降りてるんだよな)

 

 こうして思い返せば、やはり何らかの確率操作が行われていたのではないかと勘繰ってしまう。

 

 再突入殻を使用した軌道降下の成功率は良くて九割だと聞いている。一個中隊12機ならば、この時点で二人三人死んでいてもおかしくない数字なのだ。それが降りてみれば、茜が再突入殻の展開時に右腕を接触したことでの軽微な損傷を除けば、ほぼ一切の被害がない。

 今回の作戦にあたりA-01とそして斯衛とが運用する戦術機用カーゴや再突入殻などは、徹底した品質検査がなされていたとは伝え聞くが、それにしても驚くべき損耗の低さだ。

 

 眼前を進む他部隊と比較すれば一目瞭然なまでの異常さだ。

 ただ、部隊の損耗が少ないというのは、別に悲観する要因ではない。他の部隊に対しては後ろめたくも思ってしまうが、それが無意味な感傷だということくらいは武も判る。

 

 

 

(まあマズいのはユウヤのとこの第二中隊か)

 

 さすがに武も口にはしないが、まりもをはじめ慎二も孝之といった各小隊長は、後続の第二中隊には意識を割いていた。

 

 第一小隊を始め、他のA-01中隊にはほぼ損耗はないと言ってもいいくらいだが、第二中隊だけが一般的というには心苦しいが、それに準じた程度の被害を受けていた。

 二機ロストに一機大破、二機中破。軽微な損傷さえないと言えるのは、ユウヤとクリスカの二機だけといった状況だ。中隊としての行動が不可能なほどではないが、Mk-57を装備してXG-70dに随伴する形での機動砲撃支援部隊として動くのは、少しばかり無理がありそうだった。

 

『サラマンダー00より、フェアリー及びピクシー各機へ。フェアリー01、03および第三小隊4機へと予備弾倉を含むMk-57を回せ。 ピクシーの残存部隊はこの場に残り……そうだな、斯衛の真壁中佐殿の指揮下に入れ』

『フェアリー01了解』

『……ピクシー01、了解』

 

 ユウヤからの返答が遅れるが、やはり最重要目標から外されこの場に残されるというのは、功名心がなくとも軍人として思うところがあるのだろう。しかし武の目からしても、第二中隊はXG-70dに随伴しての進攻は難しいだろうと思えた。

 なにか軽く言葉を告げるかとも思ったが、相手はそれなりに気心が知れているとはいえ今は別中隊のそれも上官だ。あとで秘匿回線で一言残すかと割り切る。

 

 

 

『ははは、我らが大隊長がこの場におらず幸いでした。香月副司令の部隊を預かると聞けば、無駄に張り切りそうですからな』

『受け入れありがとうございます。いまだ卵の殻を尻に着けたままの者たちではありますが、ご自由にお使いください』

 

 そんな武の思いとは関係なく、実直な真壁にしては珍しく軽く笑って見せつつ、指揮系統の違う部隊をあっさりと受け入れた。ターニャも受け入れられて当然、かつ使いつぶしてもいいと言わんばかりの言葉で第二中隊を斯衛へと送り付ける。

 

『ですが一個中隊が抜けるとなれば、そちらの防衛に少しばかり疑念が生じます。代わりと申し上げるのもおかしな話ですが、我らが部隊から一個中隊随伴させて頂けませんかな?』

 だが一転、ターニャの言葉には直接答えずに、表情をあらためて真壁が戦力の提供を申し出てくる。

 

 

 

(あ~これって半分以上、政治か? 侵攻部隊の中で合衆国陸軍の割合が増えたから、帝国からというか斯衛からある程度出して帳尻合わせるって感じか?)

 

 この作戦は国連軍主導であり、最終段階たるハイヴ地下茎侵攻においても合衆国が一個連隊に国連軍が二個連隊という比率だった。

 それが中ソの乱入もあって、緊急とはいえ合衆国陸軍から一個連隊を増強した形である。ターニャが受け入れているからには必要があったのだろうが、A-01を明確に戦力として計上しにくい関係で、今では合衆国と国連軍とが同数にも見て取れる。

 加えて作戦上重要ではあるとはいえ、帝国陸軍はこのSW115周辺を死守することが目的であり、最深部へと侵攻するのは代替たる『フラガラッハ作戦』に移行した場合に限ってのことだった。

 

 結果として現状、第四計画を主導する日本帝国からは、最重要目標に対する戦力提供が薄いと見做されても仕方がない。もちろんこれは計画立案当初から問題視もされてはいたが、下手に帝国陸軍が戦果を挙げてしまってもそれはそれで将来に禍根が残るとされ、あくまで帝国陸軍は英国陸軍同様に支援部隊としての立ち位置に限定された配置となっていた。

 

 

 

 だが今、たとえ目標とするのが『い号標的』であれ、合衆国陸軍の比率があまりにも大きくなってしまった。こうなれば帝国陸軍からも侵攻部隊へと数を出すべきかともなるが、そもそも戦力的にも余裕があるわけでもなく、また衛士たちも『あ号標的』までのシミュレーションなどを繰り返していたわけでもない。

 戦力として出せないわけではないが、いま防衛的戦闘を続けている第二次降下部隊首脳部が即座に判断できる要件ではなかった。

 

 しかし逆に真壁が進言したように、第16大隊所属のそれも中隊規模であれば即座に対応できるはずだ。地下茎侵攻のシミュレーションも繰り返し行われていたと真那からも伝え聞いている。

 

 もとよりもその真那が指揮するブラッド小隊も、第16大隊に属する部隊だ。いまは小隊指揮官ではあるが、赤たる月詠真那の指揮下に組み込むことであれば、名目的にも立場的にも問題は少ない

 加えて、以前に第一中隊との教導任務にあたっていたこともあり、連携なども取りやすい。

 

 

 

『……ふむ。過分なお申し出ありがとうございます。では、そのように受け入れましょう』

 

 ターニャも一瞬考えたような振りはするが、受け入れるのは確定していたようだ。むしろ第二中隊にいまほどの損害がなくとも、何らかの理由をつけて、部隊の交換を予定していたのかもしれない。

 

(ユウヤを巻き込めねぇってのもありそうだよな。あとは今は第四計画管理下とはいえ、第三計画派生のクリスカたちに下手に戦果をあげさせられねぇってのもあるのか?)

 

 何処まで行っても政治の話だなと、ハイヴ地下茎という最前線でありながら、武は諦めたように息を吐く。

 

『ではブリッジス中尉以下第二中隊は、あらためて真壁少佐殿の指揮下に入り給え。Mk-57の代わりというわけではないが電磁投射砲は一門残しておく。中尉の判断で使用したまえ』

『はッ、了解いたしましたッ!!』

 

 ユウヤ自身は思うところもあるだろうが、現実的に中隊戦力が半減しているような状態だ。無理に同道するとは言い出さない程度の判断はできてしまう。また撤退するにしろ、代替作戦移行後に侵攻するにしろ、この場の確保も間違いなく重要な任務だと呑み込んでいるのだろう。

 さらに一門とはいえ、瞬間的にはXG-70を超える火力を有する電磁投射砲を預かる形だ。その意味まで鑑みれば、むしろ中隊指揮官には過ぎた重責を担うことになったともいえる。

 

 

 

「後詰、お願いしますよブリッジス中尉殿?」

『うるせぇよ、こっちは任せておけって。一緒に行きたかったってのはあるが、この場の防衛にも意味があることは判ってるさ』

「なら任せた。こっちはこっちでサクッと済ませて戻ってくるさ。イーニァにも、他の連中にも無理させないようにな」

『はっ、ヘンに気を回すなよタケル、余計なお世話だとは言わねぇが……死ぬなよ』

「ははっ、それこそこっちのセリフだな、繰り返すが無理だけはするなよ?」

 

 ユウヤへの直通回線を開き、わざとらしいまでに軽く振舞いながら、別れの挨拶だけは済ませておく。ユウヤと中隊員たるESP発現体たちとがどのような関係性を気付いていたかは武には判らないが、今は生き残っている彼女たちへの責を果たしてほしい。

 

 

 

 

 

 

『サラマンダー00より第三次降下部隊全隊へ。そろそろ土木機械共が歓迎の準備を整えたようだ。我らが前方、東北東方面10kmほどに10万規模の敵集団の反応。合わせて東の第一次降下部隊の後方に5万規模が集結している』

 

 先行する国連軍が過ぎ去り、そろそろA-01が移動開始するという際に、ターニャが状況を説明し始めた。事前のシミュレーションなどの想定よりも多い敵集団の規模に、声は出さないが中隊の皆が緊張を高めたのが判ってしまう。

 ただたしかに想定よりも多いが、戦力的には対処できないほどでもない。

 

『敵BETA群の殲滅は優先ではない。なによりも速度を落とさず距離を稼ぐことが本作戦の要だ。各中隊は縦型を維持し、進行の障害となる前方の敵集団排除を優先せよ。なに、この縦に長い隊列そのものを使って磨り潰していけばいいだけのことだ。後ろに流れた連中のことなどは考慮せずに、先に進むことだけを考えておきたまえ』

 

 ターニャは簡単に言うが、敵を無視して先に進むというのはそれはそれで技術的に事以上に精神的に難しい。武たちはシミュレーションを繰り返して無理矢理に納得できるようになってはいるが、国連軍の衛士たちがそれほど割り切れているかどうかはわからない。

 

 国連軍を先頭に立てているのも、ACTV仕様に換装されていとはいえ陽炎で編成された国連軍部隊の足が最も遅いという面もあったが、なによりも後ろから無理矢理にでも押し出すように先に進めるという意味合いもある。もちろん下手にF-22で編成された合衆国陸軍一個連隊などを先行させた場合、その速度故に状況によっては彼らが孤立しかねないという疑念もあり、現状の部隊編成となっている。

 XG-70dからの支援砲撃で半ば無理やりに敵集団に穴を開け、そこに速度を殺さぬままに戦術機部隊を捩じ込んでいくような侵攻計画だった。

 

 

 

『フェアリー01から中隊各機へ。装備の変更は完了したか?』

『05より01。小隊全機準備完了です』

『09より01。第三中隊も全機完了……ですがこれは強襲掃討じみた装備になってますよ?』

『09、我らが任はXG-70dが撃ち漏らしたBETA群の排除だ。近づかれることを考える前に、敵を討て』

『了解です』

 

 溜息はさすがに付かないが、どこか諦めたかのように慎二がまりもに応える。

 Mk-57を第二中隊から譲り受けたこともあり、慎二の言葉通りに第三小隊の装備はかなり火力面に偏ったものとなっていた。背部の兵装担架には87式突撃砲を二門、左腕にも87式突撃砲を、そして右腕にMk-57中隊支援砲だ。

 近接兵装は突撃砲にマウントされた65式近接戦闘短刀だけという割り切りようだった。

 

「まあこっちの03よりかはまだマシかと」

『む~武ちゃんに何か馬鹿にされてる気がするッ!?』

『いやいや、ポジションに即した良い装備だぞ、うん」

 

 慎二が心配しているのは茜だろうと思いつつ、武は軽く混ぜっ返す。もとより第9中隊の突撃前衛長たる水月を目標としていた茜だ。隊内でただ一人損傷しているという負い目だけでなく、慣れぬ装備に不安を抱えてそうだった。

 

 ただ、ネタとして出した純夏の装備は第三小隊各機よりもさらに極端な砲撃戦仕様だ。左右ともに手持ちでMk-57を構えるその姿は、機動性の向上した弐型とはいえ軽快に飛び回るというのは困難だろう。

 なによりも純夏には高速機動しながらの支援砲撃などほとんど経験もない。まりもとしてはその間接砲撃の精度に期待しての移動砲座として運用するつもりだろう。

 

 

 

『しかし02? 其方のそれもまた極端ではないのか?』

「あ~ほら、コレはアレだ。依頼した身としてはせっかくの大舞台なのだから使って見せようというか、そういう感じで……」

 

 どこか呆れたかのように冥夜かが口を挟むが、武の装備もかなり偏ったものだ。突撃前衛ならば右腕に87式突撃砲、左腕に92式多目的追加装甲、背部兵装担架に74式近接戦闘長刀を二振りというのが定型だが、まったくそこからズレていた。

 背部兵装担架に87式突撃砲を二門というのはもはや第一中隊では定型化しつつもあるが、そこに巌谷から提供された試製02式近接戦闘中刀を装着した87式支援突撃砲を左右に持つ形だ。

 

 武の選択も、純夏の火力特化装備を揶揄えない程度だ。

 

 

 

 

 

 

『では月詠殿、部下たちを頼む』

『了解いたしました。皆を無事に返すなどとは決して申せませぬが、斯衛として恥じぬ戦いだけはお約束いたします』

 

 武たちが再装備を進めている間に、斯衛との間では部隊の再編も終わっていた。真那と真壁との間でも引継ぎが完了したようだった。

 

『さて……白銀少尉、少し良いかね?』

「……は? はっ、何でありましょうか、真壁少佐殿」

 

 装備の最終確認をしていると、いきなりに真壁から通話が入った。

 どこか別の世界線では部下として戦っていた記憶も武にはわずかにあるが、この世界線ではほぼ関係の無かった相手だ。今この段階で声を掛けられることなど予想もしていなかったため、不遜な態度となってしまった。

 

『いや、我らが大隊長から貴様に向けての言葉を受け賜っていてな。出撃前に伝えるべきだったかもしれないが、ちょうど良い機会だと声をかけさせてもらった』

「はっ、ありがとうございます。お聞かせいただけますか?」

 

 真壁が大隊長と誤魔化すように口にしたが、つまりは五摂家当主の一人、斑鳩崇継からの言葉だ。軽く聞き流していい話ではなさそうだと、身構えてしまう。

 

『ふむ、では伝えよう……「貴様も貴様が護るべき者も、みな生きて帰ってきても良い。むしろそうであれば老人共が狼狽えて面白くなろうから、期待している」とのことだ』

「……卑賎の身に余るありがたきお言葉を頂き、ありがとうございます。ご期待に応えられるよう、奮進してまいります」

 

 出撃前に悠陽から頂いた言葉もそうであったが、誰を指すかは濁しているが、冥夜が生きていてよいと、崇継からも確約を貰ったようなものだ。もちろん五摂家間の力関係や、それこそ冥夜が生きて帰ることで起こるであろう煌武院家内部の問題なども踏まえて、斑鳩に利するように動くのだろう。だがそれでも死なせて来いではなく、生きて帰っても良いと言われたことで、武は間違いなく気が楽になった。

 

『なに、自分は大隊長の言葉を伝えただけだ。感謝するならば、成果を上げて戻ってくることを期待していよう』

「では、征ってまいります、少佐殿」

 

 普段通りの実直な態度を取り繕う真壁に、武は深く頭を下げて出立の言葉だけを残した。

 

 

 

 

 

 




ハイヴ地下茎に入ったのに弾撃ってない~といいますか、本編でも割とするすると侵攻している気がしないでもないので序盤はこんな感じで。G弾によるBETA停滞効果とかは明確な数値無いので何となくで。あと地下茎の大きさなども謎なのでかなりざっくりと誤魔化しています。

誤魔化すというと真壁介六郎の階級が判らないといいますか、TDAだと中佐(だったような記憶がうっすらと……)なので、2002年現時点では少佐としています。大隊副官としては階級高すぎますが、まあ斯衛というか武家なのもありますし、一応は今回の斯衛軍総指揮官という立場でもあるので、ヨシと。

次こそ中ソの先行組と遭遇とか、弾バラまきまくるのではとか予定していますが、ちょっと謎です。


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