Muv-Luv LL -二つの錆びた白銀-   作:ほんだ

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展伸の証跡 01/11/01

 昨日、207B分隊は総合戦闘技術評価演習の合格を受けて特別休暇が与えられていた。

 

(前は南の島でバカンスだったんだよな~)

 今回は、というよりも現在の白陵基地における総合戦闘技術評価演習の舞台は、瀬戸内の孤島だったらしい。島の名前は聞いていないが、BETA侵攻にいまだ晒されていないこの日本では、以前から帝国陸軍も使っている演習場の一つだそうだ。移動時間も少なく演習終了後には皆この基地に帰ってきていた。三日間のサバイバル訓練での疲れはまだ残っているだろうが、どうせこの後は倒れることになるので構わない。

 

 

 

「それにしても、あいつら何時までかけているんだ」

「まあ……強化装備は、最初は驚きますからねぇ」

「衛士の第一の試練とまで言われているからな。それでもすぐに慣れる」

 

 戦術機用のシミュレータルーム、その巨大な筐体の前で、まりもと武、二人して苦笑未満で顔を見合わせる。とはいうものの、二人ともいまは強化装備を身に着けてはいない。午前中は管制に専念する予定だ。どうせしばらくは時間がかかるだろうと、教練の方向性を簡単に打ち合わせていると、ようやく皆が出そろってくる。

 

 更衣室から出てきたものの、皆恥ずかしいようで、腕を組んだり後ろを向いたりと様々だが、本来であれば上官であるまりもの前で見せられる態度ではない。

 

(というかだな後ろを向けば、尻の方が完全に見えるんだぞ彩峰……それに御剣、お前の場合腕を組んだら余計に胸を強調してるだけだ)

 口に出すべきかどうか悩んだものの、胸に秘めておく。

 そういうことを口にできるのが「恋愛原子核」の強みなのかもしれん、とどうでもいいことに意識が向く。その程度には武としても久しぶりに見る皆の訓練兵用強化装備は、目を引いてしまう。

 

 訓練兵用の強化装備は白を基準で、胸部から下腹部にいたってはほぼ透明の素材であり、ある意味では素肌以上に扇情的でさえある。負傷した時の視認性の為という一応の意味もあるが、慣れることで羞恥心を無くすためというのが本来の目的だという。

 

 

 

「タケルちゃんずるい、ずーるーいっ!!」

「煩いぞ? 鑑」

 そんな風に皆を観察していると、純夏が器用に胸を隠しながら、騒ぎ始める。

 ああなるほど「白銀武」であればこういう時に頭を叩くのか、と自分のものではないように思えてしまう「記憶」。

 

(いや。ホント、俺の記憶じゃねぇんだよなぁ……)

 この世界で目覚めて一週間ほど、ようやく武は以前の世界線での「白銀武」を意識せずに行動できるようになったと思っていた。が、数日ぶりに純夏に会って、自分の行動と記憶の中での行動の差異にあらためて気が付かされ、意識してしまう。

 

「タケル~鑑さんじゃないけど、一人だけ訓練服のままなんてずるいよー」

 純夏だけでなく尊人まで口を揃えだした。肩を落としながらも、目線は決してほかの皆には向けないようにしている。

 尊人にしても男性用訓練強化装備では、いつもの自然体ではいられないようだ。

 

「よ~し鎧衣、全裸ではなく、この強化装備という人類至高の衣服に欲情できる貴様は、間違いなく立派なホモサピエンスなメンだ。皆に見せつけるように、きを~っつけっ、背を伸ばせぇっ!!」

 

「なっ白銀っ!?」

「……へんたい?」

「あ、あぅ~~~」

 今まで黙っていた者も、恨みがましく、武を睨む。

 

「煩い。そういう反応を無くすための、訓練兵用強化装備だ。それにそんなことに気に掛ける余裕なんて、無くなる」

 記憶にある実体験からの助言を加えつつ、少しばかり嚇すように嗤っておく。

 

 

 

「さて、ああまで言われているが、どうする白銀? 貴様も訓練兵用の物に着替えるか?」

「はい、いいえ。教官補佐という立場がありますので、神宮寺軍曹が問題なければこのままで結構です」

 別段武としては、訓練兵用の強化装備が今更恥ずかしいとも思えない。着替えるのがただ手間なだけだ。あとは今後の立場というものもあり、着るとすれば正規兵用の黒の方が都合がいいくらいか。

 そもそも今日の訓練予定では、武はシミュレータに乗る予定はない。

 

「では、予定通り白銀訓練兵は、戦術機教導においてのみ臨時軍曹とする」

「は、了解いたしました」

 

 

 

「整列っ!!」

「貴様らも聞いていたようだが、こちらが貴様らの戦術機教導を補佐してくださる、白銀武臨時軍曹だ」

「白銀武臨時軍曹だ。まずは総戦技演習の合格おめでとう。あらためてよろしく頼む」

 

 最初に編入されたときに、武は任官間近だったということになっている。実際訓練を共にした期間は短いが、207Bの誰もが武の実力という物は目にしており、「臨時軍曹」という聞き慣れぬ階級を耳にして皆が訝しむが、補佐に付くということには疑問はなさそうだ。

 着任の挨拶など、武としては長々とやるつもりはない。さっさと行けとばかりに指示を出し、まりもと二人で管制室に入る。

 

「貴様らからしたら待ちに待った戦術機の訓練だ。まずは煩いことは言わん。シミュレータではあるが各々好きに動かしてみろ」

 207Bの皆もシミュレータとはいえ戦術機を動かせるということに興奮しているのか、駆け込むようにコクピットへ乗り込んでいく。武からすれば着座調整に無暗に時間がかかっているように感じられたが、訓練兵としては早い方だった。

 

 

 

「ご無理を言って申し訳ありません、神宮寺教官」

「いや、言われてみればこちらの日程の方が理に適っているな。適性試験の後にXM3搭載機の挙動体験などすれば、身体は動かせまい」

 全員が着座したのを確認したうえで、武がまりもに礼を言う。訓練課程の変更は、武の案だった。

 

 今までの衛士訓練であれば、まずは戦術機適正の再確認であったが、今回はその順序を変更している。適性試験は午後からの予定だ。

 衛士訓練の最初の試練ともいえる適性試験は、強化装備にフィードバックデータが蓄積されていない時点でシミュレータに揺られるために、訓練兵の多くは試験後には立ち上がることさえできないと聞く。その後の訓練と、強化装備へのデータ蓄積があれば耐えられる程度のものだが、試験後に座学などは無理な者もいるらしい。

 このあたり対G耐性や適正衛士適正の高い武には実感しにくいのだが、以前の記憶からしても、試験後は余裕を持っておいた方が結局は時間の無駄を省ける。

 

 

 

 

 

 

「さて、全員搭乗したな? 今回に限り、一切のフィードバックは切ってある。各種武装の弾薬や耐久性も無制限だ。午前中は好きなように動かしてみろ」

 戦技演習合格をもって、教本は渡している。衛士訓練の前に熟読することは必須であり、基本動作ならこなせなければならない。

 そして歩かせる程度であれば、簡単にできる、と誰もが思っているはずだ。

 

『えっ?』

 

 だが、全員が一歩目から、こけた。

 そして機体を起こそうと、地面の上で泳ぐようにジタバタともがく。

 

「好きなように動かせとは言ったが、壊せとは言っておらんぞ」

「戦術機の挙動は繊細だ。全員一度落ち着け。リスタートするぞ」

 武とまりも二人で、誰に向けた指示ということもなく、全員に向けて注意を促しておく。

 

 

 

「……予定通りではあるが、XM3の教導にはこれは必須になりそうだな。実機で一歩目からこけられたりしたら整備班に何を言われることやら」

「XM1に触っていた神宮寺教官でさえこけましたからね。伊隅大尉からの報告も確認しつつ、マニュアル化は大変そうです」

 

 演習から帰ってきたその夜に、まりもも暫定完成版のXM3でのシミュレートはこなしていた。そしていまの訓練兵と同じく、一歩目でこけた。

 とはいうものの、XM1の状態で触っていたことや、そもそもの戦術機への理解の深さから、XM3特有の挙動の繊細さに気が付くと、見る見るうちに動きが素早くなり、日付が変わる頃には撃震を第三世代機のように軽々と乗り回していた。

 そして決して褒められた行為ではないが、まりもは207Bが特別休暇だった昨日、教練の見直しをする時以外ほぼ連続してシミュレータに籠ってXM3の習熟に努めていたのだ。食事すらコクピット内で衛士用の合成レーションをかじりながら、だ。

 

「しかしこのフィードバック無しの自由挙動か。これはこれで必須になりそうだな」

「先日、事務次官補がやっていたのを見て思い出し……いえ思いつきました。戦術機の挙動に先入観のない今だからこそ、可能かと」

 今207Bが行っているのは、簡単に言ってしまえば、大型筐体のロボットゲーム、そのチュートリアルだ。

 投影される映像からの疑似的な3D酔いは起こるかもしれないが、本来のシミュレータのように振り回されたりはしないために、機体が可能な動きはすべて実行できる。ゲーセンであれば体感型だったが、アレも少しばかり揺れる程度で、どれほど無茶なことをしても自分の身体は傷付かない。

 

 どうしても今までの訓練だと「自身が耐えられる機動」を「戦術機ができる挙動」と思い込んでしまう。その思い込みが無い状態で、戦術機の可動限界を身に着けるために、いまは「遊んで」もらっている。

 武が三次元機動など行えるのは、EX世界線におけるゲームやアニメからの経験からだ。こちらにそのような娯楽があれば概念説明も簡単なのだが、無い物を強請っても仕方がない。将来的には各種挙動を盛り込んだビデオ教材なども作ることになるのだろうが、今はまだそこまで手が回らない。

 

「あとは、OSのことを説明せずに動かさせてみたのは正解だな」

「言葉は悪いですが、ちょうどよかったと思いますね。元々の素質がある連中に、最初から勝手な思い込みによる制約が無い状態で動かしてもらえるわけですから」

 

 207Bの戦術機教練に際し、一つの方針として分隊員には「新OS」のことは話さない、と武とまりもそして夕呼の間で決められた。新しいOSだから訓練に時間がかかるとか、他の衛士とは区別されているのか、などと邪推されるのも面倒だ。

 せっかく同期が居ないという環境を、最大限に使おうというのが目的だった。

 

 

 

「確かに彩峰のあの動きなど、戦術機を知るものだとけっして試そうなどとは思わぬな」

「あれは……俺でも嫌ですね。さすがに二回転する意味が判りません。鎧衣も良く付き合う」

 千鶴と壬姫、それに純夏はまだ歩いたり走ったりさせている程度だったが、慧は基本的な動作をこなすと、いきなり側転や反転などを始めていた。美琴もそれを見て空中二段回転を試みている。

 

「御剣の方は、これはまた丁寧なことだ」

 冥夜は一つずつすべての関節を個別に可動させていた。右小指の先から始め、今は脚の方にまで進んでいる。身体感覚とでもいうのか、機体がどこまで動くのかを見極めているようだ。

 

「それでも肩の副腕を見逃しているのは、人体を基準に考えすぎ、といったところでしょうか? これはこれで一つの思い込み、というヤツか」

 肩部装甲ブロックは肩から延びる「腕」が支えている。通常は機体の自動制御に任せるもので意図して動かすことはないが、逆に対人戦の場合など、わざと事前動作に組み込んだりすると面白いようにフェイントとして機能する。

 

「ふむ。戦術機の構造に関しては整備実習の方で詳しく話すつもりだったが、座学の方でも補完しておくべきか」

「腕が六本という話をすると、だいたい皆きょとん、としますからね」

 武自身の経験を踏まえ、苦笑いで誤魔化す。

 一般的な戦術機において「腕」と規定されているのは三対六本だ。手腕と背部の可動兵装担架システム、そして肩から肩部装甲ブロックを支える「腕」。

 

「海神の方のようであれば、まだ『腕』と認識しやすいのだろうがな」

「あの兵装モジュールが撃震に積めれば、戦術に幅を持たせられるのですが……」

 戦術機教導と言いつつも、今のところ勝手に動かさせているだけだ。シミュレータ内には声が届かないことを確認しながら、なかば雑談を続ける。

 

 

 

「そういえば白銀、貴様の戦術機の挙動は人を基準にしていないのだったな」

「せっかくのロボットですよ? 人の動きは出来ますが、そこに囚われる必要はないかと。人体の制限を当てはめるのはもったいないというか、関節強度限界までは動かせるものだという認識、ですね」

 人体に比べ戦術機の自由度は確かに高いが、逆にそのサイズと出力に比して各関節などの強度は低い。格闘戦も可能ではあり、いなしたり姿勢を崩させたりはできるが、関節技などは自機への被害が大きく、不可能ではなかろうが想定はされていない。

 

「それに、人間の動きに囚われれば、長刀なんて使えませんよ」

「確かにな。あの長さの物を片手で振るうなど、人には無理だ。まして二刀などは、な」

 武がシミュレータで長刀二刀を振るう姿は、まりもも良く目にしている。人体で言えば持てなくはなかろうが、効果的に用いることなど不可能だ。

 

 

 

「ただ、こうやって見ていると、あいつらもやはり人の形に囚われすぎているか」

「珠瀬の射撃姿勢なんて完全に歩兵のままですね。基本に忠実なのはいいんですけど。まあベテラン衛士でもそうでしょうが、突撃砲の反動程度なら片腕で制御しきれるのに両腕使って保持しようとしてしまいますから」

 36mmのフルオート射撃であれば片腕でも十分な集弾率を維持できる。もちろん両腕で構えれば射撃精度は向上するが、歩兵がアサルトライフルを用いるのとは異なり、必須と言えるほどではない。

 

「あ~でも。完全にフィードバックを切ったのはマズかったかも知れませんね。3パーセント程度でも揺らした方がいいかもしれません」

「ふむ……そうだな。まったく無反応だと逆に挙動が判りにくいか」

 このあたりは今後の課題だな、とまりもも同意する。

 では次の一時間は少しばかり揺れてもらうか、と教導計画をすかさず変更していく。武を臨時軍曹などという中途半端な地位にしているのは、XM3の教導用資料を作っていくための措置でもあるのだ。

 

「あとですね神宮寺軍曹。BETAに関する座学の時間、半分くらいこっちに回せませんか?」

「難しいな。やつらの自主学習に期待するのか?」

「いえ、シミュレータ内で説明してしまおうかと」

 座学での説明が不要ではなかろうが、戦術機の「視点」で見るのとは、また印象が変わる。

 

「なるほど。言われてみればそうだな。上から見下ろすことで、忌避感を少しでも和らげる、か」

「俺だって正直なところ、兵士級を真正面からは見たくありませんよ」

 自身の言葉にまりもの最後を思い出してしまい、自制していたつもりだったが、ギリっと音が漏れるほどに奥歯を噛みしめてしまう。

 

「……白銀?」

「申し訳ありません。まあ小型種の恐怖は後々知ってもらうとしても、とりあえずは戦術機からのBETAの光景を見てもらおうかと」

 兵士級への武の拒絶感を垣間見て、まりもが心配げに顔を向ける。武の経歴などは今のところまりもには一切伝えていないが、それ故逆に実戦経験を疑われているようだ。

 だが今の時点で武の本当の経歴をまりもに話す必要は、無い。

 

 

 

 

 

 

 ふぅ……とわざとらしいまでにまりもに溜息をつかれて、武は振り返る。

 

「貴様の言葉で207Bは纏まりを見せはじめ、無事に演習にも合格した。XM3も形になり、このような形で教練を進めることもできるようになった。それに関しては正直に感謝している」

 私だけではできなかったからな、とどこが自嘲気味に付け加える。

 武としては正面からの感謝には気恥ずかしく感じるものの、まりもが悔やむことではないとは思う。夕呼との関係だけではない、207Bの背後を推し量ることができれば、任官させることに躊躇いを感じるのは誰であっても仕方がないとは言える。

 

「その上で、だ。貴様からすればあいつらは可愛い後輩たちなのだろう、護りたいと思う気持ちは判らなくはない。そのために必要であればきつく当たることができるというのは、指導する上で必要なことだ」

 何気に貴様は教官に向いているのかもしれんな、とまで言ってくれる。

 

 

 

「いまは貴様への教練の時間ではないが……一応はこれでも貴様の訓練教官でもある。一つ確認しておきたい」

「なんでしょうか神宮寺教官?」

 

「207Bへの護ろうとする心構えは、問題ない。ただ、な。御剣に関してだけは、貴様はどこかおかしい」

「っ!? ……それは、申し訳ありませんでした」

 さすがにまりもなら、第四絡みの聞かれて答えられない部分には踏み込んでこないだろうと、どこか武は安心していた。その虚を突かれてしまった。

 

「謝罪はいらん。というかこれは指導ではないからな、ただの教官同士の雑談、だ。いいな?」

「はい、お気を使っていただいて、ありがとうございます」

 

「自覚はあるようだな? 理由は聞かんが、なにか贖罪とでもいうのか? 貴様は御剣から罰せられたいとでも思っているかのように見える。御剣の家の問題に関係しているのかとも思っていたが、それも違うようだしな」

 

 

 

「いや、すまない。答えられぬことだというのは、判っている。それと、な……」

 奥歯を噛みしめ泣きそうな顔で口を噤む武を前にして、まりもにしても珍しく本当に口籠ってしまう。

 それでもこうした機会が何時でもあるわけではない、そしてすぐに失われてしまう物だと判っているまりもは、武を見据え問いを放つ。

 

「私を前にしても、貴様はどこか御剣へのものと似た態度を取ることがある。はっきり聞くぞ? 以前に、私や御剣に似た誰かを貴様のミスで失ったのか?」

 まりもからすれば、武は夕呼の命を受けて何らかの作戦行動に従事していたとしか考えられない。

 そこから推測できるのは、まりもの経験から見ても「よくある話」だ。いやむしろ自身が味わった辛酸でもある。

 戦場で自分のミスで誰かを失う。生き残ってしまった者は、自己を卑下し、自身を使いつぶすように振る舞ってしまう。間違った自己犠牲の発露だ。

 

 

 

「そ、れ……は、」

 ただ、まりもの言葉で武が思い浮かべてしまうのは、いつかの光景だった。

 

 ――振り返った先に見える

 ――頭部の上半分を

 ――食いちぎられた

 ――タイセツナダレカダッタ……モノ

 

 

 

「落ち着けっ、白銀っ!!」

「え、あ……も、もうしわけ、あり、ま、せん」

 自失しそうになった武を、まりもは躊躇なく頬を殴りつける。お蔭で目が覚めた。

 

「落ち着いたか? 謝ることではないだろう、白銀。先ほどの兵士級への反応からすれば、誰か親しい者を食われた、か?」

「は、……はい」

「忘れろ、とは決して言わん。ただし悔やむな、自分を卑下するな。生き残った者の義務として、無理に話せとも言わんが、その者たちのことを誇らしく思い出せ」

 

「……神宮寺教官、お話しできずに申し訳ありません。御剣のことも、教官へのことも、自分のことも」

 衛士の流儀ではないが、武としても本当であれば彼女たちの生き様を笑って誇らしく伝えたいとは思う。だがそれを伝えて、別の世界とはいえ本人から認められさらには慰められでもすれば、武は戦い続けることができなくなりそうで、怖い。

 結局、今はまだ軍機を盾にして逃げてしまう。

 

「ただ御剣には一応約束はしておりまして。事が終われば、本当のことは話す、と。教官もそれまではお待ちください」

「ふふ、事が終わるとは大きく出たな? 香月副司令に連なる貴様が、そうまで言うところを見ると、人類の未来にも期待が持てそうだ」

 夕呼に関することなので、話せることはほとんどない、という武の態度を当然のこととしてまりもは受け入れる。その上で夕呼を信頼しているのだろう、どこか自慢げにまりもは笑って見せる。

 

 

 

「では事が為せるようにあいつらを鍛え上げるか、白銀教官補佐?」

「了解です、神宮寺教官。中途半端に自信が付いたその後で……そうですね、戦車級に何度も喰われてもらいましょうか?」

 訓練教官としての立場に甘えて誤魔化すことになるなとは自覚しつつも、そう付け加えて武は問題を先送りにするしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 




総戦技演習はタケルちゃん不参加なのでバッサリとカットです。でK1固有結界ばりに訓練兵用衛士強化装備のデザインの素晴らしさを称えようかと頑張りかけましたが、よくよく考えるとR-18に抵触しそうなので無かったことにしました。

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