Muv-Luv LL -二つの錆びた白銀-   作:ほんだ

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掲題の顕示

 アルゴス小隊との対人演習、その後のデブリーフィングは何事もなく終了した。

 武たちフェアリー小隊からターニャとまりもとを加えた五人が、アルゴス小隊からは小隊長たるイブラヒム・ドーゥル中尉とCP将校ら他メンバーが正式に紹介されたくらいだ。

 

(衛士ではあるが、機体には搭乗しない小隊長に加え開発主任、その上にCP将校が三人か。整備にしてもそうだったけど、試験小隊って名目のわりに下手な中隊よりも人員が揃ってるな)

 

 自分たちの小隊に比べれば倍以上だ。過剰とも思えたが、実のところXM3開発にどれほどの人員が関わっていたのか武は知らないため、戦術機開発とはこう言うものなのかと妙なところで感心した。

 

 そしてアルゴス小隊隊長のイブラヒムのXM3に対する所感は、他の小隊員たちとの雑談同様だった。間違いなく有用ではあるが、先の対人演習だけではこのユーコンでは正当に評価されない可能性が高い、ということだ。

 トルコ共和国陸軍に所属しヨーロッパ戦線でいくつかの戦績を築き上げた衛士としてだけでなく、開発小隊隊長としてのイブラヒムの言葉は、武たちに他国の小隊へXM3を伝える問題をあらためて意識させることになった。

 

 

 

(あと気にかかったのは、事務次官補を見た時のアイツらの様子か)

 

 武はまりもの横に並び前を歩くターニャの後姿を眺めながら、CP将校のティクレティウス少尉として名乗ったターニャに対しての、アルゴスの衛士たちの反応を思い返す。

 タリサは軽く顔をしかめ、VGとステラは興味深げに、そしてユウヤは明らかに驚愕していた。ロシア系への反発や、幼い見た目に対しての驚きだけではない。ターニャに似た別の誰かを知っているからこその動揺だった。

 

 以前、ターニャがその金の髪を僅かに青味がかった銀に変えた時、偽装の一環だと冗談のように語っていた。つまりは偽装を見せる相手がいる、ということだったのだろう。

 

(さっきの話だとアイツらの出自はバラバラだから、この基地に来てからESP発現体を見かけたってことだよな。第三計画の生き残りでも居るのか? それにしてもタリサはえらく嫌がってたようではあるが……)

 

 ユーコン基地はその北半分ほどがソビエトに対して合衆国から租借された土地にあるために、国連軍基地ではあるがソビエト軍将校の割合が高い。ただアルゴスの皆が見ているという点で、可能性が高いのはソビエトの開発小隊だろう。

 第六世代である霞ほどのリーディング能力を持つESP発現体がそうそう居るとは思いにくいが、注意しておく必要はありそうだと頭の片隅にとどめておく。

 

 

 

 

 

 

 その後、左程歩くこともなく武たちフェアリー小隊は小隊専用に用意された部屋へと到着した。先に到着し室内で準備を進めていたらしきウォーケンの存在には、一瞬驚かされたものの、手渡された資料とともに、席に着く。

 

「さて諸君。九州から間を置かずにこの基地への移動、そして緊急の演習と、あらためてご苦労だった。本来ならば、短くとも休暇を与えられてもおかしく程の働きであったが、我らに残されている時間はあまりにも短い」

 

 与えられた部屋は無理をすれば大隊規模でも使えそうな広さがあったが、今いるのは6名。部屋の前方に集まり、ターニャの言葉を聞く。

 准将待遇であるターニャとそれを少佐が補佐している前で尉官の四人が席に座っているという、文字通りに座りの悪い状況だが、階級と立場に食い違いの多い第一中隊ではもはや日常となってしまっていた。

 

「手短に我らの目的を伝えておく。この基地において、第四計画としての目指すべきは、大別して二つだ」

 

 まりもも事前に目的を知らされていなかったようで、武たち同様にターニャの言葉に集中している。

 

 

 

「一つは、貴様らA-01第一中隊の基本任務であるXM3の伝達。まあ言葉を飾らずに言えば、OSとそれに対応した戦術機CPU関連の売り込み、そのための実地デモだな」

 

 帝国で検証トライアル、それの国際版と言っても良いようだ。

 そもそもがこのユーコン基地には各国から戦術機開発に携わる者たちが集まってきている。帝国でしたようにわざわざあらためて人を呼ぶ必要はない。共同演習などは行われているものの、自身らの途中成果などを公開することはほぼ無いようだ。とはいえ出来ないわけでも禁じられているわけでもない。

 

「そこでだ。商品を広く売るには何が必要かね、白銀少尉?」

「需要と供給、でしたか?」

 

 まるで講義であるかのように、壇上のターニャが武を指名する。社会か何かでそういう話があったな、ともはや体感時間では測れないほどはるか昔とも思えてしまうが、何とかそれらしい答えをひねり出した。

 

 

 

「む? それは取引量と価格に関する話になるが、まあそれに近い。いや……判りやすいからそれで進めるか」

 

 武の答えは正解ではなかったようだが、それほど的外れでもなかったらしい。ターニャは微かに眉を顰めたが、とくに否定することもなく説明を続ける。

 

「売り手側としては、まず第一に供給能力だ。当然ながら売りたいだけの数を用意せねばならない。この点、XM1は簡単だな。ライセンスの契約だけで即座に納品できる。ソフトウェアだけだからな」

 

 現行のCPUであっても、キャンセル機能だけのXM1ならば、ごくわずかな反応速度の低下だけでその恩恵に預かれる。導入コストもOSのライセンス料だけなので他に比較して安い。衛士の再教導も短時間で済む。

 ただ、その価格の安さゆえに日本帝国としては利益が薄い。

 

 帝国では各種経費の兼ね合いと、なによりも九州防衛に間に合わせるため中部方面以西に配備されている戦術機の大半にはXM1が導入されている。重大な問題が発生しない限りは、年内には国内で運用されている機体のほぼすべてをXM1に換装する予定だともいう。

 

 

 

「XM2であっても既存CPUの強化で賄えるため、ハードウェアの生産を採用国側が担うのであれば、生産数の問題は解消できる。ただしこの場合、日本帝国の国益は少なからず減少するがね」

 

 先行入力まで含めたXM2に対応するには既存CPUではさすがに処理能力に欠ける。これに関しては現行最新のCPUであれば十分な程度にまでXM2は軽量化できたため、第三世代機であればほぼそのままに、第二世代以前ならばCPUの交換で対応できる。

 CPUの再生産と交換は必要だが、それにかかる費用は第二世代機の機体価格に比しても2%以下だ。通常の運用費用に含むには高額だが、機種変更に比べればはるかに安い。

 

 ただXM2ではXM1やXM3の導入コストに比しての性能向上が見込めるかどうかが判断に難しく、帝国においてさえ第二世代機であるF-15J 89式陽炎の延命用に採用が計画されたものの、いまだ確定はしていない。

 

 

 

「問題となるのはXM3だ。供給面において、CPU関連がネックとなる。第四計画で改良を重ねていた物を基本としているために、今のところ量産性に難がある。製造価格面においても、だ」

 

 フルスペックのXM3が帝国内でも、配備面で問題となったの要因の一つだ。元々が00ユニット開発のために進めていた高性能CPU、量産性など一切考慮されていなかったそれを流用したために、価格も下げにくければ生産性も低い。

 なによりもこの生産プラントは帝国本土内に限られる。戦術機関連のみならず、様々な生産施設は諸外国へと疎開させているが、国益のためだけでなく防諜面を考慮してXM3関連は外には出せない。

 

 斯衛の協力を取り付けられたために、武家と関連の深い各種企業への根回しも完了し、一応の量産体制を確立できたものの、大規模な発注に対応できるとは言い難い。

 

 運用側としても価格的な問題が大きく、帝国内でも全面的に導入が決定しているのは斯衛だけだ。陸軍は順次更新を企図しているというが、予算的には場合によっては撃震への採用は見送られる可能性も高い。

 

 

 

(結局、AL世界線か? あっちでもどれだけ配備されたのか判ってなかった、というか知ろうともしなかったよなぁ、俺って)

 

 XM3に関しては先の世界線でも、検証トライアルの後には国連軍衛士たちから絶賛されたことを武は覚えてはいる。

 だが検証トライアルの直後にまりもに起こった悲劇ゆえ、武は一度あの世界から逃げ出した。その後戻りはしたものの次はユニットの件が始まっており、作ってもらっておきながらも、それらがどう使われているかに関しては注意さえ払っていなかった。

 

 佐渡島ハイヴ攻略や『桜花作戦』の際、作戦参加機の内どれほどの数がXM3に換装されていたのかさえ知らない。むしろA-01所属機がXM3仕様だったのが開発部隊だったための特例的事例であり、実質的な導入は武があの世界から消え去ったのちに行われたと見たほうが良いのだろう。

 

 モノが良ければ売れる、そして普及する、と考えるのは浅慮だ。

 

 

 

 

 

 

「次の需要だが……我々が解決しなければならない問題はこちらだ」

 XM3関連の供給問題はあくまで前提だとして、ターニャは議題を先に進める。たしかに供給に関してはたとえ問題があったとしても、衛士でしかない武たちでは解消しようがない。

 

「この基地で進められているプロミネンス計画、その概略程度は知っているな? 御剣少尉、簡単で良いから答えてみよ」

 どうやらターニャは講義形式で進めるようで、武に続き冥夜に問いかける。

 

「はい、プロミネンス計画は、このユーコン基地にて遂行されている国連主導による戦術機開発計画であります。各国が一ヵ所に集まり情報交換や技術協力を行い、その上でせめぎ合うことで開発を促進することを目的としております」

「ふむ。まあ、おおよそ表向きにはその通りだ」

 

 冥夜の過不足のない答えに、ターニャは満足したようで軽く頷いている。

 冥夜も判っていて口にはしなかったのだろうが、実のところわざわざ一か所に集めているのは、対BETA戦において東西陣営を超越して協力しあう体制を国連が作り出していると喧伝する政治的意味が強い。

 身内しかいないと言っていい状況ではあるが、国連批判とも取れるような答えをわざわざ言葉にする必要はない。

 

 

 

(なんか授業を受けてるみたいなんだが、夕呼先生ならともかく、事務次官補にしては珍しいな)

 

 武はふと違和感を覚えた。

 常のターニャであれば必要最低限の指示だけを下し、その命の前提となる状況などをこと細かく説明することは少ない。

 

(あ~いや、現状こっちがどれだけ理解しているか判断できないから、最低限必要な情報を付け加えるためもあって、講義形式なのか?)

 

 軍人、それも兵であれば命令されたことのみ実行するというのは、当然にして絶対の前提だ。ただそれが士官ともなれば、上からの命令は絶対ではあるものの、その意図を汲み取らねばならない。

 加えて武たちがこのユーコン基地で直面し対処すべき問題は、軍事ではなくむしろ政治・経済の範疇と言える。下された命令をその文言通りにただ処理していればよいのではなく、適当に事に当たらねばならない状況だと、そう考えることもできる。

 

 

 

「つまりはこの基地に各国から派遣されている開発スタッフの中には、戦術機の強化・改良に対しての需要はある、ということだ」

 

 供給はともかく潜在的な需要はあると嗤って見せるものの、これで問題解決だとはターニャは続けてない。ターニャの話の進め方に武は注意が逸れそうになっていたが、その口振りで意識を集中しなおす。

 

(性能が良いだけで受け入れてもらえるってわけじゃない。それは判ってはいるんだが、他になにかあるのか? コストって言っても戦術機そのものの価格に比べたら安いもんだしなぁ)

 

 たしかに戦術機用CPUとOSのセットとしてのみ見ればXM3は高価だが、既存機体の改良や新規機体開発に比肩するほどではない。特に機体価格が高騰し続けている第三世代機を基準とすれば、その導入コストは誤差とまでは言えなくとも導入を躊躇う要因とは考えにくい。

 

 なによりもXM3に対応した衛士教育の面や、前線での衛士の損耗を考慮すれば、むしろ早期導入が望ましい。

 

「需要があるなら、我々が解消する問題などないと言いたげだな、白銀少尉?」

「は、はいッ、いいえ、自分はそのようなことはっ」

 

 武の思考など簡単に見透かしていたようで、ターニャがあっさとり疑問点を露にする。

 

「たしかにこの基地で開発に携わっている連中は、戦術機の開発に携わっており、その強化には当然ながら意欲的である。また戦術機の性能向上は、合衆国などの極一部の例外を除けば、各国ともに意欲的に取り組んでいる」

 ただし、と嗤うように口元を歪めて、ターニャは続けた。

 

「前提として、必要性が無ければ、そもそも需要は発生しない」

 

 

 

 矛盾したかのような発言をターニャは続けるが、その言葉の意味が武にはつかめなかった。もしや理解できていないのは自分だけかと焦り、周囲の様子を伺ってしまう。

 

 純夏はもはや当然と言ってしまうのも問題はあるが、話に着いていけていないようで、武同様眼が泳いでいる。冥夜も何やら考え込んでいるところを見るに、理解には至っていないと思われた。

 ただまりもは何かに気が付いたようで、悔いるように眉を顰めていた。

 

「そこで我々の目的の二つ目にも関わってくるのだが、そもそもが戦術機の強化とは、何だ? 手元の資料に軽く目を通してみろ、呆れ果てるしかないぞ?」

 

 ターニャに促され、先に手渡された資料をようやくめくる。

 

 

 

 英文の並べられた書類に、純夏の横顔がはっきりとわかるほどに引き攣る。が、武も今は構っていられる余裕はない。簡潔に纏められているとはいえ、ユーコンで活動している試験小隊は10を超える。

 概略だけを追うように、手早く目を通していく。

 

 原型機をF-5とするのがアフリカ連合軍ドゥーマ小隊が高速砲撃戦強化試験型ミラージュ2000。欧州連合軍の第一試験小隊であるスレイヴニル小隊がJAS-39グリペン強化改修機、第二試験小隊のガルム実験小隊がトーネードADV。

 

 F-14派生と見て取れるのが、ソビエトイーダル試験小隊のSu-37UB。中東連合アズライール実験小隊のF-14EX。

 

 そもそもがF-5派生機であるF-16だが、それを基にしているのが中国共産党暴風試験小隊の近接戦強化試験型殲撃10型。東欧州社会主義同盟グラーフ実験小隊のMiG-29OVT。

 同じくF-5派生機のF-18系列を試験しているのが、大東亜連合とオーストラリア軍だ。

 

 アルゴス試験小隊は、日米共同というよりはボーニング社による計画とも見て取れるが、F-15派生のF-15・ACTVとXFJ-01 不知火・弐型だ。

 

 

 

「神宮司大尉、どう見るかね?」

 先に気が付いていたことを、資料を見てあらためて確認したようだとみて、ターニャはまりもを指名する。

 

「はっ、個人的な所感となりますが、個々の開発方針ともかくとして、プロミネンス計画において戦術機の強化とは、機動性の向上、砲撃戦能力の強化、あるいは近接戦闘能力の向上を目指しているものと愚考いたします」

「そんなところだな。忌々しいことにイーダル小隊の計画だけが独自性を持っているわけだが……まったく契約というものを理解せんコミーどもには心底呆れ果ててしまうしかないな。まあ、今はそれはよい」

 

 いつものソビエト嫌いというだけでは無さげな口調で、イーダルに関する話は切り捨てた。

 

「さて、では白銀少尉。いま神宮司大尉が上げた三要素、貴様ならどうやって強化する? 簡単な話だな」

「はっ、機動性、そして近接戦闘能力に関しては当然、また砲撃戦能力に関しましても中距離以内であればXM3による能力向上で賄えると考えます」

 

 誘われるかのような回答だが、武としてもそう答えるしかない。まりもが簡単に列挙した三要素は、XM3によって強化可能な範囲だ。

 視界外射程戦闘能力の向上などが盛り込まれていればまた話も変わっていただろうが、中近距離における砲戦能力であれば、FCSやセンサの変更などなくとも機動性の向上による射撃機会の獲得によって十二分に達成できる。

 

 つまりはXM3によって要求は満たせると、武は考えてしまう。

 

 

 

「まだ判らんかね、白銀少尉? これらの要求仕様はたしかにXM3によって達成できる。が、この基地に集まっている連中には、OSつまりはソフトウェア面での性能向上を発想することさえできておらんのだ」

「……あ」

 

 上官の前で呆然と口を開けてしまうほどに、ターニャの言葉でようやく気付かされた。

 EX世界線から比較して集積回路関連の技術が遅れていることもあり、ソフトウェア開発も同様らしい。この世界において、兵器改良とはすべからくハードの改良だったのだ。

 

「そもそも、ソフトウェアの性能によってハードウェアのもつ潜在能力が十全に発揮できていない、それさえも想像の埒外であろう。そんな連中に、どうやってXM3を売り込めるかね? 白銀少尉、何か良い案はあるかね?」

「はっ、それは……合同演習を経て、実地で納得させるしか手段を思いつきません」

「よろしい。非常に判りやすい手段だ」

 

 誘導された、自ら導き出したという体を取らされたと、武は苦々しく感じる。とはいえ即座に口にできるような解決方法として思いつくのは、その程度だ。

 

 

 

「そこで、我々が目指すもう一つの目的は、だ。プロミネンス計画の白紙化。簡単に言えば計画を破壊する」

「ぅえッ!!」

 

 どうせ無茶を言い出すのだろうとは身構えていたものの、さすがにそこまで明言するとは思っていなかったターニャの言葉に、驚きのあまり声を上げてしまう。声にこそ出していないが、他の三人も同様に驚きで固まっている。ウォーケンだけは事前に伝えられていたのか、諦めたかのように目を瞑っていた。

 

 プロミネンス計画は国連主導の各国融和を掲げた計画だ。

 それを曲がりなりにも同じ国連に属する者がはっきりと否定し、しかも攻撃の対象と言い切った。JASRA局長としてか、A-01所属のCP将校としての発言か。どちらにせよ外部に聞かれたらそれだけで失脚の要因とされてもおかしくはない。

 

 かつて武が経験したUL世界線におけるHSSTによる横浜基地へのテロ行為にしても、第五が明確に第四を潰すために行ったとは断言できていない。むしろ第五派に見せかけたどこかのテロ組織による犯行だという見方もある。

 第四派と第五派とでも水面下では各種の闘争もあろうが、あくまでどちらも国連の名の下に秘匿されて進められている計画だ。ここまではっきりと対立と敵対とを夕呼にしても口にするのは自身の執務室においてだけだ。

 

 プロミネンス計画の総本山たるこのユーコン基地、そして相手側から用意された部屋など、防諜対策など取れているはずもない。

 

 

 

「驚くほどのことか? 概要を見た諸君ならば判っていよう。これはただの浪費だ」

 やれやれと、わざとらしいまでに肩をすくめ、ターニャは呆れ果てた振りをしてみせる。

 

「大隊規模を超すほどの開発衛士を集め、それに数倍するほどの整備班を擁し、やっていることは既存機体の現地改修程度だぞ? それもほぼすべてがF-5系列の機体で、だ。競争させて事に当たるようなことかね? メーカーに任せたほうが建設的だ」

 

 先にまりもが纏めたように、いくつもの開発小隊に分かれていながら、その要求仕様はほぼ同じだ。そして母機となっているのもF-5か、その派生機たるF-16とF-18の系列のどれかだ。

 競争させるにしても各国主導ではなく、F-16のロックウィード・マーディンとF-18のノースロック・グラナンに要求仕様を提示し、双方から改修計画を出してもらいコンペティションを行うほうが無駄が無いことは明白だ。

 

「かといって中東連合のF-14EXなど論外だ。合衆国海軍ですら、複座の問題とその運用コストから早期退役を決定したような機体だぞ? 国土を奪われた国々が満足に運用できるとは思えん。グラナンへの救済というにしても無駄に過ぎる。F-18の採用数を見直した方がまだマシと言える」

 

 性能自体は間違いなく今でも一線級なのだろうがな、と付け加える。

 F-14は非常に大型の機体で、可変翼を持つ跳躍ユニットなど複雑な機構を備えるためにそもそも機体価格が高い。加えてイーダル試験小隊のSu-37UBもそうだが、複座ということは運用に必要とされる衛士の数が倍になるということだ。それらの運用コストを許容できる国家は無いと断言してもいいのだろう。

 

「政治的パフォーマンスにしても、このプロミネンス計画は成功しているとは言い難い。切磋琢磨などと言えば聞こえはよいかもしれんが、ただ同じ場所にかき集めただけでしかない。情報の相互公開義務さえなく、むしろ各国の軋轢を生みだしているようなものだな」

 

 おそらくは聞かれていることを前提として、ターニャはプロミネンス計画の問題点を簡潔にまとめ上げていく。

 

 

 

「つまりは、だ。第五と違って有効性さえ見出せん。予算も時間も人材さえもただ無駄に費やしているだけだ。さっさと潰れてもらうに限る」

「では、我々の任は?」

 

 あらためて潰すと断言するターニャに、意識を切り替えたのかまりもが為すべきことを明確にするために、問う。

 

「先の白銀少尉の言葉通りだな。XM3を有用と見て、開発計画を柔軟に切り替えてくるならば、相手にせずとも良い。だが自身らの計画に縋り、無駄に金と時間を浪費するような輩であれば、演習の名の下に力を以てこれを叩き潰せ」

 

 

 

――"In The Myth, God Is Force"

――神話の御世にあって、神とは即ち力のことである

 

 ターニャはわざとらしいまでの笑顔を作り、旗標かあるいは惹句なのかを諳んじてみせ、さらに煽り立てた。

 

 

 

 

 

 




「Youは何しにユーコンに?」
「プロミネンス無駄過ぎ。潰すから、その予算こっちに寄越せ」
そういうお話です。

現実の戦闘機開発と違って、戦術機はどうしてもF-4かF-5を基礎とするから、実際ほとんど同型機になってしまってるんじゃないかな~とかメカ本眺めてた時に思ってたりです。

輸出枠の取り合いとしてのオーストラリアと大東亜連合とのF-18系列改修レースとか、それだけでちゃんと書ければ面白そうなんですが、どなたか書いてくれぬものかと人任せ案件の一つです。

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