Muv-Luv LL -二つの錆びた白銀-   作:ほんだ

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連鎖の乱雲 01/12/14

「ったく、キリがねぇ」

 

 意味のない言葉を漏らしつつも、武の身体は染み着いた動作を正確に続ける。

 接近してくる三体の戦車級を背部兵装担架の二門の突撃砲で薙ぎ払うように蹴散らし、その先を見据える。狙うはこちらへと突進してくる要撃級だ。距離にして500m未満。武御雷には劣るとはいえ、弐型へと改修された不知火の加速力からすれば至近といえた。

 

 ただそれは対峙する要撃級にしても同じだ。

 全高12m全長19m全幅28mと戦術機を大きく上回るサイズはそれ自体が巨大な質量武器であり、また足の速さをも意味する。

 

 接近して斬り伏せるべきか、このまま射撃で制圧すべきか。武が単機で突出して近付けば小隊のフォーメーションを崩すことに繋がるが、かといってこの位置を護ると後衛の二人への負担も高まる。

 

 判断能力が落ちてると頭の片隅で自覚しながらも、下手に前に出るよりかは、とトリガに掛けた指に力を加える。

 

 

 

『フェアリー02、戦闘中だというのに考え事か?』

『タケルちゃん? もしかして寝てた?』

 

 だが武がトリガを引く直前に、眼前の要撃級は「タコ助」と綽名される要因でもある感覚器が初弾で弾け飛ばされ、続けて撃ち込まれていく36mmでその巨体も崩れ落ちた。

 後方に位置する純夏からの砲撃に加え、横に並ぶ冥夜が止めを刺してくれた形だった。

 

「うるせぇ03、けど04も助かった」

 寝てたと言われても強く否定できぬほどに疲れてはいる。それは武だけではなく、今声を掛けてきた純夏も、また冥夜も同じだ。顔に出ていないのは小隊長たるまりもだけだが、彼女にしても疲労は溜まっているはずだ。

 

「そろそろこの弐型に慣れてきたせいで、ちょっと寝ボケてた」

『なるほど、02はまだまだ余裕があるようだな。この戦線は貴様一人に任せるべきか?』

「ははっ、それは流石に弾薬も燃料も持ちませんね」

 

 まりもも小隊内の軽口を叱責はせず、むしろ武に乗ってくる。たとえカラ元気だと見破られたとしても上に立つ二人がまだ戦えると見せねば、新任の二人が耐えられないとの判断だ。

 つまるところ、まりもにもさほど余裕が無いのだった。

 

 

 

 いま武たちフェアリー小隊は満足な戦略目標さえ伝えられずに、いつ終わるともわからぬ持久戦を強いられていた。

 

 周辺に展開している戦術機部隊はほぼそのすべてが小隊規模でしかなく、支援砲撃も十分とは言えない。当然重金属雲もまともに形成されておらず、下手に跳べば即座に光線級からの照射を受ける。

 希望的要因は、重金属雲による電波障害がほほなく、CPとの連絡が明確なことくらいだ。

 

 加えて武たちが駆る機体は訓練兵時代から先の九州戦までで使っていた、馴染んだ物ではない。武と冥夜は不知火・弐型。まりもと純夏とはACTV仕様に換装した陽炎に搭乗している。

 不慣れな機体、それが疲労の蓄積の原因の一つでもあった。機体と衛士装備双方の蓄積データの少なさは短期間ならば無視できるが、長期の搭乗になればなるほどに衛士への負担となって返ってくる。

 

 

 

 

 

 

(無理を通してくれた整備の皆に報いるためにも、疲れてるからって手は抜けねぇ……採用はしてもらいたいよな)

 

 XM3に換装された94式不知火と89式陽炎とが帝国から二機ずつユーコンに送り込まれ、アルゴスの整備班はそれらを弐型Phase2とACTV仕様への換装を徹夜でこなした。ターニャが言い出したそれは無茶ともいえる要求だったが、換装にかかる工程とマンアワーを今一度確認するためにも必要な作業ではあった。

 

 弐型もACTTVも一応は新規製造も視野には入れられてはいるだろうが、基本的には既存機体を改修する計画だ。ここでかかる労力を基準として、メーカーに戻すのか現地の整備班が換装するかの判断が下される。

 

 XFJ計画自体がXM3によって先行きが不透明となったとはいえ、喀什攻略においてA-01には弐型が欲しい。ACTVも問題はあれどXM3との相性も良く、既存の陽炎よりは戦力の向上に繋がる。

 

 第四計画直轄のA-01に限れば、元々が連隊規模な上に損耗もあり現存機は80にも満たない。喀什攻略に在日国連軍から提供される部隊もさほど多くはない。

 弐型にせよACTVにせよ、メーカーに戻さず現地整備部隊で改修ができるのであれば、既存装備の修理・補修という名目も立てやすい。第四計画の権限内で採用を進めても、大きな軋轢は生まないはずだ。

 とくにA-01に限れば、部隊すべてが九州防衛戦から撤収している今ならば、改修とその後の機種転換に等しい訓練も、どちらも時間は取りやすい。

 

 

 

 右翼を担っていた小隊の一つが後退を始めたようで、再び中隊規模のBETA群と正対する形になりつつあった。武は突撃前衛としてそれを正面から受け止めねばならないのだが、不思議と不可能だとは思えない。

 集中力が欠けてはいるが、まだ戦える。

 

(ってか、俺の疲れがマシなのは機体に助けられてるよなぁ)

 

 新人二人に疲れを見せるわけにもいかずに誤魔化したものの、疲労はある。乗り始めてすでにどれほどの時間が経過したのかさえ、視界の片隅に浮かぶタイマーを確認しても咄嗟には把握することさえ難しいほどだ。

 

 だが冥夜や純夏に比べれば、武自身はそれでもまだ余裕がある。それは他世界線での経験からくるペース配分の成果でもあるが、機体の調子の良さも大きい。

 

 

 

 いま武が乗る不知火・弐型は、元々は孝之の機体だと聞いた。冥夜のほうは慎二のものだったはずだ。まさかこのような事態を想定してわけではないだろうが、夕呼が動かせる余剰の不知火は、この二機だけだったらしい。

 

 大陸に送られ幾度も実戦を経て、非公式ながら先日の朝鮮半島での撤退戦にも参加していたはずの機体だ。当然ながら、先に乗ったユウヤが調整していた一番機ほどに真新しく、また整備が徹底されているわけではない。

 それでも先のAL世界線で武が乗っていた不知火よりも、むしろ調子が良いのではないかとまで思ってしまう。

 

 ヴィンセントの調整が素晴らしいことは間違いないが、そもそもがこの機体が実戦で数年を経たとは思えないほどに素直なのだ。

 

(鳴海中尉も、要領が良いんだか悪いんだか。ヘンなことろで生真面目だよな)

 

 武から見た孝之は、どこか掴み辛い、茫洋とした青年だった。

 

 小隊も階級さえも違うとはいえ、孝之や慎二とは同じ中隊である。加えて武は実質的には中隊副官として動いているため、役職的には似たような立ち位置だ。それもあってむしろ茜や晴子以上に話はしていた。

 それであっても、慎二ほどには掴み切れていなかった。

 

 たが今、孝之が乗っていた機体を借り受けるような形になって、ようやく彼の人柄の一片が理解できたように思えた。

 

 

 

 

 

 

 衛士の体調としての気力的にも体力的にもまだ戦えるが、それは別として継戦能力には限界が来る。

 

「フェアリー02から01。こちら残弾3割」

『フェアリー04から01へ。こちらも02と同じく残弾が3割を切ります』

 

 先ほどは冗談に紛らわしたが、事実として弾薬も燃料も心もとない。

 押し寄せる戦車級へとの圧がわずかに緩んだ隙にリロードを挟みつつ、まりもに報告する。もちろんまりももこちらの状況などは把握しているだろうが、口頭で伝えることで双方が意識することは重要だ。

 

 出撃時の装備はもう記憶に怪しいが、幾度かの補給を経て今はどこかで慣れ親しんだ組み合わせに変わっていた。長刀二刀を左右に逆手で掲げ、突撃砲二門を背部兵装担架から下げている。射撃精度は下がるが、それでも近接時の殲滅力が欲しい。

 

 武は突撃前衛長として先陣を切り部隊の先頭に立ち続けなければならない。なによりも疲労が溜まるにつれて、突撃砲ではなく長刀に頼ろうとする冥夜よりも前に出なければならないのだ。彼女よりもたとえ一歩でも前に立つためには、追加装甲を持つ突撃前衛装備では速度が足りない。

 だがそれが結果的に弾薬をバラ撒くことと推進剤を浪費することに繋がっていた。

 

 その冥夜の装備は、出撃時から突撃前衛ではなく、右の腕と背部兵装担架に長刀、左には突撃砲といった強襲前衛じみた様相だった。武御雷でもそうだったが、やはり盾としての追加装甲の使い方が身に付いていないと、冥夜本人は言っていた。

 ただ冥夜はすでに突撃砲を一門のみとなっている。最初に手にしていた一門は、無理な銃剣使用が祟って損失している。

 

 どちらにせよ、補給は必要だった。

 

 

 

『アルゴスCPからフェアリー各機へ。暴風小隊が右翼に展開を始めています。今でしたら3km後方の補給地点へと下がる余裕があります』

 

 弾薬類の消耗を報告した武たちに、CPから補給ポイントと周辺状況の補足が入った。フェアリー小隊としてのCP将校はターニャではあるが、今はそのターニャに代わりアルゴス小隊のオペレーターであるニイラム・ラワヌナンドが主に担当してくれている。

 

『フェアリー01から、02、04へ。匍匐飛行にて先行し、補給を急げ。こちらは牽制しつつ後退する』

「02了解、すぐに戻ります」

 

 まりもは一時的な前衛後衛のスイッチを指示し、消耗の激しい武と冥夜との補給を優先する。弐型の方がACTVよりも足が速いというのもある。

 3km程なら跳躍すればかかる時間は数十秒程度だ。跳んだ直後から光線級警報は鳴り始めるが、後退する機体は脅威度が低いとでも判断されるのか照射されることもなく目標地点に着く。

 

 

 

「02、補給ポイントに到着。これより補給に移り……ああ、ったくッ!!」

 意味は無いと判っているものの、悔恨とも叱責ともとれる声を、報告の最中に武は漏らしてしまう。

 

 コンテナはあった。

 指定されたポイントに確かに補給コンテナはあったが、中身が違った。

 

『フェアリー02、正確に報告しろ』

「こちら02。申し訳ありません。直接・支援砲撃関連のコンテナではありますが、87式ではありません。WS-16C突撃砲とその予備弾倉です」

 

 まりもと純夏とが前方に残っていてくれていることもあり、今この時だけであろうが、周囲3kmほどにはBETAの反応はない。疲労と眠気とを討ち払うためにも、武はあえてゆっくりとまりもに報告した。

 

『こちら04。訂正いたします。WS-16Cではありません。おそらくは中国共産党の82式かと思われます』

 だがざっくりと見ただけで報告した武の言葉を、冥夜が改める。

 

『……申し訳ありません、確認しました。04の言うとおりに82式です』

 指摘されて、ようやく気が付いた。

 取り出してマッチングしたわけではなく外見だけでの判断だったため、武は見間違えていた。冥夜の言葉通り、コンテナの中身はWS-16Cを中国共産党が改修した82式だった。

 

 

 

「あ~マズいな、これは」

 無線が入ったままだが、どうしても愚痴めいた声が出る。まりもが叱責しないところを見るに、彼女も似たような判断に到達しているはずだ。

 

 WS-16C以上に、使えなくはないが、使いたい装備ではない。

 

 武たちが装備する87式突撃砲とは違い、銃剣が付いている訳ではないし、肩部の増設ウインチに対応したワイヤーがあるわけでもない。なによりも87式に合わせた弐型の膝のマガジンラックには、WS-16系列の予備弾倉が満足に収納できるわけでもなかった。

 加えて82式は近接戦闘時の取り回しを優先してストック部分を切り詰めたことで、バランスが悪く命中精度が低いと言われている。

 

 そしていま武たちフェアリー小隊がこのコンテナを回収地点としたということは、逆に中国共産党の部隊が補給ポイントを見失っているという可能性も高い。戦域全体での補給が破綻し始めていると見なすべきだった。

 

『……60秒待て。こちらも向かう。その間に予備弾倉を87式の後部に付けておけ』

「02了解」

 

 わずかに間を開けて、まりもが決断を下した。

 

 使いたいわけではないが、他に手段がない。そしてこのような状況を想定して、87式突撃砲はWS-16系列の弾倉も装着できる。

 

 

 

『アルゴスCPからフェアリー01へ。申し訳ありません、こちらの確認不足でした』

 補給ポイントを指示したニイラムが、まりもへと詫びを入れる。致命的とは言えないものの、補給のミスでこれからの部隊の作戦行動の自由度が下がったことは確かだ。

 CP将校としては、許されざる失態とも言えた。

 

 ただ、戦術機に乗り続けている武たちほどではないが、ニイラムも疲れが溜まっているはずだ。フェアリー小隊の補佐を睡眠は当然、満足な休息さえなしに続けているのだ。ミスはどうしても起こしてしまう。

 

『フェアリー01からアルゴスCP。補給を急かしたこちらの責でもある。それに移動前に確認して置くべきだった。変わりと言っては何だが、暴風への報告は任せる』

 

 まりもの言うとおり、ニイラムだけのミスではない。

 暴風小隊が戦線を上げてきていると報告された後だったのだ。焦らずに周辺の部隊展開を再度見直しておけば、ニイラムが指示した補給ポイントが暴風小隊のためのものだったと推測できた可能性もある。

 

 

 

 ある程度共有化されているとはいえ、補給物資は前線の部隊が勝手に判断して利用していいものではない。同じ大隊内であればまだ融通も効くだろうが、師団どころか国家を超えてとなるとその後の補給計画にも影響が出る。

 

 とはいえ前線においては、眼前に補給コンテナがあればその所属などいちいち気にかける余裕などない。先ほどまりもがニイラムに依頼したように、事後承諾となるが消費を通達するだけまだましと言えた。

 

 そして今武たちはここで補給せねば、安全に後退することも難しい。そもそもは中隊規模に合わせた補給ポイントだ。暴風小隊だけであれば余剰にもなるはずだ。

 

 ただ、武は杓子定規に従うつもりはなかった。

 まりもの指示から逸脱する形になるが、マガジン数個だけでは心もとない。数少ない燃料補給用ドロップタンクからの推進剤の補充は難しいとしても、使いにくいとしても突撃砲くらいは補充もしたい。

 

 

 

 

 

 

(さて、と。神宮司隊長にはリロードだけしておけと言われたものの……)

 時間的な余裕は無いが、武自身と冥夜の機体をあらためて確認し、使えそうなものを考える。本来なら冥夜の兵装担架にある長刀以外、携帯兵装をすべて入れ替えたいくらいだが、それは難しい。

 

「暴風への詫び入れはアルゴスCPに任せたから、好きにさせてもらうか」

 なかば冥夜に聞かせるべく、わざと声に出してからコンテナを再確認していく。

 

 だが82式の突撃砲のみならず、長刀も当然ではあるが中国共産党軍が使用するトップヘビー型の77式だ。正直こちらは使いようがない。重すぎて第三世代機の機動性を殺しかねず、加えて運用理念が違い過ぎて、74式に合わせて調整してある各種のコンボも流用不可能だ。

 

 結局のところ、何とか使えそうなのはまりもの指示通り、36mmとそして120mmの予備マガジンくらいだ。

 

 

 

 武がコンテナ軍を確認している間に、冥夜はすでに突撃砲へのマガジン装填を完了させていた。

 

「04、こっちに背部を向けてくれ」

 長刀をコンテナに立てかけ、背部兵装担架から87式突撃砲を一門下ろす。ついでにマガジンも増設しておく。

 

『なにをする、02?』

「ま、任せとけって」

 

 指示通りに背部を向けた冥夜の弐型、その空いていた左の背部兵装担架に手に持つ突撃砲を搭載する。

 

「ご覧の通り俺は二刀なんで、銃剣を使いそうにないからな、背中の一門は82式にしておく」

『そなたに感謝を』

「適材適所、ってのとは少し違うが、気にするな。次の補給を間違えなければ換装できるだろうしな。応急の処置ってところだ」

 

 

 

(問題は、次まともに補給させてもらえるのがいつになるかってところだけどな)

 さすがに口にして悲観主義を隊内に広めるような真似はしない。だが状況が予断を許さぬことは冥夜にも判っているだろう。

 

 まりもの無理のない小隊指揮で、奇跡的と言えるほどに武たちの機体は損害を免れてはいる。各機共に関節部への負担はあれど、小破と認定されるのは純夏の乗る陽炎の左脚部程度だ。

 推進剤も消耗しているが、戦域を大きく移動することがなかったため、まだ余裕はある。

 

『先の神宮司隊長のお言葉ではないが、我らが注意しておれば避けられた問題ではあるか……』

「まったくだ、自分が嫌になるのはこういう時だ」

 

 武は突撃前衛長として分隊長ではあるが、小隊副官のみならず発言力的には中隊副官に等しい。先任の孝之や慎二が不在の今、このような状況確認に気を回す役回りでもある。

 ただその武のミスをフォローできなかったとでも言わんばかりに、冥夜は疲労の見える表情をさらに引き締めていた。

 

 

 

「ま、大陸で実戦を経てきた突撃砲だぜ? 87式よりも経験豊富な先達へは敬意を示さなきゃな」

 気を張り過ぎな冥夜に、わざとらしいまでに軽く声を掛け、手前の82式を手にする。

 

『……そなたに重ねて感謝を』

「いやいや、せっかくの機会だ。試し撃ちにはちょうどいいさ」

 

 自分でもまったく信じていないが、重く悩みこんでいても事態は好転しない。くわえて気を使ったことまで察せられていては、誤魔化すしかない。

 

(ただまあ、言うほど問題はなさそうだな)

 

 たしかにしっかり見ればWS-16Cとはストック周りの形状が違う。近接戦闘時の取り回し向上のためと言われているが、これほどストックを縮めてしまえば逆に保持しにくくなっているだけではないかとも思える。

 だが武は、背部兵装担架からの射撃に限定するつもりなので、さほど悪影響は出ないのではないかと、あえて楽観視しておく。

 

 銃剣もスリングユニットの有無も背部兵装担架で使用するなら問題ではない。82式の命中精度の低さというのは気になるが、それも兵装担架からであればそもそもが長距離での使用は想定していない。

 

 互換性があるとはいえ、普段使っていない機材だ。マッチングを進める間も、マガジンの着脱なども試しておく。先と同じ失敗を繰り返さぬように、機材に問題がないか入念に確認した上で、装備を完了する。

 

 

 

 

 

 

「それにしても、想定状況酷すぎるだろ、コレは……」

『過酷でなければ試験にも訓練にもならぬと、あの方であればそうおっしゃられるのではないか?』

「はははっ、違いねぇ」

 

 聞かれていることは判っていながらも、武はぼやいてしまう。不満を溜め込んでいても、それはそれで不健康だ。軽く愚痴を零すことで、務めて意識を軽く持つ。冥夜も気持ちを切り替えたようで、付き合ってくれる。

 

 そして82式のマッチングを進めつつ、ようやくタイマーを確認する。

 JIVESを用いた長時間演習。その演習開始から、すでに36時間以上が経過していた。

 

 この演習を指揮しているターニャに愚痴など聞かれれば、先の補給ミスと同じく回避可能ではあろうが、より一層困難で巧妙な問題を織り込んでくるはずだ。

 

 楽観視できないほぼ確定した未来予測とともに、ニヤリと嗤うターニャの顔が脳裏に浮かんでしまった。

 

 

 

 

 

 




一話で演習終わらせようかと考えてましたが、ヘンな長さになったのでとりあえずここまで。XM3教本とかACTVの問題点とか、いろいろ次回に先送りモードです。

あと暴風小隊はたぶんゲスト枠で、ほとんど絡めない予定。崔亦菲さん好きですけどまともに出すとユウヤパートが歯止めなく長くなりそうなので。あと統一中華戦線を無くしてしまったので、殲撃10型の近接能力強化試験機がどう変わってくるかとかひたすら脱線する未来しか見えないです……

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