幼い頃から何かと不遇な人生を歩んできた男、宇治ノ正利。

しかし、ひょんな事から幻想入りを果たし、そこで意外な転機が訪れる。

*この小説は、ゆっくり犠牲さん執筆の作品「東方犠牲録」に登場するキャラクター、"宇治ノ正利"のお話です。

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ここにきてピアニスト

「ねぇ....あんた大丈夫?」

 

「ん?」

 

「なんだかやつれてるし、一人でこんなところに居て。

妖怪に襲われるよ?」

 

「....アンタは?」

 

「その前にアンタは?」

 

「宇治ノ正利(うじのまさとし)だ。」

 

「藤原妹紅よ。」

 

「ここはどこだ?」

 

俺は異世界にとばされた。

今目の前にいるのは白髪に赤い目をした少女。

辺りはひたすら竹、竹、竹。

1度足を踏み入れてからというもの、出ることが出来ずに途方にくれ、どうしようもなくホームレスの様な生活をしていた所に、この妹紅という少女に発見された。

ここは俺が元居た"外の世界"とは違う"幻想郷"という、いわゆる異世界だ。

 

 

 

 

ん?

何故こうなったかって?

少し長くなるかもしれんが、聞いてくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~幼少期~

 

俺はとある田舎に生まれ、物心つくまでずっと婆ちゃんに育てられた。

優しい人だった。

俺もこの先、婆ちゃんに世話になりいつか恩返しをして楽をさせてやりたいと思っていた。

が....。

 

「こーんばーんはー。」

 

ある日一人の女が家にやってきた。

どうやら俺の母親らしいが、生後直ぐに俺を婆ちゃんに預けて、その後音沙汰なし。

男と遊び呆けた挙げ句その男も捨てて今更戻ってきたのだとか。

婆ちゃんもどうにか俺を手元に置こうと説得してくれたが、口が達者な母親に勝てるはずもなく、そして俺自身もどうすることも出来ず、母親に手を引かれ連れていかれた。

振り替えれば悲しそうな顔をして玄関からこちらを見送る婆ちゃんの姿は今でも忘れない。

余りにも突然過ぎる別れだった。

 

~母親との暮らし~

 

これは最悪だった。

あの女、毎日浴びるように酒を飲んでは家の中で吐きまくる。

自分で処理しないから、俺が代りに片付けていたがその横でまた酒を飲んでいた。

そして片付けが終わり部屋に戻ろうとする俺を呼び寄せたかと思えば、いきなり平手で打たれ蹴られの暴行。

さらには言われる筋合いも無いような理不尽な罵声。

こんな女の腹から産まれたのかと思うと、嫌で嫌で仕方なかったよ。

ちなみに、気が済むまで俺に当たり散らしたあとは人が変わったかの様に抱きつき、頭を撫でくり回しながらニヤニヤしていたっけ。

この女。

男を捨てたのではなく、実は男から捨てられたんじゃなかろうかと今になって思うが、真相は分からんままだ。

....余談だが酒と嘔吐物が混ざったアノ臭いは強烈だぞ?

良いか、よく聞いておけ。

大事な人と居るときの酒は程々にしておけ。

被害者その1(俺)から忠告だ。

 

~学校では~

 

あまりいい記憶がない。

とにかく友達が少なかったんだ。

母親との生活が影響をもたらしたのか、かなり目付きが悪くなってて、皆怖がって近寄ってこなかった。

(今もその目付きは直ってないが....。)

そんな俺の楽しみは昼休みに音楽室に忍び込み、ピアノを弾くこと。

ピアノの音は聞いていて気持ちが良いから、いつまでも弾いていたくなる。

(これも直ってない。)

 

「あら、まさくん何してるの?」

 

「....!!」

 

ある日俺は先生に見つかったんだが、これが良かったのだろう。

おそらく、この出来事がなければ今の俺は居ない。

 

「ピアノの音が好きだから....。」

 

「なら、先生が教えてあげましょうか?」

 

「え....。」

 

婆ちゃん意外にまともに心を開いた事がなかった俺は悩みに悩んだが、結局先生に頼んでピアノを教えてもらった。

一人で当てずっぽうに鳴らすよりも楽しかったな....。

だって、教えてもらうことで色んな曲が弾けるようになるし、弾けるようになる事で更に音と音の組み合わせを知り、その組み合わせでまた違った音を産み出すことが出来るんだから。

とにかく、嬉しかった。

小学校卒業するまで音楽室通いをサボることはなかったよ。

 

~高校を出て~

 

だいたい中学も高校も、小学校と同じように友達が居なくて孤立してた。

でもやっぱり音楽室通いはやめられなかった。

中学からは俺にピアノを教えてくれる人が居なかったから、やむ無く独学で弾きまくってよ。

ここまで来ると中毒とか言われそうだが、それくらい楽しかったんだ。

仕方ないじゃないか。

 

さて、本題だが高校を卒業してからだ。

 

この頃俺は独り暮らしを初めていた。

母親を説得するのも案外あっさり終わった。

 

「ふーん、好きにすれば?」

 

って感じだったよ。

母親の酒と暴走はだいぶ収まり、いくらかマシになっていたが....。

俺が母親と生活するなかで良い思い出は何ものこってなかった。

 

ん、いかん。

話がそれたな。

 

んで、バイトも始めた。

飲食店だ。

ここの連中がまたとんでもない連中だったよ。

バイト中は飲食店でお客さんも居るって事で"表面上"はマトモだったんだが....。

問題はそのあとだ。

例えば帰り際に絡まれた時

 

「おい、ウジ虫。」

 

「....」

 

「おい?」

 

「....」

 

「てめぇ、先輩無視してんの?」

 

「すみません....宇治ノですが。」

 

「あ"ぁ"?」

 

「....。」

 

って言うのがあったりしたが、はっきり言ってまだ可愛いほうだ。

これがエスカレートして金は取られるわ、"お前の目付きが悪いから客が少なかった"だのとイビられたり、挙げ句の果てには

 

「おい、お前ちょっと裏こい。」

 

「なんでしょう?」

 

「良いからこいや。」

 

「....。」

 

「なんだ?その目は?」

 

「いえ、なんでも。」

 

それで店裏に行くと、なんか知らんが先輩達がゾロゾロいるんだよな。

 

「なぁ、ウジ虫。

最近オメェがいるせいで俺らめっちゃイライラしてんだわ。

目付きも悪ぃ、態度も悪ぃ。

今から俺らが躾てやるから、大人しくボコられろや。」

 

「え....?」

 

....んで、ボッコボコ。

店長にバレないように顔だけは絶対に殴らなかったんだよ。

殴るのは背中やら手足の服に隠れてる部分だけ。

小賢しいよな。

そんな事が毎日続いて....それでも1年半はそこにバイト行き続けたな。

よくアレで精神的に壊れなかったなと不思議に思わざる得ないよ。本当に。

 

~婆ちゃんが....~

 

ある日婆ちゃんが死んだ。

田舎にいた頃に仲の良かったおっちゃんのから連絡が来た。

死因は老衰。

静かな最期だったそうだ。

俺は婆ちゃんを楽させて、世話になった分を全部返したかった。

だが、叶わなかった。

せめて葬式だけでも。

そう思いバイトを休もうと思ったが、あの連中がそんなに優しいとは思えず、結局バイトに向かったよ。

その日も店裏で飛びっきり理不尽な暴言とともにボコられた。

いつもなら慣れっこで大したことないんだが....。

婆ちゃんが死んだのを無理矢理心に押し入れて気力で一日動いていたその日は流石に堪えたよ。

 

~バックレ~

 

次の日から俺はバイトをバックレた。

ずっとバックレた。

店長から何度も電話が掛かってきたが全部無視して家に籠ってたよ。

気分転換にバイトの先輩達から取られなかった分のお金で買った安物の電子ピアノを弾いたりしながら、毎日ダラダラしてたっけな。

ちなみに、この頃からタバコを吸い始めた。

未成年での喫煙だ

愛煙銘柄はハイライト。

今でも変わらない。

そして、やっと二十歳になったある日の事。

タバコがなくなってコンビニに出掛けんだ。

それがいけなかったな。

何でかって?

コンビニの駐車場に居たのが....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バイトの先輩達だったんだよ....。

 

 

~リンチ→幻想入り~

 

なんとも不運な事だが先輩達も俺を見つけて、こっちに来た。

それで路地裏に連行されて....

分かるな?

これまで以上に凄まじいリンチを受けた。

 

「おいこら何トンズラこいてんだクソが!

テメェは俺の発散材だったのによぉ!?」

 

なんて事言われながら、最後の方には鉄パイプで殴って来やがった。

それで全身、あちこちの骨が折れたのが分かったし血を流し過ぎて痛みすら分からなくなってたのを覚えてる。

 

(これが最期かよ....。)

 

ってな事思いながら意識を失った。

それからだ。

俺の転機は....

 

「....?....!?」

 

目が覚めたら見知らぬ所に居て、不思議なことに体の傷が全部直ってた。

目の前にはでっかい湖があって、霧がかかった場所。

 

「俺は死んで....天国に来たのか?」

 

追い付かない思考でとりあえず、湖に近づき顔を洗ってみた....。めっちゃ冷たかったな。

どうでも良いが、このまま此処にいても仕方ないと想ってあちこちブラブラ歩き続けた。

気が付いたら人里と思わしき所に来たんだ。

第一印象は"活気のありつつどこか古風な感じ"だったな。

 

~嫌われていたが....~

 

とりあえず、人里の住人に声をかけてみた。

 

「すみません」

 

「ん?」

 

振り向いた男と目があった瞬間、その男の眉間に皺が寄るのを見逃さなかった。

 

「あんたは、何者だ?」

 

「....目が覚めたらしらない湖の前に居て、とりあけずほっつき歩いてたら、この人里を見つけたので....」

 

「外来人か。」

 

「外来人?」

 

「なんでもねぇ、とっとと行きやがれ。」

 

「....ありがとうございます。」

 

なんとも冷たい対応だったよ。

ちなみにこの男は八百屋だった。

この男と、後々あんな関係になるとは思ってもなかったけどな。

 

「けっ、気味が悪い奴だぜ全く。」

 

後ろからボソッと言う男の声が聞こえたから尚更だ。

それからと言うもの、目付きの悪さのせいかあまりテンションの無い喋り方のせいか分からないが、行くところ行くところで、白い目を向けられたよ。

 

 

 

ん、すまん。

疲れたから休憩だ。

ちょっと一服させてくれ。

アンタも吸うか?

 

 

 

 

....。

 

 

 

 

 

そうか。

じゃあ、俺だけ吸わせてもらうよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

....すまんな、ちょっとゆっくりし過ぎた。

じゃ、話を始める。

もうしばらくお付き合い願いたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

~出会い~

 

人里じゃ何も進展がなかった。

どうしようもなく俺はまたひたすら色んな所を歩いた。

気がつけば竹林に居て....

どうしても出れないんだな、この竹林が。

今でこそちゃんと出入り口が分かるようになったが、当時はそんなことは知らなかったから、これまた途方に暮れて....。

毎日、生の筍ばかりかじって喉の乾きは雨水を貯めてそれを飲んで凌いでたよ。

まさにホームレスだ。

 

そしてある日の事。

 

 

「ねぇ....あんた大丈夫?」

 

「ん?」

 

「なんだかやつれてるし、一人でこんなところに居て。

妖怪に襲われるよ?」

 

「....アンタは?」

 

「その前にアンタは?」

 

「宇治ノ正利(うじのまさとし)だ。」

 

「藤原妹紅よ。」

 

「ここはどこだ?」

 

俺は妹紅に出会った。

妹紅からは色んな事を教えてもらったよ。

ここが異世界だと言うことも、人間以外にも神や妖怪が存在することも

一部の人間には"程度の能力"があることも。

そして、俺もその能力を持っている事も後から分かった。

どうやって分かったかは秘密だ。

ただ、一つ言えるのはかなりエグい能力で

その名も

"ありとあらゆる物を自在に操る程度の能力"

読んで字の如く、形あるもの全てを自分の意のままに操れる能力。

大きさ、重さ、質量関係ない。

本当に自由で応用範囲も果てしなく広い。

そのぶん使い方次第では大型妖怪すらも仕留めれる程の代物だ。

 

すまん。

また話が逸れた。

 

妹紅との出会いがあってからは充実してたよ。

能力を最大限まで引き出す為の練習したり、対人格闘の練習したり、一緒に買い物行ったり。

そこで、妹紅が人里の皆の誤解を解いてくれたり。

妹紅には感謝しきれないね。

それと、河童の河城にとり。

彼女から特注でグランドピアノを作ってもらって、妹紅に弾いて聴かせた時の妹紅の喜び様は凄かったぞ?

 

「すっごい!!

そんな楽器があるなんて知らなかったよ!

音もめっちゃキレイじゃん、もっと聴かせてよ!」

 

いつもは頼もしい妹紅もこの時ばっかりは年相応って感じで....なんというかこう....

微笑ましかったよ。

でも、そのあとだ。

 

「ねぇ、正利。

どうせなら、演奏会開いちゃえば?」

 

って。

流石に開いた口が塞がらんかったね。

俺はあくまでもちょっとピアノが弾ける程度だと思っていたのが、まさかこんな事言われるとは....不意討ちだったよ....。

 

~初の演奏会~

 

という訳で演奏会やってみたが....

まさかまさかの大成功。

最初から最後まで拍手喝でビックリした。

人里にある広場で開催してみたんだが思いの外、客も集まってくれて。

演奏会後半は人里の住民だけでなく、妖怪なんかも来てたな....。

人も妖怪も関係なく一つの場に集まり同じ時間を過ごすのは何だか心地が良かった。

これからも演奏会を続けようと思った瞬間だったよ。

 

「よう!」

 

「?」

 

演奏会が終わり俺に声をかけてきたのは

 

「アンタ、すげぇなぁ!」

 

最初に声をかけた八百屋の男だった。

それからというもの、この男。

人里に寄るたびに、コッソリ野菜を半額で売ってくれる様になった。

妹紅と居る時には、俺が買ったぶんとは別にタダで妹紅にくれるもんだから、儲けもんだよ。

それは今でも変わらないがな。

 

~今~

 

さて、とりあえずはこんなもんだ。

何か質問はあるか?

 

 

 

 

 

 

 

 

....。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

演奏会の服装?

アリスにオーダーメイドで作ってもらった黒のノーネクタイスーツだ。

ベルトもカッターシャツもオーダーメイド。

着心地は最高だよ。

 

ん?

右目を前髪で隠してる理由?

あぁ、演奏会が終わった後に良く分からん奴にナイフで襲われて....。

失明した。

眼帯が似合わないからって事でこの髪型にしたんだよ。

まぁ、今更どうでも良いが。

 

んん?

何故タバコの銘柄がハイライトか?

そうだな。

・旨い

・安い

・吸いやすい

この三拍子が揃ってるからだ。

ちなみに他のタバコは軽すぎるんだよな....。

(*ハイライトのタール値は17。

ちなみにセブンスターのタール値は14。)

 

さて、他には?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

....俺にとって妹紅はどんな存在か?

 

 

それは....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドオォォォン!!!←(*外から聞こえた爆発音。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「正利、ヤバイよ!

演奏会場の近くからだよ!」

 

「そうらしいな。

全く....何事だ?」

 

「分からないけど....でも、多分これはただ事じゃないと思う。」

 

「そうか、とりあえず様子を見てくる。」

 

「あっ、私も!」

 

「いや、妹紅は演奏会場に行って被害がないかの確認を頼む。

俺はあの爆発音の原因を突き止める。」

 

「分かった。」

 

「あぁ。

今度の演奏会は延期かもしれんな。」

 

「いつまで?」

 

「"事が済んでから"....だな。」

 

「そっか。」

 

「あぁ。」

 

すまん。

質問の答えはまた今度になりそうだ。

ちょっと急ぎの用事ができた。

 

「正利....」

 

「なんだ?」

 

「気を付けてね。」

 

....そんなに心配そうな顔をしないでくれ、妹紅。

 

「分かっている。」

 

「うん。

....いってらっしゃい。」

 

「あぁ、いってきます。」

 

 

さて、原因はなんか知らんがもし演奏会を延期するハメになった場合はその原因を作った奴にそれなりの借りを返してもらわないといかんな。

俺だけの問題じゃなくて

これまでずっとピアノを聴きに来てくれていた人達に対して申し訳ないからな。

 

 

 

 

 

 

おっ、

なにやら黒炎が見えてきた。

アレの使い手のヤツが原因とみて間違い無いようだな....。

うむ、延期確定。

ここで戦闘に持ち込んでも良いが、今はとりあえず退いてもらうのが優先か。

本格的に借りを返してもらうのは、まだ後日で良い。

 

だが、その時が来たら....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

覚悟しやがれ。

 

 

 

 

 

―――終わり。

 

 




ありがとうございます!

特に書くことは何もないです笑

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