「孤児の少女を艦娘として記憶を抹消した後に軍事転用する世界。
主人公が虐待された挙句、棄てられた少女を艦娘の素体として利用し、その少女が海風となる。
海風は主人公が指揮をしている鎮守府に着任するが、拾ってもらったことを記憶しており、時を重ねていく毎に主人公に依存してく……。
そして海風は主人公を"愛する"ようになり、歪んだ愛へと……。
みたいなのはどうですかね?」
あらすじを送り付けてくるのか……(困惑)
※pixivに同時掲載
ヤンデレものはイケる口なんですが、ヤンデレの思考はよく分かりません故、稚拙な箇所がちらほらと……
とある鎮守府の一室。部屋の窓は一切無く、数本の蛍光灯が、その部屋の状況を照らしているだけのシンプルな小部屋。私と提督は、その部屋にいた。
──提督は椅子へと縛り付けられているが。
「海風……何故こんなことを……」
「恩返しです」
「恩返し……?」
「はい」
私は提督に向かいながら、顔に笑みを浮かべて話す。その先にいる提督はどこか虚ろな目をしていて、覇気がない。
「提督は覚えてますか?」
「……何をだ?」
「捨てられた私を拾われた時のことです」
「……いつそれを知った?」
私はかつて、捨てられた子だった。それも、ただ捨てられたのではない。
顔を殴られ、腹を蹴られ、時には血も吐いた。
そうしてボロボロの状態になるまで嬲られてから、何の意図もなく簡単に捨てられた。
「最初からです。その他のことは何も覚えてません」
「……そうか」
「でも、私を拾ってくれたことだけは鮮明に覚えています」
「……それじゃあ、一つ聞きたい」
「なんでしょうか」
「……それは、思い出したことか?」
「いいえ。私が海風として目を覚ました時から、記憶に残っていました」
「……そうか」
提督は何かボソボソと呟いているが、やがて黙り込んでしまった。
「私には、提督が必要なんです。提督がいなければ、私は私でなくなってしまいます」
「だから、ずっとここに居ろと?」
「その通りです」
私は提督の右頬へ手を添えて、優しく手を滑らせる。そこへ軽く口付けをして、提督から離れた。
◇◆ ◆◇
それは、ある冬の寒い日のことだった。
「オラッ、もっと泣け!」
「うっ……あぐっ……」
私はいつものように、父であるはずの人物から暴力を受けていた。声が掠れているからか声が声にならず、吐息の様な言葉が喉から抜けていく。
そうして耐えていれば、僅かな食料をくれるのを知っていたから。かろうじてだとしても、父親としての自覚はあったのだろう。
しかし、今日の父はどこか違った。
「……そろそろ飽きてきたな」
「いだっ……!?」
父は私の前髪を掴むと、私を引き摺りながら部屋を出た。
──どうやら、私は棄てられるらしい。
幼い思考ではあったが、その雰囲気だけは感じ取っていた。端的な言葉から察するに、私を痛ぶるのに飽きたから、何処かに捨てられるのだろう。
そうして毛根からの痛みに耐えながら、ズルズルと引き摺られること数分。家の外に出された私は、ボロ人形をゴミ箱へと投げ捨てるかのように車のトランクへと投げ込まれた。父──整えられていない髭が印象的な男は、無抵抗の私の顔に一発拳を入れて、その余韻に浸りながらトランクを閉じた。
◇◆◇◆◇◆◇
車の揺れが止まり、トランクが開かれる。
私の意識は既に朦朧としており、目の前の男が私の服の胸元を掴んで持ち上げても、私は指一本動かす事が出来なかった。しかし、幸いにも目は動くので、私は目だけで周りを見渡す。視界に入るものと言うと、目の前の男と、男の周りに広がる緑一色。つまり、ここは何処かの山奥、もしくは樹海のような場所なのだろう。
ふと男の顔を見る。整えられていない髭と、鼻先まで伸びた黒髪から覗く三白眼。その瞳に暖かみなどというものはなく、瞳の奥に広がるのはただただ冷たい血筋だった。
「……ふん、棄てるには惜しいが、お前に価値なんてものは──」
ふと、その目が横を向く。
何か不思議そうな表情をしているが、その目線を辿っても、そこには何も無い。
男は一つ溜息を吐くと、私を掴んでいる手を振りかぶった。体重の軽かった私は、それに対抗することは出来ない。
──刹那、視界は反転し、暗転した。
◇◆◇◆◇◆◇
──寒い。
そんな言葉があった。
──痛い。
そんな言葉もあった。
私の体を、その二つの言葉が包む。
手元は悴んでいるのかすら分からない。元々朦朧としていた意識も、傷口へ突き刺さる寒さによる痛みでかろうじて残っているだけだった。
もう体を動かす力など、欠片も残っていなかった。あるのは心臓による血液循環と、それに必要になる肺機能だけ。
そんな中でふと、何かがこちらへ向かってくる音が聞こえた。足音だろうか。土と草木を踏みしめる音が聞こえる。その音は徐々に早くなり、やがて私の前で止まった。
「大丈夫か」
あの男とは違う男性の声が、私の耳へと語りかけた。男性は私の体を起こし、その体温の低さに驚いているだろうか。
私はその声に向かって、無意識のうちにこう返していた。
「……助かる、のね」
男性の顔が歪む視界に入る。その顔は何故か鮮明に捉えることが出来た。
男性から伝わる体温に寄って、私は睡魔に襲われた。
男性は私へ必死に語りかけているが、私はもう限界だった。
──私の意識は、そこで途切れた。
◇◆◇◆◇◆◇
目が覚めた時、私はカプセルの中に寝かされていた。カプセルの顔にあたる部分だけはガラスで出来ているため、外の様子を窺うことが出来る。
外では、白衣を身に纏った初老の男性とあの時の男性──今は黒い軍服を着ている──がこちらを見下ろしていた。
「彼女の状態はどうだ?」
「はい。素体の調整と服装の転換、記憶の処理も終わりました。もう今からでも出撃出来ます」
「そうか。随分と早いんだな」
──記憶の処理?
私は自身の記憶を辿ってみた。
──だが、何も思い出すことが出来なかった。
両親の顔はおろか、自分の名すら思い出すことが出来ない。思い出すことが出来るのは、軍服の彼が瀕死状態の私を救ってくれたということだけ。
私は────。
「わた……しは……」
「ん、目を覚ましたらしいぞ。どうするんだ?」
「今カプセルから出しますね」
私の呟きに気付いた初老の男性は、私をここから出そうと手元の端末目の前に引き寄せ、それを弄る。カプセルのロックが外れたのか、外の空気が中へと入り込んでくる。外の空気は消毒薬のように鼻をスッと抜けていく不思議なものだった。
私は体を起こし、カプセルから出る。
「おはよう。自分が誰だか分かるか?」
「…………」
カプセルから出た私に、軍服の男性が問いかけた。
私は──。
「白露型七番艦、海風です」
「ん、よく出来ました」
そう言って、私の頭を撫でた。その手は、あの樹海で体を起こしてくれたあの時と同じく、とても暖かみのあるものであった。
◇◆◇◆◇◆◇
「そろそろ慣れてきたか?」
「はい! 提督のおかげで、少しずつ分かってきました!」
私が目を覚ましてから一週間。私は男性──倉井蒼汰提督の持つ鎮守府へと着任していた。
提督は捨てられた私を拾い、右も左も分からない私を、一から導いてくれた。立場上当然の事とはいえ、私は嬉しく思った。
この時からだろうか。
──私の目が提督に惹かれるようになったのは。
◇◆◇◆◇◆◇
敵を一隻沈めると、提督は褒めてくれた。秘書艦の時に食事を持っていくと、提督はそれを嬉しそうに食べてくれた。私がボロボロで帰ってくると、まるで自分のことのように心配してくれた。
初めのうちは、そんな事で良かった。
「もっと……頑張らなきゃ……」
しかし、それはきっと私以外の艦娘達でも出来ること。
そんな事を繰り返していれば、私はきっと有象無象の中の一人として認識され、いつしか私をきちんと見てくれなくなる。
──それは嫌だ。
「もっと……私を見てほしい……」
◇◆ ◆◇
私が頬から口を離すと、提督は身震いしていた。寒いのだろうか。
「提督、お身体が小刻みに震えているようですが……どうかされましたか?」
「……鎮守府はどうするつもりだ」
「提督はここから指揮をされるんです。だから、心配する必要はありません」
「……お前は何を馬鹿なことを」
提督は私の言う事を信じていないらしい。
──それなら、教えてあげなければ。
「実はここ、鎮守府の中にあってですね」
「それだと、そのうち皆が見つけるんじゃないのか?」
「それは大丈夫です」
──この部屋の真実を。
「この部屋、いつもは埋められてるので」
「……は?」
提督は驚いているのか、目が揺れている。
──ここで、棺桶を想像してみてほしい。土葬の場合、死体を入れた棺桶は地中へと埋められる。
この部屋も同じで、普段は土に隠れて入口など見えないのだ。
「提督は、門のところの花壇をご存じですよね?」
「花壇って……まさか」
「はい。花壇ならば、ある程度土が盛り上がっていても、土を解したあとがあっても、誰も不自然には思いません」
それでも、完璧ではないのだが。
土の手入れのために、と土を全て出してしまえば、入口を隠すものはなくなる。ある程度隠蔽工作を施してあるが、それだけはどうしようもない。
「花壇の下ならば通信機材も届きますし、花壇全体を加工したので、出入りの時に土へ埋もれる心配もなくなります」
「……監禁状態ってことか」
「提督を守るために必要な事なので、許してください」
「もし俺が許さないと、海風はどうするんだ?」
「逆にお聞きしますが、提督は許さないつもりですか?」
「…………」
提督は言葉を噤んでしまった。恐らく質問を質問で返されるとは思ってなかったのだろう。礼儀が通っていないが、それが答えなので仕方がない。
「提督は本当にお優しいですね」
「……憎むべきものを憎めない性格だからな」
──だからこそ、提督に群がる全てを遠ざけなければならない。
それらが近くにいるだけで、提督はそれへと気を配ってしまう。そうなれば、私を見てくれなくなる。それが、どうしても許せなかった。
「提督」
私は提督の厚い胸板へ手を添え、膝を提督の股の隙間へ置き、そう呟いた。
「……なんだ」
提督は動じることなく、目の前に来た私のことを見据えている。もっとも、この部屋には見るものなどほとんど無いはずなのだが。
「これからは、ずっと私を見ていてください」
「……ああ」
「海風、頑張ります」
私は、回りから見れば歪んでいるのかも知れない。
想っている人の事を監禁して、椅子へ縛り付け、その体へと迫る。
だが、そうすることでしか有象無象からの独立が出来なかった。そして私は、それを今成し遂げた。
──その嬉しさを噛み締めながら、私は提督の唇を奪った。
Q.いつになったら最初から最後まで幸せに満ち溢れた海風を書くんですか?
A.今はまだその時ではない。