問題児たちと最後の吸血鬼が異世界から来るそうですよ?   作:問題児愛

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幕間Ⅰ 純血の姫君と真祖の姫君

 ガルドは自分の屋敷で痛そうに頭を抱えていた。

 

「(やっちまった………黒ウサギを手に入れようとして取り返しのつかねえ事に………!)」

 

 ガルドは〝主催者権限(ホストマスター)〟を所持したとある魔王の傘下であり、野心家でもあった。

 そもそも傘下に入った理由も、魔王を後ろ楯に持ってその名前を振り翳せば、怯えないコミュニティは無いからである。それを利用してこの地域を支配しつつ徐々に勢力圏を広げ、やがては最高難度のゲームに挑み、自身が神格級のギフトを手にするつもりだった。

 それにはコミュニティの名を上げ、より強力な人材を集める必要がある。

 黒ウサギはコミュニティの〝箔〟としても〝駒〟としても、彼の欲を満たす玩具としても欲しかった人材である。しかし今まで何度もアプローチしてきたが、鼻であしらわれてきた。

〝ノーネーム〟の存亡を賭けた今回の召喚は、黒ウサギを奪う最大のチャンスだっただけに、先走り過ぎてしまったのだ。

 

「くそ………くそ、くそくそくそこのドチクショウガァ!!!」

 

 ガルドは身近にあった執務机を持ち上げて窓の外に放り出した。

 

「あの女のギフト………精神に直接触れる類いだ。あんなのがいたらどんなゲームを用意しても勝ち目なんてねえぞ!」

 

 問題は其処だ。〝主催者〟である此方の領地内でギフトゲームを用意する以上、優位にゲームを組めるはずだが、飛鳥のギフトが相手を意のままに操れるとなると相応のギフトゲームを用意しなければ勝ち目がない。

 それに今のガルドでは耀のギフトにも対抗出来ない上、人間に混じって吸血鬼もいた。その気配は只者ではなく、そんじょそこらの吸血鬼を凌ぐ高位クラスの吸血鬼に違いない。そんな彼女達を相手にして、ガルドに勝ちの目などあるはずがないのだ。

 頭を抱えているガルドに、割れた窓の向こうから凜とした女の声が掛かる。

 

「―――ほう。箱庭第六六六外門に本拠を持つ魔王の配下が〝名無し〟風情に負けるのか。それはそれで楽しみだ」

 

「っ、誰だ!?」

 

 割れた窓から突如、風と黒い影が吹き抜け、華麗な金の髪を靡かせた少女が現れた。

 

「情けない。三桁の外門の魔王の配下がコレとは。こうも情けないと同情してしまうよ」

 

 金髪の少女は呆れるように頭を振る。

 ガルドは獰猛に唸り声を上げて威嚇した。

 

「テメェ………何処のどいつか知らねえが、俺は今気が立ってるんだ。牙を剥かねえうちにとっとと失せろ」

 

「ふふ。威勢がいいのは評価してやる。だが、獣からの成り上がり風情が〝鬼種〟の純血である私に牙を剥くのか?」

 

「なっ、」

 

 声を詰まらせてガルドは驚愕する。先程のまでの勢いは一瞬にして萎え果てた。顔は青ざめ、巨体をよろめかせて後ろに下がる。そしてもう一度金髪の少女を確認した。

 細かい波を引いたブロンドの髪に年不相応に凜とした顔立ち。覗き込めば吸い込まれそうな艶美で赤い瞳には息を呑まずにはいられない。

 そういえばあの吸血鬼の少女も、赤い瞳をしていたな。雰囲気も似ていた気がする。

 ………!?まさかこの女、吸血鬼か!?それに〝鬼種〟の純血、それも吸血鬼(ヴァンパイア)の純血ということは―――〝箱庭の騎士〟だと!?

 ガルドは、噴水広場で会った吸血鬼の少女と雰囲気が似ているような感じがして、目の前の金髪の少女も吸血鬼かもしれないと警戒した。

 

「き、〝鬼種〟の純血だと………!?馬鹿を言え、鬼種の純血と言えば殆んど神格じゃねえか!そんなもんがどうして俺の下に来る!?〝名無し〟共の尖兵か!?」

 

〝純血〟とは系統樹の起点に位置するギフトを指す言葉だ。ガルドのように多種が混ざった〝成り上がり〟とは違い、種の中でも個別の呼び方をされる者達である。

 金髪の少女は髪を掻き上げてガルドの言葉を指摘する。

 

「ああ、それだ。実はあの〝名無し〟とは少々因縁があってな。もう再建は望めないと思っていたんだが………新しい人材が神格保持者を倒したと聞いて、様子を見に来たのだ」

 

 今度こそガルドは打ちのめされたように跪く。目の前の金髪の少女にではない。飛鳥の他に神格保持者に打ち勝つような化け物を相手にしなければならないという、その事実に絶望したのだ。

 

「そ、それは何時の事だ。黒ウサギじゃねえのか?」

 

「今日の夕刻より少し前だな。聞けばまだ若い少年らしい。お前と問題を起こした奴と全く別の人間であることは間違いない」

 

「じょ、冗談じゃねえ!」

 

 ガルドは我を忘れて叫ぶと隠し部屋を開き、金品を荷に掻き込む。

 鬼種の少女は金の毛先を指先で弄びながら呆れたようにその様を見る。

 

「これはまた、随分と貯め込んでいるようだな………しかしゲームからは逃れられんぞ」

 

「し、知ったことか!俺が一体どれだけの野望を抱いて箱庭に来たと思ってやがる!何年も何年も何年も………唯の獣でしかなかった時代からずっと箱庭の上を目指して生きてきたんだ!それをあの小娘………畜生……!」

 

 悔し涙と恐怖の入り混じった声で嘆く。自分は何処で間違えてしまったというのか。

 かつて森で生きていた頃………牙と爪を頼りに生きていた頃のように。今度は知恵と策謀を手に伸し上がってきただけなのに。

 

「長年の野望か………聞いた話だと、猫というのは長く生きるとそれだけで霊格を得る時があるらしいな。まあ、雑種塗れの霊格だが。これは他の獣でも同じだ。長く生きるというのはそれだけで神性視される。それらはやがて生態系に爆発的な変化を起こして〝幻獣〟に昇華されるが………悪魔共に魂を売ったのが運の尽きだったな。大人しく獣のまま修練を積んでいれば俗物に塗れる事も無かっただろうに」

 

「うるせえ!うるせえ!うるせえ!!」

 

 半狂乱になって叫ぶガルドの手を、金髪の少女はそっと押さえ付ける。

 それは柔らかな物腰だったが、吸血鬼の少女に匹敵するくらいの剛力で掴まれた。

 

「まあ、待て虎よ。私も今回の事は聞き及んでいる。あ、どうやって聞いたかなんて無粋な事は聞くなよ?私にも無くせない交友というのがあるからな」

 

 悪戯っぽい笑いだが、金髪の少女のその目は異様なまでに冷たい。

 ガルドは再びこの少女に対する恐怖に震え上がる。

 

「要するにだ。お前が勝てば全ての問題は解決されるのであろう?」

 

「か、勝てるわけねえだろうが!昼間の騒ぎを聞いていたなら知ってるだろ!お、俺はあのガキ共に手も足も出せなかったんだ!吸血鬼のガキに至っては、アンタ並みの剛力の持ち主だったしよ!」

 

「何?吸血鬼だと………?」

 

「は?アンタは今回の事は聞き及んでいるんじゃなかったのか?」

 

「………いや、外界から吸血鬼が来ている話は聞いてない。初耳だ」

 

 小首を振って否定する金髪の少女。これにはガルドも驚いた。

 金髪の少女は、()()が意図的に、外界の吸血鬼の存在を隠している理由が分からなかった。私に知られては不味い吸血鬼だというのか。いやそれよりも、外界の吸血鬼は全滅したはずでは?

 不可解な点はあるが焦る必要はない。外界の吸血鬼の存在には驚いたが、私は純血の吸血姫だ。〝鬼種〟のギフトをこの虎に与えれば、その吸血鬼に後れを取ることはないはずだ。

 

「………外界の吸血鬼の存在には驚いたが、別にどうということはない。今のお前では勝てないだろうが、お前が新たなギフトを………〝鬼種〟のギフトを手に入れたらどうする?勝ち目も出てくるのではないか?」

 

 ガルドの手が止まる。その顔は驚愕して固まっているが、初めて少女に向き合っていた。

 

「………俺に〝六百六十六の獣〟を裏切れと?」

 

「結果的にはそうなるな。しかしお前も知っていよう。かの大悪魔はもう箱庭に帰ってくるつもりは更々ないのだ。〝六百六十六の獣〟は〝主催者権限〟に集まるまさに烏合の衆よ。そんな場所で飼われていても、お前の将来は見えているぞ」

 

 甘い、誘うような艶美な声でガルドの耳元に囁き掛ける。

 

「何も裏切れとは言わん。私が興味あるのは彼奴らだけよ。事が終わった時、お前は無罪と新たなギフトを手にしている。ただそれだけだ。損の無い話だろ?」

 

「……………」

 

 ガルドは冷静さを僅かに取り戻して思考する。

 もしも目の前の金髪の少女が鬼種の純血だというのなら、力のあるコミュニティを率いている可能性が高い。それに彼女の言う通り〝六百六十六の獣〟は烏合の衆だ。本来なら使者を送って助勢を頼めるこの状況に誰も応えない。なら新しいコネクションを持つのは悪くない。

 他に問題があるとするなら………どの〝鬼種〟かだ。昼間の吸血鬼の少女と雰囲気が似ているこの金髪の少女の〝鬼種〟は、やはり吸血鬼の純血で読みは合っているのだろうか。

 

「一つ聞きたい。あんたのコミュニティは何処だ?」

 

「それは言えん。承諾せねば詮索は無用。私は月の出ているうちに帰る」

 

「チッ。選択肢はねえか」

 

 ガルドは金髪の少女の腕を荒々しく振り解いた。

 

「いいぜ。けど時間がない。種族そのものを変質させるにはどれぐらい掛かる?」

 

「それなら気にするな。今この時、この場の僅かな時間で済む」

 

「何?」

 

 ガルドは、金髪の少女に胸倉を掴まれる。金髪の少女の牙がガルドの首筋に突き立とうとしたその時―――ズガァン!と銃声が聞こえて、

 

「うっ………!」

 

 金髪の少女は左肩を撃ち抜かれて苦痛の表情でよろめくと、その場に片膝を突いた。

 何だ!?と驚愕したガルドは、聞こえた銃声の方に目を向ける。すると其処には、いつの間にか二人の少女がいた。

 一人は、黒のゆったりとした袖の付いた踝丈のワンピースに裾が大きい頭巾を被った、修道院にいるような格好―――即ち修道女(シスター)の姿をした長身の少女。

 もう一人は、黒いローブを纏った小柄な少女。が、両手両足には銀製の枷が付けられていてまるで奴隷のようにも見えた。

 

「誰だテメェらは!?」

 

「うふふ、ごめんなさいね、いきなりお邪魔しちゃって。けど安心なさい、ガルド=ガスパー。私達は貴方を殺しに来たわけではないわ。其処の純血の吸血姫に代わって、貴方に素敵な力を与えに来ただけだから」

 

 警戒しながら問いかけるガルドに、修道女は優しく返答しながら歩み寄って来る。

 金髪の少女を純血の吸血姫と言った修道女に、ガルドはぎょっと目を向いて金髪の少女を見た。

 

「この女、やはり純血の吸血鬼(ヴァンパイア)!〝箱庭の騎士〟だったのか!」

 

「―――ッ!」

 

 正体がバレてしまい焦る金髪の吸血姫。正体を知られる前に〝鬼種〟を与えて去るつもりだったが、第三者の登場は予想外だった。

 それに、自分の左肩を撃ち抜いた銃弾は、焼けるような激痛を吸血鬼に与えられるからには唯の銃弾ではなく恐らく〝銀の弾丸〟か。そして修道女の首に掛かった十字架の付いたネックレスは―――『ロザリオ』だ。なら彼女のコミュニティは例の組織〝ロザリオ〟に違いない。

 金髪の吸血姫が左肩を押さえながら修道女を睨め上げると、修道女はクスクスと笑って拳銃を仕舞った。

 

「うふふ、貴女も警戒しなくていいわよ、純血の姫君。〝箱庭の騎士〟は、私達が消すべきヴァンパイアではないもの」

 

「………どうだかな。貴様らのコミュニティが、吸血鬼を殺したくて殺したくて仕方がない狂者揃いだと聞いている。〝箱庭の騎士〟も例外なく消したいと思っている奴が一人もいないとはとても思えんよ」

 

 皮肉に言う金髪の吸血姫を、修道女はクスクスと可笑しそうに笑いながら見つめた。

 

「別にそう思ってもらっても構わないわ。まあ、そんなに死にたいなら、何時でも殺してあげるけど」

 

 凶悪な笑みを浮かべて金髪の吸血姫を見つめ返す。金髪の吸血姫の背筋にゾッと悪寒が走った。この修道女は、私が同意したら本気で殺しに来るかもしれないと直感した。

 修道女は、視線をガルドに戻して優しげな表情で訊いた。

 

「それで、どうするのかしら、ガルド=ガスパー。私の提案に乗ってくれるなら―――真祖を倒し得る力を与えてあげるわ」

 

「は?真祖?」

 

 聞き覚えの無い言葉にきょとんとした顔で修道女を見つめるガルド。

 それとは対照的に、金髪の吸血姫は有り得ない話を聞いたような顔をした。

 

「真祖だと!?馬鹿な、真祖は貴様らが斃したんじゃなかったのか!?真祖を斃したからこそ、その功績が認められて箱庭に召喚されたはずだぞ!」

 

「ええ。確実に殺したはずよ。でも生きていた………それが事実だからどうしようもないわね」

 

 肩を竦めて金髪の吸血姫に返す修道女。金髪の吸血姫は驚きを隠せない。影武者を倒していた場合は喚ばれるはずがない。

 箱庭側がそれを誤認するとは思えない。だとしたら、その真祖は死んだあとにまた復活したというのか。吸血鬼でも絶命すればそれまでのはず。その後に復活する吸血鬼など一体どんな怪物だというのか。

 そんな二人の会話をポカンと見るガルド。彼女達の話についていけないのだ。それに気付いた修道女は、クスクスと笑ってガルドに視線を戻す。

 

「あら、ごめんなさいね。貴方には関係無い話だったわ。それで、どうするのかしら、ガルド=ガスパー?私の提案に乗る?それとも拒否して純血の姫君から力を貰う?」

 

「……………」

 

 修道女に言われて無言で彼女を見返す。純血の〝鬼種〟よりも強力なギフトを持っているのか?

 

「………何者か知らねえが、〝箱庭の騎士〟以上のギフトを与えられるのかアンタは?」

 

「ええ」

 

「………アンタの隣にいるソイツは何者だ?」

 

「何者でしょうね。貴方が私の提案に乗ってくれないなら教えてあげないわ」

 

 クスクスと笑って返す修道女。此方も選択の余地ねえか、とガルドは複雑な表情をして舌打ちする。

 

「分かったよ。どのみち今のままじゃ勝ち目はねえからな。騙されたと思って、アンタの提案に乗ってやる」

 

 ガルドが提案に乗ると、修道女は満足そうに笑い………隣の黒ローブの少女に声をかけた。

 

「うふふ、さあ、()。真祖に対抗出来る力を、その男、ガルド=ガスパーに与えなさい。勿論、拒否したらどうなるか………分かってるわよね?」

 

「―――ッ!!」

 

 修道女の脅しにビクつく〝姫〟と呼ばれた黒ローブの少女。しかし拒否出来ないのか〝姫〟は重い足取りでガルドに歩み寄る。

 ガルドは弱々しそうに見える反面、気配は強大な〝姫〟に息を呑む。

〝姫〟はガルドに真正面から飛びつき、口を開けて白い長い牙を出現させると、彼の首筋に突き立てた。

 

「え?―――グッ!?」

 

 静かに〝姫〟の牙はガルドの首筋に埋まり、〝姫〟は彼の血を啜り始めた。

 その刹那、ガルドの獣の本能を紅い血潮が呑み込み、体中を駆け巡る。鼓動は濁流のように不規則に波打ち、細胞の一つ一つが火中にくべられた薪の如く燃えて悲鳴を上げている。

 ガルドは意識を失う寸前に、〝姫〟の口から、ごめんなさい、という謝罪の言葉が聞こえたような気がした。

 

「……………」

 

「うふふ、良くやったわ。偉いわよ、姫」

 

 黒ローブの上から〝姫〟の頭を撫でる修道女。しかし〝姫〟の表情は芳しくない。ガルドに対して申し訳ないと思っているようだ。

 一方、金髪の吸血姫は、修道女が〝姫〟と呼んでいた黒ローブの少女を驚愕の表情で見つめた。

 

「その娘が〝姫〟だと!?まさか、真祖の姫君とでもいうのか!?」

 

「そうよ。この子は真祖の最初の娘。真祖の子の中でも最も古い姫君ね」

 

 最初ということは、どうやら真祖は子を他にも作っていたらしい。………目の前の真祖の姫君以外の真祖の子の消息はどうなっているのかは不明―――いや、眼前にいる修道女が所属している〝ロザリオ〟に消されている可能性が高い気がした。

 

「………その娘が真祖の姫君だと分かったが、いいのか?そんな重大な秘密を私に喋ってしまって」

 

〝銀の弾丸〟で撃たれた左肩の傷の再生をようやく完了した金髪の吸血姫は、少し余裕が出来た事と〝ロザリオ〟の重大な秘密を知ることが出来て笑みを浮かべながら立ち上がる。

 だが、修道女はクスクスと笑って余裕の表情を崩さない。そして修道女は金髪の吸血姫を見下ろして告げた。

 

「ええ、問題無いわ。だって貴女は、此処で私達と出会った記憶を―――()()のだから」

 

「何?―――ッ!!?」

 

 金髪の吸血姫が怪訝な顔をした瞬間、金縛りのような感覚に襲われて身動きが出来なくなる。その感覚に襲われたのは、丁度〝姫〟と目が合った時か。

 

「(!?まさか、〝魔眼〟による精神支配か!)」

 

 やられた、と内心で舌打ちする金髪の吸血姫。吸血鬼の純血の姫君である私でも、真祖の姫君の〝魔眼〟の影響を受けるのか。

〝魔眼〟。吸血鬼は獲物を決めると、その人間に催眠術をかけて操り、血を啜る事が可能。外界の高位吸血鬼が持つ能力だそうだ。

 金髪の吸血姫の身動きを封じた〝姫〟は、ゆっくりと近づいてきて、白い長い牙を口元から出現させた。私の血を啜る気か?

 

「……………」

 

 金髪の吸血姫が警戒すると、〝姫〟は申し訳なさそうな顔を見せた。それから〝姫〟は金髪の吸血姫の首に腕をかけると、彼女の首筋に牙を突き立てた。

 

「ん………!」

 

〝姫〟の牙が静かに金髪の吸血姫の首筋に埋まっていき、〝姫〟は彼女の血を啜り始めた。

 ………?血を啜るだけか。記憶を失うとか言われたからてっきり本当に失うのだろうかと警戒していたが、その必要は―――

 

「………え?」

 

 不意に映像がフラッシュバックした。その映像は、修道女とのやり取りだ。何故今その記憶を思い出す必要がある?

 そう疑問に思った刹那、その映像は瞬く間に黒く塗り潰されて、やがて消滅した。何だ?何が起きたんだ?

 金髪の吸血姫は、〝 〟に目を向けて驚きの声を上げた。

 

「な、何だお前は!何故私の血を啜っている!?」

 

 金髪の吸血姫が〝 〟を睨むと、〝 〟はビクつき慌てて牙を抜き取り彼女から急いで離れた。

 その様子を見て、修道女は、どうやら成功したようね、とクスクス笑う。

 

「目的は完了したから、コミュニティに帰りましょう?」

 

「……………」

 

 修道女の言葉に無言で頷く〝 〟。が、〝 〟は最後に金髪の吸血姫に申し訳なさそうな顔で頭を下げた。

 その行為の意味を不可解に思う金髪の吸血姫。〝 〟が何で自分に頭を下げたのか理解できないのだ。

 記憶を奪われたことすら知らない彼女に対して、〝 〟が謝罪の意を込めて頭を下げていたことに。

 その後、〝 〟は修道女と共に去っていった。そんな彼女達の背を金髪の吸血姫は怪訝な表情で見送った。




ライム参戦のため、ガルドを魔改造しました。どんな能力かは本編でご確認ください(^^)


真祖の姫君が使用した能力。
魔眼による精神支配
相手の記憶を吸収する
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