問題児たちと最後の吸血鬼が異世界から来るそうですよ?   作:問題児愛

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一ヵ月ぶりの投稿です。
本当はあと一話、ローズ編を書きたかったのですが、審議決議中の飛鳥達の話の執筆が思うように進まず………(´・ω・`)

思いついたらローズ編の続きを再開します、すみません。


十二話 〝ハンティング〟【前】

 ―――箱庭二一〇五三八〇外門。ペリベッド通り・噴水広場前。

 飛鳥・耀・ライム・ジン、そして黒ウサギと十六夜と三毛猫の六人と一匹は〝フォレス・ガロ〟のコミュニティの居住区を訪れる道中、〝六本傷〟の旗が掲げられた昨日のカフェテラスで声を掛けられた。

 

「あー!昨日のお客さん!もしや今から決闘ですか!?」

 

『お、鉤尻尾のねーちゃんか!そやそや今からお嬢達の討ち入りやで!』

 

 ウェイトレスの猫娘が近寄ってきて、飛鳥達に一礼する。

 三毛猫が鉤尻尾の猫娘に返答した。〝ノーネーム〟メンバーは耀と黒ウサギにしか分からないけど。

 

「ボスからもエールを頼まれました!ウチのコミュニティも連中の悪行にはアッタマきてたところです!この二一〇五三八〇外門の自由区画・居住区画・舞台区画の全てでアイツらやりたい放題でしたもの!二度と不義理な真似が出来ないようにしてやってください!」

 

 ブンブンと両手を振り回しながら応援する猫娘。

 飛鳥は苦笑しながらも強く頷いて返す。

 

「ええ、そのつもりよ」

 

「おお!心強い御返事だ!」

 

 満面の笑みで返す猫娘だが、急に声を潜めて、

 

「実は皆さんに御話があります。〝フォレス・ガロ〟の連中、領地の舞台区画ではなく、居住区画でゲームを行うらしいんですよ」

 

「居住区画で、ですか?」

 

 黒ウサギは首を傾げる。初めて聞く言葉に飛鳥も小首を傾げる。

 

「黒ウサギ。舞台区画とは何かしら?」

 

「ギフトゲームを行う為の専用区画でございますよ」

 

 舞台区画とは、コミュニティが保有するギフトゲームを行う為の土地。白夜叉のように別次元にゲーム盤を用意できる者達は極めて少ない上、下層なら尚更そんなものは用意できる者達など存在しないだろう。

 他にも商業や娯楽施設を置く自由区画に、寝食や菜園・飼育などをする居住区画など、一つの外門にも莫大な数の区画がある。

 

「しかも!傘下に置いているコミュニティや同士を全員ほっぽり出してですよ!」

 

 飛鳥達は顔を見合わせ、首を捻る。

 

「でしょでしょ!?何のゲームかは知りませんが、兎に角気を付けてくださいね!」

 

 熱烈なエールを送った猫娘は、不意に不思議そうに首を傾げて、

 

「―――ところで、そこの御二人さん。昨日までの御二人さんの距離とはまるで違いますね。あのあと何かあったんですか?」

 

 耀とライムを見比べながら再度首を傾げる猫娘。そりゃそうだ。ライムが、耀の左腕に()()()()()()()()()()()()のだから。

 その様子に十六夜はニヤニヤと、黒ウサギとジンは苦笑いを、飛鳥は若干不機嫌そうな顔をして二人を見た。

 昨夜のことだ。耀とライムの距離が急接近して、このような事態に発展したのは。

 何があったのか聞いても、耀とライムは話してくれなかった。何かがあったのは間違いないだろうけど。

 耀は少し恥じらいを見せながら頬を掻いて、

 

「特に………何もないよ」

 

「ちょっと、今の間はなんですか!?あ、怪しすぎます!」

 

「……………」

 

 スッと猫娘から視線を逸らす耀。

 是が非でも知りたい猫娘は、ターゲットをライムに変更して、

 

「なんだお主。まさか、我から耀を奪おうとしているのか!?」

 

 耀の左腕にしがみついたままのライムに鋭い目付きで睨まれてしまった。射殺さんばかりの鋭い視線で。

 猫娘は、ひぃっ!?と悲鳴じみた声を上げて、慌てて両手を振った。

 

「ち、違いますよ!ただ、御二人さんの関係が気になっただけです………っ!」

 

「―――ふん。ならば最初からそう言え。と言っても、お主などに答えてやる義理はないがな」

 

「ええー!?いいじゃないですか!教えてくださいよー!」

 

「くどい。教えぬと言ったら教えぬ。―――さて耀、こんな駄猫は放っておいて早く虎を潰しに行こうではないか」

 

 猫娘に向けていた鋭い視線は一転して柔らかくなり、笑顔を耀に向けながら言うライム。

 何この温度差、と十六夜達は思った。一方、三毛猫だけは猫娘を〝駄猫〟と侮辱したライムを、怒りの感情を籠めて睨め上げていたが、ライム本人は気付いていない。

 耀は苦笑いを浮かべて頷くと、猫娘に頭を下げ、

 

「ごめん。そういうことだから、私達は行くね」

 

「そ、そうですか………残念です。あ、でも話せるようになったら、その時はちゃんと教えてくださいね!」

 

「分かった。ライムも、それならいいよね?」

 

 同意を求める耀。ライムは、一瞬ムッとしたが、ふん、と鼻を鳴らして、

 

「いいだろう。耀がいいなら、その時はお主にも話してやる。感謝するがよいぞ」

 

「はい!言質は取りました。約束ですよ!」

 

 あざとい猫娘に、ムッとするライム以外は苦笑して、一同は〝フォレス・ガロ〟の居住区画を目指した。

 

「あ、皆さん!見えてきました………けど、」

 

 黒ウサギは一瞬、目を疑った。ライム達も同様に。それというのも、居住区が森のように豹変していたからだ。

 ツタの絡む門を擦り、鬱葱と生い茂る木々を見上げて耀は呟く。

 

「………ジャングル?」

 

「うむ、ジャングルだな」

 

「虎の住むコミュニティだしな。おかしくはないだろ」

 

「いや、おかしいです。〝フォレス・ガロ〟のコミュニティの本拠は普通の居住区だったはず………それにこの木々はまさか」

 

 ジンはそっと木々に手を伸ばす。その樹枝はまるで生き物のように脈を打ち、肌を通して胎動の様なものを感じさせた。

 

「やっぱり―――〝鬼化〟してる?いや、まさか」

 

「……………」

 

 ライムは耀から離れて木々を無言で見つめる。それに耀が不思議そうに小首を傾げていると、

 

「ジン君。ここに〝契約書類(ギアスロール)〟が貼ってあるわよ」

 

 飛鳥が門柱に貼られた羊皮紙を指差しながら声を上げる。それには今回のゲームの内容が記されていた。

 

 

『ギフトゲーム名〝ハンティング〟

 

 ・プレイヤー一覧

 久遠 飛鳥

 春日部 耀

 ライム=ペルセーイス

 ジン=ラッセル

 

 ・クリア条件 ホストの本拠内に潜むガルド=ガスパーの討伐。

 ・クリア方法 ホスト側が指定した指定の武具でのみ討伐可能。指定武具以外は〝契約(ギアス)〟によってガルド=ガスパーを傷つける事は不可能。

 ・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせたくなった場合。

 ・指定武具 ゲームテリトリーにて配置。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、〝ノーネーム〟はギフトゲームに参加します。

           〝フォレス・ガロ〟印』

 

 

「ガルドの身をクリア条件に………指定武具で打倒!?」

 

「こ、これはまずいです!」

 

 ジンと黒ウサギが悲鳴のような声を上げる。飛鳥は心配そうに二人の顔を見比べて、

 

「このゲームはそんなに危険なの?」

 

「いえ、ゲームそのものは単純です。問題はこのルールです。このルールでは飛鳥さんのギフトで彼を操る事も、耀さんやライムさんのギフトで傷つける事も出来ない事になります………!」

 

 飛鳥が険しい顔で黒ウサギに問う。

 

「………どういうこと?」

 

「〝恩恵(ギフト)〟ではなく〝契約(ギアス)〟によってその身を守っているのです。これでは神格でも手が出せません!彼は自分の命をクリア条件に組み込む事で、御三人の力を克服したのです!」

 

「すいません、僕の落ち度でした。初めに〝契約書類〟を作った時にルールもその場で決めておけばよかったのに………!」

 

 ルールを決めるのが〝主催者(ホスト)〟である以上、白紙のゲームを承諾するというのは自殺行為に等しい。ギフトゲームに参加した事がないジンは、ルールが白紙のギフトゲームに参加する事が如何に愚かな事か分かっていなかったのだ。

 

「敵は命がけで五分に持ち込んだってことか。観客としてみれば面白くていいけどな」

 

「気軽に言ってくれるわね………条件はかなり厳しいわよ。指定武具が何かも書かれていないし、このまま戦えば厳しいかもしれない」

 

 十六夜の言葉に、飛鳥は返答しながら厳しい表情で〝契約書類〟を覗き込む。彼女が挑んだゲームに責任を感じているのだろう。

 それに気付いた黒ウサギと耀は、飛鳥の手をギュッと、握って励ます。

 

「だ、大丈夫ですよ!〝契約書類〟には『指定』武具としっかり書いてあります!つまり最低でも何らかのヒントがなければなりません。もしヒントが提示されなければ、ルール違反で〝フォレス・ガロ〟の敗北は決定!この黒ウサギがいる限り、反則はさせませんとも!」

 

「大丈夫。黒ウサギもこう言ってるし、私も頑張る」

 

「………ええ、そうね。寧ろあの外道のプライドを粉砕するためには、コレぐらいのハンデが必要かもしれないわ」

 

 愛嬌たっぷりに励ます黒ウサギと、やる気を見せる耀。飛鳥も二人の檄で奮起する。これは売った喧嘩で買われた喧嘩、勝機があるなら諦めてはいけない。

 すると、ライムは耀達のところに戻って、

 

「焦る必要はないぞお主達。指定武具の正体は、大体分かったからな」

 

「「「「「え!?」」」」」

 

 ライムの口から、まさかそんな言葉が出るとは思わなかったのか、素っ頓狂な声を上げて振り向いた一同。

 ライムは皆の反応に目を丸くして、

 

「ぬ、なんだお主達?」

 

「え?だって『お馬鹿』なライムが、指定武具の正体をつきとめたとか言うんだもの。そりゃ驚くよ」

 

「「うん」」

 

「な、誰が『お馬鹿』だッ!我は超絶美少女の天才吸血鬼なのだぞ!」

 

「「「それはない」」」

 

 問題児三人にきっぱり否定されて、「ぬぅ」と唸るライム。純粋に驚いていた黒ウサギとジンは、苦笑いを浮かべた。

 ライムをからかったあと、飛鳥が真剣な表情を作り、

 

「………それで、本当に指定武具が何なのか分かったのライムさん?」

 

「う、うむ。我は同類と血には敏感でな、あの木々から我の知らない………然れど同類の気配を感じたのだ」

 

「同類?………っ!まさか、吸血鬼ですか!?」

 

「ああ」

 

 ジンの驚きの声に、ライムは首肯する。

 

「虎の背後には吸血鬼がいるだろうな。そして自らも吸血鬼化している可能性が高い。ならば、吸血鬼化した虎を打倒し得る指定武具とはなんだ?」

 

 ライムの問いに、ハッと一同は気が付き、代表で耀が答えた。

 

「吸血鬼を倒せる武具だね」

 

「そうだ。指定武具とは、吸血鬼を打倒できる物で間違いないだろうな。………だから、最初に謝らせてくれ」

 

 ライムは頭を深く下げ、

 

「済まぬお主達。今回のギフトゲームは我の手でクリアは無理かもしれぬ。指定武具が〝銀〟製なら、触ることさえ出来ぬのだ………っ」

 

 非常に申し訳なさそうな表情で顔を上げるライム。もしライムの予想通りの物が指定武具なら、自分はお荷物になると思っているからだ。

 それに耀は、ううん、と首を振って、

 

「弱点なら仕方がないよ。ガルドの討伐は私達に任せて」

 

「耀………済まぬ」

 

「そうね。その代わりライムさんには―――私達のボディーガードを頼むわ」

 

「ぬ?」

 

「ぬ?ではないわ。指定武具が触れなくてお荷物になると思っているのなら、それくらいはやってくれてもいいわよね?」

 

 飛鳥の意図を察して、ライムはハッと顔を上げる。飛鳥は遠回しに、貴女はお荷物なんかじゃない、と言ってくれているのかもしれないのだ。

 それに昨日言っていたではないか。自分は耀達に、薄汚い虎如きに指一本触れさせぬと。

 ライムは笑顔で頷く。

 

「ああ。その程度、吸血鬼の真祖たる我にとっては朝飯前よ!ふっははははは!」

 

 何時もの調子に戻ったライムを見て、一同は安堵した。

 形は何なのかは未だ不明ではあるが、指定武具の正体は吸血鬼を殺せる物だと判明した。ならば、探し出すのもそう難しくないはずだ。

 銃なら〝銀〟製でなければライムでも触れる。万が一〝銀〟製の剣だとか槍だったら、ライム以外の者がガルドを打倒しなければならないが。

 そして、ライム達四人は門を開けて突入した。

 

 

 門の開閉がゲームの合図だったのか、生い茂る森が門を絡めるように退路を塞ぐ。

 光を遮るほどの密度で立ち並ぶ木々は人が住める場所とは思えない。

 街路と思われるレンガの並びは下から迫り上げる巨大な根によってバラバラに分かれ、最早人が通れるような道ではなくなっている。これでは何処から襲ってくるか分からない。

 緊張した面持ちのジンと飛鳥に、耀が助言する。

 

「大丈夫。近くには誰もいない。匂いで分かる」

 

「あら、犬にもお友達が?」

 

「うん。二十匹ぐらい」

 

 耀のギフトは、獣の友人を作れば作るほど強くなる。身体能力がずば抜けて高いのはその為だ。嗅覚や聴覚などの五感は十六夜よりも優れているだろう。吸血鬼のライムにも負けず劣らずといったところか。

 

「詳しい位置は分かりますか?」

 

「それは分からない。でも風下にいるのに匂いがないのだから、何処かの家に潜んでる可能性は高いと思う」

 

「ではまず外から探しましょう」

 

「その必要はないぞ」

 

 散策を始めようとした三人にライムが唐突に言った。

 三人は驚いてライムに振り向き、代表で耀が訊いた。

 

「………どういうこと?」

 

「どうもこうもない。先言ったではないか、我は同類と血には敏感とな。門を開けた時から、同類の気配を感じているのだ」

 

 あっちからのぅ、とライムは指を差す。耀達は顔を見合わせ、頷く。

 

「あの外道、吸血鬼化したのは失敗だったようね」

 

「うん。ライムにあっさり見つけられてる」

 

「凄いです!これなら指定武具を優先して探せられます!」

 

 飛鳥達が口々に言う中、ライムは困惑したような表情を見せていた。

 

「(この気配はあの虎のもので間違いない。間違いない………だろうが、なんで奴から―――我が愛しき姫の力を感じるのだ!?)」

 

 理解不能だった。ガルドが自分の姫君から力を貰っていることに。そして何より―――死んだはずの姫君が生存していたということに。

 

「(我が子達は全滅したはずではなかったのか!?なのに、どうして―――)」

 

「―――ライム!」

 

「わひゃっ!?」

 

 考え事をしていたライムは、耳元で大声で自分の名を呼んだ耀の声にびっくりして変な声を上げる。

 

「み、耳元で大声を出すでないわッ!!」

 

「中々返事しないライムが悪い」

 

「………ぬ?そ、それは済まぬ」

 

「もう………それで、どうしたの?何か考え事?」

 

 耀に訊かれて、ギクッとなるライム。

 

「あ、いや、別に………なんでもないぞ!」

 

「………怪しい。隠し事しないで話して」

 

「耀………そうだな。お主に隠し事をしては―――我が妻になってくれぬよな」

 

「え?何か言った?」

 

「い、いや!今のはなんでもない!本当になんでもないぞ!?」

 

 怪しすぎるライムを、耀はジーッと見つめたあと、はあ、と溜め息を吐いて、

 

「飛鳥、ジン待って。ライムが皆に話したいことがあるって」

 

「え?」

 

「あら?何かしら、話って?」

 

 近くで指定武具の探していたジンと飛鳥が作業をやめ、耀の下へ集まってきた。

 耀がライムに視線を向けると、うむ、とライムが緊張した面持ちで頷き、

 

「手を止めさせて済まぬなお主達。だが最悪の事態が発覚してしまったのだ。心して聞いてほしい」

 

「「「!?」」」

 

 驚く三人に、ライムは暫し逡巡するが、意を決して告げた。

 

「あの虎の協力者は二人いる。どちらも吸血鬼の者だ。木々に干渉した吸血鬼は誰かは知らぬ。だが虎を吸血鬼化させた者の方は―――我がよく知っている者だ」

 

「「「え!?」」」

 

「虎に力を与えた者は、我の知る吸血鬼―――『アイリス』。我が姫の名だ」

 

「「「なっ―――!?」」」

 

 絶句する三人。ライムも、ギリッと歯を鳴らす。

 なんでライムの姫君がガルドと接点があるというのか。いやそれよりも、

 

「「「ライム(さん)って子供いた(の・んですか)!?」」」

 

「は?」

 

 そう。そっちの方が驚きだった。まさか、ライムが子供を作っていたとは思いもしなかったのだ。

 

「ライムさんの姫ってことは………真祖の子ってことよね?」

 

「うん。それで間違いないと思う」

 

「ライムさんの子………真祖の姫君ですか!?」

 

「いや、お主達?驚く点がずれているのだが………?」

 

 目を点にして三人にツッコミを入れるライム。それにジンがハッと我に返って、

 

「そ、そうでした!………ですが、どうしてライムさんの姫君がガルドに協力を?」

 

「それは我も知らぬ。そもそも、生きていた時点で驚きだというのに」

 

「「「え?」」」

 

「―――っ、こほん!我の過去話は今はどうでもいい。問題は、我の姫から力を貰っている虎が、かなりの脅威となってしまっていることだ」

 

 真祖の姫君から力を貰ったガルド。その実力はライムほどはいかずとも、耀達では敵わないかもしれないことを意味していた。

 ただでさえギフトが通じない仕様になっているのに、ライム以外太刀打ち出来ない力を敵が得てしまっているのは、かなりの痛手だった。

 

「我が姫から力を貰った虎との戦闘は厳しいものになるやもしれぬ。だから、心してかかってくれ。我も全力で奴を止めるから」

 

「わ、分かりました」

 

「それと済まぬなお主達。我が姫が迷惑をかけてしまって」

 

「あら?これは貴女も予期せぬ事態なのでしょう?だったら貴女が謝るのはおかしいわよ」

 

「ぬ、しかし………」

 

「しかしも何もないよ。貴女の娘が勝手にやったことなんだから気にすることない」

 

「はい。貴女の姫君がガルドに協力していようとも、誰も貴女を責めたりはしません」

 

「………お主達」

 

 三人に言われて、嬉しそうな笑みを浮かべるライム。だが、自分の姫に限って、自らこんな真似をするとはとてもではないが思えなかった。

 ………まさか、アイリス、きみの背後には奴らがいて、嫌々やらされたのか………?もしそうなら、アイリスは―――奴らに捕らえられて無理矢理従わさせられているのではないか!?

 そう思ったライムは、内心で怒りの感情を爆発させた。奴らめ、絶対に、ゼッタイにユルさない………!

 

「ありがとうお主達。だが、どうかアイリスを悪く言わないでくれぬか?あの子は、こんなことをするような子ではないのだ」

 

「そうなの?」

 

「ああ。とてもいい子なのだ。進んで誰かを傷つけるような子ではない」

 

「………そう」

 

「そして、我に似て絶世の美少女吸血鬼でもあるぞ!」

 

「「はいはい」」

 

「ぬ、テキトーに聞き流すではないわ!ここ、凄く重要なのだからな!」

 

 怒るライムをテキトーにあしらう飛鳥と耀。そんな様子をジンは苦笑しながら見ていた。

 そのあと、耀はライム・飛鳥・ジンの順に見回して、

 

「ライムからの注意事項は聞いたから、そろそろ指定武具の捜索を始めよう?」

 

「それもそうね。あの外道が強くなっているのは気に食わないけれど、まずは指定武具を手に入れないと何も始まらないもの」

 

「はい。吸血鬼を打倒できるものと言えば、〝銀〟とか〝十字架〟とかそういった類のものですね」

 

「〝十字架〟?そんなもの、我には効かぬが………いや、低位吸血鬼には通用していたっけな」

 

 十字架を向けられて苦しんでいた同胞達を思い出して言い直すライム。

 低位吸血鬼。それは純血未満の吸血鬼を指す総称である。

 低位吸血鬼は、〝霧化〟とか〝変身〟とかの異能を使えない上、弱点を突かれれば簡単に死んでしまう。〝十字架〟も死にはしなくとも、苦痛を与えるだけの力はある。

 逆に高位吸血鬼は、弱点を突かれたからといって簡単に死ぬことはない。〝十字架〟に至っては逆に破壊することもできるそうだ。

 ジンは驚いてライムを見たが、彼女は吸血鬼の中でも最高位の真祖だったと思い返して言葉を飲み込んだ。

 ライム達四人は、指定武具がないか森を散策し始める。

 奇妙な木々は家屋を呑み込んで生長したらしく、住居のほとんどが枝や根に食い破られていた。昨日まで人の営みがあったはずの居住区は廃墟と化している。

 この木々に干渉しているのは吸血鬼だとライムは言った。そしてジンには、木々を鬼化させている吸血鬼の正体に心当たりがあった。

 ライムの知らない吸血鬼。それは箱庭の吸血鬼を意味しているのだとしたら、彼女しかいない。だが、彼女が此処にいるはずがないと振り払う。だって彼女は―――

 そこでジンの思考はストップする。飛鳥が、はあ、と溜め息を吐いたことによって。

 

「見つからないわね。その辺に落ちているわけではないのかしら?」

 

「指定武具はガルドを打倒できる唯一のギフトですからね。もしかしたら、ガルド本人が守っている可能性も否定できません」

 

 ジンの言葉に、成る程と頷く女性陣。

 

「それなら危険だけどガルドのところに行く?」

 

「ふむ。このまま探し続けても埒が明かぬしのぅ………いっそのこと丸腰で虎と対峙するのもいいか」

 

「そうね。私達にはライムさんという頼りになるボディーガードがいるもの。それに賭けてみるのもいいかもしれないわ」

 

「ちょ、皆さん!?もっと慎重になった方が―――」

 

「頼りになる、か。くくく、ふっははははは!」

 

 急に笑い出すライムに、ジンは、え?と振り向く。

 ライムは胸に手を当てて言った。

 

「良かろう!頼りになるこの真祖の吸血鬼たる我が、姫を誑かした虎を見事に捩じ伏せてやろうではないか!」

 

 わっははははは!と高らかに笑うライム。相変わらず与し易い彼女を見て、飛鳥はしたり顔を見せた。

 耀はあざとい飛鳥に苦笑し、ジンは、ガルドはライムさんの姫君を誑かしてはないと思いますけど!?とツッコミを入れた。内心で。

 それから方針を変更した四人は、ライムの吸血鬼レーダー(?)を頼りにガルドの下へ向かった。向かう先は本拠の館。だが侵入を阻むように道を侵食している木々はまるで命じられたかのように絡み合っている。

 

「見て。館まで呑み込まれてるわよ」

 

〝フォレス・ガロ〟の本拠に着く。虎の紋様を施された扉は無残に取り払われ、窓ガラスは砕かれている。豪奢な外観は塗装もろともツタに蝕まれては剥ぎ取られていた。

 

「姫の力の気配は上からする。一階ではなく二階のようだな」

 

「姫の力って………吸血鬼化したガルドの気配のことだよね?」

 

「ん、そうとも言うな」

 

「………いえ。そうとも言うのは貴女の娘さんの力の方でしょう?」

 

「ぬ、そうだったな。済まぬ」

 

「あははは………」

 

 緊張感のないライムに、ジンは苦笑いした。

 館内に入ってみると、内装もやはり酷いものだった。贅を尽くして作らせた家具は打ち倒されて散在している。

 その様子を眺めてライムが呟く。

 

「姫とは別の吸血鬼は中々酷いことをするな。他者のコミュニティをこんなにして」

 

「そうね。彼は外道だけれど、これはちょっと可哀想に思えてくるわ」

 

「流石のガルドもご立腹?」

 

「……………」

 

 女性陣の言葉に、ジンは無言で歩を進める。代理はやはり彼女が務めているのだろうか。でも、どうして彼女がガルドに協力している………?

 彼女の意図が掴めないジン。そうしている間にも、ガルドのいる二階へと続く階段の前まで来ていた。

 

「さて、これから二階に上がるけど、皆、心の準備はできてるかしら?」

 

「「「(うん・うむ・はい)」」」

 

 飛鳥の最終確認に、口を揃えて是を示した。そのあとライムが先頭を代わり、根に阻まれた階段を物音立てずにゆっくり進む四人。

 階段を上った先にあった最後の扉の両脇に立って四人は機会を窺う。

 

「では、行くぞお主達」

 

 ライムの言葉に頷く三人。それを確認してライムは扉を開け、四人は一斉に跳び込んだ。

 

 

「―――よう。待ちくたびれてたぜ、名無し共」

 

 

 腕を胸元で組み、白銀の十字剣を背に守って仁王立ちしている、ピチピチタキシードの巨躯な男―――ガルド=ガスパーがいた。

 ………紅い瞳と白く長い牙を光らせて、獰猛に嗤いながら。




あれ?ガルドが虎の怪物になってない………?

これが原作と違う点です。

生来の吸血鬼であるレティシア。人型になるガルドのギフトを鬼種に変えてしまう。

元が人間だったライム。その姫君がガルドを吸血鬼化させると、人型になるガルドのギフトを鬼種に変えるわけではなく、人型の吸血鬼に変幻させるというもの。
ただし、人型のギフトを持つ者に起こる変幻であり、ただの獣を吸血鬼化させても、人型になることはない。

これは私の考えたオリジナルです。異論は認めませんよ?
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