問題児たちと最後の吸血鬼が異世界から来るそうですよ?   作:問題児愛

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今回で耀とライムの関係が………


十四話 想い想われの二人

「―――ん」

 

 目覚めた私は、見知らぬ天井を見た。え?なんで私は横になってるの?

 おかしい、と頭を手で押さえて思考を張り巡らせる。そして、思い出した。ガルドを打倒したあとすぐに、私は気を失ってしまったことを。

 ライムの眷属としての力を使ったことによる疲労なのだろう。確かに、魔眼を使う度に酷く体力が消耗していくような感覚に襲われた気がする。

 気絶したあと、どうやら私は誰かに〝ノーネーム〟の本拠とは別の場所に運ばれたようだった。

 ―――ッ!そうだ!ライムは!?ライムはどこにいるの!?

 

「………ッ」

 

 私はライムを捜すべく上体を起こして辺りを見回す。すると、私の隣で健やかな寝息を立てて眠っていたライムがいた。

 

「―――!ライム!」

 

 気持ち良さそうに眠るライムを見て、心の底から安堵する私。よかった………あの状態から回復できて本当によかった………!

 私はベッドから下りて、隣のベッドで眠っているライムに近づく。そして、頭を深々と下げて謝罪した。

 

「ごめんなさい、ライム!私が独断で動かなければ、貴女をこんな目に遭わせることはなかった………っ!」

 

 そう。私が勝手な行動を取らなければ、ライムは瀕死の重傷を負うことはなかった。私が、余計な真似をしたせいで………!

 

「でもね、ライム。私はね、貴女の負担を軽くしてあげたかったの!早めに指定武具を押さえさえすれば、すぐにでもガルドを打倒して貴女に楽させようと思ったの!」

 

 これは嘘じゃない。本当に私はライムを助けたくて、ライムの力になりたくて、指定武具を誰にも相談せずに独断で取りに行った。

 だけど結果はどう?余計にライムを苦しめて、剰え瀕死の状態にまで追い込んでしまった………!私のやっていることは最低最悪な行為だった。

 ライムを助けるどころか、逆に助けられるし。

 ライムの力になるどころか、逆に足を引っ張ってしまった。

 本当に、何やってるんだろう………私。

 俯く私の頭に、不意に誰かの手が乗って優しく撫でた。―――え?このひんやりとした手は………!?

 私はハッと顔を上げると、いつの間にか起きたライムが、優しげな表情を浮かべていた。

 

「―――!ライム!?もう起きて平気なの!?」

 

「ぬ?………うむ、我は吸血鬼にして真祖。そして不老不死であるからな。人間の回復力を遥かに超えておる」

 

「で、でもあれだけ血を流して―――」

 

「そうだな。だが失ったはずの血がどういうわけか戻っている。故に我はもう平気だ。心配をかけたのぅ、耀」

 

 笑って私の頭を撫でてくるライム。わ、笑い事じゃないんだよ!いくら不老不死の吸血鬼の貴女でも、血を大量に失えば動かなくなって死んでるのと同義なんだから………!―――って、

 

「え!?失ったはずの血が戻ったの!?」

 

「ああ。我に失った血を取り戻す術はないはずなのだがのぅ………まったく、何がどうなっておるのやら」

 

 ライムが困惑したような表情を見せる。失った血を取り戻す力はライムにはない?じゃあどうして?

 そこで私は、白夜叉戦のあとの話を思い返す。確か黒ウサギが増血を施せばどうのこうのと言っていたような………?

 ん?()()………?―――あっ!そういうことか!

 私は、何故ライムの血が元通りになったか理解する。そもそも戻ったわけじゃなく、黒ウサギがライムに増血を施して失った分の血を増やして補ったんだ!

 だとしたら私達をここに運んでくれたのも、黒ウサギの可能性が高い。謎を解明できてスッキリした。

 

「………耀?どうしたのだ?」

 

「え?………う、ううん!なんでもない!」

 

「ぬ?………ならいいのだが」

 

 私が、なんでもない、と言うと、ライムはこれ以上追及してこなかった。別に知られてまずいことではないけれど。

 それよりも、私はライムにちゃんと謝らないといけない………!私はライムに頭を深々と下げて、

 

「ごめんなさい!」

 

「………は?」

 

「私のせいでライムを酷い目に遭わせてしまって………!」

 

 心の底からライムに謝罪する私。すると、ライムは私が謝罪してくる意味を理解して、

 

「よい。耀があの虎を早く倒そうと動いたのは、我のことを想っての行動なのだろう?ならば我はお主に感謝こそするが、お主が我に謝るのはおかしいと思うぞ?」

 

「おかしくなんてない!結局私はライムを余計に苦しめた!貴女こそ私に感謝するのは間違ってる………!」

 

「いや、何も間違っておらぬ。耀は我を想って虎を倒そうとしてくれた。それだけで十分、我は嬉しいのだ」

 

「……………っ!?」

 

 嬉しそうに笑顔で言ってくるライム。ズルい。ズルいよ!そんな顔で言われたら、反論できないよ………!

 けれど笑顔から一転して、ライムが怒ったような顔をして、

 

「耀が我のために行動してくれたのは嬉しいのだが………次からはちゃんと言ってくれぬと困る」

 

「………ッ!う、うん。ごめ―――」

 

 私が謝罪の言葉を述べようとして―――ライムが急に起き上がって私を引き寄せ抱き締めた。………え?ライム?急にどうし―――

 

「じゃないと、我が耀を守り切れなくなってしまうではないか!」

 

「………え?」

 

「あの時だって間に合ったからいいものの、もし間に合わなくて耀が虎に殺されていたら我は―――()()()は、死ぬほど後悔していたんだから………っ!」

 

「………!?」

 

 ライムの口調が変わってる。この時の彼女は、自分を曝け出して本心を口にしている。悪巫山戯なんか欠片もない本心を。

 

「お願いだから、もうあんな真似はしないで!お願いだから、わたしを哀しませないで!」

 

「………うん、分かった。本当にごめんなさい」

 

「本当の本当に?」

 

「本当の本当」

 

「本当の本当の本当に?」

 

「本当の本当の本当」

 

「本当の―――いぎゃっ!?」

 

「しつこい」

 

 余りにも同じ質問を繰り返してくるから思わず叩いちゃった………ごめん。でも、

 

「本当に分かったから。もうライムを哀しませるような真似は絶対にしない。約束する」

 

「………!うん!約束!絶対だよ!―――破ったら許さないからね?耀()()()

 

「うん。………ん?耀ちゃんって私のこと?」

 

「―――――ハッ!?」

 

 私から離れて慌てて口元を押さえるライム。あ、口調変わってたことに気づいてなかったんだ。

 あわてふためくライムは、ん、ん、と口調を直すように喉を鳴らして、

 

「―――き、気のせいだ!我が耀にちゃん付けするわけなかろう!?」

 

「うん、そうだね………くすくす」

 

「な、何がおかしいのだ!?何が!?」

 

「なんでもないよ?………くすくす」

 

 私がクスクス笑うと、ぬぅ、と唸って剥れるライム。必死になってるライム、なんか可愛い。

 ばつが悪いのか、ライムが急に頭を掻き毟って、

 

「と、兎に角だ!次あんな真似をしたら、許さぬからな!」

 

「それさっき約束したけれど………うん。分かった」

 

「うむ。よろしい!」

 

 満足そうに笑うライム。それからすぐに小首を傾げて、

 

「ところで耀」

 

「何?」

 

「虎は結局誰が倒したのだ?気を失っていたから分からなんだが」

 

 ガルドは誰が倒したのかと質問してくる。それに私は自分の胸に手を当てて、

 

「私がガルドを打倒したよ」

 

「え?耀一人でなのか!?」

 

「何その驚きよう………うん、私が指定武具でガルドを打倒したよ。ライムのギフトを使って」

 

「は?」

 

 私の言葉を、目を丸くして驚愕するライム。なんだろう。ライムは純粋に驚いているだけだと思うけれど………凄く馬鹿にされた気分。

 そんな私の気を知らないライムは、何故か心配そうな表情で見つめてきて、

 

「我のギフト………?ま、まさか耀、お主、本当は吸血鬼化してしまっているのでは―――」

 

「ないよ。私は吸血鬼にはなってないから安心して」

 

「………!そ、そうか。ならよかった」

 

 安堵するライム。本当にライムは他人の心配ばかりするんだね。そんな他人ばっか気にかけてると、いつか損するよ。

 そう思いながらも、ライムに心配されて凄く嬉しい私だけれど。

 ライムは、ん?と再度小首を傾げて、

 

「吸血鬼になっておらぬのに、どうして耀は我のギフトを使えるのだ?」

 

「それを私に聞かれても………。―――!そうだ!」

 

 私は思い立ってポケットから自分のギフトカードを取り出して見てみる。そこには―――

 

 

 パールエメラルドのギフトカード

 春日部 耀

生命の目録(ゲノム・ツリー)

〝ノーフォーマー〟

〝真祖の眷属〟

 

 

 ―――と書かれていた。えっと………新たに追加されてる〝真祖の眷属〟ってギフトは、私がライムの眷属になったってことでいいんだよね?

 隣で一緒になって見ていたライムが驚きの表情で私に顔を向けて、

 

「耀!?お主、我の眷属化しておるぞ!?やっぱり、」

 

「吸血鬼化はしてない。でも、ギフトネームはライムのものになってる」

 

「―――ッ、よ、耀が………我の(もの)にだと!?」

 

「え?私がライムの………なんだって?」

 

「………っ!?い、いや!なんでもないぞ!?う、うむ!なんでもない!」

 

 大袈裟に手を振ってなんでもないと言うライム。………怪しい。ライムが私を見て〝もの〟と言った意味が、眷属ではない別の意味に聞こえた気がしたから。

 それはさておき、本当にどういうことなんだろう?吸血鬼化してないのに、ライムの眷属扱い………。別に嫌じゃないけれど………理解が追いつかない。

 

「ライム」

 

「ひゃい!?」

 

 ただ名前を呼んだだけなのに、ライムが変な声を上げた。やっぱり怪しい………けど、これはこれで面白いかも。

 

「私がライムの血を大量に浴びた時、体が熱を帯びた感覚に襲われたんだけど………何か関係ありそう?」

 

「………ぬ?う、うーむ、そうだのぅ………元々我は耀を眷属にするつもりなどなかったからな。だから我が血を耀に与えてなかったから昨日の夜は何も起こらなかったのだろうな」

 

「………つまり、ライムの血を私が浴びちゃったから、眷属化が成立しちゃったってことなの?」

 

「あ、ああ。そう考えていいだろうな」

 

 首肯するライムだが、その表情は申し訳なさそうだった。そしてその顔のまま私に頭を下げて、

 

「済まぬ耀!我のせいで、お主を………っ!」

 

「だから、吸血鬼化はしてないから」

 

「ああ、だけど我の眷属化はしてしまったのだろう!?どのみち吸血鬼化させたのと何も変わらないではないか………ッ!」

 

「……………」

 

 そっか。ライムはそのことで責任を感じちゃってるんだね。そんなの―――

 

「構わない」

 

「………え?」

 

「構わない、って言った。私はあの時、覚悟できていたもの。ライムに血を吸わせる時に、自分は吸血鬼になっても構わないって。だから、貴女の眷属化だって、私は受け入れる」

 

「よ、耀!?そう言ってくれて我はとても嬉しい。嬉しいのだが―――本当にいいのか? 耀は、我の眷属になっても」

 

「うん」

 

 私は即答する。するとライムが一瞬嬉しそうに笑って―――すぐに儚げな表情に変えて、言った。

 

「―――我を殺せば眷属化が解けると教えてもか?」

 

「―――っ!!?」

 

 ライムの言葉に、私は絶句した。今ライムはなんて言った………?ライムを殺せば眷属化が解ける………!?

 

「―――………いで」

 

「ぬ?」

 

「巫山戯ないで………ッ!!」

 

「な、巫山戯てなど」

 

「巫山戯てるよ!眷属化は自分を殺せば解ける………?それを言われて私が実行すると思ってるの!?」

 

「―――っ、それは、」

 

「実行するはずがない!だって私はライムの眷属で―――ううん、違う。ライムの眷属の()()()いたいの!だから、貴女を殺す選択肢なんて、私にはありえないッ!!!」

 

 断言する私。ライムは驚愕したまま固まり、数瞬あとに口を開いて、

 

「………どうして耀はそこまで我を想ってくれるのだ?我とお主の間柄は()()()()()なのだろう?」

 

 ライムにただの友達と言われて、私はムッときた。………まただ。この感覚は、ライムがガルドに殺されかけた時もムッと―――ああ違う。それ以上に苛ついたんだっけ。

 ライムがガルドに致命傷を負わされた時も。

 ライムがガルドの攻撃を受けて気絶して動かなくなった時も。

 私は―――胸が酷く苦しくなった。痛くなった。ああそうか。私がライムに向けていた好意は、動物としてでも、友達としてでもなかったんだ。

 この気持ちはきっとこういうものなんだ。―――恋なんだと。

 

「違うよ。私はライムをただの友達としては見れない」

 

「え?」

 

「だって私は―――貴女のことが()()だから」

 

「………え?好、き?耀が、我を………?」

 

「うん。好き。好き好き大好き。私は貴女を―――()()()()()

 

「―――――ッ!!?」

 

 私の愛の告白に、ライムが唖然として見つめている。そうだよね。いきなりこんなことを言われても困るよね。

 それに同性の私に告られても嬉しいはずな―――

 

「―――我も、耀のことが好きだ」

 

「え?」

 

「大好き、愛してるぞ」

 

「ええ!?」

 

「故に我の―――妻になってくれ」

 

「ぶふ―――っ!?」

 

 ライムのとんでもない発言を聞いて、盛大に噴き出す私。両想いだったことには嬉しい。とても嬉しい。

 でも―――つ、つつつ妻になってくれ、はいきなりハードル高過ぎるよライムゥウウウウウ!!?

 

「……………っ!」

 

「………?どうしたのだ耀?我が妻になってくれぬのか?我と耀は両想いなのだろう?」

 

 ずいっと顔を私の顔に近づけてくるライム。ち、近い!近すぎるよライム………っ!

 

「―――ああ、そうか。耀は妻ではなく夫のポジションがよいのだな」

 

「なんでそうなるの!?」

 

「ぬ?違うのか?」

 

「違うよ!わ、私が言いたいのは!付き合ってすらないのにいきなり妻になれなんて言われても困るの………っ!」

 

 あと顔近すぎるからちょっと離れてほしいんだけど………!

 私の想いが通じたのか、ライムは近づけていた顔を離して、ふむ、と考え込む。

 

「耀の言葉も一理あるな。うむ、ではそうしよう」

 

 そう言ってライムは私に手を差し出してきて、

 

「我は耀が好きだ。大好きだ。愛してる。だから―――我と付き合ってくれぬか?」

 

 あ、改めて面と向かって言われると、凄く、物凄く恥ずかしいな………っ!

 けれど、答えは勿論一つしかない!

 

「私でよければ喜んで。ライム」

 

 私は笑顔で了承して、ライムの手を取―――って、そのまま引き寄せられ抱き締められた。え?

 

「ラ、ライム!?」

 

「ん?なんだ、我が未来の妻よ」

 

「なんだ、じゃなくっていきなり抱き締めるのは禁止!―――って未来の妻!?そんなのはやだ!ちゃんと名前で呼んで?」

 

「ぬ?あ、ああ、済まぬな。嬉しくてついのぅ。………うむ、分かったのだ耀」

 

「………もう!仕方がない子だね、ライムは」

 

 照れ臭そうに頬を掻くライム。そんなライムに怒ってみせる私。内心ではとても喜んでいるのは内緒。

 それから私とライムは見つめ合い、

 

「愛してるぞ、耀」

 

「………っ、わ、私もだよライ―――むぐぅ!?」

 

 一瞬、何をされたのか私は理解できなかった。けれど、口呼吸ができなくなって唇に柔らかくて冷たい感触を味わったことでようやく―――キスされていることに気がつく私。

 

「~~~~~~~~~~ッ!!!?」

 

 私は嬉しさと恥ずかしさで死にそうになって―――ぼんっ!と頭から煙が出る。

 ………け、経験者は手が早いんだね………い、いきなりキスしてくるなんて思わなかったよ………

 そして私はそのまま気を失うのだった。




すみません、今回はラブコメ回になってしまいました。

耀はライムの事が好きだと自覚。
ライムも昨夜から耀の事が好きになった。
そして二人は付き合い始める。

次回はもう一人のヒロイン、レティシアと接触ですね。
ぶっ飛んだ設定の伏線が出現する可能性ありの次回ですが、どうか温かい目で見守ってください。それだけが作者の望みです。
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