問題児たちと最後の吸血鬼が異世界から来るそうですよ?   作:問題児愛

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正月休みだからたくさん書ける………と思っていたら逆に全然進みませんでしたすみません。


幕間Ⅱ 仲間割れと確認

 ―――〝ノーネーム〟・居住区画、本拠の最上階・大広間。

 十六夜が既にいる耀とライムを除いて、飛鳥・黒ウサギ・ジンを呼び出して重大発表をした。

 

「俺達は一週間後、〝ペルセウス〟と決闘することが決まった」

 

「「「―――………は?」」」

 

「HA?じゃねえよ。これは決定事項だ。嘘でも夢でもない、紛れもない事実だ」

 

「「「………!」」」

 

 パアッと表情を明るくする三人。これで勝てばレティシアを取り戻せる。

 飛鳥が興奮気味に十六夜に訊いた。

 

「十六夜君!どうやってあの外道を説得したの!?」

 

「ああ、説得ではないがな。奴の欲しい人材を―――チップにした」

 

「「「………え?」」」

 

 十六夜の言葉に一瞬固まる飛鳥達三人。聞き間違えであって欲しいと願った。

 

「………ごめんなさい十六夜君。今なんて?」

 

「奴の欲しい人材をチップにしたと言った。詳細を言うと、黒ウサギと真祖ロリをな」

 

「「「なっ!?」」」

 

 愕然とした。だって十六夜は、決闘の為に仲間をチップとして賭けてきたのだ言ったのだから。

 これには飛鳥が激怒した。

 

「なんてことしてくれたのよ十六夜君ッ!黒ウサギだけでなくライムさんも巻き込んでますます悪化してるじゃない!」

 

「悪化とは人聞き悪いなお嬢様。このまま黒ウサギが〝ペルセウス〟に行くよりいいだろ?勝てばレティシアも手に入るわけなんだし」

 

「も、もし負けたらどうするのよ!?一度に二人も友人を失うなんて嫌よっ!」

 

「馬鹿言え。負けを見越して決闘に望むんじゃねえよ。絶対勝つ、って意気込みで望め。弱気は捨てろお嬢様」

 

「………ッ」

 

 あまりにも冷たい十六夜に、飛鳥は絶句した。確かに勝てばいいだけの話ではある。けれど、絶対なんて勝利が私達にあり得るの?

 飛鳥は、まず黒ウサギに視線を向けて訊いた。

 

「黒ウサギ、貴女はいいの!?十六夜君に勝手にチップにされて!」

 

「………構いません。それでレティシア様を取り戻せる可能性があるのなら、黒ウサギはチップにされても文句はありません」

 

「―――ッ!?」

 

 黒ウサギは、レティシア様を取り戻せるなら、と自己犠牲にすら走った者だ。今更訊いたところで無駄なのだ。

 飛鳥は黒ウサギを睨んだあと、ライムに視線を向けて訊いた。

 

「ライムさんは、黒ウサギみたいな馬鹿なことは言わないで反対してくれるわよね!?」

 

「………済まぬな飛鳥。我も同類を取り戻したいのだ。そのためなら我はどんな条件だろうと飲む。それが仮令チップにされようともな」

 

「なっ!?う、嘘でしょう!?嘘だって言ってよライムさん………!!」

 

「……………済まぬ」

 

「―――――っ!?」

 

 ライムまで十六夜の提案に賛同するなんて思いもしなかった。友人二人がチップにされることを拒否せず受け入れる姿勢で私は泣きそうになる。

 そこで追い打ちをかけるように耀が飛鳥に言った。

 

「いい加減にしてよ飛鳥。黒ウサギも………ライムも、覚悟を決めてチップになることを選んだの。だからそれを否定しないで分かってあげて」

 

「―――――ッ!!?」

 

 まさかの耀まで十六夜の提案に賛同し、友人二人を止めるどころか飛鳥を諭そうとしている。そんな………こんなことって………あんまりじゃないっ!

 

「……………っ!」

 

「飛鳥さん!?」

 

 飛鳥は堪え切れず瞳から大粒の涙を零れさせると、ジンの声を無視して大広間から飛び出していった。

 ジンはキッと十六夜と耀を交互に睨んで怒鳴った。

 

「二人共一体どうしたんですか!?仲間をチップに賭けてもいいなんて、とても正気とは思えません!」

 

「「……………」」

 

 次にジンは黒ウサギとライムを交互に睨んで、

 

「黒ウサギとライムさんもそうです!確実に勝てる保証なんてどこにもないんですよ!?その意味が分かってるんですかっ!!」

 

「「……………」」

 

 しかし誰も答えない。沈黙が場を支配していく。ジンは一瞬言葉を詰まらせるが、キッと四人を睨みつけて叫んだ。

 

「飛鳥さんだけじゃない!僕だってチップの件は反対ですからね!?もう一度〝ペルセウス〟に―――」

 

「だ、駄目ですジン坊っちゃん!せっかく掴んだチャンスを棒に振るつもりですか!?」

 

「なっ………!?」

 

 黒ウサギの言葉に絶句するジン。そしてライム達三人も、沈黙で肯定を示す。

 ギリッと歯を鳴らしたジンは今日一番の怒鳴り声で四人に言った。

 

「もういいです、もう勝手にしてくださいッ!!ですがこれで敗北したら、僕はあなた達を絶対に許さないッ!!それだけは覚えておいてくださいッ!!!」

 

「「「「……………」」」」

 

 尚も沈黙する四人。これにはジンも怒りを通り越して呆れ、大広間を飛び出していった。

 その場に残った四人は暫く口を開かないでいたが、十六夜が、さて、と言って三人を見回し、

 

「ちょっくら箱庭で遊んでくる」

 

「え?十六夜さん!?」

 

 黒ウサギの声も聞かずに大広間を出ていった。取り残された三人は、それ以上言葉を紡ぐことはできなかった。

 

 

 ―――それから三日後。

 場所は箱庭第五桁・二六七四五外門。〝サウザンドアイズ〟第八八本拠。

 二六七四五外門は一階層上に住む〝階層支配者(フロアマスター)〟である白夜叉が任されている外門である。

 その足元には同じ〝サウザンドアイズ〟の傘下である〝ペルセウス〟の本拠がある。しかし、〝ペルセウス〟の本拠である白亜の宮殿を飾る旗印は、白い布地の〝ゴーゴンの首〟一本だけだ。紅い生地に向かい合う双女神の紋をあしらった旗印は掲げられていない。

 黒ウサギ達の一件や他の不祥事を白夜叉が告発し、〝ペルセウス〟は無期限で〝サウザンドアイズ〟の旗印を仕舞うように命じられたのだ。

 白亜の宮殿の最上階にあるテラスには、四人の影があった。

 二つは、この白亜の宮殿に住む者達―――ルイオスとその側近の男だ。

 もう二つは、白亜の宮殿に招かれた客人もとい取引相手のコミュニティ〝ロザリオ〟の者達―――修道女と〝姫〟だ。

 箱庭第六桁・六三六〇〇〇外門に本拠を構える彼女達が北側からこちらへ足を運んできたのは、例の真祖の取引の状況を確認するためである。

 長身の修道女は、傍に銀製の枷を両手両足に付けられている黒ローブを纏った幼い少女・通称〝姫〟を置いて話を切り出す。

 

「それで、真祖は手に入れられそう?」

 

「うん。〝名無し〟の馬鹿が出した提案のお陰で楽に手に入りそうだよ」

 

「あら?それはいいことを聞いたわ。そのお馬鹿さんにもお礼を言いたいわね」

 

 ルイオスからいい返事が聞けて上機嫌の修道女。対照的に〝姫〟の表情がローブの下で曇っていた。

 それに気づいた修道女は、クスクスと笑って〝姫〟の顎を持ち上げた。

 

「どうしてそんな顔をするの姫?もうすぐ貴女の大好きな()()()と再会できるというのに」

 

「………っ!」

 

 そんな修道女を、キッと睨み返す〝姫〟。すると、その会話を聞いていたルイオスと側近がキョトンと〝姫〟を見つめて、

 

「え、何?その子、あの真祖の娘なの?」

 

「ええ、そうよ。くすくす、丁度いいからルイオスさん達に自己紹介なさい姫」

 

 修道女は〝銀の弾丸〟が装填されている拳銃の口を〝姫〟の頭に押し付けながら命令口調で言う。逆らえば撃ち殺す、と言わんばかりの殺気を放ちながら。

 ビクッ、と怯えた〝姫〟は、黒いフードを恐る恐る取り払って、金髪と涙で濡れた紅い瞳の童顔を露にしてからルイオス達に自己紹介を始めた。

 

「わ、わたしは、お母様の………真祖の娘の、ア、アイ、アイリス=ペルセーイスです………!ど、どうか、お母様を………苛め、ないで、ください……………っ!!」

 

 緊張と恐怖で途切れ途切れの弱々しい声音で言う〝姫〟―――改めアイリス。

 よくできました、という風に笑う修道女は突きつけていた拳銃を仕舞った。

 ルイオスと側近は顔を見合わせたあと、ルイオスが、へえ、と厭らしい笑みを浮かべてアイリスの全身を見つめた。

 

「君、中々可愛いね!小柄な割に、君の真祖(母親)と遜色ない胸を持ってるとか最高じゃん!あの吸血鬼もこれくらいあれば売らずに遊んでやるのになあ」

 

「ふえっ!?」

 

 ルイオスの発言に素っ頓狂な声を上げるアイリス。修道女もポカンと口を開けて呆け、側近は痛い頭を抱えた。

 ニヤニヤと笑うルイオスが怖くなったのか、アイリスは逃げるように修道女の背後に隠れた。

 

「あれ?もしかして僕のこと嫌いになっちゃった?」

 

「ルイオス様がいきなりその様な発言をなさるからです」

 

 ルイオス()にツッコミを入れる側近。修道女は自分の後ろに隠れて怯えているアイリスを一瞥したあと、苦笑いを浮かべて言った。

 

「ルイオスさんってそういうのがお好きな方なのね」

 

「え?あ、うん。まあね」

 

 へらっと笑うルイオスに、そう、とまた苦笑いを浮かべる修道女。側近はルイオスに聞こえないくらい小さな溜め息をつく。

 修道女は、ふといい案を思いついたのか、ニヤリと笑ってルイオスに言った。

 

「そんなに姫が気に入ったのなら、少しくらいなら遊んでもいいわよ?」

 

「………ぇ?」

 

「うわお!マジでいいの!?できれば母娘(おやこ)丼だと嬉しいなあ」

 

「―――――っ!?」

 

 ルイオスの言葉に顔面を蒼白させるアイリス。それを見た修道女は、クスクスと笑って頷いた。

 

「ええ、構わないわよ。でもそれだと真祖を手に入れたあとになるけれど………いいのかしら?」

 

「僕は別に構わないよ。相手は〝名無し〟だし手に入ったも同然だからね。遅かれ早かれ僕のモノになるわけだし」

 

「そう。なら決まりね。ルイオスさんが真祖を手に入れたあとで、母娘共々たっぷりと可愛がるといいわ」

 

「あれ?少しじゃなかったの?」

 

「気が変わったのよ。姫の青ざめた表情を見て、ね?」

 

 ニヤァと邪悪に笑ってアイリスを見る修道女。それを見たアイリスは睨み返して彼女を操―――ズガァン!

 

「あぅ………っ!?」

 

 ―――ろうとしたが、その前に修道女の拳銃から放たれた〝銀の弾丸〟がアイリスの左脚を、正確には大腿部を撃ち抜いた。

 左脚を襲った焼けるような痛みに堪らず苦悶の声を上げて崩れ落ちるアイリス。

 何事かとルイオスと側近が瞳を見開いて修道女とアイリスを見比べる。修道女は拳銃を仕舞って訳を説明した。

 

「驚かせてしまってごめんなさいね。姫が私に〝魔眼〟を使って【催眠術】をかけようとしてきたから、それを阻止するために引き金を引いたのよ」

 

「〝魔眼〟………マジック・アイ!?〝箱庭の騎士〟にはできないとされる、真祖特有の異能ですか!?」

 

 アイリスを見て驚愕の声を上げる側近。〝魔眼〟―――通称【魔法の瞳(マジック・アイ)】とは、高位吸血鬼、それも真祖達にしか使えない(稀に真祖の眷属の中でも特殊異能として使える者も存在する)異能である。

 現状では、〝箱庭の騎士〟が〝魔眼〟を使った経歴がないため、真祖のみの異能とされているそうだ。

 その能力は、〝目があったものを操る〟〝目があったものに呪いをかける〟〝見たものを自在に動かす〟など【視る】ことで対象に様々な影響を与えられる。

 対処法は、〝瞳を視ない〟〝視界に入らない〟が最もいい方法だが、修道女のように術者に致命傷を負わすことでも、〝魔眼〟の発動を阻止できるのだ。

 

「うふふ、そうよ。ルイオスさんは兎も角、貴方なら姫に意のまま操られてしまうと思うから気をつけた方がいいわね」

 

「―――ッ」

 

 ルイオスにはアイリスの〝魔眼〟は通用しないが、彼の部下達はそうもいかないらしい。真祖のギフトは、それだけ強力なのだ。

 それを聞いたルイオスは、へえ、と面白そうに笑い、アイリスを見つめて言った。

 

「じゃあ君、僕に催眠術をかけてみてよ」

 

「「は?」」

 

「え?」

 

 ルイオスの提案に、間の抜けた声を洩らす三人。すぐさま側近がルイオスを止めた。

 

「いけませんルイオス様!もし彼女の言葉が嘘だったら―――」

 

「五月蝿いよお前。ちょっと黙ってくれない?」

 

「し、しかし!」

 

「黙れ、って言ってんだよ。僕の命令が聞けないの無能」

 

 ぐっ、と黙り込む側近。だがルイオスが心配でならない。万が一、彼の身に何かあったらと思うと気持ちが落ち着かない。

 心配そうに見つめてくる側近を、ルイオスは、チッと舌打ちして無視し、左脚を押さえて苦しそうな顔をするアイリスに歩み寄るとしゃがんでもう一度訊いた。

 

「それで君。僕に〝魔眼〟で催眠術をかけてみてよ。大丈夫、怒ったりしないからさ」

 

「………本当に、ですか?」

 

「うん、本当だよ」

 

「本当の本当にですか?」

 

「本当の本当だよ」

 

「本当の本当の本当にですか?」

 

「本当の本当の本当だよ」

 

 即答で返していくルイオスを、アイリスは暫く疑わしい目で見ていたが、分かりました、と答えると、彼の瞳を見つめて、

 

「魔眼発動―――〝催眠術(ハイプノシス)〟」

 

「―――ッ!?」

 

〝魔眼〟による支配を開始した。ルイオスは、アイリスの怪しく光る紅い瞳に見惚れたのか、ピタリと動きを止めた。

 

「ルイオス様!?」

 

「あら?」

 

 しゃがんだまま身動き一つもしないルイオスに、焦る側近と、首を傾げる修道女。術をかけたアイリスも驚いた表情を見せている。

 が、次の瞬間にはルイオスが動きを見せて―――アイリスの両胸を鷲掴んだ。

 

「へ?―――んっ!」

 

 そしてゆっくりと一揉み二揉みしだした。いきなりのことで変な声を洩らすアイリス。頬もみるみるうちに朱に染まっていく。

 側近があんぐりと口を開けて固まり、修道女も目を丸くしてその光景を見る。

 ルイオスは嬉々としてアイリスの胸を揉みながら、

 

「やるね君。少しの間だけど動けなかったよ。〝名無し〟のあの女よりも支配は強力だ」

 

「そ、それは………あ、ありがとう、ご、ございます………ふぅっ!」

 

「それにしても君の胸は中々いい揉み心地だね。ねえよかったらうちに来ない?吸血鬼に恨みを持つ〝ロザリオ〟なんかにいるよりもよっぽどいいと思うぜ?」

 

「え?で、でも貴方は………わたしの、お母様を、売るつもり、だったんじゃ―――って、あぅっ!も、もぅ、いい加減、揉まないで、くださぃ―――っ!!」

 

 我慢の限界だったらしく、アイリスは涙目でルイオスを睨みつけると、彼の顔面に自分の頭を思い切り叩きつけた。

 

「ガッ………!」

 

 ルイオスはアイリスのヘッドバット(というか頭突き)を食らって後方に吹き飛んでいく。

 

「ルイオス様!?」

 

 自業自得だとは思っている側近だが、それでもルイオスに心配そうに駆け寄る。

 ルイオスは鼻を押さえながらゆっくりと起き上がる。鼻から血を流しながら。変態的ではなく肉体的ダメージによるもので。

 

「ははは、そう照れなくてもいいよ」

 

「て、照れてませんっ!」

 

「え?だって僕に〝私の胸を揉みしだいてください!〟って暗示をかけてきたじゃないか」

 

「そ、そんな暗示はかけてませんっ!わたしがかけたのは〝動かないでください!〟です!」

 

 胸を隠しながら怒るアイリス。それにケラケラと笑うルイオス。

 心配して損した、と頭を抱えて深い溜め息をつく側近。修道女は苦笑を浮かべていたが、次の瞬間には殺意に変わり、

 

「駄目よルイオスさん。遊ぶ分は許すけれど、真祖はどちらも売るつもりはないわ。幾らお金を積もうと、ね?」

 

「そっか。それは非常に残念だなあ。ま、僕との約束を守ってくれるんなら、今回は諦めるよ」

 

 黒ウサギの方が断然好みだしね、とは口に出さずに内心に止めておくルイオス。

 ルイオスの言葉に、修道女は殺気を消して笑みを浮かべた。それからスッと瞳を細めてルイオスを見つめて話を切り出した。

 

「真祖のいる〝ノーネーム〟と戦うなら、真祖対策に姫の眷属になってみないかしらルイオスさん」

 

「―――っ!?」

 

「え?その子の眷属に、僕がかい?」

 

「ええ。真祖を倒すには姫の力は必要不可欠なのよ。だから貴方は姫の眷属に」

 

「ああ、その必要はないよ。だって今回の決闘に真祖は参加しちゃいけないルールなんだし」

 

「あら、そうなの?」

 

 ルイオスの言葉に驚く修道女。ガルドの時とは違ってライムに参加権がないのは予想外だったらしい。

 だが、本当に彼の思惑通りに事が進むとは思えないのか、修道女は、クスクスと笑って首を振った。

 

「油断しない方がいいわよルイオスさん。〝ノーネーム〟が一週間何も準備なしで貴方達に挑んでくるとは思えないもの」

 

「………ふうん?〝名無し〟風情が何をしようとも僕に勝てないと思うけどね。でも、そうだなあ………その子から力をもらっておくのも悪くないか」

 

「「!?」」

 

「うふふ、なら決まりね」

 

「―――でも、僕はその子の眷属になるつもりはないかな」

 

「「「は?」」」

 

 ルイオスの言葉に、間の抜けた声を洩らす三人。だってアイリスから力をもらう提案には賛同したというのに、自分はいらないという。

 ………この時、側近は嫌な予感を覚えて背中に冷や汗が流れた。側近の予感が的中したように、ルイオスが彼を見て告げた。

 

「その子の眷属になるのは―――そいつだから」

 

「「なっ!?」」

 

「あら?そういうことね」

 

 驚愕な声を上げる側近とアイリス。対照的に納得したように落ち着いた声を発する修道女。

 側近はすぐさま抗議の声を―――

 

「ルイオス様!?私は、」

 

「お前の意見なんか僕は聞かないよ?つかお前はさ、ギフトなしじゃ無能の役立たずなんだし、吸血鬼になれば誰よりも僕の役に立てると思うぜ?」

 

「―――っ!」

 

 確かにルイオスの言う通りだ。この箱庭において、ギフトは欠かせないもの。いくら身体能力を限界まで鍛えようとも、結局はギフトに負けてしまうのだから。

 アイリスの眷属となって吸血鬼のギフトを手に入れれば、身体能力もそうだが真祖の強力なギフトも手に入れられる。レプリカに頼る生活もなくなるかもしれない。

 なにより、ルイオスに必要とされる存在になれるかもしれないのだ。側近という立ち位置も、他と交代にされる可能性がなくなる。だって他のルイオスの部下達よりも最強になれるのだから。

 側近は、暫しの逡巡のあと、覚悟を決めて重々しく頷いた。

 

「………分かりました。ルイオス様の側近であるこの私めが、真祖の姫君の眷属となり、必ずやお役に立てる人間になりましょう」

 

「うん、そうこないとね。()()()()()()

 

「………!はっ!」

 

 嘘でもルイオスから期待の言葉が聞けて、ついつい嬉しくなる側近。扱いやすくて助かるな、とルイオスはほくそ笑む。

 しかし、肝心のアイリスは強く首を横に振って拒絶した。

 

「い、嫌ですっ!もう、わたしの力で、お母様を傷つけたくありません………っ!!」

 

「あらあら、姫に拒否権があると思ってるのかしら?」

 

「………っ!な、ないけど………お願いですリーナ様っ!お母様を傷つけるくらいならわたしは―――」

 

「その名で私を気安く呼ぶなヴァンパイアッ!!!」

 

「―――――っ!!?」

 

 物凄い剣幕で激怒する修道女―――改めリーナ。ひっ、と声を上擦らせて固まるアイリス。

 不快そうな表情でリーナはアイリスを見下しながら、

 

「汚らわしい!ヴァンパイア風情が私の愛する父様につけてもらった愛称を口にするんじゃないわよ………ッ!」

 

「………っ、ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい………っ!」

 

 泣きながら謝るアイリスを、リーナは憎悪の籠った瞳で見下ろすが、すぐにいつもの瞳に戻ってルイオスと側近に謝罪した。

 

「ごめんなさいね、取り乱してしまって。ルイオスさんなら私をリーナと呼んでも構わないわ」

 

「え?あ、うん。次回からそう呼ばせてもらうよ」

 

「ルイオスさんの側近の貴方は駄目よ。姫の眷属になるのだからね」

 

「………左様ですか」

 

 側近は別にリーナを名前で呼ぼうとは思っていなかったから、正直どうでもよかった。

 リーナは、クスクスと笑ってアイリスの頭に取り出した拳銃の口を押し当てた。

 

「さあ姫。頭を吹っ飛ばされたくなかったら、そこの彼に力を与えなさい」

 

「……………っ」

 

 アイリスは逡巡するが、側近の彼は拒絶の意思はない。それに生きていればいつかライムに再会できると思うと、従わずにはいられなかった。

 アイリスは、側近に歩み寄ると、彼は抵抗せずに首を晒す。それを確認した彼女は、ゆっくりと彼の首筋に顔を近づけていき―――カプッ、と噛みついて血を啜り始めた。

 

「―――――ッ!!?」

 

 側近の全身を熱い何かが巡っていき、やがて糸が切れた人形のように彼は倒れた。

 その様子を見て笑うルイオスとリーナ。ただ一人だけ、アイリスだけは側近とライムに向けて、ごめんなさい、と謝罪の言葉を呟くのだった。




十六夜失踪?いいえ、原作通りにアレを取りに行きました。

側近、魔強化しました。特殊異能は本編にて。
次回、決闘に入れるか微妙です。バトルはその次になるかもです。
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