それが、裏社会組織の願いから生まれた神の神器になってしまうとは...
※現在執筆途中
雨の降るなか、教会に機動隊が突入していた。黒いコートの男と残った仲間は、警察と安全保障局の連中から走って逃げている。
コートの男は雨に濡れて視界を水滴だらけにする眼鏡を外して懐から拳銃を抜いた。立ち止まって振り向き、追っ手に拳銃を向けると撃鉄を起こして発砲した。仲間も振り向くと、手に持つロシア製小銃を発砲しながら後退し、追っ手の動きが止まるのを確認したコートの男は歩いて仲間の後に続いた。
「中国の支部に連絡をとれ」
コートの男が指示を出すと、仲間がスマホを出して通信をとる。
「アメリカ支部のほうがいいのでは?」
「既にCIAに情報が知れてる。法的に裁ける証拠が見つかればあそこは終わりだ」
仲間の言葉に反論した。
今教会の裏の森を抜けた。道路が現れ黒のSUVが待っている。そこへ皆進むが、突然警察のヘリがSUVにサーチライトを照らした。コートの男らは足を止め、仲間の1人がヘリに小銃を発砲する。サーチライトが壊されたが、既に降りてきていた機動隊のうち数名は着地してSUVとコートの男らに短機関銃で威嚇射撃をした。
「散れ! 散れ!」
コートの男の指示に従って皆広がりながら小銃を撃つ。
すると、さっきの追っ手らも森から現れた。コートの男はすぐさま走り出すと、住宅街の家に柵から侵入、家々の柵を飛び越えながら民家の敷地内を移動した。後からやけに身体能力に自身のある私服の警官か政府の人間かが追ってくる。コートの男は拳銃を発砲し、私服の男は屈んで回避するとコートの男の弾が切れた。懐から予備弾倉を取ると拳銃に装填し、また逃げる。逃げながら片耳のイヤホンのスイッチを入れると、どこかと交信した。
「都網(ツアミ)、俺が7丁目を抜けたら追っ手が射界に入る」
『了解』
そう言うと、目の先に見えるビルを目指して民家の柵から道路に出た。
コートの男はその場で立ち止まり、振り向いた。身体能力の高い私服の男は道路に出ると、拳銃を抜いてコートの男に向ける。コートの男は手に持つ拳銃をおろしたままだった。
「無駄な足掻きはよすんだ」
私服の男が言った。
すると、私服の男はどこからか飛んできた弾を頭に受けて倒れた。
「見事」
『うん』
コートの男は交信先の狙撃手にそう言って歩き出すが、近づくサイレンを聞いて走り出す。が、遅かった。
さっきの追っ手は1人だけだという考えが甘かった。コートの男は背後から背中に2発弾を受けて倒れた。男を撃った追っ手はすぐに狙撃される。
ちょうどパトカーや機動隊のトラックが着き、警察らが銃を構えながら倒れるコートの男に近づいた。
「今西圭(イマニシケイ)、お前は包囲された!」
包囲された以前に撃たれましたよ。コートの男はそう呟くと、肺に溜まった血を吐く。
「まだ...死ぬわけには...」
『大丈夫? どうすんの』
「...都網は逃げろ」
『...了解』
狙撃手と最後の言葉を交わすと、スーツの男がコートの男の前に立った。コートの男はそいつを見上げる。
「やあ今西くん」
「...やあ、坂本さん」
「今救急車が来るから、安心しろ」
坂本さんはそう言ったが、コートの男は咳き込みながら笑った。そして口を開く。
「...もう遅い......じゃあね」
そう言い残すと、コートの男は拳銃を自分の頭に突きつけて発砲した。
その事件から数週間...
慶和(ヨシカズ)は高校帰りにタイムラインで、数週間前に鎮圧した組織の狙撃手が昨日射殺されたことを知った。最近物騒になりつつある世の中に対し、特に感想はない。とある国から核弾頭向けられても対して反応の薄い国の人間としてはこれが一般的なのが現状。
「もうすぐ受験生だ」
慶和の呟きに友人の一翔(カズト)が眉間にしわを寄せて嫌な顔をする。
「あーそういうこと言わないでよ」
「一翔どこに進学すんの?」
「俺就職だし」
一翔はスマホをいじりながら嫌な顔を戻さない。
2人は大通り沿いのコンビニの駐車場の柵に腰かけていた。都会に近い割に交通量は比較的少なく、人もあまりいない。
「そんなじゃ就職もできないよ」
「そういうこと言うなよ」
「せいぜい神に祈ってな」
慶和も自分のスマホに目をやる。
"都網侑真容疑者射殺"がまだ表示されていた。タイムラインを閉じると、一翔を見る。
「一翔って宗教あったっけ」
なんとなく思ったことを聞く。
「うーん、一応家計は日蓮宗だけど、俺は神なんて信じてないし勤行なんかに無駄な時間と労力を使ったりはしない」
「ふーん」
「慶和は?」
「ないよ」
そんなことを言いながらツイッターを眺める。そこに気になるツイートがあった。
"神は人々の願いから生まれる"
慶和はスマホをスリープにすると、制服のブレザーの裏ポケットにしまう。
「慶和くんはどこに進学するの?」
一翔から進路の話を持ちかけられることはめったになく、慶和は一翔を見る。
「調理系の専門学校に行こうと思ってる」
「へー、がんばれ」
「うん」
こんな会話が人生最後の会話となるとは、もちろん慶和は思っていなかった。
慶和と一翔はこの駐車場で別れると、お互いの家に向かって歩いていった。慶和がある交差点を渡るとき、悲劇は起きた。
ちゃんと青信号を渡った。だから車も止まっていた。すると、中年のサラリーマンが慶和を後ろから追い抜いたかと思いきや1台の車に近づき車をボコボコに殴り始めた。運転手は車を降りると真っ直ぐサラリーマンに向かって手に持っていた空き缶を投げて殴りかかる。
慶和はそれを見ながら横断歩道を横断しきった。スマホを裏ポケットから取り出し、その様子を動画におさめる。すると、サラリーマンはカッターナイフを出してなんと運転手に切りかかった。慶和は撮影をやめてすぐにサラリーマンの方へ走り、蹴飛ばした。サラリーマンは倒れるがすぐに立ちあがり、慶和の制服のネクタイを掴むと首にカッターを突きつけた。
「んだとクソガキ! あぁ!」
「な、なにも言ってませんよ」
「っせぇんだよ!」
その言葉を最後に耳にすると、慶和の首から赤い液体が漏れだした。
サラリーマンはカッターを握ったまま逃げ出した。
慶和は呆然と立ち尽くす。足元には自分が倒れていた。どうなってるのかよくわからないまま自分の体がないことに気づき、そう思う間もなく、意識を残して記憶が消えた。
いつの間に、慶和だった意識は妖怪を見ていた。というより狙っていた。どうやらAR-15系小銃のレイルに乗っかってるようだ。赤く表示される十字が視界に見え、それが妖怪と重なると何者かが小銃を発砲した。
「こいつらも仲間にできればな」
『ですよね』
その何者かと、どこからか聞こえる声。どうやら、この小銃が言ったようだ。
「戻れ統宮(スク)、葉宮(ハク)」
突然小銃から離れたかと思うと、慶和だった意識は慶和の体に戻っていた。白い死装束を着ていて、記憶はない。隣には黒いスーツの男、そして、コートの男が目の前にいた。
ここはどこかの路地だろう。
「初めまして、今西です。君は今日から葉宮だ」
コートの男が手を差し出す。葉宮となった慶和の体を持つ意識は、その手をじっと見た。
「すまないね。統宮はアイアンサイトすら着いてなくて、照準器となる神器が必要だったんだ」
なんの話か葉宮にはさっぱりだった。
コートの男は眼鏡を上げる。
「さてと、この辺は時化が酷いな。葉宮もこの被害者だろ」
「言ってもわかりませんよ」
AR-15系小銃だったスーツの男、統宮が言った。
「うん。じゃあ、どこから話そうか...」