俺の幼馴染はコミュ力お化け   作:有象無象

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なぜこうなってしまったのだろう。


妄想乙、くらいの気持ちでご覧下さい。


第20話 奮い立つシーンて書いてみるとどうしても臭くなるよね

─秋人─

 

第四特異点の修復が完了した。

 

だが、俺達の空気は重かった。歴戦のサーヴァント達ですら緊張を滲ませていた。

俺やアイツに至っては不安で落ち着かない。

 

今回助かったのは完全にソロモンの気まぐれだった。一本でも強敵な魔神柱を四本同時に召喚し、終始こちらを圧倒していた。

つーか、一撃でサーヴァント数体消し飛ぶとか、こんなの絶対おかしいよ。

 

すべての特異点を攻略した時再びソロモンと対峙したら、俺は平静でいられるだろうか?

平静でいられたとして勝てるのか?

 

腕の治療を受けながら、そんな考えが常に頭の中を巡っていた。ちなみに、腕は痕は残るけどすぐに完全に治るらしい。

 

 

魔術の力って、スゲー!

 

 

 

 

 

 

 

腕も治ったので、ソロモンについて考えつつ夕食の準備をしているとえっちゃんが近付いてきた。

 

 

 

 

 

ん?何えっちゃん?ご飯は今作って……違う?指?

うわ!真っ赤になってる!

 

超痛てぇ!誰か!救急箱!

 

えっちゃん?救急箱頂戴?

何で指なめてんの?消毒?

 

甘い?「おいひいれす」じゃないよ!

やめて!なんか恍惚とした顔しないで!特別な気分になるでしょうが!

 

 

 

五分後、救急箱探してきたエミヤによって、やっと治療が完了した。

ありがとうエミヤ。まともなのは君だけだ。

 

何?上の空になってるから今日は厨房に入るな?いやいや大丈b、駄目ですか。

 

 

厨房を追い出されたのでウロウロしていると、サーヴァントのみんなが集まってきた。

俺のサーヴァント集合である。

こうしてみるとみんな同じ顔してるように見えて、意外と違うんだなぁ。

 

 

ああ、この傷?なんか考え事してたら切っちゃって。危ないし、邪魔だから出てけ。って言われちゃってさ。

 

そんな会話をしたら四人が目で会話を始めた。

 

ややあって、四人が用事を思い出したと言い始めた。手伝おうか?と言うと要らないからおやつの準備を頼まれた。後で?わかった部屋に用意しとくね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

えっちゃん達とのおやつの後、部屋ですることもなく寝転んでいると部屋にアイツがやってきた。何時のも面子は?と訊くとクー・フーリンは戦闘シミュレータ、頼光さんと清姫、マシュさんは用事らしい。全サーヴァントが同時に用事とは珍しい。というか清姫に安珍以外の用事があったことが驚きだった。

 

んで?どうした?

 

「ちょっと話せない?」

 

ひどく、深刻な顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─立香─

 

第四特異点は私の心に恐怖を残した。ソロモンの圧倒的な強さ。それと再び対峙すると思うと震えがでる。

 

あいつもそうなんだろう。なんとなく返事も上の空だった。

 

そんな私の様子を知ってか清姫と頼光さん、それからマシュは用事があると言って立ち去って行った。一人にしてくれたのだろう。部屋に入るともうこらえられなかった。

怖い。

サーヴァントと一緒とはいえ、一人で地下に潜った時とは比べ物にならない恐怖が襲っていた。

 

ひとしきり、ベッドで震えた。

怖い、戦いたくない。そんな思いが巡っている。

 

あいつは、部屋にいるかな?

 

一人でいたら、おかしくなりそうなので、部屋から出ると隣の部屋を開ける。

 

あいつはそこにいた。ぼうっとベッドに寝転んで天井を見ていた。

 

私に気づいたのか起き上がってこっちを見る。

ケガが目に入った。厨房でケガをしたそうだ。やっぱり、あいつも考え事をしていたらしい。

 

「ちょっと話せない?」

 

そう訊くとあいつは静かに頷いた。

 

ベッドに腰かける。ちょうど隣り合う位置で、だ。

 

 

こういう時あいつはほとんど話さない。私が改まって話を始めるときは不安をぶちまけに来ている事がわかっているから、聞き役に徹してくれる。ただし、話せる相手に限るので、万人の不安を受け止める事はできない。私か、両親くらいだ。

 

たくさんの不安をあいつにぶつける。怖い。から始まり、戦いたくない、死にたくないそんなことをぶちまける。

 

私の言葉が途切れるのを待ってあいつは話し出した。

 

「俺も、死にたくない。できれば戦いたくない」

 

不安をぶちまける。やっぱり怖いんだろう。それでも肩を震わせながらあいつは続けた。

 

「でも、自分が死ぬことよりも、お前や、みんなを失う方が怖いんだ。今、話してはっきりした。ソロモンは怖いし、次に会ったとき、平静でいられるかもわからない。平静でいられたとしても勝てるかどうかもわからない。だけど、諦めたくないんだ。だから、戦う」

 

そう言った。

 

ああ、こいつは、紅秋人はヘタレじゃなかったんだ。

 

怖くても、勝てないかもしれなくても、守りたいもののために立てるやつなんだ。

 

 

 

なんだよ!無駄にカッコいいこと言いやがって、不本意だけどちょっとクラッときたでしょうが。

店員にすら怯えるクセに。私だけ意気地無しみたいじゃないか。

とはいえ、意外とうっかりなこいつのことだ。一人じゃ絶対失敗するだろうし。

 

しょうがない。

 

「散々吐き出したらスッキリしたし。気分がいいから、手伝うよ。背中は任せといて。あと、ありがとう」

 

そうと決まれば、みんなと戦闘シミュレーターだね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─弓トリア─

 

不安気なマスターを勇気づけるために第四特異点修復記念兼これからの特異点修復祈願のパーティーをしようということで急遽準備をして、なんとか完成したので呼びに来たのですが。

 

まさか、自分たちで立ち直ってしまうとは。

 

ソロモンよ、貴様が些事と断じた者達は思いの外、強敵かも知れませんよ。

 

それにしても、「自分が死ぬことよりも、お前や、みんなを失う方が怖いんだ。ソロモンは怖いし、次に会ったとき、平静でいられるかもわからない。平静でいられたとしても勝てるかどうかもわからない。だけど、諦めたくないんだ。だから、戦う」ですか。

 

ソロモンと対峙した時といい、私のマスターは強い心を持っているようですね。臆病に見えて勇敢。周りを見て受け止める。彼女達が夢中になるのもわかるというものです。

それにあの料理の腕です。

 

ですが、サーヴァントを庇おうとするのはやめてください。あなたに死なれては戦えませんし、何よりも私が悲しいです。

 

さて、パーティーの時間ですよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─秋人─

 

パーティーはささやかではあったが急遽企画されたと考えると十分すぎるほど盛り上がって終了した。

 

エミヤは片付け。アイツは何故か酔った清姫と頼光さんに連れていかれた。南無阿弥陀仏。クーフーリンは部屋でさらに飲むらしい。

俺は、一人部屋に帰るとベッドに座り考え事をしていた。

 

アイツにはかっこつけてああ言ったが、実のところ勝てるか不安で仕方なかった。ソロモンに勝てるのか、冷静に戦力を比較すれば勝率は低いと言わざるを得なかった。

 

というか、特異点の空のあれの光線一本一本がエクスカリバー並みとか頭おかしいだろ!四つの特異点全てでエクスカリバー(とかネクロカリバーとかひみつかりばーとか)の威力をまざまざと見せつけられてる俺からすれば恐怖とかのレベルじゃい。絶望ですあんなもん。

 

だけど、俺は戦うと決めたんだ。なら、勝つ方法を考えるしか無いわけだが。これが全然思い付かない。

 

古来より戦力差が大きい時は奇襲からの電撃戦で敵を撹乱しつつ速やかに大将をやるのが効果的なのだが、相手の場所もわからない以上やりようがない。

 

つまり特異点を回って情報を集めることしか今はできないというわけだ。

 

もうやだ。怖い。

 

戦っても、ソロモンに勝つことは俺には無理なんだろうか?」

 

 

「何を言ってるのです。マスター」

 

突然の声に視線を向けると、そこにいたのはアルトリアズだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

という、訳です。

 

俺の心を正直に暴露すると四人はなんとも呆れたような表情でこちらを見た。

 

えっちゃんまで呆れた目をしてやがる。

 

「マスターさん。マスターさんは勝てるか不安なんですね」

 

はい

 

そう答えると皆がさらに呆れた顔をする。

 

え?何みんな?

 

「マスターは根本的に間違っています」

 

なんでさ、弓トリア。

 

「まったくだ。私のトナカイが情けない」

 

なんでさ、サンタオルタ。

 

「ええ、マスター。勝てるかどうかじゃありません。勝つんです」

 

そりゃそうだけどね、X。でも相手はあのソロモンだよ?戯れでこっちは全滅しかけたし。

 

「マスターさん。問題ありません」

 

えっちゃん?どういう事?

 

「マスターさんは一言、勝てって命令すればいいんです」

 

そうすれば、と声をあわせてアルトリアズは続けた。

 

────私が全力でマスター(トナカイ)を勝たせますから(てみせよう)!────

 

あまりに自信満々で、まぶしい四人の言葉は何故かよく響いた。

 

そうだな。なんでだろうか。戦力差は圧倒的な筈なのに俺達ならできる気がしてくる。

 

ありがとう。大好きだ。

 

アイツ以外には初めて、満面の笑顔を出せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの、なんで四人とも顔そらすのさ?

 

と思ったら突然こっちを向いた。

 

話も済んだし、寝る?

 

おやすみ~。また明日。え?一緒に寝る?いや、男女がいっしょ寝るとか大問題でしょ!え?信頼し合うサーヴァントとマスターだから問題ない?いやいや、あるだろう!

 

この会話少し前にもした気がする。

 

あのさ、えっちゃん?なんで羽交い締めにするの?いろいろ柔らかくてドキドキするんだけど?あ、やめて!ベッドくっ付けないで!まずいって!

 

いーーーやーーーー!

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の記憶はここで途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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