【完結】ポップになりました   作:しらいし

16 / 34
16.フレイザードちゃんの日記

×月□×日

 

 今日、私は作られました。生まれてすぐに棄てられました。なんだこれはって、失敗作だって言われました。作ったハドラー様……ハドラーにそんな事を言われて名だけ与えられた後にポップお父様に引き取られました。うなだれていた私にお父様はポンっと頭に手を乗せて、「宜しくな」って言ってくれました。私はお父様の手が好きです。今思えば、名前もお父様から頂きたかったです。

 

 

 

×月×□日

 

 お父様が私を色んな魔族や魔物達に紹介してくれました。クロコダインはとっても大きくて優しいです。ヒュンケルは強くてエイミとらぶらぶらしいです。ザボエラおじいちゃんは始めは怖かったけど、お父様が話をしてくれたら普通にお話出来るようになりました。私が特殊だから興味を持ってるらしいです。あと、建設現場の魔物達も紹介してくれました。皆、良い魔物でした。お父様はよく皆と飲み会をしているらしいです。お父様は仲が良い種族がたくさんいます。

 

 

 

○月□△日

 

 私達、魔王軍は人間を滅ぼす準備をしているそうです。お父様やヒュンケル、エイミは人間です。でも魔王軍です。なんで? ってお父様に聞いたら、人間同士だって魔族同士だって、魔物同士だって殺し合うなんて珍しくないんだよ。別の種族だったら尚更なんだよって言われました。皆で仲良く出来ないの? って聞いたらそうなれたら良いんだけどねって言われました。

 

 

 

○月□□日

 

 パプニカという人間の国にお父様が連れてきてくれました。パプニカのお姫様のレオナと友達になりました。友達。初めての友達です。人間なのに、私と友達になってと言ってくれました。お父様はこの国のお偉いさんになるそうです。でも人間を滅ぼす魔王軍の人間です。お父様に、パプニカも滅ぼすの? って聞いたら、そうなるかもなって言われました。マリンという人間は怖かったけど、他の人間は良い人間が多かったと思いました。でもお父様が悪い人間に会わせなかっただけだと後で気付きました。私を見る目が怖い人もたくさんいました。優しい人間だけじゃないんだって分かりました。

 

 

 

○月□×日

 

 お父様に強くなってほしいと言われました。お父様が言うなら私は強くなりたいです。お父様に必要にされたみたいで嬉しかったです。クロコダインやヒュンケルに試合してもらったり、お父様やザボエラおじいちゃんに魔法を教えてもらう事になりました。暗黒闘気は私は使えないみたいです。修行……お父様だけでいいのにな。

 

 

 

○月××日

 

 修行中、ある事に気付きました。お父様に言うと危ない事しちゃ駄目って怒られそうなのでザボエラおじいちゃんに頼んで魔法耐性をこっそり調べました。全ての魔法が私にとって効果がほとんどないようです。でも私は魔法がちゃんと使えます。ザボエラおじいちゃんはとても興奮していました。お父様がいなければ解体していたかも知れないと言われました。お父様……ザボエラおじいちゃんに何かしたのかな。あと、お父様が何かを思い付いたようで魔王軍の人達にもこっそりとある事を始めました。私は聞いた時驚きましたが、どう考えても私の為のようでした。お父様が私の為に泥を被ろうとしています。私も手伝いたいと言いましたが許してもらえませんでした。

 

 

 

○月×△日

 

 お父様がある魔法の書を無くしたと言っていました。もしかしたらパルプンテの書と一緒に私の中に入ったかも知れないと言っていました。試しに森でその魔法を使ったら、使えました。お父様は冷や汗を流しながら「内緒な」って言ってました。お父様が言うなら私は誰にも言いません。

 

 

 

○月×♪日

 

 お父様に憧れてオリジナル呪文を作りました。お父様に見せたら凄く怒られました。寿命を削る可能性がある呪文だったようです。怒られて悲しかったけど、心配してくれてとても嬉しかったです。やっぱりお父様は優しいです。

 

 

 

○月×□日

 

 お父様がバランに頭を下げて私に闘気の使い方を教えてほしいと言ってました。私はそんなにお父様から見て頼りないんでしょうか。悲しくなりました。私はお父様の為ならなんだってします。お父様はバランより強いって言っちゃいました。多分、私のせいでお父様はバランと戦う事になりました。そしてお父様はほんとに強かった、凄かったです。一緒に見てた皆も驚いていました。結果は引き分けでしたが、凄くカッコ良かったです。試合後、お父様に悲しそうな顔で「ごめんな、勝てなかったよ」って言われました。……お父様にこんな顔をさせたのは私です。私はお父様の為に強くなります。

 

 

 

○月♪♪日

 

 バランの息子のダイ君と友達になりました。明るくて、元気でとても良い子です。バランとの修行も始まりました。お父様が頼んでくれた修行です。頑張って闘気をちょっとですが使えるようになりました。あとお父様が言っていたメドローア、なんとか使えるようになりました。誉めてもらえてとても嬉しかったです。でもその後にお父様が悲しい事を言いました。お父様に棄てられるかも知れない恐怖で泣いてしまいました。そしてお父様と一緒じゃないとやだってワガママを言いました。お父様に必要とされなくなるのが怖いです。

 

 

 

♪月□日

 

 ザボエラおじいちゃんとお茶をしました。この中で、私が闘気を使える事についての話がありました。……多分私の作られた過程での事故が原因です。ザボエラおじいちゃんに聞いてはっきり分かりました。禁呪法という邪法に、ミナカトールという破邪の呪文という相反するような魔法の書。水と油。それを奇跡の呪文パルプンテの書で結びつけたのが私なのだとその時認識しました。もちろん私の中だけの秘密です。私はエネルギー岩石生命体でも、魔族でも人間でもありません。ザボエラおじいちゃんは無理矢理分けるなら???系だと言ってました。私は禁呪法で作られたはずなのですが、全く枠外の生命体らしいです。私の命は、恐らくハドラーではなくお父様と結びついているようだと教えてくれました。魂の色が限りなく人に近しいとの事です。これはお父様にも内緒です。私の命はお父様と共に。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。