【完結】ポップになりました   作:しらいし

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21.アバンとポップ

「結婚おめでとう、ポップ。随分体つきが変わりましたね?」

「ぶふおおお」

 

 アバンの先制口撃。ポップは吹き出した。

 

「おや? どうかしましたか?」

「いやー、えっと、メルル?」

「なんでしょう旦那様」

「ナンデモナイデス。……アバン先生、よく城の中まで来れましたね。アバン先生うちではめっちゃ要注意人物として手配されてるんですけど」

「おや? あなたの指示なのでしょうポップ。私も城の近くまで来て悩んでいた所にメルルさんがやってきて、メルルさんの案内で。ここに来るまで誰一人として会いませんでしたよ?」

「ふふふ」

 

 ……おおう。メルル相変わらずとんでもねえ。手を口元にやって可憐に笑うメルルが大魔王かなんかに見えた。バグってるだろこれ。メルルが一番チートな気がしてきたぞ。

 

「……ところでポップ、貴方のやった事、許される事ではありません。分かっているんでしょうね?」

 

 アバンの顔付きは真剣そのもの。まあ単身でわざわざ乗り込んで来るくらいだしそりゃそうか。つってもアバン相手に話しても口車負けそうだしなあ。適当に話しても無駄かな。

 

「別に誰からも許してもらおうなんて思ってないし。リンガイアの王族を殺したのは事実だし、ベンガーナと戦争始めて遠征軍壊滅させたのも事実だし」

「何故そんな事を」

「魔物や魔族は全部悪? 人間は全部善? 魔族は魔界で日の当たらない生活をしなければならないのは何故? 人はそれほど偉いの?」

「それは……」

「俺、全部ぶっ壊すよ。俺が間違ってるんじゃない。世界が間違ってる。血も流れずに世界が変わる訳が無い。変革には痛みが伴うだろう。だから何? 俺はやるよ。人と魔が共存する為だもの。それは(フレイザードちゃんが笑顔で暮らす為)必要な事だから」

「……人がたくさん死にます」

「人と魔の共存を受け入れてくれるなら殺さない。ベンガーナは向こうから攻めてきた。勇者アバン。魔族には俺の友人がたくさんいる。俺の友人を殺すのであれば貴方は敵だ。貴方は敵か?」

「……。」

 

 

 ……勢いで喋ったが、俺、正直目の前のチート眼鏡に勝てる気しないんだよね。どうしようかな。なんかアバンも黙っちゃってるし。

 

 

「……世界が間違ってる。本気でそう思っているんですね?」

「笑って過ごしてもらいたい娘がいる。その娘が笑って過ごせない世界なら世界ごと変えてやる。ただそれだけなんだけどね」

「人と魔が共に暮らせますか」

「少なくとも今のリンガイアは出来てる。そりゃ改革には反発もあるのは当然。出来ない国もあるかも知れない、だからやらないなんて選択肢はない」

「……そうですか」

「……。」

 

 

 黙って見られると超怖いんだけど。フレイザードちゃんに頼んで不意討ちでメドローアで消滅してもらおうかしら。でもこの人、実はシャハルの鏡持ってましたーとかで跳ね返したりしても何も驚かないくらいよく分からない人だから迂闊な事しないほうがいいよな。むー。

 

 

「……ふぅ、そうだポップ、約束の物です」

「……それ……アバンのしるし。いや、先生俺破門でいいよ。迷惑だろこんな弟子は」

「そうですね。貴方のやった事は決して許される事ではありません。ですが貴方を育てた私も同罪でしょう。私は貴方の先生ですからね」

「じゃあ罪代わりに全部被っちゃって下さい」

「貴方が言いますか? ……罪とも思ってないのでしょう?」

「……見抜かれてらぁ。で人の勇者たるアバン先生はこれからどうする気で?」

「貴方が本気なのは分かりました。魔物や魔族、全てが善と思っている訳でもないのですね?」

「当たり前だろ。悪党は人でも魔でもぶん殴るわ」

「……私はカール王国へ行きます。正直、貴方を殺して私も死ぬ覚悟で来ましたが、我が弟子の罪、私も付き合わせてもらいますよ。貴方と共に地獄に落ちましょう。フローラ女王を説得してみます」

「さすが魔軍司令参謀アバン!」

「……いやそれは流石にどうかと」

「まあまあまあいいからいいから。戦にならないならカールの人間は殺さない。それは確約するよ。城や街に魔族も住み始めるし、反発凄いと思うけど。それはほら、フローラ女王とアバン先生の結婚を条件にすればフローラ女王も首を縦に振る事間違いないなしだわ」

「いやそれは流石に……」

「ついでにいえば多分俺殺したほうが魔王軍、性質が悪いよ? 共存なんて考えず無差別に人間殺しにいくだろうしね」

「それはそうでしょうね。直接会ってよく分かりました」

「ではそろそろ誰か来そうなので城外まで案内しますねアバン様」

「分かりました。ではポップ」

「心臓に悪いのであまり来ないで下さい」

「おやおや、随分な言い様ですね。……ではまた」

 

 

 アバンとメルルが応接部屋から出ていった疲れたー。と思っていたら数分後、ヒュンケルがやってきた。あぶねー。間一髪やん。絶対殺し合いになってたわ。もう魂の貝殻無いから誤解の解けないよね。どうしよう。と思ってたら机に置かれてたアバンのしるしを見られてすごい睨まれた。とりあえずヒュンケルの首飾りが格好良かったからパチもん作ったとか言って誤魔化したら、満更でも無さそうだった。チョロい。あ、アバンにダイ君の事聞くの忘れた。




大体どうなるか分かってたメルルは時間配分も完璧な模様。

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