ポップは拳聖ブロキーナにボッコボコにされまくりながら、ブロキーナが拾ってきたチウに言葉を教えまくったりして修行の日々を過ごしていた。
「老師! うんこって美味しいね!」
「チウ、それは木の実と言うんじゃ。うんことは排泄物の事じゃ」
「ええ!?」
「プークスクスクス」
「ぽ、ポップまた騙したな!」
「うんこ食べて美味しいですかチウさんや」
「やめんかポップ。……またポップのヒュンケルとやら仕込みのいたずらか」
実に美しい師弟愛である。ポップはマホイミと閃華裂光拳以外の武神流の技をブロキーナから学び、また自身が前世で大好きだった漫画の技をブロキーナと相談しながら完成させていった。ブロキーナはマホイミをポップには教えなかった。ブロキーナ、正しい。
「老師、お世話になりました」
「うん、もう来ないでね」
「ポップ、早く死んでね」
「はは、今度会う時はカメハメ百殺法を完成させて試し切りをチウでしてやるよ」
「48の殺人技の練習台に散々しといてよく言うよ!」
「……ポップ」
「じゃあそういう事で!」
「はあ、お前という奴は……」
ポップはブロキーナ達との別れを惜しみながらも、新たなる旅に出た。目的地は無い。目的も無い。相変わらず適当な旅である。
ポップが適当にぶらぶら歩いていると、いつの間にか魔の森の中にたどり着いていた。魔の森。ロモスがあるラインリバー大陸を覆う巨大な森林帯である。魔の森に隣接しているネイル村という村があるが、そんなやばそうな名前の森の近くにわざわざ居を構える変態さん達だと当時ダイの大冒険を見ながら作者が思ったのは余談です。
ポップがさ迷って辿り着いた場所。
そこには何故かリングがあった。
そのリングは何故かモンスターに囲まれて、モンスター達が声援を送っていた。
ポップはその様子を見て思った。
「目立ちたい」と。
『勝者、第8代魔の森ヘビー級王者クロコダイーン!』
『『『ホワアーーー!!!』』』
リング上で観客に向けて手を降るピンク色のワニ、みんな大好きクロコダインと見事王座防衛を果たした王者に声援を送るモンスター達。ここだけ完全に世界観がおかしい。
その時、突如リングにバラが吹き乱れた。リングを完全に覆い隠す程の大量のバラ。
「むううん!」
クロコダインは手にしていた真空の斧を振りかざし、バギの効果でバラを吹き飛ばした。なんでリングで斧持ってるんだって? そんな細かい事どうでもええやん。
バラが吹き飛ばされるとコーナーに一人の男が立っていた。ポップである。モシャスで魚座のアフロディーテに化けたポップはバラを大量に吹き荒らし、そーっとリング内に侵入してモシャスを解いたのである。アフロディーテの無駄遣いである。しかし、このド派手な登場に一気に観客のボルテージが上がった。今、リングの主役は王者クロコダインではない。バラと共に現れた謎の男、ポップである。
「何者だ貴様!」
「俺か? 俺は貴様を倒す男だ! 貴様のベルト、この俺が頂く!」
「な、何!?」
『おーっと! 突如現れた謎の男が、我らが王者クロコダインに挑戦状を叩きつけましたー!』
『『『ホワアーーー!!!』』』
興奮して叫ぶ実況席の腐った死体と、観客席のモンスター達。この流れは止められない。もちろん王者クロコダインも、プロレスの空気は生物だと理解していた。この空気を読めぬ男ではない。
「ふ、ぐふふ。良かろう。人間風情がこの俺に挑戦するか。捻り潰してくれる!」
「そうこなくっちゃ!」
『王者クロコダイン、この挑戦を受諾ー! 連続の防衛戦となります! いやー、今日の観客はラッキーですねー。さあリング上では審判によるボディチェックが行われております。解説のマァムさん、初めての人間の挑戦者が現れましたがどう思われますか』
『無謀ですね。たかが人間が勝てる相手ではありません』
『マァムさんの言う通りであります。同じ人間であるマァムさんも王者の勝ちを確信しているようであります』
『ただ、あの人間もなかなか鍛え抜かれた身体をしていますね。良い筋肉です』
『確かに良い筋肉です。さあ、悪魔の目玉を通じて魔界全土に放送されている魔の森プロレス、今日は放送を延長してお送りします。謎の挑戦者……今情報が入りました。ポップ選手が王座を防衛したばかりのクロコダイン選手に挑戦致します。』
カーン
『さあゴングが鳴りました! リング中央でがっぷり肩を組み力比べから始まりました!』
『オーソドックスなレスリングスタイルですね』
『さあ勿論上背があるクロコダイン選手がポップに上から重圧を掛けていきます! これはポップ選手も堪らないはずであります! まるでショベルカーが廃棄物を押し潰すかのように、クロコダイン選手の圧力がポップ選手に襲いかかります!』
『いや、見て下さい。ポップ選手堪えていますよ』
『なんと驚きであります! 人間であるポップ選手が王者の圧力を受けて、耐えて見せています!』
『『『ホワアーーー!!!』』』
「なかなかやるなポップとやら! だがこれはどうだ! カアアーーー!!!」
「!?」
『で、出たー!! クロコダイン選手のやけつく息だあー!』
『王者の必殺のパターンですね。これで動きを止め一気に畳み掛けに行く常勝パターンですが……ああ!? 見て下さい!』
「な、何い!?」
「ふっふっふ、貴様のやけつく息など、師匠の老化した肺から出るくっさい息に比べれば平気というものよ!」
「なんだとお!!?」
『おーっと! なんという事でしょう! ポップ選手、自身の師匠の息より臭くないから平気だと言っております! マァムさん、これはどういう事なんでしょうか!?』
『わけがわかりませんね、死ねばいいと思います』
『マァムさんの言う通りであります。さあリング上では動きがあります。やけつく息は効きませんでしたが、王者、ポップ選手を力任せにロープに振るようです』
『ロープから跳ね返ってきたポップ選手を真空の斧で切り裂くつもりでしょう』
『リング中央で待ち構えるクロコダイン選手、まるで北方にそびえ立つギルドメイン山脈のように、ずっしり腰を据えて佇んでおります。ああっと!?』
「ブフウゥゥゥ」
「ぐわああああ!!?」
『ロープから跳ね返ってきたポップ選手、口から赤い霧を吹き出しました!』
『どうやら口の中を噛み千切り、血液を霧状に吹き出し目潰しに使ったようですね。血霧、いや毒霧と言ったところでしょうか』
『一転王者がピンチを迎えております。王者、流れを相手にやらぬとばかりにその両腕をポップ選手に振りかざしますが、やはり良く見えてはいないのか、ポップ選手は悠々と避けております』
『私としては熱い肉体のぶつかり合いが見たいところではありますが』
『マァムさんの言う通り、私達としましては、やはりお互いの技を受けきる勝負こそ、魂を揺さぶられるものがあります』
「け、一気に勝負を付けてやるぜ! 土竜昇破拳!」
ボゴォォォ
ポップが両腕をリングに叩き付けると、クロコダインの真下のリングの床が弾け、クロコダインの身体が宙に浮かび上がる。
「な、何い!!?」
ポップ、素早くクロコダインの身体を下に潜り込み相手の両腿を手で掴み、相手の首を自分の肩口で支える。
「う、動けん!?」
この状態で空中に飛び上がり、尻餅をつくように着地しての衝撃で首折り・股裂き・背骨折りを同時に行うという必殺技、五所蹂躙絡み。そして又の名を!
「くらえええ! キン肉バスター!!!」
「ぐわああああーーーっ!!!」
カーンカーンカーン
『なんとクロコダイン選手破れましたー! 新王者誕生であります!』
『クロコダイン選手は連戦の疲れもあったのでしょう、勝ちを焦りましたね』
『しかしまさか人間の王者が誕生するとは思いませんでしたねマァムさん!』
『はい、ですがあの入場パフォーマンスで観客の心を鷲掴みにした時から何かやってくれるのではとは思っていましたよ』
『なるほど、さすがマァムさんです。リング上では勝者のポップ選手の腕をクロコダイン選手が上げて勝利を讃えております。では今日の中継は新王者誕生となった所で終了となります。実況は私腐った死体と』
『解説のマァムでした』
『では悪魔の目玉の前の皆様、また来週お会いしましょう!それではまた!』
星矢になりましたの後書きでクロコダインとマッスルドッキングさせたいと私が言っていたのを知っている方へ。
やってやるぜ。