バカと乙女と戦車道!   作:日立インスパイアザネクス人@妄想厨

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みほが生徒会室に呼び出された時間帯=お昼休みの食後

明久がFFF団に追いかけられ始めた時間帯=お昼休みの授業直前

明久が角谷会長に電話をかけた時間=授業直前?=みほたち、授業は?

やっちまったぜ☆

前回の明久たちの時間軸を変更しました。


1時間目 僕と学校と履修届! その4

「やぁれーせんさん……」

「うおっ。……なんだ吉井か。だから私は冷泉(れいぜい)……いや何をやってるんだ?」

 

 杏ちゃんから戦車道用の履修届をもらったその日の放課後。

 FFF団の追跡を逃れた僕はカバンで顔を隠しながら校門へ向かっていた。その途中で会ったれえせんさんは呆れた様子。

 

「……そーいえば朝から大騒ぎしてたな。よくもまあ毎日毎日飽きないものだ」

「そうなんだよ! あいつら二から六限目サボってまで追いかけてきて、気づけば他の学年の信奉者まで追いかけてくるし……すごく疲れた」

「奴らのコミュニティが着々と広がっている……何だ、生徒会か学園長にクーデターでも起こす気か?」

「え、どういう意味?」

「そういったグループの拡大の仕方は最終的に国家反乱に繋がるんだ。歴史のお勉強だぞ」

「へー。面白いね」

 

 流石は学年トップ3の学力を持ってるだけある。時々こうやって話してくれるれえせんさんのうんちくは授業を受けるよりも頭に入って楽しいんだよね。

 

「で、今回は何をやらかしたんだ?」

「ちょっとやめてよ、この学校の騒ぎの原因が全部僕にあるような言い方」

「戦車道のことだろ。昨日の今日だし、男子が大騒ぎしてることはもう広まってるしな。――どうせ履修の特典狙いだろう」

 

 流石は学年トップ3の学力を持ってるだけある。わずかな手がかりから特典のことまで嗅ぎつけるとは。

 

「……まぁわからんでもない。確かにあの特典は魅力的だ」

「もしかしてれえせんさんも戦車道を履修したいの?」

「いや、特に興味も無いからな。汗水流してまで特典が欲しいとは思わない」

「そっかー」

 

 明らかにインドア派だしねれえせんさん。彼女が戦車を乗り回す姿は想像がつかないや。

 それにしても『興味が無い』か。

 

「そういえば雄二もやらないって言ってたなぁ」

「……」

「れえせんさん? どうかした?」

「なんもない」

 

 そういう割には眉間にシワが寄ってるけど? まぁ何にもないなら気にしなくていいか。

 

「吉井、お前戦車道をするつもりなのか?」

「うん。特典のことはもちろんあるけど、やるからには頑張ってみたいんだ。あ、そういえば昼休みに杏――生徒会長に連絡とったら戦車道の隊長になれるかもしれないって」

「その電話の相手は正気か?」

「正直僕もそう思ったけどさ、生徒会長が言うには隊長になりたい人が集まらなかったみたいで、僕になってみない? って」

「苦肉の策だとしてもお前だけは絶対に無い」

 

 それに関しては同意するけど、僕だって健全な男子高校生なんだ。ちょっとだけ夢を見てみたいんだよ。

 戦車道の隊長になったらまた特典が追加するみたいだし、戦車道のリーダーってなんかかっこよさそうで憧れる! 戦車道って戦車に乗ること以外どんな競技を行なうのか全くわからないけど、杏ちゃん達に教えてもらえれば大丈夫かな?

 夕焼けの射す歩道をれえせんさんと歩きながらそう考えていると、携帯端末から軽快な音楽が鳴った。メールを受信したようだ。

 

「ちょっとごめんね」

「別に」

 

 メールの送り主は杏ちゃんだった。

 ちょうどいいや、戦車道でどんなことをやるのか杏ちゃんに聞いて――

 

「……」

「どうした吉井? 知り合いが電車でバスローブ姿をしてるのを見たようなしかめっ面だが」

「生徒会長からメール来たんだけど……『サンキュー吉井☆ 後でチューしたげる』だって。怖っ」

「それは……怖いな。あの会長にしては得体が知れなさすぎる」

 

 僕何かやったっけ? 思い当たることと言えば昼間に電話を掛けたことぐらいだけど?

 

     ☆

 

 ――そんなこんなで一週間経った。どんな一週間だったかはみんなの予想通りだよ……。

 

 

「見事に魂抜けてんな」

 

 教室へ向かう廊下を一緒に歩く雄二がニヤニヤしながら言った。

 そりゃそうだ、この一週間僕と奴らの戦いを割と近いとこで眺めてた挙句、時々けしかけてきたクズなんだから。精根尽きたってこういうことだ。

 でもまだ昼休みまで4限乗り越えなきゃならないんだ。授業と合間合間のFFF団の襲撃を凌がなきゃ戦車道を履修出来ない。

 

「雄二、僕頑張ったよ……履修届も忘れなかったよ……」

「その代わり教科書類は置いてきたってオチじゃねぇよな?」

「…………………」

「うそだろお前……」

 

 さぁて気を取り直して今日も一日頑張ろう! なんて言ったって今日でFFF団との履修届争奪戦も終わる。今日を生き残れば僕の目標も目の前だ! 何のトラブルも起きませんようにっ!

 冷ややかな雄二の視線を受けながら、僕は教室の扉を開けた。

 そこには、

 

 

「……みんな何やってんの……?」

 

 教室の中の光景は異様の一言だ。

 昨日の放課後までクラスの男子たちはみんな遊びの無い真っ黒な地毛だったはずだ。それが何でみんなヘアカラースプレーで茶色にカラーリングしてるんだろう?

 僕が来たことに気づいた須川君が『よぉ』と明るく挨拶をした。

 

「おはよう坂本――いや、雄二」

「お、おう」

 

 流石の雄二も須川君の態度に面食らう。おかしい、須川君は雄二のことを名字で呼んでいたはずだ。

 そして須川君に続くように教室のみんなも雄二を名前で呼んで挨拶をする。……正直気味が悪い。

 

「す、須川君?」

「……」

「えっと、あ! もしかしてイメチェンってヤツ? 確かに茶髪の須川君なんて新鮮だけど」

「なぁ吉井、少し考えを変えてみたんだ」

 

 雄二の方を向いたままの須川君は、どういう表情をしているのかわからないけど何故か背筋に氷が這うように嫌な感じがする。その考えって奴を聞くべきじゃないと僕の本能が反応してるし。

 

「うんやっぱいいや。それじゃあね」

「俺たちはどう頑張っても戦車道を履修出来ない。そしてお前から履修届を奪うにも、もうタイムリミットを切ってしまった」

「それは残念だね。多分いつかは杏ちゃん達にも君たちの熱意が伝わることを願うよっ」

「何故吉井が良くて、何故俺たちがダメなのか? その疑問を昨晩から考えてみて、やはりキサマが生徒会長たちから気に入られてることが要因なんだと結論付けたんだ」

「あーあー! 聞こえない! 聞きたくなーい!」

「学校に来て俺たちは話し合ったよ。そしたらみんな同じことを考えてたみたいでな、すぐに解決策を思いつくことが出来たんだ」

 

 

 

 ようやく僕の方を振り向いた須川君の顔は今まで見たことのないぐらい邪悪だった。

 

「俺たちが『吉井明久』になればいいじゃないかってな」

「お願い聞いてるこっちの身にもなって!? その発想に震えが止まらないんだけど!?」

 

 どんな生き方をしたらそんなこと思いつけるの? というかFFF団のみんなが一斉にそんな発想になったってどういうこと!?

 あの茶髪ってもしかしなくても僕の髪を真似てるってことだよね? 雄二のこと呼び捨てしたのもそうだ。FFF団全員が僕に成り替わろうとするなんてホラーすぎる!

 彼らの奇行に恐怖を覚え身をすくませていると、雄二がさらに煽り立ててくる。

 

「それでダメだったらどうする気だったんだ?」

 

 杏ちゃんもダメって言ってくれるはずだよ! 髪型を同じにしたって須川君は須川君なんだから!

 雄二の問いに須川君は考えを巡らせ、

 

「そりゃあ、ナマ皮ぶえっくしょいっ!!」

「いやぁあああああああああああああああああああああああ!!」

 

 一目散に逃げだした!

 もう詳細なんて聞いてられない!! 今すぐコイツらから離れなければ命が危ういっ!!

 とにかく隠れた方がいいかな!? でも昼休みに履修届を出しに行かないといけないから、午前中は隠れられて、昼休みになったらすぐに生徒会室に駆け込めるような場所……そうだっ屋上! 生徒会室の屋上に潜んでおいてロープを伝って窓から侵入すれば……!

 そうと決まると僕は廊下を駆け抜けていく。途中、何処かで鉄人の声が聞こえた気がしたけどこの際無視だ。

 

 履修届の最終提出日。何事も起きないように願ってたけど、やっぱり今日もひと悶着ありそうだ。




一方そのころの生徒会室で

「そんなこと言ってるとさぁー、……あんた達、学校にいられなくしちゃうよ?」
「お、脅すなんて卑怯ですっ」
「脅しなんかじゃない。会長はいつだって本気だ」

「……」

脳内の杏ちゃん
(――やっっっっべぇぇぇ~~~~~~脅し過ぎた~~~~~~どうしよ、この子たちの口論ヒートアップしすぎてアタシもつい言いすぎちゃったんだけどっ。かーしまも煽るんじゃないよ逃げ道を塞いでどーすんのさ? そうなると西住ちゃんのダチがもっと壁造るか本当に西住ちゃんと一緒に退学届け出しちゃうよ? そうなった原因はアタシだけどさってバカ野郎! あ~小山もその宥め方はちょっと逆効果になってるっぽいよ? 小山乳デカいからじりじり詰め寄ってると余計にシルエットデカく見えるからにじり寄られてる側から見たら追いつめてるように感じるんだよ。アタシ、アンタの身長の半分も無いからその怖さがよくわかるんだぜ。マズい。これは非常にマズい。この二人と西住ちゃんのダチじゃ話が平行線になってきっと最悪な結末になっちゃう。アタシから言い出した手前、訂正すれば生徒会長としての主導権が無くなっちまうし……ここは西住ちゃんが口火きらなきゃ終わらないぞこりゃ。さぁ言え~、西住ちゃん何か言え~~~~~っ。はいかイエスか西住ちゃんの口から言ってくださいお願いっ!!)

♪~♪~ばかっほーむ♪

(え~~~~~~こんな時に何なん? 吉井? っていうかこの時間帯だったらFFF団と(真)鬼ごっこやってる頃じゃん? も~着信音もあってここの空気ぶち壊しじゃん……いや待てよ? 今ならアタシも口挟める立場じゃね? というか吉井も戦車道の関係者になったわけだし、コイツをアタシらと西住ちゃんの間に挟めばいい緩衝材になるし。それにここまでこじれたのって隊長になりたがらないのをあーだこーだ言っててこうなったワケで、ここで吉井を隊長に挙げたら何も知らない西住ちゃん以外一致団結で反対するハズ。マジか吉井が戦車道したら他にもいろいろトラブってたのがマシになりそうなことがいっぱいだぞ? こりゃ使わない手は無いねー。マジで吉井ナイッス~~~~~~っ。このタイミングで電話かけてくれてホントナイッス~~~~~っ)

その後

「『サンキュー吉井☆ 後でチューしたげる』っと。本っ当に頼りになる後輩が出来て助かるわ~(ちゅっ)」

「な、なぁゆず。なんか会長こわい」
「しっ。桃ちゃん、今日は会長を置いて早く帰ろう。近寄らない方が身のためだよ」

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