バカと乙女と戦車道!   作:日立インスパイアザネクス人@妄想厨

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問 軽戦車・中戦車における基本的な必要最低限の乗員数を答えなさい。また、1輌の戦車の能力を最大限に発揮する乗員の役割をそれぞれ答えなさい。

西住みほの答え
『必要な人数:約4人
 役割:操縦手・車長・装填手・砲手
 追記:団体行動する場合は通信手も必要です』

教師のコメント
正解です。戦車の操縦において必要な役割分担は『走る』『撃つ』『込める』『指揮する』ことが重要です。また西住さんの指摘通り他の戦車と団体で運用する場合は『連絡する』役割の通信手も必要ですが、今回は1輌を操縦することを問題としているので答えは4人で正解とします。人数の所で“約”をつける所まで完璧と言えます。

秋山優花里の答え
『必要な人数:4人
 役割:車長・操縦手・砲手・通信手』

教師のコメント
残念ながら不正解とさせておきます。よくある間違いですが、『撃つ』と『込める』役割を纏めてしまっています。通信手も役割としてありますが、今回は1輌を操縦する場合の問題となっているため通信手は無しとしています。

角谷杏の答え
『必要な人数:3人
 役割:操縦と装填と砲撃する人・連絡要員・そして私は後ろで干し芋を食べる』

教師のコメント
1人に作業が集中している上1人サボっているのは役割分担として問題があると思います。

吉井明久の答え
『必要な人数:人は多いほど良い!人
 役割:運転手・鉄砲玉・若頭・組長』

教師のコメント
確かに車と銃撃戦のイメージはありますが……。


2時間目 戦車と杜撰と履修生、です その1

「んまー色々あったけど、早速始めようかねー」

『『『はぁ~い』』』

 

 生徒会長の気の抜けた号令に対して私たちはまばらに返事をする。

 さっき起こったことに参加者の意識が散乱したのもあるけど、何より一人だけ参加した男子生徒の吉井(よしい)君に向いてるのが原因かもしれない。

 当の吉井君はというと先ほどの意識を朦朧とさせた状態から覚めたらしく、人懐っこい表情を浮かべて遅れたことに謝罪して大人しく生徒会の人の話を聞いてる。事前に沙織さんたちから聞いてた通り、オラオラした感じの為人(ひととなり)じゃなくてホッとした。

 

「――概要は以上だ。他に質問はあるか?」

「はいっ!」

「……無いな! それじゃあ次に」

「手を上げたのに!?」

「黙れ! どうせ特典の有無がどうたら聞くつもりなんだろう後で説明するから今は待っとけ! 貴様の戯言に付き合ってられるか!」

「…………」

「よし、気を取り直して次に行くぞ」

(図星だったんだ)

 

 あのいつも滅茶苦茶を言ってる広報のメガネの人が意外とまともなことを言ってることに内心驚きを覚える。

 どうやら戦車道は生徒会が仕切っていくみたいで、主にメガネの人が指示出し、副会長がメガネの人のサポート、会長がその後ろで干し芋をかじるという構成になってる。角谷会長は何しに来てるんだろう?

 

「あ、あの! 戦車はティーガーですか? それより何処にありますか!」

 

 と、参加者の一人が声を上げた。

 そうだ。戦車道というからには戦車が無ければ話にならない。そのことに気づいた参加者達がざわめきを起こしながら戦車を探す。

 でも今私達が居る場所はレンガ造りの格納庫……つまり戦車のための車庫なんだ。そのことを知ってるのは私だけだろう。

 参加者の質問に対してメガネの人は思い出したかのように、

 

「ああ、戦車ならここだ」

 

 そう言って格納庫の扉に手をかけて――開かない。

 ……何をやってるんだろう? 鋼鉄の頑丈な扉なんて数百キロもあるのに、人力で開けようとするなんて無茶だ。

 必死になって鋼鉄の扉を開けようとするメガネの人。1人の力じゃ到底開けない扉を懸命に開けようとするその姿は健気だ。

 そんなメガネさんを尻目に、大きいサイズの副会長が扉の横にあるレバーを下した。

 

 ガラガラガラっ! ←シャッターの開く音

 

「「「……」」」

 

「………………さぁ皆開いたぞ!! これが我が校の戦車だ!!」

 

 わ、笑っちゃダメだ……! 今笑ったらメガネさんが泣いちゃいそう……!

 

 生徒会のメガネさんの強がりから目を反らしながら格納庫に入っていく私達。長年使われてなかったため埃が凄くてクモの巣があちらこちらに張ってる。あまりの不衛生さに顔をしかめてるのを自覚する。

 

 そんな中に佇む影を見つけ、私は一瞬懐かしい感覚を思い出した。

 

 

「なにこれぇ……」

「ボロボロ~」

「ありえな~い」

「詫びさびでよろしいんじゃ」

「コレはただの鉄さび」

「……学園艦の古い部品じゃない?」

 

 ――私たちを出迎えたのは、錆だらけで手入れのされてないボロボロの戦車だった。

 

 参加者のみんなが想像していた光景とかけ離れて落胆した様子でいる。

 流石の私もここまで手付かずだなんて思ってもみなかったから、生徒会の仕事のずさんさを疑いそう。

 

「みぽりん?」

「みほさん?」

 

 誰もが引き気味で眺めてる中で、私は誘われるようにその戦車に歩み寄った

 ボロボロの戦車を実際に触れてみてわかる。積もった埃の触感の下に感じる鋼鉄の硬さ。そして叩いた時に響く戦車の重さ。

 ――私が初めて戦車に乗った時を思い出す。あの時に感じたドキドキと胸を躍らせた思い出が蘇ってくる。

 

「――うん。装甲も転輪も大丈夫そう……。これならいけるかも」

 

 そう呟くと、参加者達からはしゃぐ声が上がった。

 たとえ設備がボロボロでも、戦車があれば戦車道は出来る。

 そのことをわかってくれれば、みんなが抱いている不安は和らいでくれると思う。

 私が2人と出会ったように参加者のみんなにもここでの思い出は楽しんで欲しいから。

 

      ☆

 

「我が校においてはもう何年も前に戦車道は廃止になっている。だが当時使用していた戦車はまだどこかにあるはずだ。明日、教官がお見えになるので今日は全員で学園艦中を探して見つけ出すように。では、捜索開始!」

 

 せっかくみんなが不安にならないようにしたのにまたみんなの気を滅入らせるのはやめてよぉ……。

 

 冷や水を浴びせられたように生徒会から伝えられたのは、今見つかっている戦車というのが格納庫に保管されていたドイツ戦車のIV号戦車のみで、他の戦車は未だこの大洗学園艦の何処かにあって、今日中に戦車道履修生が使用できる分を確保しなければならなくて、しかも手がかりなんて何もない状態で探さなきゃならないという……戦車道を始めるにも何もかも足りてないということだ。生徒会が主導に進めていると言うにはあまりにもずさんすぎる現状に思わず絶句してしまった。

 生徒会の号令で履修生達は渋々と言った風に戦車を探しに行って、私達も戦車を探しに学園艦を歩き回ることになった。……私達の場合、想像していた授業と違ったことにうなだれていた沙織さんに、生徒会長が何かを呟いたら『かっこいい教官!?』って言って飛び出してしまったからその後ろ姿を追いかけた感じだったけど。何を言われたのかは何となく想像できてしまってちょっと乾いた笑いが出てしまう。

 そんな訳で、

 

 

「戦車なんて……何処にあるっていうのよ――――っ!?」

 

 駐車場の真ん中で不満を叫ぶ沙織さんに華さんと二人で苦笑いしてしまう。

 

「流石に駐車場には無いのでは?」

「だって戦車も車じゃん! ……じゃあ裏の山林に行ってみよ? 戦車を隠すなら何とやらって言うし」

「林の中に戦車を隠すなら迷彩柄、かな?」

「それを言うなら木を隠すなら森の中、ですよ」

 

 何だか楽しいなぁ。こうやって普通の高校生らしく女子とおしゃべりしながら学園を歩き回るのって。

 

 そんなときふと視界の端に誰かが居るのに気づいた。

 視線を向けるとその人影はサッと近くの木の陰に隠れてしまう。

 ……私は今見たものを見なかったフリをして、沙織さん達の後を着いていくと、さらに私の後ろからほわっほわっとボリュームのある髪を揺らして一定の距離を取って歩いてくる……着いてきてるよね?

 

「……あの!」

「へぁい!?」

 

 びっくりした表情の女子生徒に何だか共感を感じてしまう。

 だからすんなりと言えたのかもしれない。

 

「よかったら一緒に探さない?」

 

 そう聞くと女子生徒は、ぱぁっと明るい笑顔を咲かせた。

 

「良いんですか!」

「うん。沙織さんも華さんも良いよね?」

「全然オッケーだよ! まさかみぽりんから言い出すなんてね」

「これも朱が交わればということなんでしょうか」

 

 二人とも歓迎してくれてるようだ。

 こんなに広い学園艦で探し物をするのなら人数が多い方が良いし、この人も私達と一緒に行動したそうだったからね。もちろん私も大歓迎。

 ボリュームのある髪の女子生徒はもじもじと体を揺らして、

 

「あ、あの……私は普通二科の、」

 

 

 ゴトッ。 ←女子生徒のスカートの中から柄付手榴弾が落ちる音

 

「……」

「ねぇトンカチが落ちたよ。はい」

 

 沙織さんから受け取った女子生徒は手慣れたようにスカートの下に着けたホルダーに手榴弾をしまった。

 

「……」

「あ、すみません。では改めて……普通二科、2年Fクラスの秋山優花里と申します。えっと……不束者ですが、どうぞよろしくお願いしますっ!」

 

     ☆

 

「あ~やっぱ秋山さんってFクラスだったんだ?」

「はい。いつもFクラスの面々が騒がしくしてて、他のクラスに迷惑をかけてしまってるのは同じクラスメイトとして申し訳ないと思ってます」

「いえいえ、特に気にしてませんから。むしろFクラスの皆さんを見てるととても楽しそうで少し羨ましく思いますよ」

「え~? フツーにうるさいじゃんあいつら。華はあんまり被害が無いから言えるんだよ。特にFFF団なんて毎日どっかで風紀委員とドンパチしてるワケだし」

「本当に申し訳ないですー。今朝もクラス内で机を使った塹壕戦があって大変でしたし」

「あ、だからトンカチを持ち歩いてるの? 壊れたらすぐ直せるように? 職人だね~」

「人間、そういう特技を一つは持っておくべきですねぇ」

「あはは……あんまり身に着けたいと思ってなかったんですけど」

「なんだ秋山さんすっごいいい子じゃん。だからさ――みぽりんもそんなに警戒しなくても良いんだよ?」

「みほさーん! この方は安全ですよー! おいでくださ~い!」

 

 

「(ふーッ、ふーッ)」

 

 3人が楽しく談笑してる所から30mぐらい離れた所で私は秋山さんから預かった(とりあげた)トンカチ(ポテトマッシャー)をカバンに入れて抱きしめていた。

 警戒しなくていいって無理だよ2人共っ! 手榴弾だよ? 下手したら戦車を破壊するタイプの爆発物だよ!? そんな危険なものを持ち歩いてる女子生徒なんてそうそう居ないはずだよ!?

 というか持ち歩く以前に何処で手に入れたの秋山さん……あ、でもウチにもパンツァーファウストがあるし珍しくも無いか……けど手榴弾をトンカチ代わりにするのはダメだと思う。暴発したら危険だし。

 

 そんなこんなで危険物を抑え込んだ私達は今日の本題である戦車を探すために、地図を片手に森の中にやってきた。

 こんな鬱蒼とした森の中に戦車なんて……と思っていたけど、不意に華さんが鼻をひくつかせた。

 

「(スンスンッ)これは……鉄と油の匂い」

「わかるんですか?」

「(スンッ)そういえば草の匂いの中に鉄さび臭さが」

「いえ、そっちじゃなくてこっちの方向です。そっちはたぶん輸血パックがあるのではないかと」

「そんなことまでわかるんだ華さん……何でこんな森の中に輸血パックが?」

「ウチの学校血の気が足りないヤツが居るからね~。いつでも輸血できるように隠してたんじゃない?」

「明日、土屋殿に保管はキチンとするように伝えておかないと」

「秋山さん知ってる人なんだ……」

 

 秋山さんっていったい何者なんだろう?

 

 鉄の匂いに誘われた華さんの先導の下、森の奥の方にあったのはやはり打ち捨てられた戦車だった。

 38(t)。ドイツで使われたチェコ製の軽戦車だ。

 格納庫で見たⅣ号戦車より小さめだけど、戦車道において大きな活躍を期待できる代物だ。

 そんな38(t)も屋外に打ち捨てられていたため水錆や土や草や蔓に塗れてしまっていたんだけど、あろうことか秋山さんは自分が汚れるのも気に留めないで車体に頬擦りをして滔々(とうとう)と38(t)のウンチクを私達に披露しまくっていた。

 

「名前の“T”っていうのは重さの単位ではなくて、チェコ・スロバキア製って意味で――ハッ!?」

「……すごい活き活きしてたよ」

「……すみません」

 

「うふふ……」

「どうしたの華さん?」

「秋山さんを見てるとついこの間のみほさんを思い出してしまって。ほら、妙にナイーブなところとか」

「そうかなぁ……そうかも……」

 

      ☆

 

 戦車が見つかったら自動車部の人たちが回収してくれる、とのことで、私達は引き続き戦車を探すことになったのだけど……。

 

「こんなに早く1輌見つかるなんて思わなかったよ」

「結構そこら辺にあるもんなんだね~」

「このペースならあと4、5輌見つけられるかもしれませんね。他の方も見つけることが出来れば、あぶれた分はいただけるかもしれませんし。一家に戦車が一輌ある暮らし……現実味が帯びてきましたねっ」

「いいですねそれ! あ、でもウチじゃあ戦車を格納するスペースがありません……」

「華さん諦めてないんだ……」

 

 そんなに戦車が見つかるかなぁ?

 そう思いつつみんなとのおしゃべりに夢中になっていたら気づけば学校に戻ってきていた。とりあえず他に戦車が無いか図書室や職員室とかで過去の資料を探してみようと思ったからだけど、正直1輌見つけた時点で満足しちゃって時間を潰すつもりで帰って来たんだよね。

 

 戦車に乗るより彼氏に乗せてもらいたい! という沙織さんの願望を聞きながら駐車場を通りがかると、

 

 

「戦車って何処にあるの――――っ!!」

 

 ――そこには数十分前の沙織さんが居た。




今回の話は原作とほとんど変わりなく短いので飛ばしてしまっても問題ないかと思います。
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