バカと乙女と戦車道!   作:日立インスパイアザネクス人@妄想厨

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当小説に出てくるガルパンキャラは「もっとらぶらぶ作戦です」を参考にしています。
キャラ崩壊が見られるかもしれませんがご了承ください。
バカテスキャラは崩壊させました。


2時間目 戦車と杜撰と履修生、です その2

 ――戦車捜索直後までさかのぼる。

 

『おい吉井』

『ん? 桃ちゃん先輩どうしたの?』

『いや、こちらも大よその事情は把握してはいるが、やはり他に男子の参加者は連れてこなかったんだな。どうやってお前1人で戦車道をやるつもりなんだ』

『……え、他に居ないの? 須川君辺りは皆を出し抜いてやりそうだったのに』

『(須川って誰だろ?)まー、吉井の履修届の件が独り歩きしてFFF団だけじゃなくて他のクラスの連中も履修出来ないって勘違いしたんじゃね?』

『(須川君って誰だろう?)私達も吉井君がいつも話してる友達を連れてくるとばかり思ってたから、まさか初日から1人しか居ないなんて意外だったの』

『(須川……FFF団のあいつか)別に戦車道に男子は必要ないんだがな。貴様が一人で来た以上戦車に乗らせる義務がある。……人員は後から入れていけばいいが、とりあえず男子で使う戦車は確保しろ』

『もちろんそのつもりだよ』

『とりあえず5輌探してこい』

『多くない!?』

『うっさい! 色々手続きが大変だったんだからここに居る参加者全員分の戦車を持ってくるぐらいの気概を見せてみろ吉井っ!』

『吉井さー観察処分者として学園艦のあちこちに出向いてるから船舶科並みにこの船のこと詳しいワケじゃん? だったら怪しいとことか探せば見つかるかもね』

『えー、全然思い当たらないよ』

『まーそうだねー……何なら生徒会のうちらも手伝ったろか?』

『え、いいの? それじゃあ――』

 

 

『……』

 

 

『ゴメン! 今回は他の人と探してみる!』

『え、吉井君?』

『……そっかー。そんじゃあ頑張んな。期待して待ってっから』

 

 

『姫路さーんっ』

『よ、吉井君? 何か用ですか?』

『特に用ってわけじゃないけど……やっぱり戦車道を履修することになったんだ?』

『あ、はい。後から履修の変更は出来ないと言われてしまって』

『……えーと、姫路さん1人で来たの?』

『はい。誘う人とか居ませんでしたし、1人で』

『1人で』

『でも他の人はみんなグループで履修してるんですね』

『桃ちゃん先輩が言うには、戦車って1人じゃ動かせないみたいだよ』

『そうなんですか? ……どうしましょう?』

『まぁ後から人が入ってくるのを待つか、他のグループに入れてもらうかかなぁ。……ということは姫路さん、今から戦車を探すのも1人でするつもりなの?』

『? そうですが』

『僕って学園艦を探索することがよくあるんだけど、1人で探し回るのってすっごい大変だからね。姫路さんだけだと徒歩で見回るのは難しいと思うよ』

『……吉井君、すごく頼りになる人なんですね』

『いやぁ、それほどでも』

『雑用のプロって感じです』

『自覚無しの貶しみたいに聞こえるけど誉め言葉として受け取るよ』

 

『おお、吉井! お前も今から戦車捜索か?』

 

『あ、カエサル! エルヴィンにおりょうに左衛門佐も! 君たちも戦車道を?』

『ああ。オリエンテーションの時の迫力に圧倒されてしまってな。お前がクラスで騒ぐからなお興味が湧いてはいたんだ。それになにより、』

『――私自身、以前から戦車道をやりたかったんだ。大洗で戦車道を復活すると聞いた時、私のソウルネームが疼いてしまったよ……!』

『あ、エルヴィンって確かドイツの軍人さんなんだっけ?』

『まぁな。エルヴィンたっての希望で参加を決めたってワケだ』

『残りの私達は特典狙いと単に楽しそうだから入った』

『ぜよぜよ』

『知ってる顔ぶれが居ると心強いよ。じゃあ早速なんだけど、ちょっと姫路さんを連れってってくれない?』

『え?』

『何、姫路……うおっ! 姫路瑞樹、さん、何で戦車道に!?』

『姫路さんオリエンテーションから1週間ぐらい病欠だったから自動的に戦車道に履修されることになったんだって』

『はあ? 生徒会はそんな融通も聞かなかったのか? というかなんだその決まり!』

『あ~、そういえば履修届の下の方に小っちゃく載ってたぜよ』

『今回の履修届はやたらと変なルールが付け足されていたが……その煽りをもろに受けた感じか』

『そうみたいなんだ。で、みんなそれぞれでグループを組んでるみたいだけど、姫路さんと組む人が居ないからさ、カエサルのチームに入れてもらえないかなって』

『……』

『そういうことなら我々は構わないが……』

『……カエサルちょっと待った』

『どうした左衛門佐』

『今ダウジングで戦車があるであろう場所に当たりを着けていたんだが、地図を見るにかなり険しい場所だぞ。姫路さんを連れて行けるか怪しい』

『左衛門佐、ダウジングできるんだ……』

『あ~、姫路さん体が弱いって聞いたぜよ』

『確かに我々だけなら大丈夫だろうが、姫路さんは厳しいかもな』

『そういうことだから他を当たってくれないか? すまないな吉井。それに姫路さんも』

『い、いえ! お気遣いなさらずに!』

『まぁ何か困ったことがあったら気軽に聞いてくれ。ネロ・クラウディウスへ様々な助言をしたセネカのようになんでも答えてやろう』

『姫路さんは病弱だし、私は病に伏しながらも友のために知恵を貸した大谷吉継になり切った方がよかったのだろうか?』

『いやいや多くの門下生を率いた吉田松陰先生を忘れてもらっちゃあいかんぜよ』

『ここはエルヴィン・ロンメル(わたし)のターンだ! お前もそう思うだろ、なぁ吉井!』

『僕に言われても……えーと、頭のいい偉人ってエジソンしか出てこない』

『……あ、皆さんお互いに「困った人にアドバイスを与えた偉人の名前」を言い合っているんですね。でしたらアルフレッド・アドラーさんが合ってるかと』

『『『それだ!!』』』

『(びくっ!)な、なんなんですか!?』

『あ、すまん。いつもの癖で』

『カエサル達って偉人の名前を言い合った後いつも「それだ!」って言うのが決まりなんだ』

『そ、そうなんですか……?』

『少し話が長くなったな、じゃあ私達は行くぞ。吉井たちも頑張れ』

『じゃあまた後でねー!』

 

『……吉井君って女子で仲の良い人が居るんですね』

『そう? 同じクラスだし普通じゃないかな』

 

『おーい! 吉井せんぱーい!』

 

『あれ、桂利奈(かりな)ちゃん? 桂利奈ちゃんも戦車道するの?』

『あいっ! なんか楽しそうだったんで! でも吉井せんぱいも戦車道するって聞いて桂利奈ビックリです!』

『あははっ。桂利奈ちゃん今日も元気いっぱいだね。まぁ僕も桂利奈ちゃんと同じかな? 戦車道って面白そうだし』

『です! いえーい!』 ←ハイタッチ

『いえーい!(パチンッ)』 ←ハイタッチ

 

『ちょっと桂利奈! 急に走り出してどうした、って吉井先輩? ……それに姫路先輩も!?』

『桂利奈、補修室送りが多いから吉井先輩とよく遊んでるって言ってたからはしゃぐのはわかるけどさぁ……』

『姫路先輩って学年トップの? 砂ぼこりでメガネが……』

『桂利奈と吉井先輩の会話って中身が無くて何だか小学生みた〜い♪』

『……』 ←明後日の方向を見ている

 

『あ、みんな! この人が吉井せんぱいだよ! で、この人は……だれっ!?』

『気づかれてなかったんですね……。えっと、二年普通ニ科Aクラスの姫路瑞稀です』

『はじめましてかな? 君たちがよく桂利奈ちゃんの友達?』

『は、はい。はじめまして1年Bクラスの澤です……』

(何だか警戒されてるなぁ)

『……あの、吉井先輩。先輩って確か二年の土屋先輩と同じクラスでしたよね? 土屋先輩は戦車道を履修しなかったんですか?』

『? 土屋先輩って誰……あ、ムッツリーニのことか。ムッツリーニは戦車に乗るより写真を撮る方が良いって来なかったんだ。誘ったんだけど』

『そうなんですか? はぁ〜よかった、のかな?』

『ここに来てから土屋先輩の気配がぜんぜんしてなかったから梓ずっと気を張ってたもんね』

『そうだ! 戦車見つけたらさ、盗撮する土屋先輩に石の代わりに砲弾ブッぱしてみようよ!』

『桂利奈それやってみたい!』

『それってすっごくエキサイティ〜ングっ♪』

『……』 ←あらぬ方向を見ている

『みんな冗談でもしちゃダメだよ。……ダメだからね!』

『……土屋くん? って一体何をされてる人なんですか?』

『ムッツリーニは寡黙なる性職者なんだ。だから敵も多いんだよ』

『は、はぁ』

 

『所で先輩たちも今から戦車探しですか?』

『あ、そうそう。少しお願いなんだけど、姫路さんを君たちのグループに入れてくれないかな? 姫路さん1人で探すのは大変そうだから』

『え゛っ』

『吉井くん?』

『ちょ、ちょっとみんなと話して良いですか?』

『いいよ』

 

『(ねぇみんなどうする?)』

『(どうするってどうしよう……)』

『(あの学年トップで凡人が近づくことは禁じられてるって噂の姫路先輩と一緒に行動するってコト?)』

『(ムリムリ〜、すっごく気まずいよ〜)』

『そうっ? 桂利奈ぜんぜん気にしないよ!』

『……』 ←耳を塞いで何もないところを見ている

『(桂利奈声でかいっ。桂利奈が気にしなくても私たちは気にしちゃうのっ。ここは断った方がいいかも)』

『(それはそれで気まずいけど、変に気を使わせるのもね)』

『(私も男と一緒に居たら彼氏が嫉妬しちゃいそうだから遠慮したいかな~♪)』

『(ん? 吉井先輩もセットって話だっけ? というか先輩たち2人だけってむしろ私たちの方が邪魔じゃない?)』

『……』 ←わずかに首を傾げて虚空を見ている

 

『そっか! 吉井先輩! 変な吉井先輩は邪魔だから遠慮したいって!!』

 

『えっ!? 僕なんかした!?』

 

『『『桂利奈ちょっと黙ってて!』』』

 

    ☆

 

『すみません。今回はご縁が無かったということで……』

『不合格通知かな?』

『どちらかというとお祈りメールというものじゃないかと』

『うちの子がご迷惑おかけしてすみません……』

『マジでゴメンなさいっ』

『桂利奈には後で艦橋バンジーの刑しときますから~♪』

『……(パシパシパシっ!)』 ←あゆみに頭蓋骨を絞められてタップしてる桂利奈

『……』 ←空のかなたを見ながらあゆみを宥めようとしてる紗希

『別に気にしなくていいよ。だからその締め技(ヘッドロック)はやめてあげてね。桂利奈ちゃんの顔が真っ青なんだ』

『ホントにすみません……じゃあ私達は行きますね』

『うん。みんなもケガしないようにねー!』

 

『あの、吉井くん。私は別に一人でも』

『そういえばバレー部の人も居たよね……じゃあ磯辺さんが居たハズ』

 

『『『それそれそれそれぇ――――!!』』』

『ぐわぁーっ!?』

『よ、吉井くん!?』

 

『キャプテン! 何かとぶつかったみたいです!』

『何ぃ~! 今日は午後の練習が出来ないからトレーニングがてら騎馬戦を組んで学園を走りこみながら戦車を探しに行こうとしたのに、こんな事故を起こしてしまうとは!? くぅっ!』

『あ、でもあれ吉井先輩じゃない?』

『近くに姫路先輩っぽい人も居ますキャプテン』

『あ、そうなの? じゃあ姫路さん頭が良いから吉井君を助けてくれるかもしれない。吉井君頑丈だしまぁ命に別状は無いね! それじゃあ行くよみんな!』

『『『はいキャプテン!!』』』

 

『行っちゃいました……大丈夫ですか?』

『……あの中に姫路さんをツッコんだら姫路さんが死んじゃうかもしれない』

『あんなに早くは走ったら胸がちぎれそうになりますしね』

『え、なんて?』

『いいいいえ何でもありません!!』

 

『は~、一通り声を掛けたけど、姫路さんと一緒に探してくれるグループが無いなぁ』

『……吉井くん』

『こうなったら杏ちゃんに手伝ってもらうしか……いやでもなぁ』

『吉井くん!』

『うえっ!? どうしたの姫路さん』

『少しは私の話を聞いてください』

『?』

『……確認ですが、私一人で戦車を探すのがダメってことで皆さんに話しかけているんですよね』

『うん。戦車を探すのって女の子一人じゃ大変だと思うし、人手が必要じゃないかなって』

『……でしたら私は吉井くんと一緒に探したいです』

『……pardon?』

『一緒に戦車を探しませんか?』

『…………………いやいやいや! それは良くないと思うよ!? 姫路さんの話を僕が口にするだけでもクラスの連中が視線だけで僕を殺そうとしてくるほどだし、何より男子と女子二人っきりで一緒に居るのはヤバいんじゃないかなぁっ?!』

『それは吉井くんのクラスが特殊なだけじゃないでしょうか? 生徒会の河嶋先輩の説明では男女で分かれて戦車を探すようにとは言われてませんでしたよね? それに一人で探すのが大変って言うのなら吉井くんも同じですよね?』

『うぐぅ、で、でもねぇ』

『それとも吉井くんは私と一緒に居るのはご迷惑でしたか……?』

『いえとても嬉しいです……はっ!』

『なら一緒に探しましょうっ。吉井くんとなら必ず戦車を見つけられる気がします♪』

そんな笑顔で言われたら断れないじゃないか……。じゃ、じゃあよろしくお願いします』

『どうして急に敬語なんですか。ふふっ、こちらこそよろしくお願いします』

『それじゃあどこを探そうか? 姫路さんはこの学園艦で戦車を見かけたことはある? 実は僕も見たことないんだ』

『私もです。そもそも本物の戦車って見たことがありませんし、きっとすごく大きいんですよね?』

『僕が知ってるのは僕の背より高くて……このぐらいのやつかな? でもそんなのが街中にあったら目立つんだけどね』

『そうですね。……では戦車がありそうな場所を探してみますか?』

『それが一番早いかな。戦車がありそうな場所……あ』

『何か心当たりがあるんですか?』

『心当たりっていうか、戦車って結局車なんだよね? だったら駐車場に行けば見つかるかも』

 

     ☆

~みほ side~

 

「……」

「……何よ華。にやにやしながらこっち見ないでよ、ねぇ何でずっと無言なのっ? こっち指ささないでよもー!」

 

 さっき沙織さんも同じことを言ってたんですよ~、と言わんばかりに沙織さんに顔を向ける華さん。

 たまに戦車が駐車場に止まってることはあるけど戦車と自家用車を一緒くたにするのはダメだと思うんだ。アレ一応許可取らないといけないんだよ?

 私は心の内でそうツッコむ。きっと沙織さんも吉井くんも知らないなりに考えた結果なんだろうし、言葉に出したら失礼だ。

 それにしても、

 

「何か思ってたより普通……」

「?」

 

 吉井君と改めて対面してみると、多少バカ……私達とそう変わらない成績が低そうな普通の男子高校生という印象を受ける。

 こんな人が校舎を壊したとかいう噂があるっていうことが少し信じられない。まさか窓ガラスを割っちゃったって言う話を誤解したとかではないだろうか?

 そんな感じで私の中から脳みそすっからかんな不良というイメージの吉井くんは無くなり一安心するのだった。

 一息ついてふと、沙織さんが思い出したようにもう一人の方へ目を向けた。

 

「てか何で姫路さんがここに居んの?」

「……風邪ひいたら戦車道を履修してました」

「何かザックリ過ぎない?」

「どうもその反応だと、同じ質問をされ続けたようですね」

「姫路殿、体調は大丈夫でありますか? 私も戦車道は初めてですが、かなりハードなモノでして……」

「そーだよ。姫路さんみたいなか弱くてお上品な優等生な人が戦車に乗るってキツくない?」

「沙織さん? 貴女の右隣を見てくださいません?」

「あはは……」

 

 駐車場で出会ったもう一人、姫路さんという女子生徒と会話に花を咲かせる皆を見てすっごく……ちょっとうらやましく思う。というか姫路さんって副会長さんと同じぐらい揺れてない? どうやったらあんな成長を遂げたんだろう?

 ……その振動でふと思い出した。この人ってこの前保健室に連れて行ってあげた女子生徒じゃないかな? いやそうだ。自分の身で確認したから間違いないだろう。

 話を聞くに多分あの強引な履修のルールの餌食になって戦車道を履修したみたいだし、姫路さんも全くの初心者なのかも。皆も病弱気味って言ってるし、戦車に乗るのにかなりのハンデを背負ってしまってる。

 私は仮にも隊長なんだ。姫路さんが体調面でトラブルが起きたら何とかしてあげないと。

 

「――えっと、姫路さん? この前は大変だったよね。体調が悪くなったら私に言って」

「……どちら様でしょう?」

 

 

 ドゴォッ! ←背中からぶっ倒れる音

 

「ねぇみぽりん! しっかりして! ――ねぇっ!」

 

 ――後から考えたら、あの時の姫路さんは意識がもうろうとしていたし、私と何があったか全然知らないよね。

 

     ☆

 

「え~と、大丈夫? 思いっきし腰ぶつけてたけど……」

「大丈夫だから、気にしないで……」

 

 10分後。

 沙織さんと華さんに慰められて立ち直った私は改めて吉井くんと向き合った。

 ともかく2人は戦車が見つからないままで困っているとのこと。私達みたいに何となく林の中を探してみたら見つかった、ということ自体が稀なんだ。学園の何処にあるかなんて手がかりも無しに探すのはそもそも無理な話なんだし。

 

「そもそも数十年前に戦車道をやってたとのことですけど、その時に使ってた備品を処分もせずにその辺に放置していたということは、戦車道を廃止にした時期より前に紛失した物じゃないでしょうか?」

「紛失したってことだけでもとんでもない話ですが、戦車は外に放り出すなんて何事か! って感じですっ。戦車という頑丈で繊細なものはコンクリ造りの倉庫で厳重に保管するべきなんです。そうですよね吉井殿!」

「頑丈で繊細、ってどっちなの秋山さん? でもリユースショップに売らないでそこらに放置するのはもったいない気がするなぁ。……『殿』?」

「しかし姫路さんの言う通りだとすれば、学園に隠された戦車は片手で数えられる程度しか無いのかもしれません。こうなると生徒会が紛失した戦車の数を把握してるということも薄そうです」

 

 華さんと姫路さんの推理は案外的を得ている気がする。もしかしたら他のグループも見つからないかも……。

 

「……てことは、吉井は戦車無しで戦車道履修すんの?」

「えっ。それは困るよ。僕も戦車に乗りたいし」

「吉井殿なら戦車が無くても試合に出られそうですよね。ほら、銃弾が飛び交う中で砲弾を持ちながら戦車にぶつかっていったり」

「流石に死んじゃうよ!?」

 

 ……どうしよう。そういうイメージが湧いてしまう……。

 思わず私は吉井くんから顔を背けて震えていると、華さんがぽん、と手を打って、

 

「でしたら、他の方のお話を参考にしてみては如何でしょう?」

「そっか。私達が見つけてるなら他の人たちももう見つけてるかもだし、電話してどんなとこにあったか聞いてみればいいんじゃない?」

 

 2人の意見にこの場に居る皆が納得した。

 私達が学校を出て戦車を見つけるまでの合間が短いから可能性は低い気がするけど、少なくとも情報共有すれば手がかりはありそう。

 

「あ、でもまだ全員の電話番号は知らないや……誰が居たっけ?」

「さぁ……たしかバレー部の方は居ましたよね?」

「カエサル殿達は居ましたけど連絡先は……」

「ごめん。私転校生だから戦力になれない」

「あ、転校生の方だったんですか。初めまして姫路瑞樹です」

「(グサッ)――今、自己紹介、しないで」

「僕みんなと連絡できるよ?」

 

 手を挙げる吉井くんがすごく眩しく見えるよ……! 人当たりが良さそうだとは思ってたけどこれほどとは……! さっき頭が悪そうって考えてごめん。

 そうして吉井くんの『もしもし作戦(仮)』が始まったのだった。

 

「もしもしカエサル? ちょっと聞きたいことがあるんだけど、あ、そっちは戦車見つかった? ――え、見つかったの! 早くないっ? ううん、こっちはまだ見つけられなくて……うん、そう、ちなみに何処にあったの?」

 

 吉井くんの会話から察するにもう戦車を見つけたグループが居るらしい。なんて幸先の良い展開だろう。

 でもカエサルって外国人の人かな? そういえば金髪の人が2人ほど居たような。

 

「――うん、わかった。ありがとう。それじゃあ後でね(ブツッ)戦車沼に沈んでたって」

「何でっ!?」

「地盤が雨風の影響で打ち捨てられた戦車の重みで沈み、その上に雨水が溜まり沼になったのでしょう……風流ですね沙織さん」

「そうかな~?」

「ま、まぁ車両によっては耐水性のある戦車もありますし……エンジンがやられてなければいいのですが」

 

 放置するにもほどがある……! 地形が変化するほどほったらかしって何十年そのままにしてたのっ?

 そんな状態ならもうレストアか廃処分するしかないのに……ま、まぁ戦車があったことには変わりないよね……?

 

「それじゃあ次、行ってみましょう」

「姫路さんって結構マイペース?」

「喋り方といい五十鈴殿にそっくりですね」

「そうでしょうか? わたくしには沙織さんとみほさんが居ますが」

「五十鈴さんそれ煽ってる?」

 

 暗に姫路さんをぼっち呼ばわりしてないかな?

 ともかくカエサルさんの例は特殊だったわけで、次は普通だと思う。

 

「あ、もしもし桂利奈ちゃん? そ『吉井せんぱい戦車あったー!!』ぎゃあああーー!!??」

「「「うわぁ……」」」

 

 スピーカー設定にしてないのに離れた私達にまで聞こえる大声を間近で受けた吉井くんがのたうち回る。むごい……。

 

「吉井殿誰に電話したんでしょうか」

「とても元気な方みたいですが」

「この声は、一年の子ですね。私達さっき会ったんです」

「へぇー、吉井結構顔広いね。一年なんて私でもまだ顔を合わせたことないんだよね」

「どうも補修室に送られた時に知り合ったみたいですよ?」

「「「ああ、そういう繋がり」」」

 

 皆は納得した顔をするけど、補修室に送られたって? この学校は私にはまだわからないことばかりだ。

 いつの間にか復活していた吉井くんが驚いた顔をした。

 

「――うん、すごいね君たち! それじゃあ帰る時気を付けてねばいばーい(ブツッ)戦車ウサギ小屋にあったんだって」

「だから何でっ!?」

「廃止になった電車を海に沈めて魚の住処にするという話を聞いたことはありますが……」

「武骨でカッコいい戦車にふわふわでかわいいウサギなんてミスマッチすぎませんか?」

「ウサギは何にでも合うんです。いえ、戦車こそウサギに合うように設計されていると言っても過言ではないんです」

「ちょっとどしたんみずきち? 一旦落ち着こ? ね?」

 

 ウサギ小屋と戦車……って何なの? わざわざ戦車をウサギ小屋に詰め込んだのか、はたまた戦車が放置された後にウサギ小屋が建てられたのか。どちらにしても何の目的があってそんなことしてるのこの学校の人。

 もう、深く考えないでおこう。

 

 というわけで3度目の正直。(?)

 さっきの桂利奈さんと同じく補修室送り仲間だという磯辺さんに連絡を取る吉井くん。

 

「もしもし磯辺さん? 今何処に居るの? ちょっと戦車探しがどれぐらい進んでるか知りたいんだ。――あ、見つかったの?」

 

 今回はいきなり鼓膜を破壊されるということは無かったようだ。

 

 

「――えーとちょっと待って磯辺さん。崖ってどこの崖?」

「ちょっと待って吉井君」

 

 何で戦車を探してるのに崖が出てくるの? 打ち捨てられてるとしても普通は平地に放置されるもんじゃない?

 でも私の疑問は電話をしてる吉井くんには聞こえなかったみたい。

 

「――え、見えてる? 僕たちが? 何処から……あ、あれ? 今手を振ってるのが磯辺さん?」

 

 きょろきょろと辺りを見回した吉井くんに釣られて私達も見渡すと、遠くの山の斜面に体操着姿の小さい影が元気いっぱいに手を振っている姿が見えた。思わず私達も手を振り返した。

 ………………。

 

「いや、何でっ!?」

「ち、ちかくへんどうで」

「ここはもうフォローのしようが無いよ秋山さん。私もわかんない」

「ん〜。わたくしには戦車が見えませんが、もしやあの洞穴の中にあったということでしょうか?」

「洞穴って、あの人の横辺りにあるあのぼんやりとした黒い点のことですか? 五十鈴さんって目が良いんですね」

 

 昔の戦車道の人は何を考えてそんなところに放置したんだ……。

 

 そして。

 

「林の中。沼の中。ウサギ小屋。崖の洞穴。……ここから導き出される戦車がありそうな場所は! じゃあ姫路さんから!」

「はいっ? えーと、ゴメンなさい、わかりません」

「わたくしも法則性を導き出せませんでした……」

「ノーコメントで」

「林、沼まではありえそうなのに、ウサギ小屋と崖がノイズ過ぎます……」

 

 皆が意見を言った後、吉井くんを含めた全員のすがるような視線を向けられる。

 私はしばらく空を仰いで、吉井くんの肩に手を置いた。

 

「――砲弾の重さは最大でも20キロぐらいなの。まずはダンベルを持って走り込みからかな」

「特攻しろと!?」

 

 仕方ないよ。戦車が無いんだもの。試合にも出られないよ。まぁ人員があぶれたとして補欠要員として所属するとしても、吉井くん男子だし。吉井くんが出来ることなんてマネージャーみたいなことぐらいだよ。

 正直男子戦車道は需要が少ないから割かれるリソースも少ないし、生徒会も本気でサポートするつもりもないかもしれない。そもそも男子は吉井くんしか居ないからどうにもならないよね。

 

「西住さん、本当にどうにかならない? 杏ちゃんから5台見つけないと怒られるんだよ」

「う~ん、でも吉井さ、戦車の数自体女子で使う分は揃ってない? 格納庫にあった奴、林にあった奴、それとさっきの合わせて5台でしょ? グループの数も5つだしちょうどでしょ」

「そう言われるとそうですね。吉井さんの分はありませんが、活動するには何とかなりそうですが」

「まだ諦める必要はありませんよ。何なら後日見つかるかもしれませんし」

 

 皆が口々に慰めの言葉をかけてあげてるけど、吉井くんは首を横に振った。

 

「せめてもう1台は必要だと思うんだ」

「でも男子は吉井くん一人だし、秋山さんの言う通り急いで用意することも無いんじゃないかな?」

「いや、僕じゃなくて姫路さんには必要だよ?」

「……え、私ですか?」

 

 あっけらかんと言う吉井くんに目を丸くする。

 言われてみれば姫路さんは吉井くんと一緒に行動してるものの、女子の戦車道の履修生に違いないんだ。グループを作れなかった所為で『あぶれた人員(ほけつこうほ)』となってるけど、戦車道を行なうには吉井くんと同じく戦車を必要としている。2人の立場ははおんなじなんだ。

 

 だけど目の前の戦車に乗りたいと言った男子生徒は、自分のことを後回しにしていいから見つけた戦車を姫路さんに譲ると言っているんだ。

 

 私は吉井くんのことは噂で聞いた程度しか知らない。実際に会ってもその噂が頭をチラつくぐらいの印象しかなかった。

 けれど私は吉井くんのことを誤解していたのかもしれない。

 吉井くんってとっても優しい人なんだと。

 

「まぁ、特典を貰いつつ練習に出てこなくていいならラッキーだよねっ」

 

「クズですね……」

 

 秋山さんの目つきが養豚場のブタを見る感じになったのは何でだろう?

 私が吉井くんのことを見直した横で、姫路さんは顔を赤くして、

 

「吉井くん、それほどまで私に戦車道をしてほしいんでしょうか……? そういえば学校でも戦車道をしている女性は男の人から魅力的に見えるって話をしてましたし、吉井くんもそうなんでしょうか? ――あのっ西住さん!」

「どうしたの?」

「私、家にあるおもちゃの戦車にしか乗ったことが無いのですが、本物の戦車を乗れるようになりたいです。ですから、戦車の乗り方を教えてください!」

「姫路さん……! もちろんだよっ! 必要なことならなんでも教えてあげるね」

「ありがとうございます!」

 

 姫路さんがやる気になってくれたことはとっても嬉しいな!

 やっぱり戦車道って人と人を繋ぐものなんだ!

 

 

「ねぇねぇ華、これってお互いにあーなってこうなってそういうことじゃない? 絶対そうだよ!」

「それは邪推というものでは? 本人たちに直接聞くのはまだやめておいた方がいいですよ」

 

    ☆

 

「話を戻すけど、戦車がありそうな所って他に心当たりはある?」

 

 改めて吉井くんに問いただしてみる。聞けば吉井くんって学校の奉仕活動をしていて学園艦のあちこちを回ることが多いとか。地理に関しては転校生の私より吉井くんの方が詳しいハズ。

 

「心当たりって言っても……学園艦の内部には流石に無いよね?」

「そこもありましたか。けど実際に陸上を走ってた戦車が地下の船内にあるとは到底考えられませんが……」

「ていうかもう時間的に厳しくない? そろそろ生徒会のとこに戻らないとどやされるんじゃない」

「……地図で見つかりそうな場所を確認だけしてみます? 探すのは後日ということで」

「うん。それがいいかも」

 

 そう話し合っていた時、

 

「ん? ちょっとゴメン、電話。……杏ちゃんからだ」

 

 ああ、あんあんっ♪ という陽気な音楽にみんなが肩をビクつかせ、それが吉井くんの携帯端末からとわかってほっと胸をなでおろした。電話が怖いの?

 というか吉井くん、角谷生徒会長とも仲が良いんだね。

 吉井くんは通話ボタンを押した……つもりみたいだけど、一緒にスピーカーも押したみたいで携帯端末から生徒会長の声が響く。

 

『もしもし吉井~? 今何処に居んの? そろそろ最初に集まったとこに戻っといで』

「え、もう? まだ戦車見つけられてないんだよ。今え~と、西住さん? 達と一緒に居るんだけど」

『おん? まだ見つけてないの? それに西住ちゃんと一緒? ……んじゃあそいつらにも戻るよう伝えてね』

 

 生徒会長の注意もバッチリ聞こえてる。

 でもそっか。そろそろかなって思ってたけどもう戦車探しの時間はおしまいなんだ。

 結局吉井くんと姫路さんの分の戦車は見つからずじまいだし、これからどうしようかな?

 けど吉井くんは引き下がる様子を見せず、

 

「お願いもうちょっと時間くれない? もう少しで見つかりそうなんだよ~!」

『もうちょっとで見つかるなら時間はいらないはずだけどねー? 何、心当たりとかあんの』

「それは、え~と……」

「すみません。こっちを向かれても何も思いつかないです吉井殿」

 

 吉井くんのすがるような視線を向けてくるけど流石にいい案は思いつかない。

 どうにかしてあげたいけど……そう思ってた時、姫路さんがふとひらめいたように口にした。

 

「戦車道をしてた頃から学園に居た方は何か知っていらっしゃるんじゃないでしょうか?」

「そうそう! 戦車道が再開した時に居た学校の人って誰か知ってるっ?」

「文脈がめちゃくちゃだよ……」

「その聞き方だと今現在に居る人が全員が対象になっちゃわない?」

 

 しかも姫路さんが言ったことを鵜呑み……。

 けど生徒会長は吉井くんの言うことをじっくり飲み込んで消化できたみたいで、

 

『戦車道があった頃から居る人ー? ……それってあの人じゃね?』

「あの人って?」

 

 

『ババ……学園長』

 

 ……この人、学園の偉い人をババァって言いそうになってなかった?




ガルパンでは桂利奈ちゃんやアヒルさんチームが好きです。
アホの子が好きなんですかね。

5月10日に最後の部分のストーリーを変更しました。
このストーリーのまま進むと、今後の展開に矛盾が生じることと改めて読み直すとギャグとして面白くないと判断したためです。
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