バカと乙女と戦車道!   作:日立インスパイアザネクス人@妄想厨

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 問 以下の戦車道の用語を日本語に訳し、またその使用例を書きなさい。
『パンツァー・フォー』

西住みほの答え
『訳:戦車前進
 使用例:戦車を一斉に進ませるときの掛け声』
教師のコメント
正解です。Panzer=戦車、vor=前進する、というドイツ語の掛け声です。英語ではないので正解者は少ないと思っていましたが、流石は戦車道を履修していることはありますね。

土屋康太の答え
『訳:パンツ大好き
使用例:一言で女性用下着の素晴らしさを讃える魔法の言葉』
教師のコメント
ネットスラングで『パンツァー』→『下着好き』。意味としては合っていても決してテストの問題にしません。

吉井明久の答え
『訳:パンツだ、ふぉー!
 使用例:盗られたパンツを取り返した時に出る歓喜の声』
教師のコメント
男子がパンツを盗られる場面はそうそう無いと思います。


1時間目 友達と戦車道と転校生、です その1

 お昼の休憩時間を報せるチャイムが鳴った。

 今日も何事も無く半日を過ごしてしまってついため息を吐いた。まともにクラスの人とも話したりできなかったし、これといったイベントも無かったからね。

 ……朝からの騒動が頭の中でリフレインされて集中できなかったのもあるかも……。

 机に残った文具をなおしているうちに教室からは人が居なくなっていた。自分のどんくささにまたため息を吐いた。

 

 と、

「へい、かーのじょ」

 陽気な声に振り向くと、2人の女生徒が居た。

1人は茶髪のセミロング、ちょっと眉毛が印象的な人当たりの良さそうな人。もう1人は黒髪長髪というヤマトナデシコの見本みたい。あとくせ毛なのか前髪の一部が跳ねている凛とした人でだった。

「私達今から食堂に行くんだけど、一緒に行かない?」

 願っても無い申し出に一瞬頭が回らず、かけられた言葉の意味を理解して内心喜びの声を上げた!

 転校してきてろくに目も合わせきれなかった私に声を掛けてくれるなんて……! 緊張のあまり返す言葉が纏まらない。

 落ち着いて。ただ『自分も行きたいです』的な言葉を返すだけ。そう、素数を数えるんだよ。素数、素数……。

「あ、そ、す、ょろこんで!」

 噛んだ。素数って言いかけた。穴があったら入りたい……。

膝から崩れ落ちそうになる私に2人はくすりと笑って、

「もー慌て過ぎだよぉ~。思ってた以上に緊張しぃだったんだね西住さん」

「ふふ。落ち着いてくださいね西住さん。……転校してきてあまり話されてこなかったから、1人を愛してる孤高な方と思ってましたけど」

「え、いや、そういう人じゃないです……」

「『私の残された時間を君に捧げよう……』でしたっけ?」

「それ前に私に声かけてきたなんか痛い人じゃん! 放課後帰ろうとしたら急にそんなこと言われて訳分かんなかったし人も残ってたからすっごく恥ずかしかったんだからね!! 思い出させないでよもー」

「――沙織さん、いつも言ってるじゃないですか。花言葉のような言葉を言う方ほど情熱的な方なんですよ。情熱的な恋がしたいと公言してる沙織さんは何処へ行ったのですか?」

「聞いたことないんだけど!? 私にも好みはあるんですぅー!」

 にこにことたおやかに微笑む表情を崩さない撫子さんに眉を寄せプぅ、と頬を膨らませてツッコむ眉毛さんの流れるような会話劇に私はただ戦慄してしまう。

「こ、これが、女子高生のコミュニケーション……!」

「わお、この子結構拗らせてるよ華」

「どの口が言ってるのですか沙織さん?」

 二人の呆れた視線が痛い。

 

 でも二人を見ていて阿吽の呼吸ってこういうことなんだろうな、と思った。長い付き合いだからこんな軽口を叩き合えて、それでいて楽しそうな感じ。すっごく羨ましい。

「――ああ、いきなりごめんね。こっちから話しかけたのに勝手に変な方向に行っちゃって」

「ごめんなさい西住さん。からかいに来たわけじゃないんです。私達は本当に西住さんと一緒にお昼に行きたいと思って」

「そうそう! それでどうかな?」

 断る理由なんかない!

 2人の申し出に私はぶんぶんと首を縦に振った。

 

      ◆

 

「ねっ、名前で呼んで良い?」

「え?」

「みほ、って」

 それからはとんとん拍子で楽しくて嬉しいことが続いた。

「も、もちろんです!」

「あ~、あと敬語もやめない? 無理してる感満載だしさ」

「えっと、そう、かな?」

「ええ、自然体の方が私達としても接しやすいです」

 名前で呼び合ったり、一緒にご飯を食べたり。

 どんなことが好きで、どんなことが嫌いか、近くにできたカフェの店員がかっこいいとか、モテるモテないで茶化し合ったりとか。

 そんな他愛のない事ばかりだけど、私にとっては新鮮な事ばっかりで、

「なんだか高校生みたい~!」

 薔薇色の青春! 華の学園生活!

 そうこれだよ! 私が憧れてたのはこういう青春なの!

『よぉ沙織。お前も昼食か……って何だそいつ? 頭かきむしって悶えてるが大丈夫か?』

『あ、ごめんね雄二。さっき言ってた転校生の子、想像以上にナイーブだったから今日一緒に食べれないわ。あとこれ嬉しさあまっての行動だから大丈夫だと思う。たぶん』

『そうか……だったら今日はやめとくか。そんじゃあ俺は明久から昼飯をちょろまかしにいくか』

『ほどほどにしときなさいよー』

 そんな会話も気にならないほど私は浮かれていた。

 武部さんは明るくて親しみやすい人で、こんな私でも友達になってくれた。ちょくちょく挟む恋愛話は私にはちょっとハードルが高いけど、聞き手を飽きさせないトーク力はすごいなと思った。

 五十鈴さんは落ち着いてて、芯が強そうで、大人っぽい。初見で感じた大和撫子のイメージはまさに正しく、華道をしているとか。女性らしくて羨ましい。だから場の空気を和ませる包容力を彼女から感じるんだ。

 2人とも私にはもったいないくらい素敵な人。転校初日でこんな人達と出会えたことが信じられないのに、友達にまでなってくれた! 

 本当に大洗に来て良かった!

 

 

     ◆

 

 

 

「必修選択科目なんだけどさぁ~、戦車道取ってね。よろしく~」

 

 大洗に来て良かった。

 でも今、ここに来たのは間違いなんじゃないか? そう思ってしまった。

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