ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース 作:宇宙刑事ブルーノア
改めまして、新年あけましておめでとうございます。
今年も『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』をよろしくお願い致します。
『劇場版 ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース ~炎のさだめ~』
チャプター5『突撃せよです!』
ウサギさんチームが、エリカと相討ちとなっていた頃………
グロリアーナ・プラウダ連合に追われるあんこうチームととらさん分隊は………
大洗町・町役場………
「コレからOY10地点を通過します!」
「SIC EST!」
「御意!」
「ALLES KLAR!」
みほがそう言うと、カバさんチームのカエサル、左衛門佐、エルヴィンから、其々ラテン語、日本語、ドイツ語での了解が返って来る。
既に大洗町役場の辺りでは、カバ・ワニ、レオポン・おおかみ、アヒル・ペンギン、アリクイ・キツネ、カメ・ツル、カモ・マンボウ、そして知波単の玉田車と福田車にその随伴歩兵分隊が防衛線を展開していた。
そして、あんこうチームととらさん分隊が、大洗文化センター脇の道から、大洗町役場の前を通り過ぎる道を通過する。
「撃てっ!!」
その直後、エルヴィンの掛け声と共に放たれた砲弾が、あんこうチームととらさん分隊を追っていたグロリアーナ・プラウダ連合の先頭に居たT-34-76を撃破する。
それを皮切りに、役場前防衛線の全部隊から一斉に砲撃と銃撃が開始される。
「弾幕を切らすなっ!」
「ツァーリの突っ込みに注意しろっ!!」
ブローニングM1919重機関銃やバイポットを立てたMG42で弾幕を張っている大洗歩兵達は、ソ連軍並みのツァーリ歩兵達の突っ込みを警戒する。
そこで、三式が放った砲弾が、新たにT-34-76を1輌撃破する。
「命中したぴよ!」
「撃破数更新ぞなもし!」
「上手くなったものだもも!」
「油断するな! 相手はまだまだ居るぞっ!!」
三式改の車内で、歓喜の声を挙げるアリクイさんチームに、ハンターの注意が飛ぶ。
「ええい! 一体突撃は一体何時するのだっ!!」
一方で、その三式改と八九式に挟まれる形で陣取っているチハ(新砲塔)では、玉田がそう不満の声を挙げる。
「いやいや、だから防衛戦で突撃はしませんって」
「コイツ等は死にたがりなのか?………」
武志が宥める様にそう言うと、大詔が呆れた様に吐き捨てる。
『コチラ西。コチラもゆっくら健康館にて防衛線を展開。再度黒森峰・サンダースの足止め中。それから、ハムスターさん分隊の皆はコチラに合流したわ』
とそこで、ゆっくら健康館にて防衛線を形成していた絹代からそう通信が入る。
「了解。この間にチャーチルを狙いつつ足の速いクルセイダー部隊を処理します。それまで持ち堪えて下さい」
「こちら神大。了解した」
『任せておいて』
みほがそう言うと、大洗町役場防衛線の指揮を執っている迫信と、ゆっくら健康館防衛線の指揮を執っている絹代から返事が返って来る。
「とらさん分隊。コレよりクルセイダー迎撃作戦に入ります。手筈通りにお願いします」
「了解。とらさん分隊、一時離脱します」
続いて、みほは弘樹に向かってそう言うと、弘樹がそう返して、とらさん分隊の面々がⅣ号の随伴から数名ごとに班を作って分散して行った。
「カチューシャさん、如何しますか?」
グロリアーナ・プラウダ連合のフラッグ車であるチャーチルは、万が一を考えて後退し、オレンジペコが総指揮官であるカチューシャに問う。
「慌てるんじゃないわよ! 前進に決まってるでしょっ!! こんなチマチマしたチビっこい連中! 削って削って削り取って、ピロシキの中の御惣菜にしてあげるわ!!」
当のカチューシャは、強気に攻勢に出ようとしている。
『Ⅳ号、今の内に回り込んでチャーチルの背後を突くという事はありませんか?』
『みほさんならあり得ますね、クラーラ』
そこでクラーラとノンナは、みほが背後からチャーチルを攻撃する積りなのではと推測する。
「ちょっと貴方達! 日本語で話しなさいよ!! ノンナ! 先鋒!!」
とそこで、またロシア語での会話に文句を言いつつ、カチューシャがノンナに前に出る様に命じる。
「ハイ」『フラッグ車の護衛、よろしく』
『了解』
カチューシャへの応答だけ日本語で返すと、ノンナはクラーラにチャーチルの護衛を任せ、前進する。
「ローズヒップさん、Ⅳ号の狙いは恐らく私達です。そこを考えて行動して下さい。くれぐれもスピードを出す事にばかり囚われないで下さいね」
一方でオレンジペコもみほの狙いを読んでおり、遊撃で動いているローズヒップにそう通信を送る。
「勿論でございますわ!」
それに対し、相変わらず微妙に間違っているお嬢様言葉で返すローズヒップ。
「IS-2が前に出て来た! 各員、警戒せよ!」
一方で、ノンナのIS-2が前進して来るのを見て、迫信が大洗町役場防衛線メンバーにそう呼び掛ける。
一方、離脱したⅣ号の方は………
「………また来たぞ」
再び姿を現したクルセイダー部隊を見て、麻子が若干うんざりした様子でそう呟く。
「発見ですわぁ! やっつけますわよぉっ!!」
そんな麻子の様子など露知らず、ローズヒップが率いるクルセイダー部隊はⅣ号へと向かう。
発見と同時に先頭に居たローズヒップ車が発砲するが、狙いが甘かったので外れる。
「クルセイダー部隊、来ました。コレより誘導を開始します。とらさん分隊の皆さん、お願いします」
そしてみほは、喉頭マイクを押さえながらそう指示を飛ばすのだった。
更に、正面からクルセイダー部隊に向かってⅣ号が発砲。
クルセイダー部隊は広がる様にして躱すと、Ⅳ号はその空いた隙間を通ってクルセイダー部隊を突破。
すぐさまクルセイダー部隊は一斉にスピンターンをし、Ⅳ号を追って行った。
再び、大洗町役場防衛線では………
「アゴーニッ!!」
「ファイヤーッ!!」
プラウダ戦車部隊とツァーリ・ブリティッシュ砲兵部隊から、大洗町役場防衛線の部隊に激しい砲撃が見舞われる。
「皆無理しないでねー」
「会長は無理して下さいっ!!」
「エキシビションだからって、少しはやる気出そうよ」
今回は砲手を桃に譲っている為、車長の杏だが、やはり何もしないで干し芋を齧っており、柚子と装填手の蛍からそんな声が飛ぶ。
と、前進して来るIS-2の砲塔に砲弾が命中したが、分厚い傾斜装甲の前に弾かれ、IS-2から反撃の砲弾が放たれる。
「直線になるぜよ」
「1ブロック後退」
「全部隊、1ブロック後退だ」
と、距離を詰められた為、迫信は全部隊に1ブロック後ろに下がる様に指示する。
クルセイダー部隊に追われるⅣ号は、狭い路地をクルセイダーからの砲撃をギリギリで避けながら逃げていた。
「先頭車、何をやってますの! オレンジペコさんの御紅茶が冷めてしまいますわ!!」
中々撃破出来ない上、先頭車を奪われてしまったローズヒップが、若干イラついた様に声を挙げる。
とそこで、不意に開けた場所に出たかと思うと、Ⅳ号が素早く反転!
クルセイダー部隊の先頭車に主砲を突き付けた!
「!?」
先頭のクルセイダーが思わず急ブレーキを掛けた瞬間、Ⅳ号は発砲!
粗零距離からの砲撃を受け、クルセイダーは若干弾き飛ばされて白旗を上げる。
そしてその隙を突き、Ⅳ号は再び細い路地へ入る。
「!? しまったっ!?」
撃破されたクルセイダーを見て、ローズヒップ車が慌てて停止すると、後続の3輌のクルセイダーも急停止する。
「今だっ!!」
「コレでも喰らえっ!!」
するとその瞬間!
民家の塀の向こう側に隠れていたとらさん分隊員が姿を現し、最後尾のクルセイダーに向かって火炎瓶と梱包爆薬を投げつけた!
炎上した後、爆発してクルセイダーは白旗を上げる。
「!? マジですの!?」
「続けーっ!!」
「相手に随伴歩兵は居ないぞっ!!」
ローズヒップが驚きの声を挙げた瞬間に、更に続々と隠れていたとらさん分隊員達が姿を見せる!
「! バニラは後退! グランベリーは私と一緒にⅣ号を追いますわよっ!!」
しかし、彼女とて部隊長。
素早くそう指示を出すと、後退を指示したバニラ車がバックのまま最後尾の、そしてローズヒップが先頭の撃破されたクルセイダーを押しのけて離脱する。
「ゴメンあそばせっ!!」
「ああ、クソッ! 逃げられたっ!!」
「西住総隊長! 申し訳ありません! 1輌しか撃破出来ませんでした!! 1輌が後退! 2輌が後を追っています!!」
地市が悪態を吐く中、楓がすぐにみほへ報告を送る。
『分かりました! 任せて下さい!!』
みほはそう返すと、Ⅳ号は後退して来るクルセイダーが出てくると思われる路地へと向かわせた。
後退したクルセイダー・バニラ車は、バックのまま目一杯飛ばす。
そして遂に、露地から飛び出たが………
その瞬間をⅣ号に狙い撃ちされ、白旗を上げた。
撃破したバニラ車の横を擦り抜けて行くⅣ号を、ローズヒップ車とクランベリー車が追う。
大洗町役場防衛線………
徐々に距離を詰めて来るプラウダ戦車部隊。
防衛線は大分後退しており、特に三式改、チハ(新砲塔)、八九式が陣取っている大洗町役場の正面玄関は、砲撃を多数受け、崩壊寸前である。
「限界か………総員、撤収準備っ!!」
防衛線が持たないと判断した迫信は、大洗町役場防衛線の面々にそう命じる。
「そろそろ撤収するよぉ」
「「「「「分かりましたっ!」」」」」
それをナカジマが中継して皆に伝え、一斉に返事が返って来る。
「ん? 何だ? ええい、また不調か………申し訳ありません! 聞き取り難かったのでもう1度お願い出来ますかっ!?」
しかし、旧日本軍製故か、通信機の感度が悪い玉田車は命令が聞こえず、復唱を求める。
「後退しますっ!!」
すると、傍に居た八九式から、砲塔の覗き窓越しに典子がそう叫ぶ。
「ハイ?」
「後退です!!」
「「コ・ウ・タ・イ!!」」
後退だと、一言ずつ区切って玉田に伝達する典子とあけび。
「ト・ツ・ゲ・キ………! おおっ! その言葉! 待っておりましたぁっ!!」
しかし、玉田は何を如何聞き間違えたのか、突撃だと誤解する。
そして、玉田のチハ(新砲塔)が防衛線を放棄し、グロリアーナ&プラウダ連合に正面から向かって行く。
「うえっ!?」
「んなっ!?」
「ええっ!?」
「何っ!?」
「オ、オイッ!?」
「何を考えてんだ、アイツはっ!?」
突然単騎で特攻を掛け始めた玉田に、大洗町役場防衛線の面々は仰天の声を挙げる。
「突貫っ!!」
そんな一同の様子など露知らず、玉田は真正面からグロリアーナ・プラウダ連合に突っ込んで行く。
当然、そんな事をすれば………
「!? ぎゃああっ!? む、無念っ!!」
案の定、玉田のチハ(新砲塔)は、IS-2の砲弾を真面に喰らい、引っ繰り返った後1回転して呆気無く白旗を上げた。
「来たぞーっ!!」
「逃げるにゃーっ!!」
八九式と三式改が、慌てて撤退を開始する。
「玉田先輩ーっ! よくもよくもーっ!!」
しかし、福田の九五式だけは、玉田の仇を取ろうと突撃しようとする。
「ストッープッ!!」
だが、八九式がその行く手を遮る様に停まり、止めさせる。
「止めないで下さい! このままでは面目が立ちませんっ!!」
「今此処でやられちゃったら、それこそ面目立たないよ」
「後でキッチリ仕返しすれば良いじゃない」
尚も旧知波単精神を発揮しようとする福田を、車体ハッチを開けて姿を見せた妙子と忍がそう説得する。
「しかしっ!!」
「オイ、福田ちゃんやったかっ!?」
とそこで、撤退していたペンギンさん分隊の中に居た大河が足を止め、福田に声を掛けた。
「ハ、ハイッ!!」
「さっきから潔く散る事ばっか考えとるようやけど、それが美しいとでも思っとるんか!?」
「なっ!?」
「美しく最後を飾る暇があるなら、最後まで美しく生きてみーやっ!!」
「!!」
その言葉に衝撃を受けた様な様子を見せる福田。
「へえ、珍しく良い事言うじゃない」
「愛読しとる漫画から受け売りや! それより撤退や撤退!!」
忍が茶化すようにそう言って来るが、大河は気にせずに撤退を急がせる。
「~~~♪~~~♪~~~♪」
そんな中、ノンナが鼻歌を歌いながら、ポルシェティーガーに照準を合わせる。
………歌っている歌が『バイバイブラザー』なのは御愛嬌である。
一方、その頃………
ゆっくら健康館防衛線では………
「う~~ん、やっぱり火力的に厳しいわねぇ………」
チハ(旧砲塔)のハッチから姿を見せている絹代がそう呟く。
現在ゆっくら健康館防衛線は、彼女のチハ(旧砲塔)と知波単の三式改、四式、五式に、カレンのハッピータイガーとサンショウウオさんチームのクロムウェルを中心に大洗・知波単歩兵達によって構成されている。
しかし、攻めて来ているのは黒森峰・サンダース連合であり、装甲の厚い黒森峰戦車部隊が前面に出て、盾になる様な陣形を執っている。
チハに比べて火力的に優れていると言える三式改、四式、五式ではあるが、相手が分厚い装甲を持つドイツの重戦車部隊とあっては相手が悪かった。
チハ(旧砲塔)は当然ながら、三式改や四式、そしてクロムウェルの主砲でも火力不足だった。
カレンのハッピータイガーや、88ミリ砲を搭載した五式は対抗出来ているが数が違う。
戦況はジリ貧であった。
「西隊長! 駄目です! 支えきれませんっ!!」
そこで、カレンからそう通信が入って来る。
「分かってる。さて、如何したものかしら……?」
それに返事を返しながら、絹代は打開策を考える。
「こうなったら私達が突っ込んで攪乱を!………」
「聖子! 無茶を言わないで下さいっ!!」
「決勝戦の時とは状況が違うよ~」
聖子が決勝戦の時の様に懐に飛び込んで攪乱しようとするが、あの時とは状況が違うと砲手の優と通信手の伊代が止める。
「確かに、飛び込むには数が多過ぎるぜ………」
「あ~あ~、『ミハエル・ヴィットマン』なら、これぐらい楽に蹴散らすんだろうなぁ」
操縦手の唯と装填手の郁恵もそんな言葉を漏らす。
「『ミハエル・ヴィットマン』……?」
ふとそこで、絹代は郁恵が口にした旧ドイツ軍の化け物戦車乗り『ミハエル・ヴィットマン』の名を反芻する。
「隊長?」
「如何しました?」
突然考え込む様な素振りを見せた絹代に、カレンとライが首を傾げる。
「! そうよ! 『ミハエル・ヴィットマン』だわっ!!」
すると、絹代は何かを思い付いた様に、左手の掌に、握った右手を打ち付けたのだった。
一方、ゆっくら健康館防衛線の面々から攻撃を受けている黒森峰・サンダース連合の面々は………
ティーガーⅡとパンター達が前面に出て、ゆっくら健康館防衛線の面々からの砲撃を自慢の装甲で弾き飛ばしながら、時折応戦しつつ、ジリジリと距離を詰めて行く。
「悪いわね、まほ」
「いや、気にするな。盾になるのも重戦車の役割だ」
ケイにそう返し、まほは黒森峰戦車部隊をゆっくりと前進させて行く。
「クックック………このままジワジワと押し潰してやるわ」
(ヒッデェ顔だな、オイ………)
その様子に思わず下衆な笑みを浮かべるアリサと、そんなアリサの姿に呆れるボブ。
するとそこで………
突如としてゆっくら健康館防衛線からの砲撃が途絶えた。
「?」
「砲撃が止んだ?」
不意に砲撃が止んだ事を訝しみ、進軍を停止させるまほとケイ。
「! まほ! チハが1輌接近して来るぞ!!」
「!」
そこで都草がそう報告を挙げ、まほはゆっくら健康館の方へと目をやる。
「…………」
そこには、不敵な笑みを浮かべ、知波単の校章が描かれた旗を付けた竿を右手で掲げ、キューポラから姿を晒している絹代のチハ(旧砲塔)が、ゆっくりと前進して来ていた。
「西 絹代………」
「ワオッ! コマンダー自らお出まし!?」
絹代の姿を見て目を細めるまほと、若干ワクワクしている様な様子を見せるケイ。
「…………」
すると絹代は、左手に握っていた信号ラッパを口に当てると、徐に突撃ラッパを吹き鳴らした。
「突撃ーっ!!」
そして、右手に握っていた校旗を、黒森峰・サンダース連合に向かって突き出す様に構えたかと思うと、一気に突撃した!!
「! 来るわよっ!!」
「何? 知波単の改革者と言われてたくせに、窮したから結局突撃? やっぱり所詮は知波単ね」
ケイが声を挙げると、アリサが馬鹿にした様にそう言い放つ。
「撃ち方始めっ!!」
まほの号令が響くと、黒森峰戦車部隊と砲兵部隊が、突撃して来る絹代のチハ(旧砲塔)に向かって一斉に砲撃を始める。
「フフフ………」
だが絹代は不敵に笑ったまま、飛来する砲弾をスラローム走行で回避しつつ、更に突っ込んで行く。
「! 速いっ!!」
「行っけーっ!!」
驚きの声をまほが挙げた瞬間、絹代のチハ(旧砲塔)は、その脇を擦り抜けて、一気に黒森峰・サンダース連合の中へ飛び込んだ!
「そこまでだっ!!」
「後ろから一気にフラッグ車を叩こうって腹の積りだったみたいだが、俺達の存在を忘れていた様だなっ!!」
だがそこで、後方に控えていたサンダース&カーネル機甲部隊が、武器を一斉に絹代のチハ(旧砲塔)に向ける。
「文字通りに袋の鼠よ! 叩き潰してやりなさいっ!!」
(おかしい………)
(何故態々コチラの部隊の中へと飛び込んで来たんだ………?)
アリサがそう吠えるが、ナオミとジョーイは絹代が何の考えも無くこんな行為に及んだとは思えず怪訝な顔をする。
「全車反転」
とそこで、まほの号令で黒森峰戦車部隊も反転し、絹代のチハ(旧砲塔)に狙いを定める。
絹代車がコチラへ飛び込んで来たので、ゆっくら健康館防衛線からの攻撃は無いと判断したのだ。
だが………
「今だっ!!」
「撃てぇーっ!!」
何と!!
カレンと聖子の号令が響くと、ゆっくら健康館防衛線からの砲撃が再開された!!
「!? 何だとっ!?」
「ホワーイッ!?」
まほとケイから驚愕の声が上がる。
ゆっくら健康館防衛線からの攻撃は、後ろを向けた黒森峰戦車部隊と、絹代車を倒す為に前進して来たサンダース戦車部隊に襲い掛かる!
「来たわよ! 腹括りなさいっ!!」
「「「了解っ!!」」」
そこで絹代は、同乗員にそう発破を掛けると、何と!!
味方の砲撃が着弾する敵陣の中を、縦横無尽に走り始めた!!
「!? 嘘でしょっ!?」
「味方の砲撃が撃ち込まれている中に留まるなんて、何を考えてるんだっ!?」
絹代の狂っているとしか言えない行動に、黒森峰・サンダース戦車部隊の隊員達から恐怖の声が挙がる。
「そこっ!!」
しかし絹代はそんなものは何処吹く風と、1輌のシャーマンに肉薄し、砲塔基部に砲撃!
幾らチハ(旧砲塔)の主砲と言えど、戦車の弱点である砲塔基部に攻撃されれば一溜りも無く、シャーマンは白旗を上げる。
「このっ!!」
と、1輌のパンターが、絹代車を照準器内に捉えたが………
直後に背を向けていたゆっくら健康館防衛線の三式改と四式の砲撃を、車体後部に受け、被弾箇所が爆発した後に白旗を上げた。
「イッツクレイジーッ!!」
「コレが『神風の西 絹代』か………」
ケイは絹代の常識外れの戦法に驚きつつも感嘆し、まほは絹代の二つ名を思い出して若干戦慄する。
「このぉっ! 『ミハエル・ヴィットマン』のつもりっ!?」
とそこで、アリサが絹代車の行く手を塞ぐ様に、主砲を旋回させながら前に出る。
「撃………」
「撃てっ!!」
しかしアリサよりワンテンポ早く、絹代が発砲を命じる。
チハ(旧砲塔)の主砲から放たれた榴弾が、アリサのM4A1の主砲身の中へ飛び込むと、発射されたM4A1の砲弾と激突!!
砲身内部で榴弾が爆発し、主砲身が砕け散った!!
「うわらばっ!?」
その際の爆煙を諸に浴びてしまうアリサ。
やがてその爆煙が晴れると、砲身が全て無くなって白旗を上げているM4A1と、顔中を煤で真っ黒にしたアリサが姿を見せる。
「ブハッ!………あ、あべし………」
そして世紀末的な断末魔と共に気を失い、砲塔に力無く項垂れたのだった。
「まだまだ勝負はコレからよっ!!」
絹代はそう言い、味方の砲弾が次々と撃ち込まれる敵陣の中で爆走を続けるのだった。
つづく
新話、投稿させていただきました。
今回は防衛線の場面をお送りしました。
オリジナル展開として、絹代達がゆっくら健康館の方でも防衛線を張り、黒森峰・サンダースを相手取ると言う場面を追加しました。
最後で、絹代が敵陣に飛び込んで、味方が砲撃する中を暴れ回ると言う場面がありましたが、直前の会話で出ていた『ミハエル・ヴィットマン』の話を参照にしました。
何でも、ソ連軍の対戦車砲陣地を叩く為、先ず自分が囮となって対戦車砲の位置を把握し、離脱すると見せかけて味方戦車隊に攻撃させ、ソ連砲兵達が味方戦車隊に引き付けられている間に、陣地の横から突撃して、味方の砲撃をかわしながら蹂躙したとか。
トンでもない話ですね(笑)
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。